早期口腔がん 予防的頭部リンパ節の切除の有効性を示唆 ASCO2015


  • [公開日]2015.06.07
  • [最終更新日]2017.01.23

5月29日~6月2日にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO:あすこ)のAnnual Meeting(年次会議)にて、毎年、応募される5000演題の中で4つしか選出されないプレナリーセッション(学問的に優れた演題)の発表がありました。今年のプレナリーセッションのテーマは「患者のケアに対して最高の科学的利点と最大の影響をもつと考えられる演題」とのことです。

うち1つの演題として、インドTata Memorial Centre(タタ記念病院)のAnil D’Cruz氏にて「早期口腔がんを対象とした予防的な頭部リンパ節の切除に関する第3相試験の結果」を発表されました。

本試験は頭頚部がんの一種である口腔がん患者596人(うち85%が舌がん)に対して、「口腔がんを切除するときに予防的に周辺のリンパ節も切除(郭清)するケース(予防的切除群)」と「口腔がんを切除するときには周辺のリンパ節切除(郭清)を行わず、念入りに経過観察を行い、リンパ節転移が認められた後に切除を行うケース(治療的切除群)」に登録されました。

ポイントは以下の通りです。
1.口腔がんに対する手術後3年経過した時点での生存率は予防的切除群80%、治療的切除群67.5%であり、口腔がんを切除するときに予防的にリンパ節を切除する方が死亡リスクを36%軽減できる。(統計学的にも差を証明;P<0.01)
2.口腔がんに対する手術後3年経過した時点での非再発率は予防的切除群69.5%、治療的切除群45.9%であり、予防的リンパ節切除する方が再発リスクを55%軽減できる。(統計学的にも差を証明;P<0.001)
3.「口腔がん手術時にリンパ節切除を実施するか否か」という長いクリニカルクエッション(医学的疑問)に対して1つの解決を示唆したことになった。

本演題に対して、ASCOスポークスマンであるJyoti D.Patel氏は「世界に30万人以上するといわれている口腔がんの潜在患者に対して影響する試験結果となる」と述べました。

参照
The ASCO POST(英語)
ASCO2015 Abstract(英語)
ASCO DAYLY NEWS(英語)
この試験の情報:Clinical trials.gov(英語)

記事:カチ

【口腔がんについて】
がん情報サービスによると、頭頚部がんのうち35.4%が口腔がんとなり、そのうち53.4%は舌がんとなります。同センターの2015年がん統計予測での頭頸部がん年間罹患数19,500人となっており、うち約7,000人程度が口腔がんであると予想されます。
舌がんは男性に多く、好発年齢は50~70代。ただし、50代未満も4分の1を占め、20~30代も発症します。主なリスク因子として、虫歯などの口腔内不衛生などが考えられています。

【予防的リンパ切除(リンパ郭清)】
リンパ節は全身に約600個程度あるソラマメの形をした組織です。がん細胞はリンパ管より周辺のリンパ節に転移しやすく、早期がんであっても肉眼的にも転移していないと考えられても既にリンパ節に転移している可能せいがあるため、がん組織を切除するときに周囲のリンパ節を切除します。リンパ節を予防的に切除しても人体への影響は少なく、肺がん、胃がんおよび大腸がんなどでは一般的な手法となりますが、どこまでのリンパ節を切除するのかは議論されています。

【ASCO(あすこ)とは?】
American Society of Clinical Oncology(米国臨床腫瘍学会)の略称で、世界最大のがん学会となります。年に1回開かれるこの会議では、世界中から約25,000人ものオンコロ ジストが参加され、5000以上にのぼる研究結果が発表されます。

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