5月29日~6月2日にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会ASCOの年次総会にて、「ある染色体異常を伴うハイリスクなウィルムス腫瘍に対する標準療法の強化に関する第3相臨床試験結果」がカナダ ブリティッシュコロンビアこども病院のDavid B.Dix氏によって発表されました。

なお、本研究は2015年ASCO年次総会で発表される研究を代表する4つの試験結果のうちの1つとなり、年次総会に先立ち5月13日にASCOが公表禁止制限付き報道会見されています。(ただし、残念ながらオンコロスタッフが確認する限り、日本国内で報道されていません。)

ウィルムス腫瘍(腎芽腫)は小児三大固形がんのひとつで、日本では年間80~100人が発症していると考えられ、治療後の再発率は80~90%となります。ただし、ある染色体異常を伴うウィルムス腫瘍は、再発と死亡のリスクが高いとされています(再発率65%~75%)。ウィルムス腫瘍についてはコチラ:日本小児外科学会

上記の試験では、上述のハイリスクのウィルムス腫瘍患者に対して、標準治療とする抗がん剤の組み合わせに更に別の抗がん剤を加えて効果を確認する試験でした。

この試験のポイントは以下の通りです。

1.ハイリスクなウィルムス腫瘍患者は1,134人中87人(ステージ1~2:35人、ステージ3~4:52人)(約7.6%)だった。
2.ステージ1~2の患者には3種類の抗がん剤療法を実施、ステージ3~4の患者には5種類の抗がん剤療法を実施した。
3.結果、4年間再発認められない割合が大きく上昇した。(ステージ1~2:74.9%→83.9%、ステージ3~4:65.9%→91.5%)
4.短期的な副作用として60%の患者で骨髄抑制(免疫細胞の減少)が認められたが、管理できるものであった。ただし、長期的な副作用としては生殖機能の低下が懸念される。

<ニュース担当コメント>
報道会見があったにもかかわらず、話題にあがっていないことから記事にしました。日本人で上記に当てはまる患者さんは年間2~3人程度ということになります。そんなお子さんの親御さんにもこの情報が届けばいいなと思います。カチ

 

もう少し詳細を知りたい方は以下もご覧ください。

ウィルムス腫瘍(腎芽腫)は小児三大固形がんのひとつで、日本では年間80~100人が発症していると考えられていますが、ウィルムス腫瘍に対する治療成績は近年著明な改善がみられるようになっており、NWTS-5という臨床研究では4年無再発生存率(4年間再発が認められない割合)は、ステージ1~2において91.2%であり、ステージ3~4において83%となっているとのことです。

しかしながら、全体の5~6%にあたる「染色体1pと16qにおけるヘテロ接合の消失」という染色体の異常を伴うウィルムス腫瘍は、再発と死亡のリスクが高く4年無再発生存率(4年間再発が認められない割合)はステージ1~2では74.9%、ステージ3~4では65.9%であるとのことでした。

本試験では、上記のハイリスクなウィルムス腫瘍患者(ウィルムス腫瘍と診断した1,134人のうちステージ1~2:35人、ステージ3~4:52人が該当)に対して標準療法に新たな薬剤を追加したときの効果を確認しました。

■ステージ1~2の患者
標準療法「ビンクリスチン、アクチノマイシンDの2剤併用」にドキソルビシンを追加

■ステージ3~4の患者
標準療法「ビンクリスチン、アクチノマイシンDおよびドキソルビシンの3剤併用」にシクロフォスファミドとエトポシドを追加
AREN03B2-2

結果、4年無再発生存率(4年間再発が認められない割合)はステージ1~2では83.9%、ステージ3~4では91.5%であり、改善傾向が認められました。
AREN03B2

安全性についても忍容性が認められました。ステージ1~2の副作用は重要な副作用は認められず、スジテージ3~4で多く認められた副作用は骨髄抑制であり。60%の患者さんに中等度(CTCAEグレード3)の副作用が発現していましたが、コントロール可能ででした。

David B. Dix氏は「新しいレジメン(抗がん剤の組み合わせ)は再発率の低下させる可能性があるが、生殖能力の低下が懸念されるため、使用する際には家族とよく議論することを勧める」と述べています。

参照
ecancernews(英語)
The ASCO PSOT(英語)
ASCO2015 Abstract(英語)
この試験の情報①:Clinical trials.gov stage1/2(英語)
この試験の情報②:Clinical trials.gov stage3/4(英語)
*わかりやすくするために投与量やサイクルなどについては言及していません。

【ASCO(あすこ)とは?】
American Society of Clinical Oncology(米国臨床腫瘍学会)の略称で、世界最大のがん学会となります。年に1回開かれるこの会議では、世界中から約25,000人ものオンコロ ジストが参加され、5000以上にのぼる研究結果が発表されます。


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