小児がん 進歩する医療、遅延性副作用も抑制傾向 ASCO2015


  • [公開日]2015.06.01
  • [最終更新日]2017.06.13

5月29日~6月2日にシカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO:あすこ)のAnnual Meeting(年次会議)にて、毎年、応募される5000演題の中で4つしか選出されないプレナリーセッション(学問的に優れた演題)の発表がありました。今年のプレナリーセッションのテーマは「患者のケアに対して最高の科学的利点と最大の影響をもつと考えられる演題」とのことです。

うち1つの演題として、St. Jude Children’s Research Hospital(セントジュード子供リサーチ病院)の Gregory T. Armstrong氏が40年間にもわたる小児がん治療による致死的な遅発性副作用の発現率の結果を発表しました。

Armstrong氏らの研究グループは、1970年から1999年に21歳以下でがんと診断されから5年間生存された34,033人の死亡率と死亡理由を確認しました。
結果、34,033人中3,958人の方が亡くなっており、1,622人(41%)の方ががんに関係ない理由で亡くなっていました。
うち、751人が2次発がん(何らかの理由で別の部位に全く新しくできるがん)、243人が心疾患、136人が肺疾患にて亡くなっており、これらのがん治療の遅発性の副作用(数年経過してから発生する副作用)が否定しきれません。

しかしながら、治療年代別に診断後5年から10年後(診断後15年)までの死亡率を確認すると、1970年~1974年に治療された方の死亡率は12.4%、1990~1994年に治療された方の死亡率は6%となっていました(P<0.001:統計学的にも関係性が証明されています)。また、2次発がん、心疾患及び肺疾患全てにおいて死亡率が低下していました。

再発転移ではない理由(3.5%→2.8%;P<0.001)
2次発がん(1.8%→1.0%;P<0.001)
心疾患(0.5%→0.1%;P=0.001)
肺疾患(0.4%→0.1%;P=0.02)

1970年代前半では、5年生存が確認ができた方でも、15年生存では約9%の方が転移再発にて、約3.5%が治療による遅発性の副作用であることが否定できない事象で亡くなっていますが、1990年代前半では約4%の方が転移再発、約2%の方が遅発性の副作用となっていました。

Armstrong氏は「遅発性副作用の早期発見や適切な治療及びより毒性の少ないがん治療戦略が、生存者の寿命を延長するために必要である 」と締めくくりました。

ASCOのスポークスマンであるJyoti D. Patel氏は「この研究は、過去数十年にわたって小児がんの治療にあたえた成果を強調しており、我々はがん生物学の重要な技術革新があった(抜粋)」と述べています。
カチ

参考
ASCO POST(英語)
ASCO2015HP(英語)→図は転載
ASCOple02

【ASCO(あすこ)とは?】
American Society of Clinical Oncology(米国臨床腫瘍学会)の略称で、世界最大のがん学会となります。年に1回開かれるこの会議では、世界中から約25,000人ものオンコロジストが参加され、5000以上にのぼる研究結果が発表されます。

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