
オンコロLINEの友だちを対象に、がん患者さんやご家族の方などのご意見・お考えを共有したり、がんについて学べる1問クエスチョンのオンコロ・ワンクエスチョン! その結果と解説をがん情報サイト「オンコロ」にて公開しています!
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オンコロ・ワンクエスチョンの一覧
質問
「治験参加に対して不安なこと・分からないことを教えてください」
結果・解説

今回のオンコロ・ワンクエスチョンは治験参加にあたり、不安なこと・分からないことをお伺いしました。
皆様のお声をカテゴリーに区分し、解説と併せてご紹介いたします。中には治験参加者のお声もご紹介しておりますので、ぜひご一読ください。
1. 副作用・安全性・治療効果への不安
副作用の懸念:
・どのような副作用が、どの程度の頻度や重さで発生するのか分からない。
・特に新規作用機序(新しい仕組み)の薬や、第I相試験のような初期段階の治験は、データが乏しく不安が大きい。
→ 治験では、予測される副作用は事前にすべて説明されます(インフォームド・コンセント)。また、予期せぬ副作用にも迅速に対応できるよう、通常診療より頻繁な検査や診察で体調を厳重にチェックします。安全管理体制はGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)という国際的なルールで厳しく定められています。
身体への適合性:
・治験薬が自分の体に合わなかった場合や、症状が悪化した場合の対処法が確立されているか心配。
→ 治験薬が合わない、あるいは症状が悪化したと医師が判断した場合、参加者の安全が最優先されます。直ちに治験薬の投与は中止され、その時点で最善と考えられる治療(標準治療など)が行われます。また、参加者ご自身の意思で、いつでも理由を問わず治験への参加を取りやめることができます。
治療効果への疑念:
・標準治療と比べて再発リスクが高まる可能性はないか。
・(治験に参加せず)標準治療を続けた方が良いのではないかという迷いがある。
→ 第III相試験(最終段階)の多くは、標準治療と比べて「同等以上の効果があるか」「副作用がより少ないか」などを検証するために行われます。標準治療より劣ることが予測される治験は原則として実施されません。しかし、開発中の薬であるため、結果として期待した効果が得られない可能性や、標準治療と変わらない(あるいは劣る)可能性もゼロではありません。そのリスクも含めて事前に説明を受け、参加を判断いただくことになります。
★治験参加者の声★
▼治験参加者が不安だったこと
・副作用に悩まされた際、治験が途中で中止されるのではないかと不安だった。幸い、減薬や一時休薬で対応してもらえたため、中止せずに乗り切れた。
・副作用、またはその疑いがある症状が出た場合、治験実施側(病院や製薬会社)は正直に事実を伝えてくれるのか。
▼治験参加者による解決策
・治験薬の効果に期待する一方、どのような副作用が出るか不安だったため、治験コーディネーター(CRC)にしっかり相談した。
2. プラセボ(偽薬)群への割り当て
治療機会の損失:
・治験に参加しても、プラセボ(偽薬)群に割り当てられる可能性があり、期待した治療(治験薬)を受けられないのではないか。
・プラセボ群になった場合、その期間は「無治療」状態になってしまうのではないか。
・標準治療が既になくなった患者でも、プラセボ群になる可能性はあるのか。
→ 一般的な治験では治験薬と偽薬(プラセボ)で比較することがありますが、がん領域の治験では倫理的な観点から、治療法があるにもかかわらずプラセボのみ(=無治療)となることは基本的にありません。多くは「現在の標準治療+治験薬」と「現在の標準治療+プラセボ」を比較する形をとります。この場合、プラセボ群でも標準治療は受けられます。
標準治療がなくなった患者さん対象の治験でプラセボが使われる場合も、「最善の支持療法+治験薬」と「最善の支持療法+プラセボ」の比較など、何らかの治療(対症療法など)は行われることが原則です。どのような比較が行われるかは、説明同意文書に必ず記載されています。
割り当てへの不安:
・患者としては新しい治療を受けたいが、比較対象(プラセボや標準治療)のグループに振り分けられる不安がある。
→ がん治験、特に第I相(安全性確認)や第II相(効果の探索)では、比較対象(プラセボや標準治療群)を設けず、参加者全員が治験薬を使用するデザイン(単群試験)も多くあります。もし比較群に割り振られることを避けたい場合は、このようなデザインの治験を探すのも一つの方法です。ただし、どの段階の治験がご自身に最適かは、病状や主治医の判断によります。
3. 自分に合う治験情報の探しにくさ
情報の不足:
・現在どのような治験が実施されているのか、全体像が分からない。
・情報の探し方自体が分からない。主治医に相談せず、自分で探して良いものか。
→ まずは主治医に「自分に合う治験(臨床試験)がないか知りたい」と相談するのが第一歩です。主治医に相談しにくい、あるいはご自身でも探したい場合は、国立がん研究センターがん情報サービスの「がんの臨床試験を探す」や、国のデータベースである「jRCT(臨床研究実施計画・研究概要公開システム)」で検索することが可能です。
情報のミスマッチ:
・情報が多すぎたり、専門的すぎたりして、どれが自分に当てはまるのか分からない。
・該当する治験情報になかなかたどり着けない。
→ 公的な検索サイトでは、がんの種類、病期(ステージ)、治療歴、地域などで絞り込み検索が可能です。しかし、最終的な適格性の判断は非常に専門的です。気になる治験を見つけたら、その情報(試験IDやjRCT番号など)を主治医に伝え、ご自身の病状で参加可能性があるか、専門的に判断してもらうのが確実です。
段階の分かりにくさ:
・その治験がどの段階(初期か最終段階か)なのか分かりにくい。
→ 治験は主に第I相(安全性の確認)、第II相(効果と安全性の確認)、第III相(標準治療との比較)の順で進みます。検索サイトや説明文書に「第○相」と記載されています。一般に、第III相の方がより多くのデータ(安全性・有効性)が集まっていますが、標準治療がなくなった方などは第I相や第II相が選択肢になることもあり、ご自身の状況によって最適な段階は異なります。
4. 参加条件(適格基準)のハードル
基準の厳しさ:
・応募しても「対象外(基準に合わない)」と断られることが多く、なかなか参加に至らない。
・「人数がいっぱい」と断られたケースもある。
→ 治験は、薬の効果と安全性を科学的に正しく評価するため、対象となる患者さんを非常に厳密に定めています(適格基準)。これは、薬の評価を曖昧にしないため(例:特定の遺伝子変異がある人のみ対象とする)、そして何より参加者の安全を守るため(例:肝臓や腎臓の機能が一定基準を満たしている)です。そのため、基準に合致せず参加できないケースは少なくありません。
基準の不透明さ:
・自分が治験の対象(参加資格)に該当するのかどうか、応募前に分かりにくい。
・年齢制限や必要な参加期間、重複がんでも参加可能かなど、具体的な条件が不明確。
→ 参加条件は「説明同意文書」に詳細に記載されますが、多くは血液検査の特定の数値や画像診断の結果など、専門的な判断を必要とします。まずは主治医や治験実施病院に問い合わせ、ご自身の病状が「適格基準」に当てはまる可能性があるか、専門的なスクリーニング(事前検査)を受けて判断してもらう必要があります。
5. 実施場所(地域格差・遠方)や通院の負担
地理的制約:
・治験が関東圏などに集中しており、地方在住者には参加の機会が少ない(地方格差)。
→ 治験は、GCPの基準を満たす高度な専門スタッフ(医師、CRCなど)や設備が整った特定の病院(大学病院やがん専門病院など)でしか実施できません。そのため、実施病院が都市部に集中する傾向があるのは事実です。
通院・体制の不明点:
・地方からでも治験に参加できるのか。
・参加する場合、現在の病院から転院する必要があるのか。
・通院の頻度(回数)はどのくらいか。
→ 遠方からの参加を受け入れている治験もあります。その場合、治験薬や治験に必要な検査以外の費用(交通費や宿泊費など)は、ルールに基づき「負担軽減費」として支払われることが一般的です。現在の病院からの転院が必要か、通院頻度はどれくらいかは治験ごとに異なりますので、事前に確認が必要です。また、近年は分散型臨床試験(Decentralized Clinical Trial:DCT)という考えが普及し始めており、地方にお住いの方や頻繁な来院が難しい方でも治験に参加しやすくなることが期待されています。
※がん領域における分散型臨床試験(DCT)のニュースは
こちら
6. 医療者とのコミュニケーションとサポート体制
相談のしにくさ:
・医師に治験の話をどのように切り出せばいいか分からない。
・主治医が治験に前向きでない場合もあるのではないか。
→ 「標準治療以外の選択肢として、自分に合う可能性のある治験(臨床試験)についても情報を知りたい」と率直に尋ねてみてください。治験への参加は患者さんの権利です。もし主治医に相談しにくい場合は、セカンドオピニオンを利用して他の医師の意見を聞いたり、病院のがん相談支援センターに相談したりするのも有効な方法です。
サポート体制への不安:
・主治医や治験コーディネーター(CRC)が、何をどこまでサポートしてくれるのかを事前に知りたい。
・副作用や急な体調不良(特に遠方の場合)が起きた際の、具体的な対策や連絡体制はどうなっているのか。
→ 治験に参加すると、多くの場合「治験コーディネーター(CRC)」という専門スタッフが担当につきます。CRCは、医師の説明の補助、検査・通院のスケジュール調整、副作用や日々の不安についての相談窓口となり、参加者を全面的にサポートします。緊急時の連絡先や対処法も、治験開始前に必ず説明されます。
7. 情報の透明性(副作用・結果・個人情報)
副作用報告:
・副作用やその疑いが出た場合、事実を正直に教えてくれるのか。
→ 治験中に発生した好ましくない事象(副作用の疑い含む)は、軽微なものでもすべて記録し、重篤なものは直ちに国や治験審査委員会(IRB)に報告することがGCPで厳しく義務付けられています。参加者の安全に関わる重要な新しい情報(他の参加者に重い副作用が出た等)は、速やかに参加者本人にも伝えられます。
結果の開示:
・治験の結果(データ)は、単に研究利用されるだけでなく、参加者本人にも開示されるのか。
→ 治験が終了し、結果が学会や論文で公表された場合、希望すればその概要(治験全体として薬が有効だったかなど)を知ることができる場合があります。ただし、データはすべて匿名化されているため、治験参加者個人の詳細な治療結果が個別に開示されるわけではありません。
プライバシー:
・個人情報がどのように保護されるのか気になる。
→ 治験で得られたデータはすべて匿名化(氏名や住所などは削除し、記号や番号に置き換え)されます。製薬会社や規制当局(PMDAなど)がデータを確認する際も、個人が特定できる情報が外部に漏れることはありません。プライバシー保護はGCPで厳格に定められています。
8. 費用、生活・仕事への影響
費用:
・治験参加にあたり、どのくらいの費用がかかるのか。逆に、高額な医療費は抑制できるのか。
→ 治験薬(プラセボ含む)の費用、および治験実施計画書で定められた追加の検査や画像診断の費用は、基本的に治験を依頼した製薬会社が負担します。通常の診療(初診料や、治験とは関係ない持病の治療費など)にかかる費用は、健康保険が適用される場合(保険併用療養費制度)が一般的です。結果として、自己負担額が通常診療より少なくなる可能性はあります。
生活への影響:
・治験参加が、今後の生活や仕事(休職・復職など)にどう影響するか。
→ 通常の治療より通院回数や検査が増えるため、時間的な拘束は発生しやすいです。仕事や生活との両立については、CRC(治験コーディネーター)が相談に乗り、可能な範囲でスケジュール調整などを手伝ってくれる場合もあります。事前にどの程度の通院頻度が必要かを確認することが重要です。
9. その他の情報収集
メリット・デメリット:
・参加することのメリットとデメリットを具体的に知りたい。
→ これらは、参加前に受ける「インフォームド・コンセント(説明と同意)」で、医師やCRCから「説明同意文書」という文書を用いて最も詳細に説明されます。メリット(新しい治療の可能性など)とデメリット(未知の副作用、通院の負担など)の両方を理解できるまで何度でも質問し、ご自身で納得した上で参加を決めることが最も重要です。
他の参加者の声:
・他の治験参加者の感想や体験談を知りたい。
→ 患者会やオンラインコミュニティなどで治験参加の体験談を見聞きすることは、精神的な参考になるかもしれません。ただし、治療効果や副作用の出方、感じ方には大きな個人差があります。医学的な判断材料としては、ご自身の病状に基づいた医師やCRCからの客観的な説明を優先してください。
治験参加者による分からないときの解決方法
治験参加者によるお声をご紹介いたします。治験参加全体を通して何か分からないこと・不安があったときにどのように解決されたのかなどをご共有いただきました。
・不安なこと、わからないことはその時その時でお尋ねするしか仕方ないと思っています
・金額や、副作用、治験内容など治験の詳細が書かれた紙を主治医が印刷してくれて、それを読みながら分からないことを質問した。
・がん診断直後、知識がないまま手術の話が速いスピードで進み、置いてけぼりにされたような焦りを感じました。体調不良を押して、病院探しや制度の確認など、急いで対処しました。
病院は、口コミやネット、実際に見学もして、通院の利便性も考えて決めました。医療費の不安は、院内の相談支援センターで高額療養費制度について相談して解決しました。また、主婦として家事や育児を夫に任せることにも不安がありました。
入院中、手術前日に清掃スタッフの方から励まされたことが大きな力になりました。治療中は、推しキャラや好きなテレビ・YouTubeを見たりして心を潤していました。
さいごに
今回のオンコロ・ワンクエスチョンでは、治験参加に対して不安なこと・分からないことを中心に解説いたしました。がん治験についてより理解を深めたいという方は、オンコロちゃんねるでご紹介している下記の「臨床研究(治験)」に関するセミナーをぜひご視聴ください。
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