オンコロ可知です。
本庶 佑先生が免疫チェックポイント分子の発見による功績からノーベル賞を受賞されて、1か月経過しました。オンコロ上でこのことについて報じていませんでしたが、オプジーボ(ニボルマブ)をはじめ免疫チェックポイント阻害薬はわれわれにとって、非常に重要なファクターとなります。この機会にそのことや、この一か月で思ったことをつらつら書いていこうと思いますので、宜しければお付き合いください。
免疫チェックポイント阻害薬を知ったきっかけ
私が免疫チェックポイント阻害薬を知ったのは2013年。臨床開発職時代に有志を集めて週一で開催していた文献抄読会でした。
当時、恥ずかしながら免疫チェックポイント阻害薬の存在を知らなかった私は「FDA承認された免疫療法は、去勢抵抗性前立腺がんに対する樹状細胞ワクチンであるSipuleucel-T(シプロイセルT;米国商品名PROVENGE)しかなく、総額93,000ドル(約一千万円)、生存期間は4か月程度の延長と費用対効果について議論があるもの(*)」と思っており、免疫療法はさして注目していませんでした(実際はイピリムマブ(ヤーボイ)が2011年にFDA承認)。
*記事書くのに、Sipuleucel-Tの臨床成績について記憶があいまいであったため、海外がん医療情報リファレンスのコチラを参考しています。
そんなときに、抗PD-1抗体であるオプジーボの悪性黒色腫に対するパフォーマンスに驚き、それから免疫チェックポイント阻害薬を色々とフォローしていました。
免疫チェックポイント阻害薬がオンコロを育ててくれた
オプジーボは、2013年12月に小野薬品が日本で承認申請、2014年7月に承認取得されます。
一方、私は2014年9月にオンコロを立ち上げるべく転職。当時全くWebについて無知な私に、高橋(当社メディア統括グループ長)がSEOという、インターネットで検索したときに上位に表示する仕組みを教えてくれました。そして、「検索して上位に表示したいワードを決めて、とにかく記事を量産すること」と教えてくれました。(今思うと、SEOはそんな単純なものではないのですが、継続して記事を出すことは重要なことだと思っています。)
2015年5月にオンコロを立ち上げ、その翌月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)にて「免疫チェックポイント阻害薬まつり」が起きました。様々ながん種に対して免疫チェックポイント阻害薬が有効な可能性であることを示す数々のデータが示されました。
この結果を見て、私がSEO対策で標的としたキーワードは「オプジーボ」「ニボルマブ」「キイトルーダ」「ペンブロリズマブ」となります。オンコロは治験情報を世の中に発信することがミッションの一つですが、全がん種に有効な可能性が期待ができる薬剤にしようと思ったからです。
以下は2016年2月のオンコロが上位表示されたワード一覧です。その対策が功を奏し、オプジーボが有名になればなるほど、キイトルーダが有名になればなるほどアクセス数を伸ばすようになってきました。
現在、オンコロ上にオプジーボ関連の記事は200程度、キイトルーダ関連は120記事程度となります。免疫チェックポイント阻害薬がなかったら、オンコロは早々につぶれていたかもしれないと思っています。
Nivolution trialとの出会い
オンコロに初めて治験審査委員会を承認されて掲載した治験情報はNivolution trialとなります。
2015年秋頃に初めてお会いした近畿大学の中川和彦先生が「ニボルマブの非小細胞肺がんの医師主導治験を掲載してみないか」と提案されました。当時、非小細胞肺がんに対しては承認申請されていたものの承認されていない状況であり、中川先生は「使用したいのに使用できない患者に治験情報を届けたい」とおっしゃりました。
オプジーボと検索したら上位表示されるWebサイトに、治験審査委員会の承認を得たオプジーボの治験情報を掲載できる。それは、我々にとってまたとないチャンスです。勿論、二つ返事で引き受けました。
その試験が、既治療進行/再発非小細胞肺癌におけるNivolumabの効果予測因子探索のための第II相試験(Nivolution trial; UMIN000019674)です。そして、この試験には本庶先生が関わっておられました。サムネイルにあげたものはこの試験のスタートアップミーティング時の集合写真となります。
さらに、思いがけないチャンスがありました。オンコロ掲載の頂いた時点でCRA(臨床開発担当)が決まっていなかったのです。メディアとしてオプジーボを追いかけていた私は「チャンスがあれば、この薬剤の使用したカルテデータを直接見てみたい。それこそちゃんとした記事を書ける。」と思っていました。
CRAの主な仕事の一つは、電子カルテと症例報告書に集められたデータを照合することです。この試験で言うと、近畿大学に赴き、治験に参加された方の電子カルテデータを閲覧して照合することになります。先生と患者のやり取り、処方記録、血液検査データ、画像データなどすべてを閲覧することになるのです。「50名の患者データを直に見ることができる」とCRAに立候補し、担当させて頂くことになりました。
さて、オプジーボ承認直前にエントリーがスタートしたNivolution trial。近畿大学のみにもかかわらず、開始1か月で25名程度が登録されるというすさまじいスピードですすみます。現場の対応が間に合わず登録ストップした時期もあったにもかかわらず、半年程度で登録が完了しました。オンコロにも開始1か月で20名程度の問い合わせがあり、承認されてからは無理に治験参加を促すことはやめました。
この試験で大変だったのはCRAです。一人で担当するにはエントリースピードが早すぎるため二名体制に変更し、月に2日、1日15名ずつを閲覧というペースを1年半こなし、無事にデータ固定を終えました。勿論、治験を主導された林 秀敏先生や治験コーディネーターの皆さんが一番苦労されたと思います。「貴重な機会を有り難うございました」とお礼を示させていただきます。
なお、この試験結果は公開されていませんので、公開されてから報じたいと思っております。
この一か月で思うこと
ということで、前説が長くなりましたので、この一か月で思うことについては後編に示したいと思います。内容は10月1日発表から1週間のオンコロの裏側を赤裸々につづり、思うことを記したいと思います。
なお、本庶先生へのメッセージはまだまだ募集中です。声を届けたい方は以下から宜しくお願いします。