【メルマガコラム】新薬ができるまで [vol.91]


  • [公開日]2018.12.19
  • [最終更新日]2019.04.18

オンコロの中島です。

先日、本庶佑先生がノーベル医学生理学賞を受賞され、国内もその嬉しい話題の余波が続いています。本庶先生の功績である、免疫チェックポイント阻害薬の発明は、がん治療の新しい選択肢として明るい希望へと繋がりました。

ずいぶん昔に、新薬が世に出るまでの1本の映画を観ました。

『希望のちから』という作品を、皆さんはご存知でしょうか。

乳がんサバイバーのあいだでは、よく知られた2008年製作のアメリカ映画です。これは、実在する一人の医師、デニス・スレイモン先生が乳がんの新薬を発明するまでの過程を描いています。

新しい薬が承認されるまでには、治験臨床試験を経て、安全性を確認した上で発売されます。日本では安全性を十分に確認するために、アメリカよりも承認される時間は長いと言われていますが、商品化されるまでの過程は大まかに理解することができます。

劇中、スレイモン医師はそれまで治療法がなかった乳がんのサブタイプ分類中のHER2陽性患者さんに対して、画期的な薬を発明しました。

それが、トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)です。今では、乳がんだけではなく胃がん治療にも用いられるようになった薬剤ですが、この新しい薬が商品化されるまでの過程が、映画の中で語られています。

ステップ1. 発見(HER2タンパクが乳房の細胞の増殖に関連するのを発見)

ステップ2. 新薬の開発

ステップ3. マウス抗体実験

ステップ4.~6.  Food and Drug Administration
        (通称FDA/アメリカ食品医薬品局 )の臨床試験(治験)
  (段階を踏み時間をかけて薬の効能を確かめる)

ステップ7. 新薬の認可

1988年当時、アメリカ国内では年間20万人もの乳がん患者さんが亡くなっており、ハーセプチンによって、そのうちのHER2陽性患者さん4,000人を救うことができる、6年で24万人の患者さんを救うことができる、と情熱を持って日夜研究を進めた背景を、この映画はわかりやすく表現しています。

新薬の開発には、上記 ステップ4.~6.が欠かせないフローであり、ストーリーの中でも、治験にマッチする患者さん、患者会、サポート民間企業など、さまざまな立場の人たちがそれぞれの持ち場で一致団結し、商品化を後押しする姿を観ることができます。

免疫チェック阻害薬の代表的な商品、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)も、多くの方々の努力と結束によって生まれたことでしょう。

いまこの瞬間も、世界中で大勢の研究者が新しい治療法を模索しています。

この幸せのちからによって、これからも私たちの生活がより豊かになることを切に願っています。

可知が以前、この映画についてブログを掲載しています。
https://oncolo.jp/blog/kibounochikara

中島 香織

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