動画タイトル:【#がん治療 】医療者とのコミュニケーションを考える!SDMカードとは?大阪オンコロジーセミナー「笠井信輔のこんなの聞いてもいいですか on the WEB」2026 #70
講師:中山 健夫先生(京都大学大学院医学研究科 教授)
司会:笠井信輔さん(フリーアナウンサー、がんサバイバー)
ライブ配信:2026年7月15日/編集動画公開:2026年7月30日
※この記事はセミナー動画「【#がん治療 】医療者とのコミュニケーションを考える!SDMカードとは?大阪オンコロジーセミナー「笠井信輔のこんなの聞いてもいいですか on the WEB」2026 #70 」をもとに作成されています。治療法やその開発段階については、セミナー実施時点のものであることにご留意ください。
医療技術が大きく進歩した現代、がん治療の現場では単に「どのような治療を行うか」だけでなく、患者さん自身が「どのように生きたいか」を主体的に考えることが重要視されています。かつてがんは患者本人に告知されないことが当たり前の時代もありましたがその後、「説明と同意」を意味するインフォームド・コンセントが普及しました。そして今、医師と患者さんが対等なパートナーとして共に治療方針を決める「SDM(共有意思決定:Shared Decision Making)」という新しいコミュニケーションの形が注目を集めています。
科学的根拠(エビデンス)の限界と「正解がない」治療の選択
1990年代に「エビデンスに基づく医療(EBM)」という考え方が生まれて以来、科学的なデータに基づく標準治療が確立されてきました。 しかし、どんなに優れたデータ(エビデンス)があっても、それが個々の患者さんにとっての「唯一の正解」になるとは限りません。 例えば、以下のような2つの治療薬の選択を迫られた場合を考えてみましょう。 治療薬A: 生存期間(目安)が3年と長いが、副作用が強く入院が必要となる可能性が高い。 治療薬B: 生存期間(目安)は2年と短いが、副作用が少なく自宅で過ごすことができる。 とにかく1日でも長く生きたいと願う場合や、「3年後にある孫の小学校入学や親族の結婚式を見届けたい」という目標があるならば、辛くても治療薬Aを選ぶかもしれません。 一方で、「最後まで仕事を続けたい」「自分らしく社会活動をしていたい」と願うならば、副作用の少ない治療薬Bを選ぶことがその人にとっての正解になるかもしれません。 このように、医療者が提示するデータ(エビデンス)は知識として正しくても、患者さんがどう生きたいかという価値観(ナラティブ)によって、選ぶべき最適な治療法は全く異なってくるのです。SDM(共有意思決定)とインフォームド・コンセントの違い
SDMは、従来のインフォームド・コンセントをさらに一歩進めた考え方です。 インフォームド・コンセント:医師が専門知識に基づいて「最善の正解」を提示し、患者さんがその説明を理解して同意する、比較的一方向的な選択です。 SDM(共有意思決定):特に治療の不確実性が高く、どちらが良いか一概に言えない場合に真価を発揮します。医師は選択肢のメリット・デメリットやコストなどの情報を共有し、患者さんは自身の価値観やライフスタイル、大切にしたい生活などの情報を共有します。お互いの情報をすり合わせ、目標を共有し、一緒に意思決定を行っていきます。意思決定を阻む3つの現場課題:お任せ患者さん、家族とのズレ、民間療法
理想的なSDMを進める上で、現実の医療現場ではいくつかの大きな課題が存在します。 「お任せします」と遠慮してしまう患者さん:特に高齢の患者さんなどは遠慮して「先生にお任せします」と言ってしまいがちです。もちろん、十分に悩んだ上で信頼できる医師に判断を「委ねる」ことも一つの意思決定(SDM)の形ですが、自分の本音や譲れない希望があるならば、わがままだと思わずに口に出して伝えることが大切です。 家族との意見の不一致:「副作用が辛いから抗がん剤をやめて自宅で過ごしたい」と願う患者さん本人と、「少しでも長く生きてほしいから頑張って治療を続けて」と願う家族の間で、意見が食い違うことがあります。医師にとっても非常に難しい状況ですが、残される家族の思いも置き去りにせず、チーム医療として多職種で対話を重ねることが求められます。 エビデンスのない治療(民間療法や未確立の自由診療)への傾倒:不安から、科学的根拠が乏しい医療や高額な自由診療に惹かれてしまうケースがあります。これに対し医師は、頭ごなしに否定するのではなく、「なぜその治療に惹かれているのか」という患者さんの心理や背景に寄り添い、丁寧に対話の糸口を探ることが重要です。対話を助けるツール「SDMアシストカード」
医師の前で直接自分の希望を伝えることは、患者さんにとって大きな緊張や威圧感を伴うものです。そこで、医師との対話をスムーズにし、意思決定をサポートするためのツールとして「SDMアシストカード」が注目されています。 このカードは、自分が日々の生活で「普段大切にしたいこと」や「もしもの時に最優先したいこと」をあらかじめ整理し、視覚的に見える化できるアイテムです。診察室に持ち込んで医師や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどの医療チームに見せるだけで、言葉にしにくい自分の価値観を自然に共有することができます。本記事は動画の要点をまとめたものです。動画本編では、自身もがんサバイバーである笠井信輔氏のリアルな闘病体験談や、中山先生が語る日本の医療現場・医学教育における「生活者としての患者」を捉える最新トレンドなど、明日からの治療との向き合い方を変える貴重な対談がフルで収録されています。納得のいく治療を選択するための大きなヒントが得られますので、ぜひ動画本編をご視聴ください。



