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【頭頸部がんの基礎】「顔と首のがん」のサインと、声や生活を守るための最新治療アプローチ

[公開日] 2025.10.16[最終更新日] 2026.10.16

動画タイトル:【頭頸部って?】#頭頸部がん の基礎を学ぶ!オンコロセミナー #112 講師:岡野 晋先生(国立がん研究センター東病院 頭頸部内科) ライブ配信:2025年4月25日(金)/編集動画公開:2025年6月5日
※この記事はセミナー動画「【頭頸部って?】#頭頸部がん の基礎を学ぶ!オンコロセミナー #112 」をもとに作成されています。治療法やその開発段階については、セミナー実施時点のものであることにご留意ください。 「頭頸部(とうけいぶ)がん」という言葉は、一般にはあまり聞き慣れないかもしれません。しかし、話す、食べる、息をするといった、人間が生きる上で最も基本的な機能が集中している場所に発生するため、治療の選択がその後の生活の質(QOL)に大きく影響する悪性腫瘍といえます。今回は、頭頸部がんの種類や原因、そして進化する最新治療について詳しく解説します。

「頭頸部がん」とは?部位によって異なる複雑ながん

頭頸部とは、脳と目、首の皮膚を除いた、顔面から首にかけての領域を指します。この領域には、鼻、耳、喉(口腔、咽頭、喉頭、唾液腺、甲状腺など)といった多様な器官が含まれており、これらを総称して「頭頸部がん」と呼びます。 頭頸部がんの大きな特徴は、発生した部位(器官)によってがんの性質が異なり、それぞれ別の治療戦略が必要になるという点です。そのため、まずは自分の病変がどこにあるのかを正しく整理することが治療の第一歩となります。

見逃してはいけない初期症状と、最大の危険因子

頭頸部がんは初期症状が風邪や一般的な口内炎と似ているため、発見が遅れてしまうケースが少なくありません。
  • 口腔がん(最も多いタイプ): 舌などにできるがんで、「治らない口内炎」が最初のサインである場合があります。同じ場所に留まる口内炎が3〜4週間以上治らない場合は、ただの口内炎ではなくがんの可能性があります。一般的な歯科医院等でステロイド軟膏を出され続けて進行してしまうケースもあるため、長引く場合は耳鼻咽喉科や頭頸部外科、口腔外科などの専門医を受診することが推奨されます。
  • 喉頭がん(次に多いタイプ): 「声がれ(かすれ声)」や「飲み込むときの痛み」がサインである場合があります。
  • 唾液腺がん: 耳の下(耳下腺)や顎の下(顎下腺)などにできますが、画像検査や術前検査では良性腫瘍と区別がつかないことがあり、手術後の病理検査で初めてがんと診断されることもあるなど、見極めが難しいがんです。

発生を促す「飲酒・喫煙」と「ウイルス」

頭頸部がんの最大の危険因子は「飲酒」と「喫煙」です。喫煙は発生リスクを通常の5〜25倍に高め、飲酒は2〜6倍、この2つが重なると15〜40倍にまで跳ね上がります。また、飲酒・喫煙を続ける方は、同じ原因を持つ食道がんや肺がんを合併しやすい傾向があります。 さらに、近年増えているのがウイルスによる発がんです。
  • HPV(ヒトパピローマウイルス): 中咽頭がん(扁桃腺や舌の付け根など)の発症に深く関与しています。若年〜中年の非喫煙男性に増えており、主な原因は性的接触(口腔性交など)による持続感染です。女性は子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の公費接種が進んでいるため、将来的にHPV関連がんは減少すると見られていますが、日本の男性は現時点で任意接種(海外では公費推奨・助成あり)に留まっています。
  • EBウイルス: 主に中国や東南アジア等に多い上咽頭がんに関連しており、唾液を介して幼少期〜思春期に感染します。こちらは現在ワクチンが存在せず、研究段階です。

「声(喉)を失う手術」か「放射線」か。究極の選択と人生観

がんが進行している場合、治療の現場では非常に大きな決断を迫られます。特に喉頭がんや下咽頭がんでは、「手術で切除するか」それとも「手術を避けて化学放射線療法を行うか」という選択に直面します。
  • 手術(喉頭全摘): がんをしっかりと取り切れる可能性が高い一方、「声を完全に失う(音声が出なくなる)」、首に呼吸のための「永久気管孔」が開く、匂いがわからなくなる、入浴が制限される、力みにくくなり排便に影響が出る、といった非常に重いQOLの低下を伴います。
  • 化学放射線療法(抗がん剤+放射線): 「声を残せる」可能性がある一方、組織を焼くため、首の組織の硬直、重い嚥下(飲み込み)障害、口の渇き、味覚障害、抗がん剤による手足のしびれなどの副作用が長く続くリスクがあります。
どちらの治療を選ぶべきかは、単なるエビデンス(科学的根拠)だけでは決められません。「声を失っても早く病気を取り切って働きたい」のか、あるいは「生活に多少の不自由が出ても、声だけは残して生きたい」のか、患者さん自身の人生観や背景に基づき、医師と徹底的に対話して決定する「共有意思決定(SDM)」が何よりも大切になります。 また、治療中やその後の生活を支えるため、外科や内科だけでなく、形成外科、歯科、看護師、理学療法士、ソーシャルワーカー、精神科、臨床心理士などが一丸となってアプローチする「チーム医療」が、治療実績のある大病院を中心に組まれています。

飛躍的に進化する薬物療法と、注目の先端医療

再発・転移が起きた場合の薬物療法は、20年前と比べて使用できるお薬が数倍に増えています(現在は細胞障害薬、分子標的薬、免疫療法など多種多様)。 特に甲状腺がんや唾液腺がんでは、遺伝子変異(BRAFやRET、NTRK、HER2など)に合わせた個別化医療が実用化されています。 さらに、従来の放射線治療とは全く異なるアプローチを持つ、以下のような「新しい物理的・化学的治療」も登場しています。
  • 光免疫療法(頭頸部アルミノックス治療): がん細胞だけに結合する薬剤を点滴し、そこへ非熱性の赤色レーザー(近赤外線)を当てることで、がん細胞だけを直接ピンポイントで破壊する画期的な治療です。切除不能な局所進行・局所再発の頭頸部がんが対象で、遠隔転移(肺転移など)がないことが条件です。保険適用されていますが、治療を行える医師や認定施設は厳格に限定されています。
  • ホウ素中性子捕捉療法(BNCT): がん細胞にホウ素を取り込ませた後、中性子を照射することで、がん細胞の内部から強力なエネルギー(アルファ線)を発生させて破壊します。周囲の正常な細胞へのダメージを最小限に抑えられるのがメリットですが、こちらも施設や適応患者が限定されています。
これらの新治療や治験(臨床試験)は、患者さんにとって大きな希望となり得ますが、治療を受けられる細かな条件が厳しく決められています。インターネット上の誇大広告や、高額で怪しい自由診療(訴訟や死亡例もある未規制のクリニック)に惑わされないよう注意し、信頼できる「がん情報サービス」などのサイトを活用しながら、主治医や専門医に相談、あるいはセカンドオピニオンを利用して正しい情報を集めることが大切です。
本記事は動画の要点をまとめたものです。動画本編では、岡野先生による頭頸部のわかりやすい解剖図を用いた解説や、各薬物療法の具体的な臨床データ、さらに「光免疫療法」によって実際に腫瘍が綺麗に消失していく経過写真なども詳しく紹介されています。また、後半のQ&Aコーナーでは「欠けた歯による慢性的刺激が発がん原因になるか?」といった身近な疑問にも丁寧に回答がなされています。ご自身やご家族のこれからの治療や予防を考えるために、ぜひ動画本編をご視聴ください。
動画 頭頸部がん

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