2025年11月28日より、「がんプラス」の事業は、株式会社QLifeから、同じエムスリーグループである3Hメディソリューション株式会社に譲渡され、「がんプラス」に掲載されていた一部のコンテンツは3H社が運営するがん情報サイト「オンコロ」に、引き継がれます。
「オンコロ」では、臨床試験情報や専門医による解説など、質の高い情報が提供されております。今後はこちらをご活用いただければ幸いです。
文:がん+編集部
膵臓がんの新治療法開発、超微小カプセルでがん細胞を「兵糧攻め」
九州大学は2025年11月5日、川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンターなどとの共同研究により、膵臓がんの治療に向けた超微小カプセル「ナノマシン」の開発に成功したと発表しました。
この新技術では、体内の免疫細胞から攻撃されにくい特殊なコーティング技術を開発し、従来の約10倍となる100時間以上の超長期間、体内で薬剤を働かせ続けることを実現しました。このナノマシンには、がん細胞が生きるために必要な栄養源であるL-アスパラギンを分解する酵素が入っており、がん細胞をいわば「兵糧攻め」によって攻撃する仕組みです。
研究グループは、このナノマシンを評価するためにモデル動物による実験を実施。難治性乳がんと膵臓がんに対する治療効果を確認しました。膵臓がんでは厚い線維質が薬剤の侵入を阻むことが問題となりますが、この治療法によりそれらが破壊されることが明らかになりました。また、免疫チェックポイント阻害剤との相乗効果で、より高い治療効果と長期生存を達成しました。
参考リンク
九州大学 研究成果
転移・再発トリプルネガティブ乳がんに対する「トロデルビ」、病勢進行や死亡のリスクを38%低減
ギリアド・サイエンシズ株式会社は2025年11月6日、抗体薬物複合体のサシツズマブ ゴビテカン(製品名:トロデルビ(R)、以下、トロデルビ」に関する臨床試験結果を発表しました。転移・再発トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の一次治療で、化学療法と比較して病勢進行や死亡のリスクを38%低減したとする第3相ASCENT-03試験の結果を発表しました。
TNBCは最も悪性度が高いタイプの乳がんで、乳がん全体の約15%を占めます。転移・再発TNBCの5年生存率は12%と極めて予後不良で、治療選択肢も限られているのが現状です。
ASCENT-03試験は、PD-1/PD-L1阻害剤による治療が適応とならない転移・再発TNBC患者さん558人を対象に実施されました。トロデルビ投与群では無増悪生存期間の中央値が9.7か月となり、化学療法群の6.9か月と比較して有意な改善を示しました。また、奏効期間もトロデルビ投与群で12.2か月、化学療法群で7.2か月と大幅な延長が確認されました。
同試験の治験責任医師は、「TNBCが定義されて以来の20年間でこの患者集団にとって重要な治療の進歩であり、新たな標準治療となる可能性があります」と述べています。
参考リンク
ギリアド・サイエンシズ株式会社 プレスリリース
肺がん再発リスク、超高感度リキッドバイオプシー血液検査で高精度判定
東京大学は2025年11月8日、英国UCLがん研究所などとの国際共同研究により、肺がんの術後再発リスク予測における超高感度リキッドバイオプシーの有用性を明らかにしたと発表しました。
リキッドバイオプシーとは、がん組織を直接採取するのではなく、血液からがん細胞が放出したDNAの断片などを検出してがんの状態を調べる検査法です。
この研究では、英国TRACERx臨床試験に参加した非小細胞肺がん患者さん431人から採取された2,994の血液検体を、従来の検査法では検出困難な微量の血液中腫瘍由来DNA(ctDNA)まで検出可能な超高感度検査法を使用し解析しました。
その結果、極めて微量のctDNAが検出された場合でも肺がんの再発リスクが高いことが確認されました。また、術後のctDNA検出量が多い患者さんは1年以内の再発確率が高く、特に遠隔転移が多いことがわかりました。一方、早期にctDNAが検出されなかった患者さんでその後再発した場合は、肺やその近くの臓器での再発が多いことも明らかになりました。
この成果により、肺がん手術後の患者さんの再発リスクをより正確に予測し、リスクに応じた適切な治療を提供できるようになることが期待されます。
参考リンク
東京大学医学部附属病院 プレスリリース