目次

第2回 がん×痛み

はじめに

第2回目のテーマは「がん×痛み」です。
このテーマでリサーチをしようとした背景には、私がある緩和ケア(緩和医療)についての講演会に参加した際に「痛みを我慢しないでほしい」というメッセージを受けたことがあります。
痛みを抑えるための医療用麻薬への偏見や緩和ケアについての誤解が今も多く存在していると医師は話をしていました。
みなさんから声を集めることで、実情を把握し、課題は何か?どうすればよいのか?を考えていける場にできればよいなと思います。

それではリサーチ結果をご覧ください

調査概要

期間:2015年5月8日〜2015年6月8日
対象者:生活向上WEB会員
回答数:1781名
性別:男性788名 女性993名
平均年齢:46.8歳
生活向上WEB会員に対して「オンコロリサーチがんと痛みついて」の意識調査として実施したアンケート結果をまとめたものです。

 

このアンケートはご家族・親戚ががんを体験された方に多く回答いただいております

Q現在、または過去にがんと診断された方はいますか

リサーチVOL2_グラフ1

2人に1人ががんになるという時代を象徴するように、がんに関わったことのある方が多くいました。
ご本人が診断されたという方は約5%と第1回よりも若干割合は少なかったです。
また今回の調査ではがん体験者の方の詳しい症状については聞いておりません。

家族・親戚で「わからない」を除く76%が「痛みがありそうだった」と回答しました

Qがんによる痛みはありましたか?(家族・親戚の方は痛みはありそうでしたか?)

リサーチVOL2_グラフ2

 

この質問は少し漠然とした質問だったかもしれません。
今回の調査では詳しい病態を聞いていないためこの割合は一般的なデータとは違う可能性があります。
本人ががんと診断された事のある方は後の質問で早期のがんの方が多いことがわかっております。がんの痛みは早期と終末期では痛みの度合いが大きく違ってきます。そのため、痛みを感じていない方が多くいらっしゃった可能性があります。

それを考慮しても家族・親戚群では半数以上で痛みがあり、4人に1人は激しい痛みがあったと回答しています。そして、本人以上に家族・親戚群は「痛みがある」と回答した方が多くいました。大切な人が苦しんでいるのを見ることはとても辛い事です。本人へのケアに加えてその家族等にもケアが必要であるといえるのではないでしょうか?

 

ご家族の90%はがんによる痛みはQOLに影響していると回答しました

Qがんによる痛みはQOL(生活の質)に影響をあたえていると思いますか?

リサーチVOL2_グラフ3

「家族・親戚」では「本人」以上にQOLへ影響をあたえていると思っている割合が高かったです。
痛みは本人にしかわからず、辛そうな姿を見る家族は、より心配してしまうのかもしれません。
前項と同じく、本人だけでなく”家族を含めたケア”が大切であると思います。

 

痛みを我慢する方が過半数を超えました

Qあなたは痛みが辛い時に我慢をしますか?

リサーチVOL2_グラフ4
この質問は日本人が欧米諸国に比べて我慢をする民族であるという話を聞いたことがきっかけで入れたものになります。私個人も「我慢しろ」と言われて育てられた記憶があります。

結果は我慢をする方のほうが回答数が若干多く、過半数を超えました。痛みがある事を表現するのは何故か恥ずかしく思えたりしますよね。
・・・でも、痛みを我慢する事は本当に必要な事だと思いますか?

因みに、性別や年齢で比較をしてみたのですが今回の調査ではこれといった傾向はみられませんでした。
年配の男性は頑固で痛みをじっと我慢するというイメージがあったのですが、実は平均してみてみるとそうでもないようです。

 

緩和ケアを知っている方と知らない方の割合は半々でした

Qあなたは緩和ケアがどういったものかご存知ですか?

全体

リサーチVOL2_グラフ5

がんと関わりが深い方ほど緩和ケアを知っているという傾向がありました

 Qあなたは緩和ケアがどういったものかご存知ですか?

カテゴリー別

リサーチVOL2_グラフ6

緩和ケアについて「よく知っている」という方は全体の1割と少なく、残念ながら現状では十分な認知がされていない事が分かりました。なんとなく知っている方を含めますと半数の方が知っているという事になりますが、その中には緩和ケアについて少し違う解釈をされている方が多くいらっしゃる事が後の質問でわかりました。よくある勘違いとして、

”緩和ケア”

治療法がない終末期(ターミナルケア)にだけ行うものではなく、診断された時から実施し、
痛みのケアだけでなく、不安、恐怖などの精神的ケアや痛み以外の体の症状にも対応し、
QOL(生活の質)を向上させて自分らしく生活を送れるようにするためのものです。

緩和ケアに関する詳しい情報はこちらをご覧いただくと理解が深まると思います。
日本緩和医療学会が運営する「緩和ケア.net」

 

医療用麻薬に対して「効果が高い」が全ての群でトップでした。しかし依存性・副作用があると考えている方も多くいました

Q医療用麻薬についてあなたのイメージに合うものを教えてください

本人

リサーチVOL2_グラフ7

 

家族・親戚

リサーチVOL2_グラフ8

 

該当なし

リサーチVOL2_グラフ9
この質問は、がんによる強い痛みを抑えるのに使用される医療用麻薬について誤解をされやすいという背景があり、その実態を知る意味で行いました。

順位は若干違うものの上位には「痛みを抑える効果が高い」「副作用が強い」「依存性がある」が挙がりました。

この結果からは、痛みを抑えることが出来るがそのかわりに危険な部分もある薬というイメージを持っている方が多いということがわかります。

 

全体として医療用麻薬の使用に抵抗ある方は36%でした

Q医療用麻薬の使用に抵抗はありますか?

全体

リサーチVOL2_グラフ10

 緩和ケアを良く知っている方では医療用麻薬の使用に対する抵抗が低くなりました

Q医療用麻薬の使用に抵抗はありますか?

カテゴリー別

リサーチVOL2_グラフ11

全体で36%が使用に抵抗があるという結果から医療用麻薬に対する懸念は今もまだ多く存在していることがわかりました。

カテゴリー別では緩和ケアについてよく知っている方は医療用麻薬への抵抗が少なるという結果となりました。

医療用麻薬は名前の通り医療用のもので、世界中で広く使用されており、日本でもしっかりと国から認められたものです。適正使用すれば依存性や中毒もないですし、寿命を縮める事もありません。副作用は、便秘、吐き気、眠気が知られていますがいずれも対処ができるものです。

”大切なことは適正に使用することです”

医療用麻薬についても、より理解してもらうために、正しく情報を伝えていく必要があるかもしれません。

 

麻薬という名前自体に良くないイメージを持っているという方の意見が目立ちました

Q医療用麻薬の使用に抵抗のある方の意見

リサーチVOL2_グラフ12

この質問は医療用麻薬の使用に抵抗のある理由をフリーワードで回答いただいたものです。そのなかで似たような意見をまとめた結果になります。

医療用麻薬のイメージを聞いた質問の結果同様に副作用に関することが1番の理由のようです。また、麻薬という名前自体に良くないイメージを持っていたりなんとなく恐いという意見が多くありました。知らないものを恐れるというのは人間の性質でもありますので、どういったものなのか”知る”ことはやはり大切だと思います。

 

医療用麻薬の使用に関する意見の抜粋

 

抵抗ありの方

「モルヒネは、使い方を間違えなければ、痛みをケアできそうだが、やはりキツい薬というイメージがある。」

「以前使っていた知人が、痛みはなくなるけど意識が朦朧として、会話もまともに出来なくなってしまった。自分が自分でなくなってしまうようでこわい」

 

抵抗なしの方

「親族・友人などに癌患者がいるのですが、なぜか痛みに対して担当医師の対処が消極的なのが疑問です。今は医療用モルヒネなどは最適な使用法が確立されていると聞いています。抗癌剤などの使用の際、体力が勝負と聞かされていたのですが、痛みで体力の消耗が激しい事も分かっているのに、今だにこんな医者がいるのが理解出来ません。」

「医療用であり、快楽のために使用するものではないということと、壮絶な痛みを感じ、生きることを辛いと思ってしまうのであれば、前向きな思いで使用を選択したいと思うからです。」

 

これまでの経験で医療用麻薬に対してネガティブなイメージを持っている方が少なからずいましたが、痛みの辛さを取り除くことの大切さを理解されている意見も多かったです。

医療用麻薬の使用に当たっては医師からしっかりと説明を求める事で理解が増すと思います。

下記厚生労働省のページのリンクよりがんの痛みの治療についての説明がありますので詳しく知りたい方はご確認ください。

医療用麻薬適正使用ガイダンス~がん疼痛治療における医療用麻薬の使用と管理のガイダンス~

 

がんによる痛みについてのあなたの『声』を是非お聞かせください。※あなたや家族の体験談、治療法、制度、医療機関についてなど、ご自由にお書きください。

776名という本当にたくさんの方に回答を頂きました。頂いたご意見・体験談など皆さんの「声」は全てしっかりと拝見させて頂きました。

辛い思いをされてきた方

これからの医療がより良くなる事を願っている方

今後に不安を抱えている方

情報を求めている方

など

どのような思いで記載してくれたのかを考えると本当に胸が詰まる思いです。

この「声」については全員で考えていかなければならない事だと思います。

この場では全ての方の「声」を紹介することが出来ないのですが、別の方法でみなさんに伝えていく予定です。決してみなさんの「声」を無駄にするようなことはしません。

本当にありがとうございました。

 

本人ががんの方の声

本人にしか解らないガンの苦痛は他人に理解し難いもので、第三者は見ているだけでいたたまれなくなり、どうにかならないものかと医療機関や行政に相談しに行きます。まだ、古い風習が残っていて家族にガンと言えなくて悩んでいる当事者もいます。 (40代女性)

がん自体は痛みがなかったが、治療(手術と化学療法)の後遺症的な痛みが継続している。こちらもそれなりに深刻なことなのので、対応してくれる窓口がほしいがいまだに見つからない。(50代女性)

ホスピスでのボランティアを7年間行っています。患者様にはしっかりと病気と向き合えている方もいれば、そうでない方もいらっしゃいます。ガンとゆう病気は体の痛みとともに心にも痛みを感じる病だと思います。病気になってしまったら痛みを感じることはしょうがない事ですが、「痛み」に対する不安を少しでも取り除けるのであれば現代の医療に頼るべきだと思います。現代の医療で改善できないかもしれない心の痛みには、周りのサポート、理解、優れた代替補完療法を取り入れるなど。私自身も子宮がんを経験しました、今はたくさんのサポート体制や、優れた医療、補完療法、ホスピス緩和ケアがあると思いますが、それらを知っている人は多くはないのではと思います。病気になってからそれらを知るのではなく、日本人も欧米のように、統合医療、ホスピス緩和ケアなどを知っていくべきだと、これからの超高齢化社会に向けて必要かと思います。(40代女性)

母がかなりきつい痛みを経験していた。我慢することは、非常に危険なことであることを学んだ。私自身は、痛みに敏感なので、少しでも痛いと、即、訴える。(50代女性)

家族・親戚・友人の体験談や要望

妻を癌で亡くした。ホスピスに入院させたかったが、できなかった。施設の整備充実を望む。(70代男性)

モルヒネを使用した親族が生前言っていた事。子供の顔を見てたい、しかし痛みが強い、モルヒネ投与すれば寝てしまう、寝たくない。医療関係者全員へのお願いです。眠らせて痛みを分からなくさせる事しかできないのですか。起きていてこそ生きている意味があるんです。眠くならない痛み止めを作ってください。(50代女性)

祖父や叔母が癌で闘病していた頃(二十数年前)は医療用麻薬の使用は一般的ではなく、医師でさえ使用には偏見を持っていた。祖父も叔母も、痛みに耐える事 で余計に体力を消耗させていたように思える。医療用麻薬の使用について適切な知識・情報が全ての人に広まり、誤解や偏見に晒される事なく安全に使用できる 世の中になってもらいたい(40代女性)

もう20年前ほどになりますが親戚の女性が末期のがんで30代で亡くなりました。入院した頃はすでに末期で、家族に迷惑をかけたくないからと痛みを我慢し ていたそうです。昔は我慢することは当たり前の世の中だったように思います。痛みなどを我慢せずに、またがんの治療にはお金がかかるので医療費を気にせず に受診できるような制度ができればいいと思います。(20代女性)

母がものすごく苦しみました。痛みのコントロールがうまくいきませんでした。大きな病院ですが、手術後に夜勤の看護師からモルヒネを渡してもらえず苦しみました。さらにその看護師は、ジャンキーを見る様にベッドにいる母を見たそうです。それ以来その科に入院することをひどく恐れるようになりました。また、モルヒネを使っているのにも関わらず、すごく腹部を痛がっているのに放置されました。後日、内科医に診てもらうとイレウスで、あやうく人工肛門になるところでした。在宅介護中には、突然動かなくなってしまったと訪問介護の医師にあわてて連絡しましたが、医師からは今日は行けないので様子を見るように言われました。結局、私が救急車を呼んで病院に向かいました。10年程前の話ですが、私が全てみていましたので、がんという病気以上に、安心して頼れる場所であるべき所がそうで無かったことに恐ろしさを感じています。(40代女性)

体験談は友達ですが身体の痛みも辛いけどメンタルなケアが少ないと不安から心身の疲れ精神面が本当に辛いそうです。万が一 自分が癌になったらメンタルケアに力のある病院先生を探します。 (40代女性)

父や祖父母がガンになり、痛いのに我慢しているのを見て辛かった。痛いと言わないとどれくらい痛いのか想像がつかず優しく出来てないことがあったと後悔している(30代女性)

ご意見・ご要望

みんなあまりにも痛みを我慢しすぎる。がん以外の病気でも疼痛ケアは大切なのに…。それと、薬が高価だったり適応外たりしてなかなか使えない。自分自身も量をもっと増やした方がいいと言われているが、今もう財政的にギリギリなので無理。お金のことを気にせず治療を受けたい。病気になると収入が減る上に医療費もかかるので大変です。(20代女性)

自分や親に対しては、苦痛を伴う延命は不要、ぜひ緩和ケアを受けたい。しかし、子に対しては、より長く生きてもらいたい思いと、苦痛を和らげてやりたい思いとの、激しい葛藤がある。(50代男性)

とにかく良いイメージは皆無。正直、ガンになったら治療はしたくないと思う位です。治療して本当に良かったなんて、ほんの一握りしかいないと思っています。だから、その思考を覆す程の治療の素晴らしさを、もっと情報を提供・発信して欲しい。(30代女性)

体験談や治療法など、もっとオープンになればと思います。(40代男性)

 

■終わりに

「痛みを我慢しないでほしい」そんな先生の言葉をきっかけに行った今回の「がん×痛み」のリサーチですが、いかがでしたでしょうか?

結果を見る限り、

①実際に痛みを我慢する方は多い

②痛みのケアについての認知度はまだ低い

③痛みを取り除くのに効果的な医療用麻薬に対しては誤解や不安がある

など、問題が多く存在していることがわかりました。

緩和ケアを受ける側としては正しい情報を持ち、緩和ケアチームや地域連携があるなど体制の充実した施設で治療を行う事が大切と言えそうです。とはいえ、医療費の問題、医師の緩和ケアの認識の問題、人員不足問題など、国や医療提供側にも課題はあります。十分なケアを受けるためにはまだ問題がありそうです。

それらの問題解決のために、現在国では緩和ケアの推進を行っています。病院では緩和ケア体制の整備を、地域としては、かかりつけ医、介護士、ソーシャルワーカーを含めた包括的なシステムの構築など様々な取り組みを行っております。がんに携わる医療者はより良い医療のために大変な努力をしています。

このリサーチで得られた声は、現在の皆さんの意見を反映させているものであります。この結果が緩和ケアについて知るきっかけになったり、課題について考えるきっかけになれば幸いです。そして、痛みがなく、がんによる苦しみが減ることを願います。

 

最後に、アンケートに答えてくださった全ての方に感謝をしたいです。

皆さんのご協力によりこのオンコロリサーチは完成しました。本当にありがとうございました。

 

担当 HAMA

 


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