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■はじめに
あなたはがんの免疫療法についてご存知ですか? 現在、画期的な新薬が発売されたこともあり、各種メディアでも紹介されるなど注目を集めています。インターネットでも免疫療法を検索すると数多くの免疫療法が魅力的な表現で掲載されています。 実際に「第3回のオンコロリサーチがん×治療」のなかで免疫療法は「がんになったら受けたい治療」の第2位という結果がでています。(過去リサーチ結果はコチラ) そこで今回は皆さんががんの免疫療法についてどのようなイメージを持っているのかを調査することにしました。■調査概要
期間:2016年3月11日〜2016年4月10日 対象者:「生活向上WEB会員」および「オンコロ」での協力者 総回答数:1.784名 実施方法:Webアンケート。①生活向上WEB会員に対して【オンコロリサーチ】がんと対策ついての意識調査として実施。②がん情報サイト「オンコロ」でのご協力。 注:生活向上Web→オンコロ運営会社(株)クリニカル・トライアルが運営するWebサイト(コチラ)■回答者構成比
男女比:802名 女性:907名 平均年齢:50.2歳 がん体験者:211名 *上記、回答者のみの数字がん体験者の割合
あなたの周囲の方でがんの診断を受けた事のある方はいますか。(複数選択可)
■アンケート結果
Qあなたはがんの免疫療法についてご存知ですか。
「よく知っている」「やや知っている」を合わせて約20%でした。がんの免疫療法を知らない人が多くいました。Qがんの免疫療法には保険適応されているものと保険適応外(自費)のものがある事を知っていますか。
保険適応の有無、(特に保険適応がある免疫療法の存在)を知らない人が多くいました。Qがんの免疫療法で保険適応外(自費)のものがありますが、それは何故だと思いますか。 自身の考えに当てはまるものを全て選んでください。(複数選択可)
2人に1人が最新治療であることが理由で保険適応外であると考えていました。また高価な治療であるためと考える人も38.7%と上位にあがりました。Qあなたやあなたの周りの方で保険適応外(自費)の免疫療法を受けた方はいますか。(複数選択可)
保険適応外(自費)の免疫療法を受けた事がある人はわずか1%でした。 なおがん体験者211人中で保険適応外(自費)の免疫療法をうけた人は13人(6.2%)でした。Q保険適応外(自費)の免疫療法を受けた、または受けるか迷った方はその理由について教えてください。
受けた人で多かった意見としては「他に治療法がなかった」、「可能性にかけたかった」、「効果が期待できそうだった」 また迷ってやめた人の多くは「高額だったため」という理由でした。保険適応外(自費)の免疫療法について質問します。 Q「効果」についてどう思いますか。
※わからないを除いた場合 わからないと回答した方を除くとほとんどの方(92.5%)が何かしらの効果があると考えていました。Q「安全性」についてどう思いますか。
※わからないを除いた場合 わからないと回答した方を除くと「安全性が高い群」27.5%、「安全性が低い群」20.8%となり、安全性が高いと考えている人の方が多くいることが分かりました。Q「費用」についてどう思いますか。(種類にもよりますが1クール200万円程)
ほとんどの人が高いと感じていました。Q自身ががんになった場合、保険適応外(自費)の免疫療法を受けたいと思いますか。
「受けたくない群」が「受けたい群」を上回りましたが、受けたいと思う人は18%に上ることがわかりました。Q保険適応外(自費)の免疫療法を受けたいかどうかについて、そう思う理由を教えてください。
・受けたいと思っている人で多かった意見 「少しでも治る可能性があるのなら」、「抗がん剤治療は辛いから(とよく聞くから)」 ・受けたくないと思っている人で多かった意見 「お金がないから」「家族に迷惑がかかるから」「エビデンスが無いから」 ・わからないと回答した人で多かった意見 「高額なので迷う」「効果があるかわからないので迷う」Q免疫チェックポイント阻害薬という薬をご存知ですか。 (日本で発売されてる薬剤はオプジーボ(ニボルマブ)、ヤーボイ(イピリムマブ)があります。)
Q「がんの免疫療法」についての体験談やご意見など、あなたの声を是非お聞かせください。 (抜粋したものを掲載しております)
癌難民という言葉があります。日々進歩していく医学、様々な治療法、それを選べる時代とは、つまり生きるか死ぬか治るか治らないかを選択するということです。費用によって選択肢が変わるのはつらいですね。いいと言われる治療法なら誰もが受けられたらいいのにと思います。(40代女性 両親ががん体験者) 癌についてインターネット検索すると、免疫療法のバナー広告が嫌と言うほど送られてくるので、かえって胡散臭さを感じる。(40代女性 がん体験者) 実際、どのくらい臨床試験などをやって数値化されているのか知りたいですね。(50代男性 がん体験者) テレビなどで取り上げられていると思うが、その科学的根拠について報道されることはほとんどないのでは。私が知らないだけかもしれないが、科学的根拠が示されなければ、詐欺などの犯罪の温床にもなりかねないと思っている。(がん体験者)■結果のまとめ
今回のリサーチ結果から「全体の傾向」として以下のことがみてとれました。 ・がんの免疫療法について正しい知識を持っている人は少ない。 ・自費のがんの免疫療法に期待感を持っている人は多い。 ・治療効果が明確でなくても可能性に賭けたいと思う人は多い。 ・費用はほとんどの人が高いと感じている。 ・免疫チェックポイント阻害薬の認知度はかなり低い。■今回の結果を受けて
いかがでしたでしょうか? 全ての回答に目を通したうえで私が感じた事を簡潔に述べさせていただきます。1.「命には代えられない」「お金でどうにかなるなら」という考え方の強さ
「生きたい」・「生きていてほしい」という思いは強いです。自分の家族が患者の場合は本人以上にその考えは強くなるように思います。2.「効果がわからないに期待する」「高価なものは良いだろう」という考え
治る可能性の高い治療を受けたいと思う人は多くまた、効果がないものを受けたい人はいないと思います。では「効果がわからない治療」はどうでしょうか。生死が関わっている場合その可能性に賭ける人は多い気がします。また、高額な治療というだけで効果を期待する人も多いようです。3.知ってほしい事「科学的根拠(エビデンス)のある治療」とは
それは臨床試験(治験)を行い、その有用性が認められた治療であると私は思います。なお日本の場合はその治療が保険診療として認められることになっています。最近保険診療が認められた免疫療法の1種といわれる「免疫チェックポイント阻害薬」は科学的根拠のあるがん治療のできる薬剤といえます。4.これまでは日本の臨床試験で認められたがんの免疫療法はなかった。
1970年代より数多くの免疫療法の臨床試験が行われてきましたが、その有用性が認められることはほとんどありませんでした。(日本では免疫チェックポイント阻害薬が初。米国では前立腺がんに対する樹状細胞ワクチンが認可されたことがあります。) 最新の治療とは言えない効果が認められなかった免疫療法も存在しているのです。■終わりに
今回のリサーチ結果からも「がんの免疫療法」のイメージは良いと言えそうですが、それゆえの危険性が存在していそうです。 現在、がん治療の専門医の先生らが、横行する保険診療外のがん免疫療法への警鐘を鳴らしています。藁にもすがる思いの患者さんを食い物にするがん免疫療法を勧めるクリニックが存在するからです。一方で本当に効果が期待できることが証明された治療が出てきていることは事実です。全ての方ではないですが、助かる命は確実に増えています。 最終的に治療を選択するのは患者さんです。情報の氾濫により何が正しいか判断に迷うことがあると思います。そんなときは適切なアドバイスをくれる人は誰なのかを思い返してみてはいかがでしょうか?アンケート作成・記事担当:HAMA