2018年2月、がん情報サイト「オンコロ」ではがん患者さん及び患者さんご家族を対象とした、がん患者の情報収集に関する実態調査を実施しました。さまざまな種類のがんの患者さん及びご家族にご協力いただいた結果の一部を発表します。
背景
情報収集は、がん患者の重要な課題の一つであると言え、医療者からの情報提供の他、インターネットや患者交流など様々な手段がある。しかしながら、罹患者数が少ないほど、進行期ほど情報収集は難しいと予想される。しかしながら、がんサバイバーシップにおいて、予想と実態が乖離することは珍しくない。そこで、がん患者に対して情報収集に関する大規模実態調査を行った。
調査概要
目的:がん患者およびその家族のがん情報のアクセスに関する実態調査
手法:インターネット定量調査
実施期間:2018年2月1日〜2月28日
研究手法:1,385名の回答者のうち576名のがん患者のみに絞り、年間罹患数の多い部位のがん種(胃、大腸、肺、乳房、前立腺;本研究上、5大がんと定義)とそれ以外のがん、あるいはステージ1〜3とステージ4で集計、その比較をカイ2乗検定にて検討した。
調査の目的
・がん患者さんやご家族がこれまでの体験から、がんの治療環境についてどのように感じているかを知ること。
・がんの種類によって治療環境について差があるのかを調べること。
・上記について調査結果を公開することで、がん患者さんやご家族の声を広く社会へ届けること。
調査結果概要
・罹患数が少ないがん種の患者は、5大がん患者と比べて、がん情報を収集しづらいと感じていた。
・ステージ4患者は、ステージ1~3の患者に比べて、情報を収集しづらいと感じていることはなかったが、治療前の医師からの情報提供は不十分と感じており、治療環境は良くないと感じている傾向がみられた。
・医療機関の専門性と規模によって、治験情報へのアクセスに差がある傾向がみられた。
結果
A)ほとんどの項目において、5大がんと5大がん以外、ステージ1〜3とステージ4との差は認められなかった。
B)ステージごとにほぼ均等な回答を得た。なお、95名(16.5%)はステージが存在しない、わからないと回答した。
C-1, 2)37種のがん種から回答を得たが、回答数と罹患者数は相関はなかった。
2.がん患者の情報に対する認識
5大がんと5大がん以外においては差が認められなかったが、ステージ1~3と比べ、ステージ4において治療前の医師の説明が不十分と感じていた。
*p=0.178 **p=0.0059
5大がん以外ではがん情報を入手するのが難しいと感じている一方、ステージ1〜3とステージ4には差が認められなかった。
*p<0.0001 **p=0.496
5大がん以外では患者同士の交流が活発化されていないと感じている一方、ステージ1〜3とステージ4には差が認められなかった。
*p<0.0001 **p=0.649
3.がん治療環境に対する認識
5大がん以外では治療環境が良くないと感じており、ステージ4においてもその傾向が見られる。
*p<0.0001 **p=0.056
4.医療機関の治験情報に関する実態
がんセンター、大学病院、公立病院、医院/クリニックの順で、治験情報の提供は減少する傾向がみられた。
*p=0.052 **p=0.057 ***p=0.403
なお、5大がんと5大がん以外、ステージ1〜3とステージ4において、差はみとめられない。(データ掲示せず)
考察
・罹患者数が少ないがん種の患者は情報を取得しづらいと感じている。 ・進行がん患者は情報を取得し難いと感じていなかったが、治療前の医師からの情報提供は不十分と感じており、さらに治療環境は良くないと感じている傾向がみられた。 ・医療機関によって、治験情報へのアクセスに差が認められたが、罹患者数やステージによる差はなかった。 ・本結果は、今回実施した1,385名の調査の一部であり、取得したデータは様々な解析が可能になっているため、様々な角度から解析を進め、新たな情報取得の実態を見いだしいていきたい。(共同研究者募集中)
おわりに
この結果は7月19日(木)から21日(土)に開催された日本臨床腫瘍学会学術総会のポスター発表(ダウンロード)にて公開されました。また、がん情報サイト「オンコロ」を運営する株式会社クロエのプレスリリースからもご確認いただけます。