肛門がん患者さんへのインタビューを行ってわかったこと


  • [公開日]2021.02.25
  • [最終更新日]2021.02.25

2020年10月、オンコロにて肛門がん患者さんを対象としたインタビュー調査を実施しました。計6名の方にご協力を頂きました。年齢は30~50歳ですべて女性でした。ご協力、ありがとうございました。

肛門がんは希少がんの一種で患者数がとても少ないがんです。それゆえに、情報も少ない状況にあります。今回のインタビューで得られた患者さんたちの実際の声をお伝えすることで、肛門がんに関する情報発信の一助になればと考え、本記事を公開することにしました。

以下に肛門がん患者さん6名のインタビューの発言の中から明らかになった課題や問題点についてピックアップをしました。

確定診断までのハードルがあり治療開始が遅れる

  • 希少がんであるために、病名がわかるまでに長い経緯を辿っている。複数のクリニックや病院を回った後に、ようやく病名の確定に至ったというケースもあった。確定診断が遅れることで治療の開始が遅れてしまうことが問題である。
  • 他の多くの疾患同様、患者さんには肛門がんになる原因やきっかけは思いあたらず、健康にそれまでの人生を送ってきた中で突然の不調であり、初期症状が痔に非常に似ていることからしばらく通院せず過ごしてしまったり、通院しても医療機関にとっても経験が少ない希少性の高いがんであるため、すぐに肛門がんの診断が下せないケースもいくつか見られた。

家族や周囲へ伝えにくい

  • 肛門がんのように下半身のがんの場合、「家族にも話せなかった」「職場の人から誤解されるのではないか」との声があった。周囲に伝えにくく、一人で悩みを抱えてしまいがちながんと言える。

医療者とのコミュニケーションの難しさがある

  • 医師の症例が他疾患と比べ少なくなるため、患者の困りごとへの理解が希薄になってしまう。例えば、どこがどう痛むか、何が大変か等、言葉で説明をしても理解されにくく、そのため患者さんの不満へと繋がってしまう。

背景情報による治療選択時の葛藤や課題がある

  • 手術で腫瘍を取り除く場合、病状によっては人工肛門(ストーマ)になることで今後の生活やイベントに大きく影響する場合もあり、苦渋の決断が必要となっていた(特に出産未経験、未婚など)。そのため、医師から手術を勧められていても化学放射線療法を選択するケースもあった。
  • 一方で、化学放射線療法を使用して酷い副作用を経験した人は、二度と同じ思いをしたくないという理由で手術を選択する傾向が見られた。
  • 患者のステージや病状によっては、化学放射線療法が標準治療で効果がある場合にも治療選択肢を自ら減らしてしまうことに繋がるため、診断時にすぐに副作用に関する詳しい情報開示および副作用ケアに関する情報提供ができる環境づくりへの課題が示唆された。

情報が不足しており不安になる

  • ようやく病名がわかっても、ネットにも周囲にも同じ病名の人がほぼいないことから、情報は非常に少ない。患者が求めている情報は、「どんな治療が行われているのか」「同じ病気の人がどんな日常生活を送っているのか」であるが、情報を得られておらず不安になる傾向がある。まして、未婚者で今後出産の可能性がある方への情報は皆無である。

情報収集と情報発信のハードル

  • 自分の病名を公表したくない気持ちがあるため、患者会への参加やブログでの情報発信には消極的である。しかし自分と同じような症状や年代の人が、「どんな治療をしているのか」「どんな日常生活を送っているのか」については知りたい気持ちがあるため、他の人が書いたブログを見ることで情報を得ている。
  • 一方、自身が求める情報が少なく不安な思いをしてきたため、「告知された人には大丈夫と言ってあげたい」「誰かに聞かれれば自分の経験をぜひ話したい」との発言もあり、情報を発信したいという気持ちと肛門がんであることの公表のしにくさとの葛藤が見られた。

治療後のケアが不足している

  • やっとの思いで治療を終えても、再発を繰り返す人や痛みが続く人が多く、現在も“座る”等の日常生活の中で辛い状況が続いている方がいる。
  • また、若年層の患者さんにおいて更年期障害の副作用が自身ではなかなか気づくことができなかったことや、病院ではアフターケアがなかった経験より、「治療自体よりも、副作用を含め治療後が大変だと思う」という意見もあった。治療後のアフターケアおよび情報発信が不足している様子が見られた。

インタビューを実施しての感想

今回のインタビューにより、肛門がん患者さんには多くの悩みが存在することが改めてわかりました。特に「情報不足」はとても大きな問題であると感じました。その背景には患者数がそもそも少ないこともありますが、肛門がんという疾患が公表しにくいということもありそうです。
そのような中でも、ブログで情報発信をされている患者さんがいることもわかりました。そのブログにより、とても多くの方が励まされている現実も拝見しました。素晴らしい取り組みであると思います。

オンコロでもまだまだ肛門がんの情報発信は少ない状況ではありますが、このようなインタビューの実施や情報公開の取り組み、新薬開発の情報など、少しでも貢献をしていければと考えております。

最後に、今回このインタビューにご協力いただいた6名の方には改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。

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