難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病 CAR-T療法CTL19 米国にて優先審査品目指定


  • [公開日]2017.04.17
  • [最終更新日]2019.02.21

2017年3月29日、ノバルティスは、米国食品医薬品局(FDA)が、「再発・難治性(r/r)B 細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児および若年成人患者」を対象とする治験中のキメラ抗原受容体 T 細胞(CAR-T)療法である CTL019(tisagenlecleucel-T)が、優先審査品目に指定されたことを発表した。優先審査品目に指定されたことで、FDAによる審査期間の短縮が期待される。

CAR-T 細胞療法は、新しい免疫療法の一種であり、個々の患者さんに合わせて製造されるテーラーメード医療となる。

患者の血液から免疫細胞の一種であるT細胞を採取し、がん細胞および特定の抗原を発現する他のB細胞を攻撃するよう遺伝子がコード化されたT細胞が作成される。

今回のCTL019の優先審査指定は、米国、欧州連合、カナダ、オーストラリア、日本の 25 施設で試験登録を行った、CAR-T 細胞を用いた初の国際共同治験であるELIANA 試験(NCT02435849)の結果に基づいている。この第2相試験において、CAR-T 細胞を輸注した患者の 82%(50名中41名)が、CTL019 輸注の3カ月後には、完全寛解または血球の完全な回復を伴わない完全寛解を達成した。当データは、2016年12月の米国血液学会(ASH2016)で発表されている。

48%がグレード3~4のサイトカイン放出症候群を発現 ~副作用管理が重要~

ELIANA試験では、患者の 48%がグレード3または4のサイトカイン放出症候群CRS)を発現したが、これは組換え細胞が患者の体内で活性化した場合に発症するとされ、治験中の CAR-T 細胞療法では既知の合併症となる。サイトカイン放出症候群は、治験施設における治療アルゴリズムの実施に対する理解を事前に深めた上で、国際的に用いられる指標に基づきプロトコルごとに管理された。サイトカイン放出症候群を原因とする死亡例は存在しない。患者さんの15%は、混乱、せん妄、脳症、激越、発作といったグレード3の神経・精神事象を発現したが、脳浮腫の報告はなく、グレード4の神経・精神事象についても観察されなかった。

日本においても希少疾病用医薬品指定済み

急性リンパ芽球性白血病は、米国ににおいて15歳未満の小児におけるがん診断の約25%を占め、再発・難治性となると治療選択肢が限られており、再発または寛解に至らなかった小児の生存の見込みは 16%~30%となっていることから、この結果の意義は大きい。

ELIANA試験には日本の施設も参加しており、またCTL019は、日本において、CD19陽性B細胞性急性リンパ芽球性白血病、CD19陽性びまん性大細胞型リンパ腫、CD19陽性濾胞性リンパ腫を予定される適応症として、2016年5月に希少疾病用医薬品の指定を受けている。

記事:可知 健太

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