BRCA遺伝子変異陽性卵巣がん 維持療法にてオラパリブ(リムパーザ)を使用することの有用性


  • [公開日]2017.03.19
  • [最終更新日]2017.11.27[情報更新] 2017/11/27

3月14日、英アストラゼネカは生殖細胞系列のBRCA (gBRCA) 遺伝子変異陽性プラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者を対象にPARP阻害薬オラパリブ(米国商品名リムパーザ)の錠剤300 mg 1日2回投与の維持療法プラセボとの比較で評価した国際共同第3相臨床試験(SOLO-2試験)において無増悪生存期間PFS) の大幅な延長が示されたとの結果を発表した。

オラパリブ(リムパーザ)は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ (PARP)阻害剤であり、DNA損傷応答(DDR)経路に異常をきたしたがん細胞に特異的に作用し、細胞死を誘導する。EUおよび米国の規制当局によりBRCA遺伝子変異陽性卵巣がんの治療薬として承認されている(日本未承認)。

病勢進行リスクを70%低減~治験医師評価による無増悪生存期間中央値:プラセボの5.5カ月に対し19.1カ月~

SOLO-2試験は、gBRCA遺伝子変異陽性プラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者さんを対象としたオラパリブ(リムパーザ)錠の単剤維持療法としての有効性をプラセボと比較評価することを目的とした無作為化二重盲検多施設共同第3相試験。最低2レジメンのプラチナ製剤ベースの化学療法による前治療を受け、完全または部分奏効を示したgBRCA1またはgBRCA2遺伝子変異が確認されている295例の患者が参加し、オラパリブ(リムパーザ)錠300 mg 1日2回投与群あるいはプラセボ錠1日2回投与群に無作為に割り付けられた。

SOLO-2試験において、無増悪生存期間中央値はオラパリブ(リムパーザ)群で19.1か月、プラセボ群はで5.5か月と有意な延長を示した(ハザード比 0.30; P<0.0001)。さらに、盲検下独立中央判定(BICR)にて測定された無増悪生存期間中央値は、オラパリブ(リムパーザ)群で30.2カ月を示し、プラセボ群の中央値5.5カ月に対し24.7カ月の延長した(ハザード比 0.25; P<0.0001)。
*盲検下独立中央判定:独立した委員会にて、オラパリブ(リムパーザ)群とプラセボ群のどちらを使用したかわからない状態で行われる効果判定

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Head of the Women Cancers and Clinical Research Department at Hôpitaux Universitaires Paris Centre, site Hôtel-Dieu, AP-HP およびSOLO-2の治験統括医師であるEric Pujade-Lauraineは、「BRCA遺伝子変異陽性のプラチナ製剤感受性再発卵巣癌におけるオラパリブ(リムパーザ)の有用性を検討した過去の試験結果を立証する結果が、SOLO-2試験において得られたことは大変な励みです。最も重要な点は、オラパリブ(リムパーザ)が患者さんの病勢進行を顕著に遅らせる一方で、患者さんの生活の質を維持できることであり、治療が困難ながんを持つ多くの患者さんに対するオラパリブ(リムパーザ)のベネフィットを示すことができました」と述べたとのこと。(アストラゼネカ社プレスリリース抜粋)

本試験中オラパリブ(リムパーザ)による治療を受けた患者の安全性プロフィルは、現在欧米で承認されているカプセル剤から得られた結果と一貫していた。グレード3以上の有害事象オラパリブ(リムパーザ)による治療を受けた患者の36.9%において、プラセボの投与を受けた患者さんの18.2%において報告された。

主な非血液学的有害事象のうち発生頻度が20%以上の有害事象は悪心(75.9%[グレード3以上, 2.6%])、疲労・無力症 (65.6%[グレード3以上, 4.1%]) および嘔吐 (37.4% [グレード3以上, 2.6%])だった。プラセボ投与群に対しオラパリブ(リムパーザ)投与群において報告された主な血液学的有害事象は貧血 (43.6%[グレード3以上, 19.5%])、好中球減少症(19.5%[グレード3以上, 5.1%]), および 血小板減少症(13.8%[グレード3以上, 1.0%])だった。

オラパリブ(リムパーザ)について

オラパリブ(リムパーザ)は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ (PARP)阻害剤であり、DNA損傷応答(DDR)経路に異常をきたしたがん細胞に特異的に作用し、細胞死を誘導する。EUおよび米国の規制当局によりBRCA遺伝子変異陽性卵巣がんの治療薬として承認されている。過去の試験により、オラパリブ(リムパーザ)カプセルはプラセボとの比較でプラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者
においてPFSを延長することが示されている(ハザード比 0.35, p <0.0001)。さらに、BRCA遺伝子変異を有する腫瘍を持つ患者のサブグループでは、大幅にPFSを延長することが示されている(ハザード比 0.18, p <0.0001)。

オラパリブ(リムパーザ)は日本未承認となるが、卵巣がん患者を対象として拡大治験が実施中である。
(以下、ブログ参照)

またまた、拡大治験がひっそりと開始していた・・・ ~BRCA変異陽性卵巣がん、肝細胞がん~(20170319オンコロブログ)

可知 健太

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