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多発性骨髄腫、日米での治療を経て目指すファンクショナルキュア(機能的治癒)という生き方

[公開日] 2026.11.02[最終更新日] 2026.10.21

プロフィール

お名前
ユーカリさん(ニックネーム)
年代
50代
性別
女性
家族構成
子ども2人との3人暮らし
仕事
団体職員
がんの種類
多発性骨髄腫
診断時ステージ
ステージ3
診断年
2025年
現在の居住地
アメリカ合衆国
写真はイメージです。(AIによる生成)
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用には個人差があります。オンコロマイストーリー含め、ネット上の情報には、進行や再発といった厳しい闘病を経験された方の発信が多く残る傾向がありますが、実際には再発なく平穏に過ごされている方も数多くいらっしゃいます。情報の一つとして受け止め、治療方針の決定の際には、必ず主治医や医療従事者にご相談ください。 2025年11月、アメリカで働くユーカリさんは多発性骨髄腫と診断されました。日米の医療環境や退院後の支援体制の違いを踏まえ、アメリカで約4か月の寛解導入療法後、日本で自家造血幹細胞移植を受けることを決意。厳しい前処置を乗り越えて移植を終え、現在はアメリカで維持療法を続けながら復職しています。病気とつきあい、質の高い日常を送る「ファンクショナルキュア(機能的治癒)」を知り、今を大切に生きるユーカリさんに、日米での闘病と現在の思いを伺いました。

酷い虫刺されをきっかけに判明した多発性骨髄腫

私はアメリカのワシントンDCにある国際機関で団体職員として働いていました。最初の兆候は年1回の血液検査で、タンパク質の高値などの異常を指摘され、専門医の受診を勧められました。しかし、深刻に受け止めず、詳しい再検査も受けずにいました。 転機は2025年夏でした。小さな虫刺されでも皮膚が赤く腫れ、強いかゆみで夜も眠れず、異常を感じて皮膚科を受診すると、医師から「すぐに血液内科を受診してください」と強く勧められました。 指示に従い血液内科の専門医を受診すると、血液検査から多発性骨髄腫の可能性を告げられました。血液がんの確定診断は難しく、時間のかかる複数の検査が必要でした。当初は判断がつきませんでしたが、骨髄検査で異常な細胞が確認され、病勢を調べるMRI検査で背骨に骨病変が見つかりました。2025年11月に多発性骨髄腫(ハイリスク)と確定診断されました。

5年生存率が約50%という厳しい現実

確定診断を待つ間、聞き慣れない病名に戸惑い、インターネットで必死に情報を集めました。家族や親戚に血液がんの経験者がおらず、私には全く未知の病気だったからです。 しかし、インターネットで検索して目にしたのは、「5年生存率が約50%」というデータでした。その数字を見たときは暗闇の中に突き落とされたような心地になり、自分が近いうちに死んでしまうのではないか、子どもたちが学校を卒業するまで生きていられないのではないかと、強い不安と絶望感に苛まれました。 アメリカで最初の担当医の説明に納得できず、セカンドオピニオンを求めて別の病院を受診しました。新たな担当医は迅速かつ親身に対応し、すぐに寛解導入療法を始められるよう手配してくれました。さらに、その後の治療として自家造血幹細胞移植を提案されました。身体への負担は大きいものの、多発性骨髄腫の患者としてはまだ若く、移植が望ましいとの判断でした。 しかし、移植の壁となったのは日米の医療環境の違いでした。アメリカでは自家造血幹細胞移植後、約2週間で退院となり、感染予防のため自宅をできる限り清潔に保ち、体調が悪い間は付きっきりの介助が必要です。近くに住む元夫の協力体制はありましたが、長期間の自宅療養で誰にどれほど頼ればよいかわからず、アメリカでの移植に強い不安がありました。一方、日本では治療が終わるまで1か月以上入院し、十分な管理やケアを受けられると知りました。

日本の専門医受診による不安の解消

アメリカでの短い入院期間と自宅ケアへの不安から、日本での移植を検討し始めました。ネットや知人の医師を通じて調べるうちに、多発性骨髄腫の最先端治療で広く知られる日本の病院と、そこに所属する専門医を知りました。その専門医に直接手紙を書き、治療を受け入れてもらえるか相談しました。 2025年12月にアメリカで寛解導入療法を始める直前、一時帰国し、手紙を送った専門医を受診しました。先生は親身に診察し、治療法に日米の違いはないと明言してくださいました。ネット上の厳しいデータについても、以前は5年ほどで亡くなる人が多かったものの、この10年ほどで治療法が飛躍的に進歩し、今は10~15年は十分大丈夫だと、はっきり説明してくださいました。 アメリカの医師は訴訟リスクなどを懸念して曖昧な表現をすることが多かったのですが、日本の専門医の率直な説明で胸のつかえが下り、強い不安が一気に解消されました。納得して、アメリカで寛解導入療法を受けた後、日本で自家造血幹細胞移植を受ける方針を固めました。勤務先も長期の病気休暇に理解があり、安心して治療に専念できる環境が整っていました。

想定よりも副作用が軽く済んだ寛解導入療法

2025年12月から2026年3月末までの約4か月間、アメリカで通院による寛解導入療法を受けました。ダラツムマブ、カイプロリス、レナリドミド、デキサメタゾンの4剤を組み合わせた強力な治療でした。 治療開始前から副作用に対して強い恐怖心を抱いていましたが、実際に始まってみると、想定していたよりも副作用は軽度で済みました。全身のだるさや軽い吐き気、下痢、皮膚の赤みや痒みなどはあったものの、治療期間を通じて実際に吐くことはありませんでした。通院で強力な薬を投与され続けましたが、無事に予定していた4か月の寛解導入療法をやり遂げることができました。この強力な治療のおかげで体内の骨髄腫細胞は劇的に減少し、非常に良好な状態まで持ち込むことができました。

日本における自家造血幹細胞移植の実施

寛解導入療法によって血液の状態が十分に改善したことを確認し、2026年5月に自家造血幹細胞移植を受けるため日本の病院に入院しました。 造血幹細胞採取後、移植の前処置で大量の抗がん剤(メルファラン)を投与されました。これが全治療で最もつらい試練でした。体が自分のものではないように感じ、経験したことのない激しい倦怠感と気持ち悪さに襲われ、髪もすべて抜け、ベッドから起き上がれないほど衰弱しました。さらに、抗がん剤の影響で消化管や膵臓の数値が悪化し、水も食べ物も一切口にできない絶飲食となりました。点滴で栄養を補いながら、水すら飲めない日々を無菌室で過ごすのは精神的にも過酷でした。 つらい前処置とは対照的に、移植自体はあっけなく感じました。事前に採取・凍結保存した自分の造血幹細胞を、輸血のように点滴で静脈に戻すだけだったからです。その後、幹細胞は順調に生着し、無事に移植を終えて退院できました。

維持療法の開始による職場への復職

移植後にアメリカへ戻り、2026年9月から再発予防の維持療法を始めました。現在は寛解を維持し、微小残存病変(MRD)検査も陰性です。レナリドミドのカプセルを毎日内服し、月1回、通院でダラツムマブの注射を受けています。服薬による軽い下痢や疲れやすさはありますが、日常生活に大きな支障はありません。 現在は復職し、在宅勤務と出社を組み合わせて団体職員の仕事をしています。前処置による脱毛に備えたウィッグは暑く不快なため、スカーフで通勤しています。同僚には病気を伝えていますが、過度な特別扱いや、体調を理由に仕事から外されることは望みません。仕事の能力は以前と変わらず、病気で別人になったわけではないからです。 日本の主治医から、完全治癒ではなく、病勢を最小限に抑え、日常生活に支障のない状態を保つ「ファンクショナルキュア(機能的治癒)」を目指すことが大切だと教わりました。その考えに深く納得し、病気を過度に敵視して完全に消し去ろうとせず、慢性疾患のように上手につきあいながら、前向きに仕事を続けたいと考えています。

病気を経験したことで変化した人生観

多発性骨髄腫を経験し、人生観や価値観が大きく変わりました。誰もがいつか死を迎えますが、病気によって人生の時間には限りがあると強く意識するようになりました。子どもの通学を見送り、家事をこなす何気ない日常のありがたさと、かけがえのなさを実感しています。 また、再発して治療で自由が制限されるかもしれないからこそ、やりたいことは先送りせず、今すぐ実行しようと思っています。動けるうちに海外の友人を訪ね、専門的な仕事を続けながら、残された人生で周囲や社会に少しでも役立ち、人に親切にし、優しく耳を傾けていきたいです。がんは人生の終わりではなく、病気とともに前向きに生きる新たなプロセスの始まりだと感じています。

今、がんと向き合っている方へのメッセージ

今、がん治療をしている方にお伝えしたいことがあります。 病気とともに自分のペースで日常を送る がんと診断されても、人生が終わるわけではありません。医療は着実に進歩しており、病気とつきあいながら暮らすことは十分可能です。病気を特別視しすぎず、人生のひとつの過程と捉え、無理のないペースで淡々と日常を送ることが大切です。 確かな情報を支えに希望を持って前へ進みましょう ネット上の過去のデータや数字だけにとらわれ、将来への希望を失わないでください。信頼できる専門医から正確な情報を得て、納得できる選択を重ねれば、必ず道は開けます。絶望せず、今の日常と自分の可能性を信じて、前へ進んでください。

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