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【がん治験体験】直腸がんステージ2A、「肛門を残したい」その思いから始まった特定臨床研究への挑戦

[公開日] 2026.10.07[最終更新日] 2026.09.30

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:HACOさん(ニックネーム) 年代:50代 性別:男性 家族構成:妻と子ども3人との5人暮らし 仕事:自営業 がんの種類:大腸がん(直腸がん) 診断時ステージ:ステージ2A 診断年:2022年 現在の居住地:東京都 試験フェーズ:第2/3相 試験参加時の治療ライン:術前治療(手術前の治療)
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用には個人差があります。オンコロマイストーリーを含め、ネット上の情報には、進行や再発といった厳しい闘病を経験された方の発信が多く残る傾向がありますが、実際には再発なく平穏に過ごされている方も数多くいらっしゃいます。情報の一つとして受け止め、治療方針の決定の際には、必ず主治医や医療従事者にご相談ください。 ※本記事は、新薬の承認取得を目的とした「治験」ではなく、がん治療の発展を目的として行われた臨床研究への参加体験です。 HACOさんは、2022年8月に血便をきっかけに、大腸がんと診断されました。がんの位置が肛門に近いことから永久人工肛門になる可能性を示唆されましたが、肛門温存の選択肢を求めてがん専門病院に転院。主治医から手術前の初期治療として抗がん剤と放射線治療を組み合わせた特定臨床研究を提案され、参加を決意しました。臨床研究に対する最初のイメージや参加を決めた理由、通院での治療経過や副作用、医療従事者による手厚いサポート体制、そして臨床研究を経験したことによる意識の変化についてお話しいただきました。

がん専門病院で受けた臨床研究の提案

2022年8月初頭に血便が出たため、かかりつけのクリニックを受診したことが、すべての始まりでした。紹介された近くの総合病院で大腸内視鏡検査を受け、ポリープのような腫瘍が見つかりました。その病院では確定診断に至りませんでしたが、医師の助言を受けて受診した別の総合病院で、大腸がんであることが判明しました。 その病院では「がんが肛門に近いため、手術をする場合は永久人工肛門になる可能性が高い」と説明を受けました。しかし、がん専門病院なら、肛門を温存できる可能性があると聞き、紹介状を書いてもらい転院しました。2022年9月に、がん専門病院で精密検査を受け、遠隔転移のないステージ2Aの大腸がん(直腸がん)であるとわかりました。がんは肛門から約2cmの位置にありましたが、温存できる可能性があると告げられました。 その際、担当の消化器外科の医師から、すぐに手術をするのではなく、特定臨床研究への参加提案を受けました。放射線治療と抗がん剤治療を組み合わせた内容でした。 臨床研究という言葉を聞いたとき、最初は「人体実験のようなものではないか」「モルモットのような扱いをされるのではないか」というネガティブなイメージが頭をよぎりました。しかし、主治医や看護師が臨床研究の内容について非常に丁寧に説明してくれました。アメリカなどの海外ではすでに実施されている治療法であることや、身体への負担についても細かく説明を受けたことで、人体実験のような不安は払拭され、「切らずに済むかもしれない良い治療選択肢があるのだ」と前向きに捉えられるようになりました。

臨床研究に参加を決めた理由

臨床研究への参加を決めた最大の理由は、主治医からの説明に納得できたからです。治療の提案を受ける中で、抗がん剤と放射線治療によって完全奏効を得られれば手術を回避できる可能性があること、そして仮に完全奏効が得られなかったとしても「その後に手術を行って根治を目指す」という明確な方針が提示されました。 もし臨床研究を行うことでその後の手術ができなくなるのであれば躊躇したかもしれませんが、万が一効果が十分でなかった場合でも、手術という選択肢がしっかりと残されていることが示されました。ゴールまでの見通しが細かく説明されたことが、最終的な決め手となりました。 医師や看護師は私の意向を丁寧に確認してくれ、帰り際にも重ねて説明をしてくれるほど熱心に対応してくれました。私は「前向きに考えています」と伝えつつ、一度家に持ち帰って家族に相談することにしました。妻や子どもたちに治療内容と方針を話し、理解を得た上で正式に参加を決意しました。 臨床研究参加に向けた準備として、MRI検査、CT検査、血液検査、大腸内視鏡検査など、参加要件を満たしているかを確認するための詳細な事前検査を受けました。

通院で受けた抗がん剤と放射線治療

2022年11月から臨床研究による治療が始まりました。まず放射線治療と、内服の抗がん剤(カペシタビン)の服用を開始しました。続いて2023年1月からは、点滴による抗がん剤(オキサリプラチン)が追加されました。 治療は入院ではなく、すべて通院で行われました。点滴治療の時期も、3週に1回のペースで病院に通いながら受けました。自宅から電車を利用して通院し、普段通りに生活を送りながら治療を継続することができました。放射線治療と2種類の抗がん剤を組み合わせた治療は、2023年4月末まで約半年間にわたって計画通りに実施されました。 なお、この臨床研究は医療費がすべて無料になるタイプのものではなく、抗がん剤や放射線治療にかかる費用は通常通り発生しましたが、無理なく治療を続けられる範囲のものでした。

冬場の寒さで強まったしびれと口の中の違和感

約半年間の臨床研究の期間中、抗がん剤による副作用を経験しました。特に強く現れたのが、手や顔のしびれ症状でした。 治療を行っていた時期がちょうど冬場だったため、寒さや冷気によってしびれの症状が強く誘発されました。病院で点滴を受けた後の帰り道、外の冷たい風に当たると顔が激しくしびれ、目が開けられなくなるような瞬間もありました。また、手で冷たいものに触ることが難しくなりました。さらに、口の中にもしびれや違和感が生じました。冷たい飲み物や食べ物を口に含むのがつらくなり、一時期は食欲が少し低下することもありました。 一方で、放射線治療による皮膚の炎症や熱感、強い吐き気や脱毛といった症状はありませんでした。冷気に触れた際の一時的な強いしびれを除けば、手足や顔のしびれに関しても、我慢できないほどではなく、ぴりぴりとした刺激を感じる程度でした。そのため、上手に防寒や冷感対策を行いながら、日常生活や仕事に重大な支障をきたすことなく、治療を完遂することができました。

医療スタッフによる手厚いサポート

臨床研究に参加して最も良かったと感じたのは、医療従事者による手厚いサポート体制でした。一般的な標準治療では、限られた診察時間の中で主治医とやり取りをすることが多くなりがちですが、臨床研究の期間中は関わってくれるスタッフの数や時間が明らかに異なっていました。 内科医、外科医、放射線科医、さらには看護師や臨床研究コーディネーターなど、さまざまな部署のスタッフがチームとなって経過を見守ってくれました。診察の際には別室で十分な時間を確保し、身体の状態や不安な点についてじっくりと話を聞いてくれました。 何か疑問や困ったことがあればすぐに相談できる環境が整っていたため、この期間中は大きな安心感を持って過ごすことができました。後に受けた標準治療と比較しても、臨床研究中の診療体制は非常に丁寧で恵まれたものであったと感じています。

臨床研究の結果にも納得できた理由

2023年4月末まで約半年間の治療を最後までやり遂げましたが、最終的な検査の結果、がんを完全に消失させるには至りませんでした。そのため、根治を目指して当初の計画通り切除手術へ移行することになりました。手術室の空き状況を待ち、2023年7月末にロボット支援下手術を受けました。術前治療で完全奏効は得られませんでしたが、事前の説明通り、無事に肛門を残すことができました。 臨床研究で完全奏効が得られず手術をすることになった結果に対して、期待を寄せていた家族は少しショックを受けている様子でした。しかし、私自身は深刻に受け止めたり、臨床研究を受けたことを後悔したりするような嫌な感情は一切ありませんでした。 なぜなら、最初の段階で「もし完全奏効が得られなかった場合は手術をする」という説明を十分に受け、納得した上で治療を選択していたからです。思い通りの結果にはならなかったものの、やれる限りの治療に取り組んだ上での次のステップであったため、すんなりと気持ちを切り替えて手術に臨むことができました。

臨床研究への参加体験がもたらした意識の変化

臨床研究を経験する前は「実験台にされるのではないか」という漠然とした恐怖感を持っていましたが、実際に参加したことでそのイメージは大きく変わりました。無理な治療を強制されることは決してなく、手厚い診療と丁寧な看護のもとで安全に進められる選択肢であると実感しました。 また、臨床研究を受けた経験は、自分以外の患者への関わり方にも変化をもたらしました。その後の私自身の病状や治療経過について、FacebookなどのSNSでオープンに発信していました。それを見た知人や、その紹介で連絡をくれたがん患者から、ダイレクトメッセージなどで相談を受ける機会が増えました。 周囲の人々は「抗がん剤=激しい吐き気や脱毛があるもの」というイメージを強く持っていることが多く、「髪は抜けるのか」「つらくて動けなくなるのか」といった質問をよく受けました。そうした際、私は「使用する薬剤や人によって症状の出方はさまざま」と客観的な事実を伝えることができるようになりました。知っておくことで余計な不安を減らせる情報があることを伝えられるようになったことは、臨床研究を経験したからこその気づきでした。

治験や臨床研究を検討されている方へのメッセージ

治験や臨床研究への参加を検討されている方にお伝えしたいことがあります。 まずは医師や医療スタッフの説明を詳しく聞いてみてください 治験や臨床研究に対して漠然とした不安や恐怖感を持つ方は少なくないと思います。私自身も最初は「人体実験のようなものではないか」というネガティブなイメージがありました。しかし、主治医や看護師から海外での実績や身体への負担、安全性の配慮について丁寧な説明を受けたことで、不安は解消されました。先入観だけで判断して選択肢を狭めてしまうのではなく、まずは医療者の説明をしっかり聞いた上で客観的に検討することをお勧めします。 その後の治療計画まで確認して判断してください 治験や臨床研究への参加を検討する際は、その治療の効果だけでなく、万が一期待通りの結果にならなかった場合にどのような選択肢が残されているかを確認しておくことが大切です。私の場合、治療でがんが消えなかったとしても「その後に手術を行って根治を目指す」という明確な方針が示されていたため、安心して治療に挑むことができました。最終的なゴールまでの道筋を主治医と共有しておくことが、納得のいく決断につながります。 治験や臨床研究に対して不安があれば、医療スタッフに相談してみてください 治験や臨床研究期間中は、専門の医師だけでなく看護師や治験/臨床試験コーディネーターなど、さまざまな部署のスタッフがチームとなって経過を観察し、別室で時間をかけて相談に乗ってくれました。通常の診療以上に手厚く診てもらえる環境は、治療を進める上で大きな安心感になります。不安な点があれば周囲のスタッフに相談しながら、前向きな気持ちで治療に向き合ってほしいと思います。

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