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非小細胞肺がんステージ4A、自分を取り戻すため信頼できる医師とともに選んだ生活や希望に合わせた治療

[公開日] 2026.10.05[最終更新日] 2026.10.05

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:しんちゃんさん(ニックネーム) 年代:50代 性別:男性 家族構成:妻と子ども2人との4人暮らし 仕事:理学療法士(現在は休職中) がんの種類:非小細胞肺がん(EGFR遺伝子変異陽性) 診断時ステージ:ステージ4A 診断年:2023年 現在の居住地:大阪府
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用には個人差があります。オンコロマイストーリー含め、ネット上の情報には、進行や再発といった厳しい闘病を経験された方の発信が多く残る傾向がありますが、実際には再発なく平穏に過ごされている方も数多くいらっしゃいます。情報の一つとして受け止め、治療方針の決定の際には、必ず主治医や医療従事者にご相談ください。 理学療法士として勤務していたしんちゃんさんは、2023年2月に新型コロナウイルス感染症に罹患した際に受けたCT検査で、肺に影が見つかりました。精密検査の結果、ステージ4Aの非小細胞肺がんと診断されました。分子標的薬や抗がん剤治療を受けながら、仕事や趣味のマラソンを継続してきましたが、現在は4次治療を受けつつ療養中です。医療従事者としての視点、主治医との関係、ご家族との関わり、今後の目標についてお話しいただきました。

新型コロナウイルス感染で受けたCT検査で肺に影を発見

2023年2月初旬のことでした。当時、新型コロナウイルス感染症にかかり、自宅近くにあるクリニックを受診しました。そのクリニックでは、受診した患者全員に対して胸部CT検査を実施する診療方針をとっており、私も同様に検査を受けました。 検査画像を確認した医師から、肺に影があると告げられました。まずは感染症の治療と自宅療養を優先し、体調が落ち着いた段階で速やかに規模の大きな総合病院を受診するよう指示を受けました。その際、初診を担当した医師からは、影の状態から考えて肺がんである可能性が高いという見解が示されました。 その後、約2週間におよぶ自宅療養に入りました。自宅で1人隔離された生活を送る中で、これから自分の身に何が起きるのかを考える時間ができました。肺がんかもしれないという不安がありましたが、当時はインターネットなどで肺がんに関して調べる気力すら湧きませんでした。 私は理学療法士として、日常的にがん患者のリハビリテーションを担当していました。病状が進行し、厳しい状態にある患者の経過を間近で見てきた経験があったため、自分が当事者になった場合の状況を想像してしまい、詳しい情報を調べることが怖くなりました。

非小細胞肺がんステージ4Aの確定診断

約2週間の自宅療養を終えた2023年2月末、精密検査を受けることにしました。当初は勤務している病院の呼吸器内科を受診し、知人の医師に診てもらおうと考えていました。しかし、同じ職場の呼吸器内科医でマラソン仲間でもある医師に相談したところ、「自分が勤務している病院で治療を行うのは避けた方が良い」という助言を受けました。 その医師から、自宅近くにあるがん診療拠点病院である総合病院を教えてもらい、そちらを受診することになりました。受診した総合病院の呼吸器内科で、改めて精密検査が行われました。 腫瘍が存在する位置が気管支鏡の届かない深い部位であったため、通常の気管支鏡生検による組織採取は困難であると判断されました。そのため、診断を確定させる目的で、腫瘍の一部を摘出する胸腔鏡下の手術を受けました。 組織検査の結果、非小細胞肺がんと診断され、遺伝子検査によってEGFR遺伝子変異陽性であることがわかりました。ステージについては、両側の肺への病変とリンパ節への転移が認められたことから、ステージ4Aと判定されました。他臓器への遠隔転移は認められませんでした。

職場の医師からの助言と復職に向けた意識の切り替え

ステージ4Aの肺がんという診断結果を受けた際、私は大きな衝撃を受けました。自身が医療現場で患者に接する立場であったため、今後の病状の推移や身体機能の低下について客観的なイメージができてしまうことが、精神的な負担となりました。理学療法士としての仕事を今後も継続できるのかという不安もありました。 しかし、そうした落ち込みから前を向くまでの時間は早かったです。病状を知った職場の医師から「びっくり退職だけはしないほうがいい。治療しながら復職を目指すべきだ」という励ましを受けたことが、大きな支えとなりました。 また、職場の上司に相談した際にも、「治療に専念するためにしばらく休むことになっても構わない。必ず復帰できると信じているから、安心して戻ってきてほしい」という言葉をかけてもらいました。この言葉により、退職という選択肢は消え、再び仕事現場に戻ることを目標に据えることができました。

タグリッソによる1次治療の開始

確定診断を受け、すぐに1次治療に向けた方針の検討に入りました。遺伝子検査でEGFR遺伝子変異陽性が確認されていたため、治療選択肢としてタグリッソ単剤、タルセバとサイラムザ併用療法、細胞障害性抗がん剤などが提案されました。 担当の医師と話し合いを行う中で、私が理学療法士として仕事を続けたいこと、家族との時間を大切にしたいこと、趣味であるマラソンを続けたいという希望を伝えました。副作用の現れやすさや日常生活への影響を考慮した結果、1次治療としてタグリッソを選択することになりました。 この1次治療は、2023年3月から約2年10か月にわたって継続されました。定期的な画像検査や腫瘍マーカー(CEA)の測定を行いながら服用を続けました。腫瘍は一定の縮小を示し、腫瘍マーカーも10.0ng/mL程度の数値で安定して推移していました。完全な病変の消失には至らなかったものの、病状は長期にわたり安定した状態が保たれました。 タグリッソの服用中は、副作用として爪の周囲が赤く腫れて痛む爪囲炎が現れました。特に足の親指の症状が強く、走る際に痛みを伴うことがありましたが、皮膚科を受診して処方された薬を使用しながら対処しました。従来の抗がん剤と比較して体力の低下や倦怠感が少なく、理学療法士としてのフルタイム勤務とランニングを継続することができました。

生活や自分の希望に合わせた治療方針

治療を継続する上で、担当医との間に築かれた信頼関係は大きな存在でした。治療の途中で担当の医師が別の総合病院へ異動することになった際も、私は主治医を変えることなく、その異動先である病院へ転院して診療を受け続ける道を選びました。 私の主治医は、患者の生活の質や個人の希望を考慮して治療計画を立ててくれる医師でした。私が趣味であるマラソンを続けたいと申し出た際、医師としては身体的負荷や合併症のリスクを考慮して慎重な立場をとっていましたが、私の希望を汲み取り、定期的な血液検査で数値を監視しながらマラソンを許可してくれました。 また、家族との時間を確保するための配慮もなされました。娘が所属していたソフトボールチームの全国大会が開催された際には、抗がん剤の投与スケジュールをずらす対応をとってくれました。そのおかげで、私は現地へ足を運び、娘の中学最後の公式戦を応援することができました。医療面での適切な判断だけでなく、生活の質に配慮した対応に対して感謝しています。

2次治療でタルセバとサイラムザを選択した理由

約2年10か月間にわたって継続した1次治療でしたが、徐々に腫瘍マーカーの上昇が認められ、CT画像でも病変のわずかな増大が確認されました。薬剤耐性が生じたと判断され、2次治療へ移行することになりました。 移行にあたり、改めて遺伝子検査を検討しましたが、検体採取が難しく断念しました。また、抗体薬物複合体の治験参加も主治医を通じて進めましたが、募集が一時中断となり叶いませんでした。 本来であれば、カルボプラチン、アリムタ、ライブリバントの併用療法が第一選択となる状況でした。しかし、仕事柄、細胞障害性抗がん剤に良いイメージを持っておらず、さらに同僚医師の協力でライブリバントの副作用で仕事を辞めた方の話を聞き、仕事や家族、趣味への影響を強く心配しました。主治医にその思いを伝えたところ、比較的副作用が少なく仕事への負担も抑えられる可能性があるとして、2次治療にはタルセバとサイラムザ併用療法を選択しました。ライブリバントが将来的に皮下注射でできるようになるという話を患者会の研修会で聞いていたため、そこまでのつなぎになればという思いもありました。しかし、この治療法は十分な効果を示さず、投与開始から約3か月で再び腫瘍マーカーが上昇に転じたため、中止することとなりました。

3次治療で細胞障害性抗がん剤を選択できた理由

続いて3次治療へ進むことになりました。これまで副作用を恐れていた私に決断を促したのは、患者会の研修会で聞いた「先生、生きたいんです。そのためなら、どんな副作用も我慢します」という会員の方の一言でした。その言葉が痛烈に響き、「私も生きたい。そのためには今一番効く治療を選択しよう。副作用なんてどんと来い」と考え方が変わり、ここでカルボプラチン、アリムタ、ライブリバント併用療法を選択することができました。初めて本格的な細胞障害性抗がん剤を使用したことにより、強い副作用が出現しました。 抗がん剤を投与した直後から1〜2週間にわたり、強い全身倦怠感と食欲不振に見舞われました。また、骨髄抑制によって白血球数が減少し、感染症に対する抵抗力が低下する時期が生じました。理学療法士の仕事は患者と直接接する業務であるため、白血球数が低下している期間は出勤を控え、1〜2週間休職した後に1週間勤務するという変則的な働き方を取り入れながら治療と仕事を両立させました。さらに、全身や顔面に皮膚炎が広がるなどの症状も現れましたが、処方薬で対応しながら治療を完了しました。

4次治療の開始と療養生活

3次治療を5クールほど実施した段階で再び腫瘍マーカーの上昇傾向が確認され、PET検査で骨転移が見つかりました。整形外科を受診し、幸いにも骨硬化性の骨転移であり、日常生活上の制限はないとのことでした。また、理学療法士としての仕事に関しては、患者さんを介助する際はコルセットの使用を勧められました。 2026年7月より4次治療へ移行しました。4次治療では、カルボプラチン、パクリタキセル、アバスチン、テセントリクを組み合わせたABCP療法を開始しました。 この4次治療に入り、副作用の程度は強くなりました。投与開始後まもなく脱毛が始まり、全身の疲労感と食欲不振が現れました。初回投与から約10日後には強い高熱が現れて約4日間にわたって下がらなかったほか、全身に発疹が出るなどのアレルギー症状も経験しました。こうした身体的負担と感染症リスクを考慮し、2026年7月からは休職する決断をしました。職場の上司や同僚には「4クールの集中治療期を終え、維持療法へ移行するまでは治療と身体の回復に専念したい」と伝え、理解を得ました。 現在は、3クールの投与を無事に終えて白血球数や体力が安定する時期を待ちながら、自宅で療養中です。走ることは一時的に中断していますが、身体機能を維持するために無理のない範囲でウォーキングを行い、1日8000歩を目安に歩くことを日課としています。

患者や家族との関わりの中で生じた心境の変化

自分ががん当事者となった経験は、理学療法士としての患者への接し方や、家族との関係性にも影響を与えました。 復職後、リハビリテーションを担当した患者の中に、がんの診断を受けて強く落ち込み、「手術を受けたくない、一切の治療を拒否したい」と投げやりになっている方がいました。その方は「がんでもないあなたに私の気持ちがわかってたまるものか」と感情を吐露されていました。 リハビリを担当する患者さんに対しては、自分自身ががん患者であることをあえて伝えることはしていませんでした。しかし、「実は私も肺がんです。自分は手術ができず抗がん剤治療しかありませんが、あなたには手術ができる選択肢があるのだから、絶対に諦めずに受けるべきです」と言いました。私の話を聞いたその患者は考えを改め、前向きに手術を受けられました。術後、元気に回復されたその方が、診察のついでにリハビリ室へ顔を出して挨拶をしてくれることが、私の励みとなっています。

今後の生活に向けた目標

現在、4次治療以降の選択肢に備え、遺伝子パネル検査や遺伝子スクリーニングプロジェクト(LC-SCRUM等)への参加に向けた手続きを主治医と進めています。検査の結果によっては、該当する分子標的薬の治験や臨床試験への参加という道が開ける可能性があります。未承認の薬剤や開発中の治療法に対して、新たな選択肢が得られる可能性として期待を持っています。 今後は、「がんと共存しながら、前を向いて、笑顔で進んでいきたい」と考えています。仕事に復帰して理学療法士として患者の役に立つこと、成長していく子どもたちの姿を見守り続けること、そしてこれまで一緒に走ってきたランニング仲間のもとへ戻り、再び同じコースを走り切りたいと思っています。また、結婚前に妻とホノルルマラソンを一緒に完走したことがあるので、結婚25周年(現在は21年)に再び、ホノルルマラソンを妻と一緒に走ることが最大の目標です。 過去には大阪マラソンや徳島マラソンなどを完走してきました。がんになってから、一度は諦めたフルマラソンも、再び走り始め、2025年3月の丹波篠山マラソンや同年11月の大阪淀川市民マラソンを完走することができました。がんサバイバーである私が走ることで、「私も走ってみよう」とランニングの輪がどんどん広がっています。これからも焦ることなく自分の体の状態を見極め、医療の手を借りながら、一日一日を大切に生きていこうと思っています。

今、がんと向き合っている方へのメッセージ

今、がん治療をしている方にお伝えしたいことがあります。 一人で抱え込まず周りの人に相談してください 不安やつらさを自分一人で抱え込むと、気持ちが後ろ向きになりがちです。家族、友人、職場の同僚、医療従事者など、周囲の人に気持ちを話し、助けを求めることが大切です。周囲のサポートを受けることで、治療を継続する力を得ることができます。 諦めずに自分のペースで前を向いてください 治療中に強い副作用が出たり、思うように動けなくなったりしても、目標を完全に諦める必要はありません。できる範囲に活動を調整しながら、体調に合わせて過ごすことが重要です。他人と比較せず、ご自身のペースで治療と日常に向き合っていってください。

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