写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:KAZUさん(ニックネーム)
年代:60代
性別:男性
家族構成:1人暮らし
仕事:無職(診断時は技術員)
がんの種類:慢性骨髄性白血病
診断年:2016年
現在の居住地:広島県
試験のフェーズ:第2相試験(観察研究)
試験参加時のライン:1次治療の維持期
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用には個人差があります。オンコロマイストーリー含め、ネット上の情報には、進行や再発といった厳しい闘病を経験された方の発信が多く残る傾向がありますが、実際には再発なく平穏に過ごされている方も数多くいらっしゃいます。情報の一つとして受け止め、治療方針の決定の際には、必ず主治医や医療従事者にご相談ください。
※本記事は、新薬の承認取得を目的とした「治験」ではなく、がん治療の発展を目的として行われた臨床研究への参加体験です。
2016年に慢性骨髄性白血病と診断され、分子標的薬による治療を続けているKAZUさん。一生飲み続ける必要があると言われた薬の休薬を目指し、主治医からの突然の提案で休薬に関する臨床試験に参加しました。提案を受けた際の戸惑いや、休薬への不安と期待、そして短期間で中止となった経験から得た薬の重要性の再確認など、臨床研究に参加したからこそ得られた貴重な体験と、未来の医療へ貢献する思いについてお話しいただきました。
一生続く服薬へのプレッシャーと休薬への期待
2016年の2月、毎年受けている人間ドックで血液の異常を指摘されたことをきっかけに、検査の結果、慢性骨髄性白血病という診断を受けました。入院して治療方針の説明を受けた際、主治医からは「今は分子標的薬という薬で症状をコントロールすることができます」と言われ、まずは命の危機がすぐに迫っているわけではないことに安堵しました。しかし、それと同時に「その代わり、この薬を一生飲み続けてください」と告げられたのです。
退院後、私はスプリセルという分子標的薬を毎日飲みながら職場に復帰し、日常生活を取り戻すことができました。血液の数値も安定しており、はたから見れば健康な人と何ら変わりません。しかし、私の心の中には常に「いつまでこの高額な薬を飲み続けなければならないのか」「いつか薬が効かなくなったり、重篤な副作用が出たりする日が来るのではないか」という不安が重くのしかかっていました。
そんな中、私はインターネットの患者会などで同じ病気を持つ方々と交流するようになりました。そこで耳にしたのが、「医師の管理の下で薬をやめることができ、もう5年も薬を飲まずに生活できている」という休薬に成功した方の体験談でした。その話を聞いて以来、私の中で「いつか自分も薬をやめたい、休薬したい」という思いが強くなり、それが治療を続けていく上での大きな最終目標になっていきました。
インターネットで治験や臨床試験情報を検索
「どうすれば薬をやめられるのか」という思いから、私はインターネットで治験や臨床試験の情報を調べるようになりました。検索してみると、確かに他の病院で治験の参加者を募集している情報を見つけることができました。しかし、それを見つけたからといって、すぐに行動に移せるわけではありませんでした。
私が通院している病院の診察は、各検査の結果に問題がなければわずか5分程度で終わってしまいます。忙しそうにしている主治医に対して、「ネットで調べたら別の病院でこんな治験や臨床試験をやっているようですが、私でも受けられますか?」とはなかなか言い出せませんでした。「今の病院や主治医に対して失礼に当たるのではないか」「病院側から提案されていないのに、患者が勝手に見つけてきた治験や臨床試験を受けたいと言うのはどうなのだろうか」という遠慮や迷いがあり、結局自分からこの話を切り出すことはできませんでした。
転院先で思いがけず提案された臨床試験
治療開始から約5年が経ち、それまで通っていた近場の病院の担当医が転勤となりました。私は車で1時間以上かかる遠方の別の総合病院へセカンドオピニオンを受けに行き、その病院から転院を勧められました。転院を以前から考えていたため、承諾して治療を続けていました。
転院後、数回目の受診時に診察室で血液検査の結果を聞いていたとき、突然、「KAZUさんは今、血液の数値がとても安定しています。実は休薬に関する臨床試験があるのですが、受けてみませんか」と提案されたのです。
それは、九州にある別の病院が主導して行っている臨床研究で、深い寛解(DMR※)を一定期間維持できている患者さんが、安全に薬を中止(休薬)し、無治療寛解を維持できるかどうかを検証するものでした。医師からは「あと1名の枠が空いているのですが、どうですか」と言われました。突然、臨床試験を提案され、しかも「最後の1枠」と言われたことに戸惑いました。
※DMR:遺伝子レベルで病気が検出できないほど抑えられている状態
不安と最終目標の間で揺れ動いた決断
主治医からは、「すぐに返事がほしい。1週間ぐらいで答えてくれませんか」と言われました。突然の提案に対し、私の心は大きく揺れ動きました。
まず頭をよぎったのは、命をつないでくれている薬を自ら止めてしまうことへの不安です。「もし薬を止めて、一気に病気が悪化してしまったらどうしよう」という不安がありました。しかし一方で、私には「いつか薬を止めたい」という強い最終目標がありました。ずっと抱いていた夢に挑戦できる絶好のチャンスが、向こうからやってきたのです。
短い時間の中で悩みましたが、最終的には「休薬に挑戦したい」という気持ちが不安を上回りました。自分で勝手に薬を止めるわけではなく、医師の厳重な管理の下で試すことができるのですから、絶好の機会だと思いました。また、日ごろから私の状態をよく診てくれている主治医が「KAZUさんなら数値もいいので」と勧めてくれたことも大きな後押しとなり、「先生がおっしゃるなら、ぜひ受けてみます」と参加を決意しました。
拍子抜けするほど簡単だった参加手続きとデータ提供
参加を決めたものの、治験や臨床試験というものに対して、私は「もっと厳密で複雑な手続きがあり、大がかりな検査が待っているのだろう」と想像していました。しかし実際には、主治医から詳しい説明を受けて同意書にサインをするだけで、手続きは拍子抜けするほどスムーズに進みました。「意外と簡単に参加できるものなんだな」というのが率直な印象でした。
また、九州の病院が主導する試験だと聞いていたため、「遠くまで通わなければならないのだろうか」とも思っていましたが、私が直接九州へ足を運ぶことは一度もありませんでした。いつも通院している総合病院で血液検査を受け、その数値を九州の病院へ送って経過を見てもらうという仕組みでした。離れた場所からでも最新の臨床試験に参加できる体制が整っていることに、医療のネットワークの広さを感じました。
週1回の通院がもたらした休薬中の安心感
臨床試験が始まると、通院のペースが大きく変わりました。それまでは血液の数値が安定していたため、診察は3か月に1回のペースでした。しかし、臨床試験が始まってからは、血液の状態を細かく観察するために、週に1回のペースで通院して検査を受けることになったのです。
検査の内容自体は、普段と同じ検査であり、特別な項目が増えたり、採血の量が極端に増えたりしたわけではありません。手技が「丁寧になった」という感覚はありませんでしたが、頻度が上がったことの意味は非常に大きなものでした。
薬を止めている期間、私は常に「いつ数値が悪くなるか」という不安を抱えていました。しかし、週に1回しっかりと検査をしてもらい、主治医と直接顔を合わせて話をすることで、「ちゃんと診てもらえている」という実感が湧き、休薬による不安はかなり和らぎました。こまめなデータ測定があったからこそ、恐怖心に押しつぶされることなく継続できたのだと思います。
わずか3週間での悪化と休薬中止のショック
万全の体制で臨んだ休薬の臨床試験でしたが、私にとって非常に残念な結果に終わってしまいました。休薬を開始して3週間ほど経ったころの血液検査で、急激に数値が悪化していることが判明したのです。
主治医からは「これ以上休薬を続けるのは良くないので、ここで臨床試験は中止して、すぐに元の薬を再開しましょう」と告げられました。「自分ももうちょっと長く休薬できるのではないか」と期待していました。それだけに、わずか3週間での中止決定には本当にがっかりし、残念な気持ちでいっぱいになりました。
同時に、「こんなに急に数値が悪くなるものなのか」という驚きと、「一度上がってしまった数値は、すぐに下がるのだろうか」「上がった数値はこの後どうなってしまうのだろう」という新たな不安が押し寄せてきました。私は休薬への未練から、すぐに主治医に対して「次の試験も受けたいんですけど」とお願いをしましたが、「今はちょっと難しいですね」と言われ、まずは安全を最優先にして治療を再開することになりました。
薬を飲み続けることへの納得感
臨床試験が中止となり、私はスプリセルの服用を再開しました。「数値が元に戻らなかったらどうしよう」と不安に思っていましたが、薬を飲み始めたら、すぐに血液検査の数値が改善し、元の安定した状態に戻ったのです。
この経験を通じて、私は薬の効果の高さに心底驚かされました。毎日ただ漠然と飲んでいた薬が、実はこれほどまでにしっかりと私の体の中で病状をコントロールしてくれていたのだという事実を、数値の変化という形で目の当たりにしたのです。
休薬という最終目標は達成できませんでしたが、「自分が飲んでいる薬の真の力」を、医師の安全な管理の下で実体験として確認できたことは、私にとって非常に大きな収穫でした。薬をやめればすぐに病気が進行するという現実を知ったことで、薬を飲み続けることへの納得感が生まれました。
再び臨床試験へ参加したい理由
臨床試験は短期間で中止となってしまいましたが、参加したことに後悔は一切ありません。むしろ、薬を止めたらどうなるのかという経過を自分自身の体で知ることができ、本当に良かったと思っています。
その後、私はスプリセルを長期間服用したことによる胸水などの副作用を経験し、タシグナへの変更を経て、現在はセムブリックスを服用しています。幸いにもこの薬が非常によく効いており、副作用もなく、現在は再び3か月に1回の通院ペースに戻っています。薬の種類も3つ目に入ったため、「これが効かなくなったら次はどうなるのだろう」という不安はありますが、同時に医療の進歩への期待も持っています。
もし今後、私が今飲んでいるセムブリックスで長期間数値が安定している患者を対象にした、新しい休薬の臨床試験などがあれば、私はまた迷わず参加してみたいと思っています。「薬を止めたい」という最終目標がある限り、チャンスがあれば何度でもトライしたいのです。
治験や臨床試験に参加するということは、自分の治療の可能性を探るだけでなく、そこから得られたデータが病院や製薬企業に蓄積され、未来の医療や他の患者さんの治療に役立つという意味を持っています。私のような一患者の挑戦とデータが、病気と闘うための新しい治療法の確立に少しでも貢献できるのであれば、それはとても意義のあることだと感じています。
治験や臨床試験を検討されている方へのメッセージ
今、治験や臨床研究への参加を検討されている方にお伝えしたいことがあります。
手厚いサポート体制を信じて、まずは話を聞いてみてください
治験や臨床試験と聞くと、「自分の体がどうなってしまうのか」と未知の恐怖や不安を感じ、参加には大きな勇気がいると思います。しかし、試験中は通常の治療以上に細やかな検査体制が敷かれ、主治医がしっかりと伴走し、安全を第一に守ってくれます。一人で不安を抱え込まず、まずは主治医の説明を納得いくまで聞いてみてください。
あなたの挑戦が、未来の医療と誰かの希望につながります
治験や臨床試験に参加することは、ご自身の治療の可能性を広げるだけでなく、そこから得られたデータが将来の医療の発展に直結します。一人の患者のデータが、同じ病気で苦しむ未来の患者さんを救う新しい薬の開発に役立つのです。もし条件が合い、主治医からの提案があったなら、前向きな気持ちで、ぜひトライすることを検討してみてください。
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