写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:紫陽花さん(ニックネーム)
年代:60代
性別:女性
家族構成:夫との2人暮らし(子ども2人は独立)
仕事:小学校の放課後子ども教室(診断時は塾経営)
がんの種類:卵巣がん(漿液性腺がん)
診断時ステージ:ステージ3C
診断年:2009年
現在の居住地:高知県
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用には個人差があります。オンコロマイストーリー含め、ネット上の情報には、進行や再発といった厳しい闘病を経験された方の発信が多く残る傾向がありますが、実際には再発なく平穏に過ごされている方も数多くいらっしゃいます。情報の一つとして受け止め、治療方針の決定の際には、必ず主治医や医療従事者にご相談ください。
2009年、婦人科検診を機に卵巣がんのステージ3Cと診断された紫陽花さん。全摘手術と抗がん剤治療後も、約1年という短いサイクルで再発を繰り返すなど、計8回に及ぶ再発と過酷な闘病を経験しました。一時は標準治療の限界に直面したものの、治験への参加を経て現在は寛解状態を保っています。17年に及ぶ治療の経緯や、仕事とボランティアを通じて社会とつながり続ける現在の生活、そして医療の進歩への思いについてお話しいただきました。
自覚症状のないまま婦人科検診で指摘された卵巣の腫れ
私は元々、自分で2つの学習塾を経営していました。2009年6月、自覚症状は全くなかったのですが、定期的に受けている婦人科検診に行った際、超音波(エコー)検査で医師から「少し卵巣が腫れていますね。詳しい検査をした方がいい」と指摘されました。
たまたまその日、検診を担当してくれた医師が、大学病院から派遣で来ている先生でした。そのため、「うちの大学病院で診ましょうか」と言っていただき、そのままスムーズに大学病院への紹介状を書いてもらうことができました。
大学病院では、血液検査やCT検査などを受けました。PET検査についても「受けますか」と聞かれましたが、当時はまだがんと確定診断されておらず、費用も高額になると聞いたため、PET検査は見送りました。大学病院の医師からは、「おそらく悪性であろう」という見立てが伝えられ、まずは手術を行う方針となりました。
術後の病理診断でステージ3Cが確定
大学病院での検査後、実際の治療については、自宅からすぐ近くの総合病院で受けることに決めました。一番の理由は通院の利便性でしたが、もうひとつの理由として、当時の大学病院では手術の予約がいっぱいで、手術を受けられるのがだいぶ先になってしまうと言われたこともありました。できるだけ早く手術をしてほしかったため、9月に総合病院で手術を受けました。
手術では、子宮、両側の卵巣と卵管、大網などすべてを摘出しました。リンパ節に関しては「取ってもあまり意味がない」と説明されていました。手術後の病理検査の結果、がんの組織型は漿液性腺がんでした。さらに、腹膜播種と、事前の検査では見つかっていなかった肝臓の被膜に張り付くような播種があることもわかりました。そのため、ステージは3C、あるいは4(肝臓内まで浸潤していれば)に近い状態であると説明を受けました。
術後化学療法の副作用により仕事の継続を断念
手術で目に見える範囲のがんや転移巣を取り切った後、残ったがん細胞を叩くために、dose-denseTC療法(パクリタキセルとカルボプラチン)という抗がん剤治療が始まりました。
この治療法は、パクリタキセルを3週に1回投与する通常のTC療法と異なり、毎週(週に1回)投与するやり方でした。そのため、全部で18回、期間にして約4か月半をかけて治療を行いました。副作用に関しては、私は吐き気に弱かったのか、吐き気だけは非常に強く現れました。当時は今ほど良い吐き気止めの薬がなかったこともあり、激しい吐き気に苦しめられながらの治療となりましたが、吐き気以外の副作用はあまり感じませんでした。
しかし、抗がん剤治療と並行して、自分が経営していた塾の仕事を続けることは体力的に非常に困難でした。私はこの仕事にやりがいを感じており、辞めたくはなかったのですが、「この状態では生徒たちに十分な指導ができない」と判断せざるを得ませんでした。他の先生に生徒を引き継いでもらい治療に専念することになりました。
約1年ごとに繰り返す再発と治療
dose-denseTC療法を終えた後、2010年の春ごろには画像上でがんが見えなくなりました。このタイミングで総合病院の主治医が退職されたため、私は最初に検査を受けた大学病院へ転院し、そこで経過観察を続けることになりました。
しかし、この状態は長くは続きませんでした。初回の治療が終わってから約8か月後、お腹の中に再発していることがわかりました。治療方針は、まずは手術でお腹の中の再発巣を切除し、その後に再びdose-denseTC療法を行うというものでした。
その後も、私の場合は「約1年が経過するたびに再発する」というサイクルが続きました。2回目、3回目と再発を繰り返し、6回目の再発に至るまでそのたびに開腹手術をし、抗がん剤治療を行うという過酷な闘病生活となりました。手術は初発も含めて、合計で7回も経験しました。
アレルギーによる治療薬の変更と標準治療の限界
再発治療のたびにdose-denseTC療法を繰り返していましたが、4回目の再発治療のころ、ついに私の体に限界が訪れました。長期間同じ薬を使い続けたためか、抗がん剤に対するアレルギー反応が出るようになってしまったのです。そのため、アレルギーの原因と疑われる薬剤を外して単剤にしたり、別の種類の抗がん剤に変更したりして治療を続けましたが、白血球の数値がなかなか上がらなくなり、抗がん剤の投与自体が難しくなっていきました。
そして、6回目の再発治療の際、私は手術後に腸閉塞を起こしてしまいました。退院予定だった日に症状が現れ、そのまま約1か月間、絶食状態で入院することになってしまったのです。体力が著しく低下する中、なんとか抗がん剤治療を再開しようと試みました。しかし、薬の濃度を薄くして投与しても、体に入れた瞬間に強いアレルギー反応が出てしまい、治療を続けることは不可能でした。主治医からは「もう今のあなたに使える抗がん剤はありません。これで治療は終わりです」と告げられ、標準治療の手立てがなくなってしまったのです。
治験という新たな希望
しかし、私はそこで絶望して立ち止まることはありませんでした。17年という長い闘病生活の中で私が学んできたのは、「医師任せにせず、自分でも勉強して納得して治療を選ぶこと」の重要性です。初期のころはインターネットの情報も玉石混交で、どれを信じていいかわかりませんでしたが、治療を重ねるうちに、信頼できる情報をしっかりと取捨選択できるようになっていました。標準治療の限界が見えたころ、私はインターネットで必死に調べ、免疫チェックポイント阻害薬の治験があることを見つけ出していました。
「もう標準治療はない」と言われた後に7回目の再発が判明し、まさに絶望的な状況でしたが、私は「それなら治験を受けたい」と考えました。そんなとき、夫が著名な婦人科の医師の元へセカンドオピニオンに行き、新たな道を切り開いてくれました。その先生の紹介でがんセンターを受診したところ、運良く私がインターネットで調べて受けてみたいと希望していた免疫チェックポイント阻害薬の治験の募集が行われていました。参加には「前回治療から半年で再発していること」などいくつかの厳しい条件がありましたが、すべての条件をクリアして無事に参加できることになりました。
社会復帰への思いと現在の活動
標準治療が終了し、一時は「もうだめかもしれない」と終活を意識した時期もありました。しかし、治験に参加して約3年半にわたり治療を受けたことで、がんは小さくなりました。治験を終了した半年後には一度局所の再発(8回目の再発)がありましたが、救済療法として放射線治療を受けて乗り切り、そこから現在に至るまで約5年間、再発することなく元気な生活を送ることができています。
体調が安定してくると、「また社会とつながりたい」という思いが強くなりました。5回目の再発治療の合間から少しずつ始めていたのですが、現在は小学校の「放課後子ども教室」で、子どもたちの勉強を見るアルバイトをしています。塾を経営していた頃のようにフルタイムでバリバリ働くことはできませんが、それでも子どもたちと接し、社会の役に立てているという実感が、私の毎日の大きな生きがいになっています。
17年に及ぶ闘病生活では何度も絶望の淵に立たされましたが、諦めずに治療の道を模索し続けたことで、今の穏やかな日常を手にすることができました。一度は死を覚悟したからこそ、これから先も一日一日の重みを噛み締めながら、私らしく社会とつながり、充実した時間を重ねていきたいと思っています。
今、がんと向き合っている方へのメッセージ
今、がん治療をしている方にお伝えしたいことがあります。
医療の進歩を信じて、希望を持ち続けてください
私が卵巣がんと診断されてから17年目に入りますが、この十数年の間だけでも、がん治療の医療技術は目覚ましく進歩しています。私自身、新しい薬の波が来るのを肌で感じてきました。今、つらい治療の渦中にいる方も、医療の力を信じて、決して希望を捨てないでください。
ご自身で調べて、納得のいく治療を受けてください
治療方針を決める際、お医者さんにすべてを任せきりにするのではなく、ご自身でも病気や薬について調べ、勉強することが大切です。自分がどんな治療を受けているのかを理解し、納得した上で治療に臨むことが、闘病への強い意志につながります。
つらいときこそ、前向きに楽しむことを見つけてください
長い闘病生活の中では、再発の恐怖や治療の副作用など、つらく苦しいことがたくさんあると思います。しかし、病気のことばかり考えてふさぎ込むのではなく、趣味やボランティア、仕事など、自分が心から楽しいと思えることを見つけて、できるだけ明るく前向きに過ごす時間を大切にしてください。
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