写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:あつおじさん(ニックネーム)
年代:40代
性別:男性
家族構成:両親と3人暮らし
仕事:会社員(契約社員)
がんの種類:頭頸部がん(下歯肉がん)
診断時ステージ:ステージ2
診断年:2021年
現在の居住地:千葉県
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用には個人差があります。オンコロマイストーリー含め、ネット上の情報には、進行や再発といった厳しい闘病を経験された方の発信が多く残る傾向がありますが、実際には再発なく平穏に過ごされている方も数多くいらっしゃいます。情報の一つとして受け止め、治療方針の決定の際には、必ず主治医や医療従事者にご相談ください。
2021年夏、親知らずの抜歯後の治りの悪さを機に、あつおじさんは下歯肉がんのステージ2と診断されました。手術や化学放射線療法を受けたものの、1年足らずの間に3度の再発を経験し、外科手術不可能と宣告されました。しかし、複数の医師の意見をもとにBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)を選択し、奏効を得ました。過酷な治療を乗り越えるまでの経緯や現在の生活についてお話しいただきました。
親知らずの抜歯後に判明した下歯肉がん
2021年の夏、かかりつけの歯科クリニックで親知らずを抜こうとしたことがすべての始まりでした。そのクリニックでは抜歯することが難しい状態ということで、大学病院の歯科口腔外科を紹介されました。無事に抜歯はできましたが、傷の治りが良くありませんでした。そこで組織を採取して検査をしたところ、組織の異型性が強くがんの可能性があると告げられ、がん専門病院を紹介されました。
がん専門病院の外科を受診し、鼻からスコープを入れて確認した際、医師からはっきりと「これはがんですね」と言われました。検査の結果、右下の歯肉にできた下歯肉がんのステージ2と診断されました。
当時まだ30代でがんと診断されましたが、母親や親戚にもがんを経験した人が多くいたため、自分ががんになったことに対してそれほど大きな驚きはありませんでした。むしろ、歯科口腔外科で「がんの可能性がある」と言われていましたが、はっきりと診断されたわけではなかったため、がんと診断されたことで「これから治療が始まるのだ」と見通しが立ち、少しほっとしたのを覚えています。
負担の少ない手術でアルバイトへの早期復帰
最初の治療方針は、手術による切除でした。比較的早期であったため、口の中から右下顎の一部を切除するというものでした。2021年10月上旬に手術を受けましたが、手術の負担はそれほど大きくありませんでした。術後数日でお粥などの食事から固形物を食べられるようになり、2週間で退院することができました。
実はがんになる前、私はうつ病を患って会社を辞めていました。がんと診断されたときは社会復帰を目指し、少しずつアルバイトを始めていたところでした。アルバイト先には事情を説明して1か月間だけ休みをもらい、退院した翌月からはすぐに元のアルバイトに復帰することができました。仕事の内容も変わらず、順調に社会生活に戻れたと考えていました。
術後3か月での再発から始まった立て続けの治療
初回の手術後の経過は順調だと言われていましたが、2022年の1月、入浴中に首の下にゴリッとした硬いしこりを見つけました。これは良くないものだと直感し、すぐに病院に電話をして受診したところ、頸部リンパ節への再発であることがわかりました。
わずか3か月で見つかった再発でしたが、手術しかないと言われ、2月に2回目の手術を受けました。このときは右頸部リンパ節の郭清だけでなく、筋肉や内頸静脈、神経も一部取るという大掛かりなものでした。
さらに入院中、医師から「かなり進行していたため、完全に取り切れているかわからない。術後に抗がん剤と放射線治療もやりましょう」と提案されました。手術の回復を待って3月の終わりから5月にかけて、再発予防を目的としてシスプラチンと放射線療法を組み合わせた化学放射線療法を1クール(シスプラチン7回と放射線療法33回)受けました。
救済手術からわずか1か月で3度目の再発が判明
厳しい化学放射線療法を受けましたが、残念ながら効果はありませんでした。治療を終えた2022年6月に、頸部に2度目の再発が確認されました。
2度目の再発に対しては、サルベージ手術(救済手術)を受けました。頸部の病変の切除に加え、皮膚も切除する必要があったため、太ももから採取した皮膚を移植する植皮術を行いました。このときは抗がん剤を使用せず、まずは回復を待つことになりました。
しかし、植皮をしてガーゼで覆っていた部分からの出血が止まらず、次第に硬いものが出てきました。7月に病院へ行き、生検を行いましたが、結果が出る前から医師も私も3度目の再発であることを確信していました。サルベージ手術からわずか1か月後のことでした。
手術不可の宣告を受けてBNCT治療を決断
3度目の再発により、外科の医師から「もう手術はできない」と告げられ、治療は内科へバトンタッチされました。まずはがんの勢いを止めるため、アービタックス(セツキシマブ)とパクリタキセルを用いた抗がん剤治療が始まりました。
並行して、外科の医師から「BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)」と「光免疫療法」という2つの治療の選択肢を提案され、考えておくようにと言われました。私は治療を検討するにあたり、内科の主治医にも相談しました。内科の主治医は光免疫療法の臨床研究もされている先生でしたが、「あなたの場合はがんの進行が早すぎるため、光免疫療法では追いつかないだろう。選ぶのであればBNCTではないか」とアドバイスをくれました。こうした専門家の意見を検討し、アービタックスとパクリタキセルを1サイクル行った後、BNCT治療を受けることを決断しました。
BNCT後の画像検査で「病変の縮小維持」
BNCTは私が通っていたがん専門病院では受けられなかったため、治療が可能な別の県にある総合病院を紹介されました。2022年9月にその病院でBNCTを受けました。
治療の効果は劇的でした。BNCT後、年内の画像検査の報告書には、「病変の縮小維持」と記載され、主治医からは「これはもう完全奏効と言っていいのではないか」と告げられました。その後は新たな治療を行うことなく経過観察に入り、がん専門病院とBNCTを受けた総合病院の2か所を通院していましたが、現在は、がん専門病院のみで経過観察を続けています。最後の治療から約4年が経過した現在も、再発の兆候は見られていません。
後遺症と向き合いながら再就職
3度目の再発がわかったとき、治る見込みが非常に低いと言われたため、続けていたアルバイトは辞めていました。BNCTで完全奏効と言われてから半年から1年ほど経ち、体調も落ち着いてきたところで、再び社会復帰を目指して仕事を探し始めました。
元々は開発の仕事をしていましたが、2025年3月に同種の会社に契約社員として就職することができました。私は精神疾患の障害者手帳を持っていたため、障害者雇用の枠組みも活用しながら、業務量を少し減らすなどの配慮を得て働いています。
度重なる手術や放射線治療、BNCTの影響により、見た目にはわかりにくいですが、口の動きにくさやこわばりといった障害(後遺症)が残っています。そのため、会話が多い業務やプレゼンテーションなどは避けさせてもらいながら、無理のない範囲で仕事を続けています。
がんを経験しキャリアへの価値観が変化
がんを経験し、また一度は「治らない」と宣告されたことで、私の仕事や人生に対する価値観は少し変わりました。以前は年収や資格といったキャリア形成に非常にこだわって頑張っていましたが、病気をしてからは「あまり意味がなかったな」と気づき、キャリアをひたすら追うことはなくなりました。現在は、体に無理のない範囲で長く仕事を続けられれば良いと考えています。
それでも仕事を再開したのは、やはり社会の中に身を置き、社会復帰を果たしたかったからです。会社側も病気に対する意識が高く理解があるため、社会とのつながりを持ちながら、できるだけがんになる前の状態に近い生活を送りたいという思いで日々を過ごしています。頭頸部がんは治療薬の選択肢が多くありませんが、今後新しい薬や治療法が広がり、チャンスが増えていくことにも期待を持っています。
治療方針の決定に役立った院内での連携
私は医療関連の会社で働いていたため、医師とのコミュニケーションにおいて専門用語がわからないというようなことで困ることはありませんでした。そのため、主治医も基本的な説明を省き、治療成績や論文のデータなどの細かい話をしてくれたことで、意思決定が早くなった部分はあると思います。主治医から十分な情報とデータを得られていたため、不安に駆られてインターネットの情報を調べすぎることはしませんでした。情報は病院に置いてある説明文書や資料などを中心に読んでいました。
また、治療方針に迷った際、すぐに他院へセカンドオピニオンに行くことには少し疑問を持っています。セカンドオピニオン先の医師は、1枚の紹介状と画像データ、そして限られた情報だけで判断しなければなりません。
私の場合、同じ病院内にいる外科、内科、放射線科、歯科のそれぞれの医師に意見を求めました。普段から自分を診てくれている同じ病院の医師であれば、「この患者は積極的に治療したい人だ」「息苦しそうにしている」といった細かい状態や背景を共有した上で、より正確な判断をしてくれます。安易に他の病院へ行く前に、同じ病院の別の科の先生に意見を聞くことは、非常に重要だと感じています。
振り返れば、1年足らずの間に再発を繰り返し、一時は手術も不可能と言われる絶望的な状況の連続でした。しかし、そうした中でも投げやりにならず、納得して治療を受けてきたからこそ、今こうして再び社会に復帰できているのだと思います。過酷な治療によって失ったものや後遺症もありますが、今はそれ以上に、仕事を持ち「当たり前の日常」を過ごせること自体が、私にとって何よりの喜びです。これからも自分のペースを大切に守りながら、この穏やかな日々を長く続けていきたいと考えています。
今、がんと向き合っている方へのメッセージ
今、がん治療をしている方にお伝えしたいことがあります。
信頼できる正確な情報を手に入れてください
病気になると不安になり、インターネットで多くの情報を探してしまうかもしれません。しかし、ネット上には不確かな情報も溢れています。まずは、病院で配られている説明文書や、病院に設置されている公式な資料など、信頼できる情報を手に入れることを心がけてください。
同じ病院内で複数の医師の意見を聞いてみてください
治療方針で迷ったとき、すぐにセカンドオピニオンを考えず、まずは自分の状況をよく知っている「同じ病院内の別の科の医師」に意見を聞いてみることをお勧めします。あなたの全身状態や治療への向き合い方を理解している医師たちの連携のほうが、より実態に即した的確な判断につながることがあります。
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