写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:じゅんさん(ニックネーム)
年代:50代
性別:女性
家族構成:夫と子ども2人との4人暮らし
仕事:会社員
がんの種類:喉頭がん
診断時ステージ:ステージ2
悪性度:不明
診断年:2014年
現在の居住地:大阪府
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用には個人差があります。オンコロマイストーリー含め、ネット上の情報には、進行や再発といった厳しい闘病を経験された方の発信が多く残る傾向がありますが、実際には再発なく平穏に過ごされている方も数多くいらっしゃいます。情報の一つとして受け止め、治療方針の決定の際には、必ず主治医や医療従事者にご相談ください。
2014年に喉頭がんと診断され、放射線と抗がん剤による治療を受けたじゅんさん。その後、9年間の経過観察を経て、2023年に再発が判明。BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)や、2度目の再発に対する免疫チェックポイント阻害薬による治療を重ねながらもがんの進行を抑えきれず、2025年に喉頭全摘出手術を決断しました。声を失うという大きな試練と向き合いながら、食道発声の習得に励み、仕事を継続しているこれまでの治療の経緯や心の動き、自ら情報を集めることの重要性についてお話しいただきました。
声がれがきっかけで判明した喉頭がん
最初に診断を受ける数年前から声がかれており、近くの耳鼻咽喉科クリニックでは声帯ポリープだろうと言われて通院していました。ある著名人が喉頭がんであることを公開されたニュースを知り、念のためクリニックに確認に行きましたが、その際もやはり声帯ポリープと言われました。
しかし、久しぶりに会った元同僚に別のクリニックを受診するよう勧められ、そちらを受診したところ、がんの典型例ではないものの総合病院の受診を勧められました。総合病院で生検の手術を受けた結果、2014年5月に喉頭がんのステージ2であることがわかりました。
それまでは出産以外で入院をしたことがなく、自分ががんになったとは信じられませんでした。また、20年前に抗がん剤で見た目が変わるほど衰弱した人を見た経験があり、放射線治療よりも抗がん剤治療に対する不安が強くありました。しかし、看護師をしている友人から「今はかなり医療が進んでいるので不安がらずに治療を受けた方が良い」と助言をもらい、治療に向き合うことができました。
抗がん剤と放射線治療、それぞれの副作用対策
2014年の治療では、手術は行わず、放射線治療と抗がん剤(シスプラチン)を併用する化学放射線療法で2か月間入院しました。3週間おきに3クールの点滴治療を受けました。1回目の抗がん剤治療では、点滴による気だるさと吐き気がありましたが、口内炎ができないように食事は残さず食べていました。
ただ、3回目の点滴の2日後に食事のイカの臭いに反応して吐いてしまい、その日は食べられませんでした。しかし、翌日からは残さず食べることができたおかげで、口内炎は数個できたくらいですみました。当時はスマートフォンの機能も今ほどではなく、自分で情報を収集するにも限界がありましたので、病院スタッフと看護師の友人の助言が頼りでした。
家族の協力と友人からのメールに支えられた入院生活
当時、面会制限はありませんでしたが、つらい治療中に友人へ八つ当たりをしてしまうのを避けるため、直接の面会は一人の友人に一度だけにとどめました。同僚や上司にも、面会ではなくメールでの連絡をお願いしました。その中で、直属の上司ともう一人の友人が毎日メールをくれたことは、入院中の大きな支えになりました。
一方、家庭では長男が高校2年生、次男が中学1年生でした。私が入院で不在になるうえに、夫も朝5時ごろには出勤してしまうため、親が息子たちの朝の支度や送り出しをしてやれない状況でした。両親も遠方で頼れなかったため、学校の担任には事情を話して遅刻の可能性があることを伝えました。また、ごみ出しは夫が朝の出勤時にしていくことになるため、近所の方にはごみを出す時間が早くなる旨を事前にお伝えしておきました。私自身も病院から毎週末の外泊許可をもらい、なんとか2か月の入院生活を乗り切る工夫をしました。
心配していた子どもたちですが、次男が長男を毎朝起こし、自分たちでコーンフレークやバナナなどの簡単な朝食を用意して、一度も遅刻せずに登校してくれました。子どもたちが手のかかる幼い時期ではなかったことに、とても救われました。夫もほぼ毎日、洗濯物の交換のために病院へ来てくれました。面会時間はいつも10分ほどだったため看護師さんは驚いていましたが、帰宅後の夕食作りや家事をこなすため、夫なりに必死だったのだと思います。
9年目の再発とBNCT治療への挑戦
2か月にわたる化学放射線療法の結果、画像上からがんが見えなくなり、無事に退院することができました。退院後は職場にも復帰し、総合病院での5年間の経過観察が終了した後も、半年に1回のペースで最初のクリニックで経過観察を続けていました。
しかし、2022年11月に新型コロナウイルスにかかった後、血の混じった痰が出ました。通院していたクリニックではコロナの影響だと言われましたが、初期治療から9年となる2023年4月ごろには声がれがひどくなり、痛みも出てきました。
受診する予定だった朝にも血の混じった痰が出て、内視鏡検査で腫れが見つかりました。土曜日だったため月曜日に総合病院に連絡をとってもらい、火曜日に受診、翌日に検査入院となり、2023年5月に再発が確認されました。
再発が確定したころ、私は新聞で喉頭全摘出手術を受けた方の闘病記事を読んでいました。喉頭を全摘出すると、首に呼吸用の穴(気管孔)ができます。気管孔にお湯が入らないよう入浴に気を使うことや、息を止めてお腹に力を入れる「息む(いきむ)」ことができなくなり排便に苦労することなど、声を失う以外にも生活に大きな支障が出ることを知りました。ただ、発声方法には食道発声が困難な場合にはシャント発声というものがあることも知りました。
それでも日常生活の不便さを知ると、喉頭全摘出はどうしても避けたいという思いが強くなりました。手術を避けたいあまり、「もし他に転移していて手術ができない状態なら、喉頭を全摘しなくて済むかもしれない」と極端なことまで考えてしまうほどでした。そこで、PET検査を受ける直前に、元同僚の夫がBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)センターで研究をしていたことを思い出し、ホームページを確認しました。
ホームページを見た際は自己判断で対象外だと思い込んでいました。しかし、今後のことについて職場で上司と話していた際、「実は元同僚の夫がBNCTセンターで働いている」と伝えたところ、「ダメ元で聞いてみてはどうか」と背中を押されました。さっそく元同僚に連絡をとったところ、彼女の夫に確認してくれ、私でも対象になる可能性があると教えてもらえました。
治療の選択肢が広がったものの、主治医に対して「別の病院で治療を受けたい」と申し出るのには大変勇気がいりました。そこで、いきなり主治医に言うのではなく、まずは総合病院のがん支援ナースに電話をして相談に乗ってもらいました。がん支援ナースに話を聞いてもらえたおかげで、主治医に「BNCTを受けたい」としっかり伝えることができ、大学病院へ転院しました。
希望してから初診まで3週間かかりましたが、事前に気管切開手術を受ける必要があり、受診の翌日に総合病院で手術をしてもらいました。大学病院では、「腫瘍が縮小する割合(奏効率)は約70%と高いものの、画像上がんが認められなくなる状態(完全奏効)になる人は30%くらいである」と、再発治療の厳しい現実も説明されました。それでも希望をつなぎ、再発の診断から2か月後の2023年7月下旬にBNCT治療を受けました。
気管切開の生活と喉頭全摘への葛藤
BNCTを受けるための準備として行った気管切開での生活は、想像以上に不便なものでした。注意しながらの入浴の大変さと排便の際に息むことが難しくなりました。また、発声可能なチューブに変えてもらっても、チューブが気管に接触する位置によって咳き込むというしんどさがありました。
しかし、BNCTのための気管切開は、あくまで治療中の呼吸を確保するための一時的な処置です。もし喉頭全摘手術を受けていたら、この不便な状態が永久に続くことになります。この一時的なチューブ生活を通して、全摘後の不便な生活を身をもって疑似体験したことで、「やはり一生この状態になる全摘手術は絶対に避けたい」と、自分の選択に対する思いがかえって強くなりました。
治療後は、紹介元の総合病院とBNCTを受けた大学病院の両方に通院することになりました。それぞれが約2週間おきに診察を入れてくれたため、手厚く診てもらえるのは非常にありがたかったです。しかしその反面、通院のたびに頻繁に仕事を休まなければならず、職場に対して気を遣い、申し訳なく思う日々でもありました。
2度目の再発と免疫チェックポイント阻害薬による治療
BNCT治療から約10か月後の2024年5月に、2度目の再発がわかりました。大学病院の先生と総合病院の主治医ともに「再度のBNCT治療はあまり効果が期待できません。第一選択は喉頭全摘手術です」と言われました。「BNCT後の手術は縫合不全のリスクがあり、また、広く病巣を切除することが基本なので、喉頭温存 手術は難しい」と言われてしまいました。どうしても全摘を避けたかった私は、インターネットで必死に調べ、頭頸部外科の名医を見つけました。
そこで大学病院の先生に「その名医に温存手術ができないか相談したい」と打ち明けたところ、「恐らくその名医も温存手術はしないでしょう。また、総合病院の今の主治医もその名医と手術の差はないと思います」と言われました。私自身が全摘手術を受けるかどうかを考える時間稼ぎとして、進行を抑えるための薬物療法を勧められ、2024年7月から11月まで免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダと抗がん剤(ネダプラチンと5-FU)治療を受けました。
1回目の抗がん剤治療では、点滴による気だるさと吐き気があり、食後にすぐ横になって吐いてしまうことがありました。そこで、点滴が終わってからはスマートフォンで副作用対策を検索し、がん情報サービスや各地域の拠点病院、がんセンターがウェブで公開している患者向けの指導パンフレットなどの資料を調べました。食後にはしばらく体を起こしておくことや、においの少ない玄米フレークなど、口内炎があっても食べやすい食事について情報を得ました。ただし、抗がん剤の影響で軽度難聴になり、現在も日中は補聴器を使用しています。それについても事前にいろいろな副作用の可能性について説明を受けて自分自身で納得したうえで選択した治療法なので、免疫チェックポイント阻害薬を受けたことへの後悔はありません。
最初の1、2クールは入院で行い、3~6クールまでは3週間おきに1週間入院して治療し、残りの2週間は自宅療養をしました。私の職場は在宅勤務が難しかったため、この期間は仕事を休みました。
※がんの薬物療法に伴う副作用や後遺症の出方や程度には、大きな個人差があります。また、現代の医療では副作用をあらかじめ予防したり、症状を抑えたりする対策(支持療法)が非常に進歩しています。体験談の描写に過度な不安を抱かず、主治医や医療スタッフに安心してご相談ください。
がん専門病院への転院と喉頭全摘手術の決断
その後、2025年3月に再びがんの進行がわかりました。主治医からは別の大学病院で光免疫治療を受けることを提案されましたが、私はがん専門病院で喉頭温存手術を受けたいと伝え、転院しました。
がん専門病院の部長先生からは、BNCT治療の影響で喉頭温存手術はできないと言われました。光免疫治療も効果が薄く、喉頭全摘手術とリンパ節切除で寛解を目指すか、積極的な治療をせず緩和ケアへ移行するかの2択しかないと告げられました。
医師からは1か月考えても良いと言われましたが、私が1週間で決めると伝えました。その後、がん専門病院のがん支援ナースにも相談しました。痛みのコントロールは薬で可能だと聞いていたため、痛みよりも呼吸困難など息苦しくなることは避けたいと思いました。また、入浴時に肩までつかることはできませんが、自宅のお風呂なら姿勢を工夫すれば背中側はお湯につかれると確認でき、全摘手術を受ける決意をしました。
喉頭全摘手術と職場復帰への道のり
2025年5月に、喉頭全摘出手術とリンパ節切除を受けました。BNCT治療の影響で入院期間が2か月になる可能性も伝えられていましたが、部長先生が手術をしてくださり、結果的に最短の3週間で退院することができました。
声を失った不便さはありますが、気管切開でチューブが入っていたときよりも楽になったと感じることも多いです。発声については、自己流で行うと変な癖がつくと調べて知っていたため、退院した翌日に発声教室の説明会に参加しました。
退院2日後から1か月間は週に3回通い、仕事に復帰してからは2週間から1か月に1回のペースで通いました。初日から「あ」という食道発声ができ、1年以上が経ち、現在では短文なら話せるようになりました。
仕事を続ける意義と周囲への感謝
全摘手術を受けるにあたり、声を失うことで仕事への影響が避けられないため、手術前に会社へ相談をしていました。会話が必要な業務もありましたが、会社からはメールやチャットなどを使った業務で対応できるよう勤務形態に都合をつけてもらえました。
がん患者が仕事を失うケースもある中で、事情を汲み取って仕事を継続させてくれた会社には大変感謝しています。仕事を続けることは、収入面だけでなく、社会とのつながりを保ち、毎朝起きて生活のリズムを崩さずに日常を送るための大きな支えになっています。
振り返ると、家族はもちろんですが、職場や友人たちの助言の力が私の気持ちを大きく支えてくれました。周囲の方々に恵まれたと心から感謝しています。
今、がんと向き合っている方へのメッセージ
今、がん治療をしている方にお伝えしたいことがあります。
信頼できる情報源を見つけて参考にしてください
現在は情報が多く、正しい情報にたどり着きにくい状況です。私は頭頸部外科学会やがん情報サービスのホームページを参考にしました。また、手術を行うか迷ったときには、患者会のホームページや同じ病気をした方の発信を読んで参考にしました。信頼できる情報源を見つけて、確かな情報を参考にしてください。
周囲の助言やサポートを頼ってください
私の場合、友人からの助言や職場の理解が治療を続ける上で大きな力になりました。つらいときは一人で抱え込まず、周囲の人やがん支援ナースなどの専門家に相談し、自分にとって納得のいく選択をしてください。
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