写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:KTさん(ニックネーム)
年代:50代
性別:女性
家族構成:夫と子どもとの3人暮らし
仕事:臨床心理士
がんの種類:乳がん(両側)
診断時ステージ:ステージ2A(左)、ステージ1B(右)
診断年:2015年
・現在の居住地:大阪府
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
2015年、臨床心理士のKTさんは人間ドックをきっかけに異常が見つかり、総合病院での精密検査の結果、両側乳がんと診断されました。両側の乳房温存手術と術後補助化学療法を受け、ご自身が勤務する病院で仕事を休むことなく放射線治療を乗り越えました。術後に発症したリンパ浮腫とどのように付き合い、臨床心理士という職業柄、ご自身の心とどう向き合ってきたのかについてお話しいただきました。
人間ドックでの異常指摘と総合病院での精密検査
2015年の9月、毎年受けている人間ドックでマンモグラフィ検査を受けました。実は前年の検査でも少し引っかかっていたのですが、要経過観察のような軽い評価だったため、あまり気にしていませんでした。しかし、2015年の検査では明確に「病院に行ってください」という結果が出ました。
精密検査を受ける病院を選ぶにあたり、知り合いの医師に良い病院はないか相談し、地域がん診療病院に指定されている自宅からも比較的近い総合病院を受診することにしました。もし本当にがんであった場合、そのまましっかりとした治療を受けられる病院のほうが良いと最初から考えていたためです。
総合病院を受診し、マンモグラフィ、超音波(エコー)検査、そして針生検を受けました。検査の結果、人間ドックで指摘されていた左胸だけでなく、右胸にもがんがあることがわかりました。
両側乳がんの確定診断と乳房温存手術
精密検査の結果、正式に両側乳がんと診断され、サブタイプは両側ともルミナルAであることがわかりました。最終的なステージは左側が2A、右側が1Bでしたが、左側がステージ2Aと確定したのは、手術でリンパ節への転移が判明したためです。
両側にがんが見つかったことは驚きでしたが、クリニックのような場所で片側だけを治療して終わるのではなく、経験と実績のある総合病院でしっかりと検査をしたおかげで、隠れていた右側のがんも見つけてもらえたことは本当に良かったと考えています。
治療方針として、まずは手術を行うことになりました。両側とも同時に乳房温存手術を行いました。当初から全摘手術の提案はなく、がんが小さかったため乳房温存手術が可能だという説明を受けました。
実際の手術では、右胸は術中の迅速病理診断で断端陽性が続き、少しずつ切除を繰り返したため、予定していた3時間ではなく4時間から5時間ほどかかりました。結果として右胸は切除する範囲が大きくなり、形は変わってしまいましたが、私自身は温存手術を選んで良かったと思っています。センチネルリンパ節生検は、両胸とも陽性でしたが、右胸は微小転移(0.2mm〜2mm)だったため、それ以上の腋窩リンパ節郭清は行いませんでしたが、左胸は2mmを超える転移があったため、腋窩リンパ節郭清を行いました。
働きながら受けた抗がん剤治療と放射線治療
手術後、再発を予防するための抗がん剤治療を行うかどうかについて主治医から説明がありました。「やるかやらないかは選べますが、年齢が若いのと両側の乳房にあったから、僕はした方がいいと思います」と言われました。私自身は副作用の懸念からあまり抗がん剤治療をしたくなかったのですが、周囲の人たちに相談すると皆が「やった方がいい」と言うため、受けることに決めました。
抗がん剤治療は、手術を受けた総合病院でAC療法(ドキソルビシン、シクロホスファミド)を行い、その後にパクリタキセルを投与しました。脱毛などの副作用がありましたが、特にパクリタキセルの投与が始まってから強いだるさを感じました。しかし、私は臨床心理士として働いており、仕事を辞めることはしませんでした。抗がん剤治療の期間中も勤務先である病院に出勤し、どうしても体がしんどいときは職場で少し休ませてもらいました。周囲の同僚も医療従事者であり、体調に対する深い理解とサポートがあったおかげで、仕事を休むことなく治療を続けることができました。
抗がん剤治療を終えた後の25回の放射線治療については、手術を受けた総合病院で実施していなかったため、勤務先の病院に切り替えて受けました。放射線治療の開始と同時にホルモン療法(タモキシフェン)の服薬も始めました。ホルモン療法の薬は現在も飲み続けていますが、そろそろ終わる予定だと言われています。
リンパ浮腫の発症と専門クリニックでのケア
私にとって、乳がん治療で最も大きな影響を受けたのは、術後に発症した後遺症であるリンパ浮腫でした。手術から少し経ったころ、職場の引っ越しと自宅の引っ越しが重なり、無意識のうちに左手で重いものをたくさん持ってしまいました。引っ越しが終わり「やれやれ」と思ったある日、ふと左手を見るとパンパンに腫れていました。慌てて受診し、リンパ浮腫だと診断されました。当時はリンパ浮腫についての知識が不足しており、発症して初めて大変さを知りました。
当時の治療を受けていた総合病院はリンパ浮腫のケアにはあまり強くなかったため、別の病院のリンパ浮腫外来へ7年ほど通いました。そこで弾性スリーブを購入し、ほぼ24時間着用してコントロールしていました。体積の左右差もほとんどなく、落ち着いた状態を保っていました。
しかし、弾性スリーブによるコントロールがうまくいっていた中で、新たに始めた登山でザックを背負って腕を圧迫してしまったことや、旅行の際に2日間にわたって紐の細いリュックを背負って歩き続けたことなどが重なり、リンパ浮腫が悪化してしまいました。特に旅行での出来事が直接の引き金となり、これまで手首までだったむくみが指にまで広がるようになったため、より積極的なケアを受けるために、医療徒手 リンパドレナージを行う専門のクリニックへ転院しました。
新しいクリニックのリンパ浮腫セラピストからは、「行動制限をする必要はなく、工夫してやればいい」と言われました。そのため、山へ行く際にはなるべく体に負担のかからないリュックを選び、下山したらすぐにケアを行うといった対策を徹底しています。自分自身で行動制限をかけることはせず、適切な工夫を凝らしながら、大好きな登山を続けています。
家族への伝え方と遺伝子検査
がんと診断された当時、娘は小学生でした。娘には「手術をしたら治る病気だから」と、割とストレートに正直に伝えました。娘は私の入院に際して、入院期間に合わせた約2週間分の手紙を事前にすべて書き、最初にまとめて手渡してくれました。私は入院中、毎朝その手紙を1通ずつ開封して読んでいました。手紙には「おはよう、今日はどう?」といった言葉が温かく綴られていましたが、本人は当時のことをあまり覚えていないようです。夫は普段から淡々としていますが、手術の時間が予定より大幅に延びたときは、「話が違う」と怒っており、彼なりにとても心配してくれていたのだと思います。
子どもが女の子であるため、遺伝の影響が気になり、昨年(2025年)BRCA遺伝子検査を受けました。私ががんになった当時は保険適用外でしたが、現在は条件を満たせば保険で受けられるようになっていたためです。結果は陰性でした。そのことを娘に伝えましたが、本人は自分にもがんになる可能性があったという事態をあまり実感していないようでした。ただ、私自身の経験から、娘には18歳からがん保険に加入させています。
がんを経験して変化した死生観と生き方
私は臨床心理士という職業柄、他の人に比べれば不安の正体を整理したり、自分の感情を客観的にコントロールしたりできていた方かもしれません。患者さんが抱える「まだ起こっていないことへの不安」の構造も理解していました。しかし、自分ががんの当事者になり、「死の恐怖」というものは、人間である以上どうしても本能的に湧き上がってくるものだと実感しました。入院中はやはりしんどさや不安があり、友人に話を聞いてもらって心を落ち着かせていました。
私の主治医は、手術後の入院期間を2週間以上と長く設けてくれ、病院でゆっくり過ごすことができました。この長い入院期間中に、これからのことについて考える時間が十分に持てました。そして、退院してすぐに仕事に復帰したことで、仕事中は病気のことを一切考えずに済み、精神的にとても助けられました。
がんになった直後は、やはり再発や転移をひどく恐れていました。少し腰痛があるだけでも不安になり、そのたびに勤務先の病院でレントゲンを撮ってもらっていたほどです。しかし、大きな再発もなく年月が経つにつれて、そのような不安は自然と薄れていきました。自分の全身の調子や体との健康的な付き合い方を見つめ直す良いきっかけをもらったのだと捉えています。
命に関わる大きな病を経験し、本能的な死の恐怖と真剣に向き合ったからこそ、日常の大概の出来事は些細なことだと思えるようになりました。細かいことを気に病むことがなくなり、むしろ病気をする前よりも生きやすさを感じながら、日々の生活を大切に過ごしています。
今、がんと向き合っている方へのメッセージ
今、がん治療をしている方にお伝えしたいことがあります。
自分の体に耳を傾け、大切にしてください
がんを経験して、全身の調子についてとても考えるようになりました。リンパ浮腫が悪化したことも、体のケアを見直す良いきっかけになったと捉えています。日々の生活の中で、自分の体と対話し、少しでもおかしいなと思うことがあれば、すぐに主治医に相談したり、専門の病院を受診することをお勧めします。日頃からの体のケアと、早めに行動を起こすことが、将来の安心につながると思います。
起きたことをどう受け止めるかが重要だと思います
人生において、病気や予期せぬ出来事が起こるか起こらないかを完全にコントロールすることはできないと思います。大切なのは、起きたことに対して自分がどのように受け止め、どう対処していくかです。不安や恐怖は人間として当然湧き上がるものですが、その感情を否定せずに受け入れ、今の自分にできる工夫や準備をしていくことで、少しずつ前を向いて歩んでいけると思います。
情報収集と適切な専門家の活用を検討してみてください
私が治療を受けた当時は、患者個人の体験談などの情報が少なかったですが、今はインターネットなどで多くの情報を得ることができます。質の高い情報を見極め、自分と同じような状況の人の体験談を参考にすることはとても役立ちます。また、治療における不安や後遺症の悩みがあれば、一人で抱え込まず、それぞれの分野の専門家を積極的に頼るようにしてみてはいかがでしょうか。専門的なケアと知識を得ることで、生活の質は大きく改善すると思います。
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