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前立腺がん、万が一に備えていた計画通り、自らの判断で重粒子線治療を決断

[公開日] 2026.07.17[最終更新日] 2026.07.14

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:ジャンビさん(ニックネーム) 年代:60代 性別:男性 家族構成:妻と2人暮らし(子ども1人は独立) 仕事:会社員 がんの種類:前立腺がん 診断時ステージ:ステージ1 診断年:2025年 現在の居住地:東北地方
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用には個人差があります。オンコロマイストーリー含め、ネット上の情報には、進行や再発といった厳しい闘病を経験された方の発信が多く残る傾向がありますが、実際には再発なく平穏に過ごされている方も数多くいらっしゃいます。情報の一つとして受け止め、治療方針の決定の際には、必ず主治医や医療従事者にご相談ください。 2025年、ジャンビさんは男性更年期障害の治療で通院していたクリニックでPSA値の上昇を指摘され、総合病院での生検を経て前立腺がんと診断されました。以前からがんへの備えをしていたジャンビさんは、担当医から手術を勧められる中、仕事への影響を最小限に抑えて通院できる重粒子線治療を選択しました。納得のいく治療を選択するための主治医とのコミュニケーションや、仕事と治療を両立させた工夫、正しい知識と信頼できるかかりつけ医を持つことの重要性についてお話しいただきました。

かかりつけのクリニックで定期的に受けていたPSA検査

2021年ごろから、日々の生活の中で強いだるさや、やる気の低下といった症状を感じるようになりました。これらは一般的な男性更年期障害の症状に当てはまっていたため、近くの泌尿器科クリニックを受診し、月に1回ほどのペースで通院を始めました。 クリニックでは男性更年期の治療と並行して、慢性前立腺炎の既往歴もあったため定期的に血液検査を行い、男性ホルモン値とともにPSA(前立腺特異抗原)の数値も計測していました。当初のPSA値はそれほど高くなかったのですが、3年ほど経過観察を続けるうちに、数値は少しずつ上昇していきました。男性更年期の治療の影響で一時的に数値が上がることもあるという話もありましたが、最終的にPSA値は5.8ng/mL程度まで上がりました。医師からは「数値が10ng/mLになるまで待つという選択肢もある」と提案されましたが、年齢的にまだ先がある身という気持ちもあり、不安を抱えたまま待ち続けるのは避けたいと考え、「早めに検査をしたい」と私から申し出ました。 クリニックの主治医に相談したところ、600床規模の総合病院を紹介してもらうことになり、そこで詳しい検査を受けることになりました。

画像検査では異常なし、生検で判明した前立腺がん

クリニックで定期的なMRI検査や超音波(エコー)検査を行っていたものの、画像上はがんと疑われるような異常な影は全く映っていませんでした。しかし、前立腺がんかどうかをはっきりさせるため、生検を目的に受診することにしました。 総合病院の初診では、問診の他にMRI検査と骨シンチグラフィを実施し、別日に生検を受けることとなりました。生検では、規定の位置に合わせて前立腺に12本の針を刺して組織を採取しました。「画像に何も映っていないのだから、もしこれで出なかったらまた来年検査しましょう」というような雰囲気での検査でした。しかし、採取した12本のうち3本の組織からがん細胞が検出されました。 2025年4月、医師から正式に前立腺がんの確定診断を受けました。診断時のステージは1で、がんの悪性度を示すグリソンスコアは6で悪性度も低いことがわかりました。

20年前から決めていた重粒子線治療という選択

私は医療関連の企業に勤めており薬剤師でもあるため、業務を通じて医療に関する情報に触れる機会が多くありました。そのため、日本人の2人に1人ががんになる時代において、自分もいつかはがんになるものだと以前から想定していました。もし自分ががんになったら、先進医療である粒子線治療を受けようと20年ほど前から決めており、そのための資金を準備し、先進医療特約のついたがん保険にも加入していました。幸い、前立腺がんでしたので、保険適用となり先進医療特約を使う必要はありませんでした。 総合病院での確定診断の際、私の担当医は泌尿器科の中でもロボット支援下手術を得意とする医師でした。その総合病院はロボット支援下手術の症例見学施設にもなっており、担当医としては手術を強く推奨したい意向を持っていることが言葉の端々から伝わってきました。しかし、同じがん種でも外科医の立場・腫瘍内科の立場・放射線科の立場でアプローチが違うことを学んでいたため、日ごろから「自分なら」と考えるようにしていました。そのため、前立腺がんの低リスク判定であれば粒子線治療と心に決めていた事もあり、診断を受けたその場で「重粒子線治療を受けます」と即答しました。

手術に自信のある担当医の提案を断り、希望する施設へ転院

私が即座に治療説明書に書いていない重粒子線治療を希望したためか、自施設や県内の大学病院でも放射線治療は出来ることを提案していただいたのですが、自施設のIMRTや県内の大学病院でのMRリアニックよりも、近隣にある大学病院での重粒子線治療を希望しました。その旨を伝えると、担当医は少し難しい表情となり、紹介状はすぐに書くから、治療終了後は直接クリニックへ戻って経過観察等の指示を仰ぐよう告げられ、少し戸惑ったことを覚えています。 また、担当医からの説明の中では、「放射線を先にやってしまうと後から手術はできないが、先に手術をしておけば再発しても放射線ができる」という言葉もありました。しかし、医療講演会での説明を思い出し、冷静に自分の治療について受け止めることができました。自分の将来がかかっている治療選択ですので、たとえ医師の機嫌を損ねたとしても、後悔のない選択をすることが最優先でした。後日、クリニックの主治医にこの出来事を報告したところ、「気にしなくて良いのでは」と言っていただき、安心して近隣の大学病院へ転院する手続きを進めることができました。

ハイドロゲルスペーサーの挿入と医師に求めたかった姿勢

近隣の大学病院に転院し、重粒子線治療の準備が始まりました。その過程で、照射時の位置決め精度を上げる「金マーカー」の留置と直腸への放射線の影響を減らすための「ハイドロゲルスペーサー」というゲル状の物質を前立腺と直腸の間に入れる処置について説明を受けました。 こちらの担当医は非常に優しい方でしたが、「金マーカー留置とスペーサーを入れるかどうかは、どちらでもいいですよ」と、判断をすべて私に委ねる姿勢でした。私は多くの場合、処置した方が良いと頭ではわかっていましたが、処置時の痛みを懸念して迷っていたため、専門家として背中を押してほしかったというのが本音です。結果的に私は金マーカー留置とスペーサー挿入をすることを選びましたが、処置後に軽い感染症を起こしてしまいました。リスクがあるからこそ明言を避けたのかもしれませんが、メリットとデメリットを自分一人で天秤にかけ、決断しなくてはならなかったことは、悩ましい決断であったと記憶しております。

仕事と治療の両立、半休を活用した通院生活

実際の重粒子線治療は、全部で12回の照射を行いました。近隣の大学病院へは、高速バスが10分から15分間隔で頻繁に運行しており、通院には非常に便利な環境でした。 私は会社員として働いており、治療による仕事への影響を最小限に抑えたいと考えていました。手術を受けた場合は、入院と療養で数週間が必要になります。しかし重粒子線治療であれば、通院のみでの治療が可能です。私は午前中に会社で通常通り仕事をし、午後から半休を取って高速バスで大学病院へ向かい、数十分の治療を受けて帰宅するというスケジュールを組みました。実際の照射自体は数分という短時間で終わるため、周囲の同僚にはがんの治療で通院しているとは全く気づかれず、「外勤に出ているのだろう」と思われていたようです。 治療の副作用としては、排尿の出始めに少し痛みを感じることや、軽い頻尿の症状が出た程度でした。それらの症状も、日常生活に支障をきたすほどのものではなく、治療前と全く変わらない生活を送ることができております。

異なる医師の視点とがんがもたらした死生観の変化

現在は、最初に通っていた泌尿器科クリニックと、重粒子線治療を受けた大学病院の2か所で経過観察を続けています。クリニックには毎月通院してPSA値の測定やエコー検査をし、大学病院には3か月に1回通院し、重粒子線治療特有の副作用が出ていないか、放射線科医の立場から診てもらっています。 定期的な経過観察は続いているものの、日常生活においては現在も趣味の映画鑑賞や読書などを以前と同じように楽しんでいます。ただ、がんになったことで、人生に対する考え方は大きく変わりました。「前立腺がんではすぐには死なない」と思っていても、自分の人生の残り時間を意識し、無理をして働きすぎないようにしようと考えるようになりました。病気になったことは、自分の生き方をリセットし、穏やかな日々を過ごすための良い準備期間になったと感じています。

今から、がんと向き合うことになった方へのメッセージ

がんと告知され、今から何らかの治療を決断しなくてはならない方にお伝えしたいことがあります。 がんと診断されたら、放射線科の専門医の意見も聞いてください がんの治療法を提示された際、義務教育でがんのことを習っていない日本人の大人の場合、「がん=手術」と思ってしまう傾向があると思います。「切って悪いものを出してしまう」という考え方が根強いですが、手術の前に必ず放射線科の専門医の意見を聞くことをお勧めします。手術と放射線、それぞれのメリットとデメリットを公平に比較し、ご自身の生活や価値観に合った治療法を選んでください。 ご自身のがん種とステージに絞って知識を身につけてください がん全体について学ぶのは範囲が広すぎて大変です。まずはご自身のがんのことや進行度(ステージ)などを正確に把握し、知識を身につけてください。信頼できる学会のWeb動画や医療情報サイトを確認するだけでも構いません。知識があれば、医師からの提案に対して適切な質問ができ、納得のいく意思決定につながります。 AIを活用して、医師との対話をシミュレーションしてみてください 医師に自分の希望を伝えることは、患者にとって大きなハードルです。そんなときは、AIを使って想定問答をしたり、自分の希望について「伝え方リスト」を作成してみるのも有効な手段です。言葉の選び方をシミュレーションしておくことで、実際の診察室でも冷静に対話ができるようになると思います。 普段から相性の良いかかりつけ医を見つけておいてください 大きな病院の専門医は忙しく特定の治療に特化しているため、患者の細かな不安に耳を傾ける余裕がないこともあります。風邪や高血圧など、日常のちょっとした不調の際に通う身近なクリニックで、話をしっかり聞いてくれる相性の良い医師を見つけておいてください。信頼できる「町のお医者さん」に相談できる環境があることは、精神的にとても大きな支えになります。

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