写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:松尾秀人さん(本名)
年代:80代
性別:男性
家族構成:妻と子どもとの3人暮らし
仕事:無職(ボランティア活動)
がんの種類:肝臓がん
診断時ステージ:ステージ1
診断年:2019年
現在の居住地:大阪府
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
2019年、松尾秀人さんは73歳のときに肝臓がんと診断されました。40代後半に受けた集団検診でC型肝炎ウイルスへの感染が判明。定年退職後のインターフェロン治療などを経て、70歳でウイルスを完全に排除できました。しかし、参加していた患者会で「ウイルスを排除できてもがんになる可能性がある」という助言を受けたことに加えて、主治医からの勧めもあって 定期検査を継続し、初期の肝臓がんを発見することができました。信頼を寄せる主治医の提案に従って腹腔鏡手術を受け、現在も再発なく過ごされています。患者会での情報交換の意義や、自ら情報を集めることの重要性についてお話しいただきました。
40代後半でC型肝炎が判明
私が自分の肝臓の異常を知ったのは、40代後半でした。当時勤めていた会社で、特定の年代の社員だけを集めたC型肝炎ウイルスの検査が実施されました。おそらく集団予防接種で注射針を使いまわしていた世代が対象だったのだと思います。私はその検査で該当者の一人として呼び出され、自分がC型肝炎ウイルスに感染していることがわかりました。自覚症状は全くなかったため、もしこの機会がなければ気づかないまま病状が進行していたと思います。とても運が良かったと感じています。
感染が判明した後、すぐに標準的な治療を始めたわけではありません。当時のインターフェロン治療は副作用が強いと聞いていたため、他の方法を探しました。およそ30年前、インターネットが普及し始めたころでしたが、自分で調べてラクトフェリンを用いたC型肝炎ウイルスの治験が行われていることを知り、参加することにしました。私の場合はウイルス量が多かったためか、結果的にウイルスを排除することはできませんでした。
定年退職を機に決断したインターフェロン治療
治験の後も自覚症状は全くなかったため、しばらくは特別な治療を行わずに仕事に専念していました。本格的に治療を開始したのは、60歳で定年退職を迎えたときです。会社からは継続雇用の話もあり、本当はもっと仕事を続けたかったのですが、やはりC型肝炎ウイルスのことが気にかかっていました。健康には代えられないと考え、思い切って仕事を辞め、治療に専念することにしました。
61歳から、インターフェロンとリバビリンにもうひとつの薬を組み合わせた治療を始めました。1回目の治療は2年間続けましたが、結果的にウイルスを排除することはできませんでした。それでも諦めず、数年後の69歳のときに2回目のインターフェロン治療に挑戦しました。そして70歳になったとき、ついにC型肝炎ウイルスの完全な排除に成功しました。最初の感染判明から20年以上が経過してのことでした。
患者会での助言と定期検査の継続
ウイルスが排除できたことで、私はこれで肝臓の病気からは解放されたと思い、そのまま何もしないでいようと考えていました。痛くも痒くもないため、病院に行く必要性を感じていなかったのです。しかし、私が14、15年ほど前から参加している肝臓の患者会での交流が、その後の行動を変えました。
現在200人ほどが在籍している患者会の活動の中で、世話役の方や他の会員から「ウイルスを排除できても何年かしてから肝臓がんになった人がいる。だからウイルスが排除できても検査だけは絶対に続けておきなさい」と強く言われたのです。実際に患者会の中には、ウイルス排除後にがんになった経験を持つ人もいました。さらに、ある医療講演会に参加した際、たまたま隣の席に座った方から「ウイルスを排除して10年後に肝臓がんになった」という話を聞き大変驚きました。
そうした生きた情報に触れたことで、私は定期検査を続けることを決意しました。主治医と相談し、忘れないように四季に合わせて年4回、超音波(エコー)検査やCT検査、さらに時々造影剤を用いた検査などを組み合わせた定期検査を受けることにしました。
ウイルス排除から3年目での肝臓がん発見
定期検査を続けて3年目となる2019年の2月、私が73歳のときです。超音波検査を受けたところ、肝臓がんが見つかりました。
腫瘍の大きさは15mm程度と非常に小さく、診断時のステージは1でした。もし患者会での助言や主治医の勧めがなく、ウイルスを排除できたからと安心して検査をやめていたら、発見はもっと遅れていたはずです。患者会に参加して情報を得ていたからこそ、そして定期検査を続けていたからこそ、この段階で見つけることができたのだと心底思いました。
信頼する主治医の提案と迷いのない決断
がんが見つかったときの主治医は、私がC型肝炎の治療をしていたころから20年近くお世話になっている、大きな総合病院の消化器内科の先生でした。多くの患者さんが診察を待って並んでいるほど評判の良い先生です。先生からは「腫瘍が非常に小さく肝機能にも問題がないので、手術、ラジオ波焼灼術、塞栓術など何でもできます。ただ、多少の負担はあっても、切除するのが一番良いと思います」と、シンプルで明確な提案がありました。
私はその提案を聞いて、全く迷うことなく手術による切除を選択しました。長年診ていただいており、この先生のことを深く信頼していたからです。近年、医師と患者が情報を共有して治療方針を決定する「シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)」の重要性が言われていますが、私と先生の間には長年の信頼関係があり、すでにそれができている状態だったのだと思います。
患者会で得た情報から、ラジオ波焼灼術などの局所治療についての知識は持っていました。しかし、細かい説明を聞くまでもなく、腫瘍を含めて確実に切除してしまった方が再発しにくいだろうと考え、先生の意見に完全に同意しました。中性脂肪が少し高いとは言われていましたが、肝機能に問題はなく、以前は少しお酒を飲んでいましたが今は控え、タバコも吸わないため、手術に耐えられる状態だと言われました。
別の総合病院での腹腔鏡手術
体の負担を考え、手術は腹腔鏡で行うことになりました。しかし、私が通っていた総合病院では当時、腹腔鏡手術に対応していなかったため、外科の医師と面談した後に消化器内科の主治医と相談し、別の総合病院を紹介されました。
その総合病院での手術は無事に終わりました。安全を期して、腫瘍が含まれる肝臓の「S2」と呼ばれる区域を少し大きめに切除する区域切除でした。手術後に立ち会った連れ合いが切除した部分を見せてもらったときは、想像よりも大きかったと驚いていました。しかし、肝臓は再生する臓器でもあり、その分だけ安全を確保できたのだと納得しました。
手術後は、特に追加の治療は行わず、経過観察のみとなりました。術後の定期検査は元の総合病院に戻り、以前と同じように年4回の検査を続けています。手術から7年が経過した現在も、再発や転移は一切ありません。あの時、主治医の言葉を信じて切除を選んだことは大正解だったと思っています。
患者会の運営とオンライン活動への思い
私は現在、短期間ですが患者会の運営委員を拝命しています。資金が豊富なわけではないので、会報誌を印刷してコピーしたものを手作業で冊子にまとめるような地道な作業を役員の皆さんにしていただいています。また、インターネットで見つけた新しい情報を収集し、会報の編集者に提供することもたまにあります。
私は30年以上前からインターネットを利用していますが、患者会の存在を知ったことも治療からここまで順調にこられたこともインターネットで得た情報がとても役に立ちました。昔に比べてインターネットで簡単に医療情報を検索できる時代になりましたが、患者会の存在意義は決して薄れていないと感じています。特にC型肝炎などの患者さんは年配の方が多く、インターネットをうまく活用できない方も少なくありません。そのような方々にとって、患者会の会報誌やリアルな集まりで得られる情報は非常に重要です。実際に顔を合わせて話をすることには、文字の情報だけでは得られない重みや安心感があります。
一方で、新型コロナウイルスの影響もあり、以前は20~25人ほど集まっていたリアルな集まりの参加者が、今では平均して10人以下に減ってしまったという課題もあります。実は私は30年ほど前にうつ病を経験しており、その患者会支援にも関わっていますが、そこでは早くからオンラインのビデオ会議システムを活用していました。患者会で新潟県の妙高高原と大阪をオンラインでつなぐ取り組みも経験しました。オンラインであれば、北海道や沖縄といった遠方の方や交通費の負担が難しい方でも参加できますし、着る服を気にしたり顔を出したりしなくても参加できるメリットがあります。肝臓の患者会でも、リアルとオンラインを組み合わせたハイブリッド型の運営を取り入れていけないかと期待しています。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
今、がん治療をしている方にお伝えしたいことがあります。
どんな状態でも定期検査を続けてください
自覚症状がないと、病院に行くのをためらったり、ひとつの治療が終わったからと安心したりしてしまいます。しかし、私の経験からもわかるように、ウイルスの排除などひとつの区切りを迎えたとしても、がんが発生する可能性はあります。早期発見ができれば治療の選択肢も広がり、その後の経過も大きく変わります。健康だと感じているときこそ、早期発見のための定期的な検査を欠かさないようにしてください。
自分から積極的に情報を取りに行ってください
インターネットを活用すれば、新しい治療法や専門情報にアクセスすることができます。また、患者会などに参加して、実際に経験した方の生の声を聞くことも非常に有益です。確かな情報を持っていることで、医師とのコミュニケーションもスムーズになります。納得のいく治療を選択できるよう、自ら動いて情報を集めてみてください。
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