写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
プロフィール
お名前:Nonokaさん(ニックネーム)
年代:50代
性別:女性
家族構成:1人暮らし
仕事:療養中/求職中 (診断時は派遣社員)
がんの種類:乳がん(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)
診断時ステージ:ステージ1
診断年:2015年(1回目)、2025年(2回目)
現在の居住地:東京都
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
2015年、Nonokaさんは乳がんと診断されました。治療後10年間にわたり定期的な経過観察を続けていましたが、2025年に再び乳がんが発覚しました。その後、遺伝子検査で遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)であることが判明し、全摘手術や将来のリスク低減手術を見据えた治療の決断をします。派遣スタッフとしての雇用の課題、痩せ型体型における自家組織を用いた乳房再建の難しさ、SNSや患者会を通じて前向きに乗り越えてきた経緯についてお話しいただきました。
乳がん診断のきっかけは自分で見つけたしこり
2015年、自分の胸に痛みを感じたところを注意深く触れると小さなしこりがあることに気づきました。以前受診したことがあった大学病院の乳腺外科を訪れ、マンモグラフィ検査や超音波(エコー)検査、生検を受けました。その結果、ステージ1の乳がんと診断されました。
自分がその年齢(当時40代前半)でがんになるとは思っていなかったのでショックは大きかったです。治療が上手くいかなければ、あと数年の命なのかと考えて絶望し、3か月ほど自宅で泣き続ける日々が続きました。しかし、これ以上は落ち込めないという状態を経験してからは、泣いていてもがんは治らない、それなら覚悟を決めて治療を頑張ろうと言い聞かせ、少しずつ前を向くことができるようになりました。
派遣社員としての仕事と治療の両立の難しさ
当時、私は派遣社員として仕事をしていました。正社員として働いていた時期もありましたが、希望しない異動や勤務地の変更などを経験した後、自分自身で職務や勤務地を選べ、かつそれらを契約で確定することができる契約社員や派遣社員の雇用形態を選びました。もちろん正社員と比較して給与が低いというデメリットは交換条件として、若干不満はありつつも受け入れています。
がんの診断を受けてすぐ、私は派遣元の担当者に病気のことを相談しました。当時は非常に忙しい業務ポジションを任されていたため、それでは治療や通院が難しく、私からは時短勤務への変更や体への負担が少ない別の業務への契約変更をお願いしました。しかし、派遣先からはそのような対応はできないという返答があり、具体的な相談に乗ってもらうことはできませんでした。
治療をしながら働き続けたいという私の希望や契約変更の提案は受け入れられず、残念ながら契約期間の満了をもって終了となってしまいました。それでも、その時点で結んでいた契約期間までは働く権利がありました。そのため、その後に始まった治療と並行しながら、契約満了の日まで仕事を全うしました。いずれの雇用形態であっても、がんと診断されると仕事を失ってしまう方が多いと聞きます。いろいろ考えたり調べたりしましたが、長期にわたる治療が必要になった従業員に対して雇用している企業がどう対処するのかという規則やガイドライン、周知、社会的認知のアップデートが十分でないと感じました。特に非正規雇用の従業員については企業による支援が非常に乏しいのが現状です。しかし非正規雇用者が多いわけですから、これは今後改善されなければならない大きな問題だと思っています。
体への負担が少ないと考え乳房温存手術を選択
病理検査の結果、私のサブタイプはトリプルネガティブであることがわかりました。医師からは標準治療をしっかりとやりましょうと説明され、まずは術前化学療法を行い、その後に全摘手術を行うか、あるいは乳房温存手術を行って術後の放射線治療を組み合わせるかという治療方針が示されました。
当時は自分が遺伝性の原因を持つがんであるとは知らなかったため、体に負担が少なく手術が済むのであればそうしたいと思い、乳房温存手術を希望しました。当時もインターネットで自分なりに調べましたし、主治医や看護師さんからお話を伺って、納得して治療へ臨むことができました。
化学療法の副作用と放射線治療への対応
化学療法は、最初の4回がAC療法(ドキソルビシンとシクロホスファミド)、後半の4回はドセタキセルを使用しました。治療の後半に進むにつれて副作用は重くなり、ベッドの上でただ座っているだけでぐったりとしてしまう日が増えていきました。
激しい倦怠感と脱力感がつらかったですが、看護師さんや薬剤師さんが具体的な対処法を詳しく教えてくれたため、心の準備はできていました。また、化学療法中には脱毛もあり、当時は在宅勤務が普及していなかったため、帽子をかぶって出社していました。ウィッグを長時間着用していると頭が痛くなり、汗が顔へ流れ落ちるため、出社時もウィッグを使わず帽子を使用しました。
術前化学療法後、腫瘍が確認できなくなるほど状態が改善され、予定通り乳房温存手術を受けることができました。 術後には放射線治療を受けましたが、弱った体で真夏の炎天下の中、電車とバスを乗り継いで毎日の通院はなかなか過酷でした。治療が進むにつれて皮膚がどんどん黒ずんでいく変化には、痛みよりも精神的な不安を感じました。また、トリプルネガティブと診断されていましたが、僅かにホルモン受容体にも反応があったことで、念のためと処方された抗ホルモン剤(タモキシフェン)を服用しました。しかし、副作用があまりにもひどく1年持たずに中止となりました。
10年目に見つかった新たなしこり
治療後は、定期的な経過観察に入り、最初の5年間は3か月に1回、その後は半年に1回という頻度で通院し、血液検査や各種の画像検査を受け続け、再発・転移なく10年が経過しようとしていた矢先の2025年、治療した右胸に新たなしこりができていることにセルフチェックで気づきました。
定期観察を続けてきたのになぜ私が気づく前にわからなかったのかと、最初は主治医に対して強い不信と怒りの感情が湧きましたが、検査スケジュールが決まるにつれて冷静になっていきました。また乳がんかと一時落ち込みましたが、これまで積み重ねてきた経験や知識が状況を客観的に捉える力となり、精神的に早く落ち着きを取り戻すことができました。
主治医の変更と遺伝性乳がんの判明
2度目のしこりもがんの疑いが高いとのお話を聞いたとき、当時の主治医の対応について私は納得することができませんでした。10年間お世話になっていましたので感謝の気持ちはたくさんあるのですが、お互いにネガティブな感情を持ってしまっては、これから始まる大変な治療をベストコンディションで一緒に乗り越えることは難しいと思い、看護師さんに主治医の変更について相談しました。
その結果、幸いにも担当を変更してもらうことができました。新しい主治医は、私の考えや希望に耳を傾けてくださり、質問や相談にもとても丁寧に親身にお答えくださいました。治療に関係する他科の医師とも緊密に連携を取ってくださり、私は心から安心して信頼して治療を受けることができました。
今回の病理検査でもトリプルネガティブでしたが、前回とがんの性質が少し異なっており、局所再発か新規の原発がんか断定できないと言われました。私のがんの発症状況などを鑑みて、主治医から遺伝子検査を勧められ検査を受けた結果、BRCA1遺伝子に変異が見つかり、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)であることがわかりました。やはりそうかと腑に落ちた反面、そのリスクの大きさに恐怖で一時は思考が止まってしまうほどでした。しかし今となっては、がん発症原因が明確になり、適切な治療を受けることができると考え、ポジティブに向き合っています。1回目の発症時にも遺伝カウンセリングを受けていましたが、当時は私の血縁者にこの遺伝子変異に関係しそうな病歴のある人がほとんどいなかったため可能性は低いと説明されていました。血縁者に発症者が確認できない場合も、遺伝性が疑われる条件の患者さんは検査を受けた方がいいのかもしれません。
右胸の全摘手術と自家組織による同時再建
検査によって自分がHBOCであることがわかったため、がん発症がハイリスクである乳房を温存するのではなく全摘手術を受けることに迷いなく決心しました。1回目のときは乳房温存手術でしたが、今回は手術に向けて同時再建を希望しました。
インプラントは生涯にわたって観察のケアが必要なことや、不具合で自家組織にやり直した患者さんの話を聞いていたため希望せず、自分の体の一部を使う自家組織再建を選択しました。
右胸の全摘手術と同時に、自分のお腹の組織を移植して乳房を形成する再建手術(DIEP flap)を受けました。全摘と再建で約10時間の手術でしたので手術直後と翌日はぐったり、痛みも強くしんどい思いをしましたが、手で触れると温かく、乳輪乳頭は失っているものの、まるで自分の本当の胸がそこにあるように再建されていることに感動し涙が出ましたが、お腹の端から端を横切る縫合にはめまいがしたほどです。
右側手術の2日前に見つかった左側の乳がん
しかし、右胸手術の2日前に、反対側の左胸にもしこりがあることに自分で気づきました。確認してもらうとがんの疑いがありましたが、直前すぎて大規模な手術変更はできず、左胸はしこりの部分切除にとどまりました。
その後、術後化学療法としてドセタキセルとシクロホスファミドの点滴治療を4回受け、現在はこれが終わった段階です。今後はまずBRCA遺伝子変異に合わせたオラパリブによる薬物治療を行い、その後、卵巣がんと卵管がん予防のためのリスク低減手術が予定されています。
さらに、左胸も全摘手術を受けることになっています。その際の再建方法については、既に右胸の再建のためにお腹の組織を使い切ってしまったため、形成外科の先生は、私が痩せ型でもあるので頭を悩ませているようです。インプラントを希望しない以上、自家組織でどこまで再建が可能か、今後も慎重に相談を続け、先生も私自身も納得できる方法に辿り着きたいと思っています。
また、こうした長期にわたる治療は、日常生活や仕事にも大きな影響を及ぼしています。私は化学療法により白血球が非常に減少してしまう体質のようで、少しの細菌やウイルス感染でも命を危険に晒すことになりかねないため行動制限が指示されました。治療で体力と気力が削られていたことも重なり、外出して人と会うこともできず、家に閉じこもりがちになる生活は、私に強い閉塞感をもたらし、時々言いようのない悲しい気持ちでいっぱいになりました。そんな時は夜人気がなくなってからご近所をゆっくり歩いて気分転換をしていました。少しずつ歩ける距離が長くなっていったことが思った以上に励みになりました。お腹の縫合部分と腹筋(血管を採取するのに切開)、再建した胸への負荷を避けるためなどの理由で、重い荷物をしばらくの間は持たないでという指示もあり、日々の買い物などはネットスーパーを活用してなんとか乗り切りました。現在は毎日のウォーキングとゆっくりとストレッチをして縮まったお腹の組織をほぐすようにしています。重いものも2Lのペットボトルを持つことから始めて筋力の回復に勤しんでいます。
仕事に関しては、治療中は完全に在宅勤務することを派遣先に了承いただいて勤務していましたが、通院や入院の影響により通常の業務量を扱うことが難しくなり、今回も契約満了の形式をとって終了となりました。現在は焦ることなく治療と療養を最優先に、自分の体調に合わせて無理なく働ける仕事をゆっくりと探しているところです。
患者会やSNSによる精神的支え
10年前に参加した患者会は、たまたまだったのかもしれませんがその重たい雰囲気に私は馴染めず、すぐに参加しなくなってしまいました。しかし、現在の患者会は再建や特定の遺伝性などテーマが明確に細分化されており、前向きに情報交換をする明るい雰囲気で、月に1回ほど参加して勇気と元気をもらっています。
また、SNSのがん患者さんたちのコミュニティが新たに大きな心の支えのひとつになりました。不安な思いや相談を投稿すると、会ったこともないのに友人のように親切にあたたかいコメントやアドバイス、励ましのいいねをしていただき、苦しさや閉塞感が和らぎ、また前向きな気持ちに戻ることができました。1回目の乳がんでは言われるがまま治療を受けていましたが、今回はこれまでの10年間の経験と知識、そしてコミュニティのみなさんからの経験談の助けがあったため冷静かつ積極的に治療に臨めました。この10年でがん治療は大きく進歩してきました。そして患者さんを支援する環境やツールの整備や開発が進められていて、大いに希望を感じることができます。
がんと向き合う方へのメッセージ
今治療されている方、これから治療をされる方にお伝えしたいことがあります。
無理に明るく振る舞わず、心が自然と前を向くのを待ちましょう
がんの告知を受ければ、誰もがパニックになり、深い絶望に突き落とされてしまうのではないでしょうか。私はそうでした。どうして自分がこんな目に遭うのかと怒りや悲しみに震えるのは自然な感情や反応だと思います。私は乳がんと言われたとき、3か月間も泣き続けました。無理に明るく振る舞おうとする必要はありません。落ち込むところまで落ち込み、感情の底打ちを迎えたときに、私はようやく、でも自然に前を向いてしっかり自分を生きようと思う強い気持ちが湧き上がってきました。自分の心の痛みを否定せず、少しずつ時間をかけて病気と向き合っていけば震える心は徐々に静かに穏やかになり、持っている命の力強さを感じることができるのではないでしょうか。何よりご自身の心と体を大事にして、すごく甘やかしてあげてください。泣きたい時は思い切り泣いてしまって大丈夫です。
進歩しつづける医療、仲間とのつながり、どんどん良くなってきています
がん医療に限らずですが、10年前には無かった治療方法や支援・活動が出てきているニュースを見てとても嬉しく思っています。また、SNSやポジティブで有益な患者会を通じて、孤独にならずに同じ仲間とつながれる環境があります。がんになったという現実はつらいものですが、今の時代には生き抜くための多くの治療選択肢やがん治療によりそった医療保険プラン、患者支援制度など支えになるものがあります。病気を治す薬や技術の研究・開発はどんどん進められています。私は患者としてその結果を受け取る側の人間ですが、患者だからこそ何か医療に貢献できないかと調べたり考えたりしています。明るい希望ある未来はみんなで作られる世界だと信じているからです。治療にあたってくださっている先生や医療従事者の方々、心を支えてくれる家族と友人たちへの感謝でいっぱいの毎日を私は今過ごしています。そして、みなさんの回復と笑顔に溢れる日々を心よりお祈りしています。
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