写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:おーさん(ニックネーム)
年代:50代
性別:男性
家族構成:妻と2人暮らし
仕事:休職中(診断時は会社員)
がんの種類:前立腺がん
診断時ステージ:ステージ3
診断年:2022年
現在の居住地:神奈川県
治験フェーズ:第3相
治験参加時の治療ライン:3次治療(3番目の治療)
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
おーさんは、2022年に50代で前立腺がんのステージ3と診断されました。ホルモン療法を経て前立腺の全摘出手術を受けたものの、敗血症などの合併症による長期入院を経験します。さらに、1年も経たないうちに骨転移が見つかり、がんは想定以上のスピードで去勢抵抗性前立腺がんへと進行しました。標準治療の選択肢が狭まり、精神的にも大きく追い詰められる中、おーさんは主治医から提案された治験に参加することを選びました。治験という新たな治療にどのように向き合い、どのような経験をしたのかについてお話しいただきました。
自分で調べて知った治験という選択肢と初期の印象
私が前立腺がんと診断されたのは、2022年11月の健康診断でPSA値が21.0 ng/mLと指摘されたことがきっかけでした。要精密検査となり、近所の泌尿器科クリニックで前立腺がんのステージ3と診断されました。
私は診断を受けた当初から、自分のがんについて論文を読んだり情報を集めたりしていました。その情報収集の過程で、早い段階から治験の存在は知っていました。私の中での治験の初期のイメージは、新しい薬を作るためにデータを集める仕組みであり、それと同時に新しい治療法を試すことができる機会だというものでした。未知の治療に対する不安や迷いよりも、新しい薬を使用できるかもしれないという期待感の方が大きかったことを覚えています。
手術の合併症と想定外の早期再発
クリニックで確定診断後、がん専門病院を紹介されましたが、がんが進行していたためすぐには手術ができませんでした。まずはホルモン療法を1年間行い、PSA値が下がった後、前立腺の全摘出手術を受けました。
私は10日ほどで退院して仕事に復帰するつもりで有給休暇を申請していましたが、術後に敗血症や腎機能障害を併発してしまい、2か月間の長期入院となりました。退院後、尿漏れなどの後遺症も半年ほどで落ち着き職場に復帰しましたが、安心したのも束の間でした。手術から1年も経たないうちにPSA値が再上昇し、骨盤周辺の骨に1か所の転移が見つかったのです。この転移には治療としての放射線照射を行いました。
進行の速さが招いたメンタルの不調と孤独感
その後、去勢抵抗性前立腺がんという状態になったため、新たな治療薬としてイクスタンジに変更しました。10か月ほどは効果がありましたが、それも効果がなくなってしまいました。
前立腺がんの進行がそんなに速くないと聞いていたにもかかわらず、私はステージ3からあっという間に進行し、「死ぬかもしれない」という強い恐怖を感じるようになりました。実は妻の父も前立腺がんを患っていますが、10年前からホルモン療法で安定しています。そのため、私の病状の進行の速さを周囲に理解してもらいにくいという孤独感もありました。
情報を求めて前立腺がんの患者会にも参加しましたが、そこで交わされる話題は尿漏れや性機能の低下といった内容が多く、すでにその段階を過ぎ、薬の変更を余儀なくされている私には求める情報とは異なり、疎外感を感じてしまいました。次々と薬が効かなくなる不安からメンタルバランスを崩し、現在はがん専門病院の精神腫瘍科を受診し、薬の処方とカウンセリングを受けながら、がん種を問わないがん患者コミュニティに参加して心を癒やしています。
治験は治療選択のひとつ
イクスタンジが効かなくなった際、主治医から今後の治療として4つの選択肢を提示されました。1つ目は別のホルモン療法としてザイティガへの変更、2つ目は抗がん剤のドセタキセル、3つ目は放射性リガンド療法、そして4つ目が現在参加している第3相試験の治験でした。
主治医からは、これまで使用した薬との関係から、ザイティガの効果はあまり期待できないかもしれないと説明を受けました。また、前立腺がんに対する抗がん剤は実質的に2種類ほどしかなく、それが効かなければ後がない状況になるため、抗がん剤治療はまだ先延ばしにしたいという思いがありました。私にとって治験は、限られた治療の選択肢の中に「新しいカードが1枚増える」ことを意味していました。これが治験に参加する最終的な決め手となりました。
ランダム化比較試験への参加と割り付けの仕組み
私が参加を決めた治験は、免疫系の作用機序を持つ薬剤の有効性と安全性を確認する第3相試験でした。
この試験では、参加者が新しい治験薬を使用するグループと、標準治療(主治医が選択する治療薬)を受けるグループのいずれかに、システムによって自動的に割り付けられました。また、自分がどちらのグループに割り付けられたかがわかる「非盲検試験」でした。私は運良く治験薬を使用するグループに割り付けられ、現在も通院で点滴による治療を継続しています。
治験に参加して大変に感じた副作用と生活上の細かな制約
治験に参加して最も大変だったのは、治療開始直後の副作用でした。最初の1か月間は副作用が非常につらく、ずっと寝込んでいるような状態が続きました。このままの強さで副作用が継続するのであれば、治験自体を続けられるのだろうかと考えるほどでした。しかし、体が適応したのか次第に副作用は収まり、現在は点滴を受けても以前のような強い症状は出なくなりました。
また、生活上の細かな報告義務も手間に感じたことのひとつです。例えば、歯科や眼科を受診する際も、治験への影響がないか確認するため、事前に相談するよう求められることがありました。また、サプリメントの摂取なども制限や確認を求められました。安全性を確認するために必要なプロセスであることは十分に理解していましたが、がん以外の些細なことでも逐一医療機関へ報告しなければならない点には、少し煩わしさを感じたのも事実です。
治験に参加してよかったことと経済的な負担の軽減
治験に参加してよかったと感じていることは、何よりも治療の選択肢が1つ増え、生存期間が延びているということです。もし治験に参加していなければ、私の余命はもっと短く厳しい状況になっていたかもしれません。治験薬の投与を開始してから一度PSA値が大きく下がり、現在は徐々に上がってきているものの、画像診断では新たな転移などは見つかっておらず、無事に治療を継続できています。
また、経済的な面でも大きな助けがありました。2か月の入院で会社の評価が落ちたと感じたことや、その後のメンタル不調もあり、私は現在会社を休職しています。傷病手当金での生活となっているため、治験に参加している間、治験にかかる高額な薬の費用を製薬企業が負担してくれることは、治療を続けるうえで非常にありがたいと思っています。
手厚いサポート体制による治験へのイメージの変化
治験に参加する前は、単に薬のデータを集めるための試験という大まかなイメージしか持っていませんでした。治験参加前に特別に知っておきたかったことや、情報が不足していて困ったということはありませんでしたが、実際に参加してみると、医療スタッフからのサポートが想像以上に手厚いことに驚きました。
特に治験コーディネーターの方からは事前に詳細な情報提供があり、参加後も非常に細かくお世話をしていただいています。参加前の「単なるデータのひとつ」という印象から、「厳重に守られながら治療を受ける体制」へとイメージが大きく変化しました。
治験に関わる医療者への感謝と今後の展望
治験に関わる医療者に対しては、感謝の念しかありません。主治医の先生は日々の診療で非常に忙しく、診察室でゆっくりと話をする時間を取ることはなかなか難しいのが現状です。その隙間を埋めるように、治験コーディネーターの方が私と医師の間に入り、密にコミュニケーションを取ってくださっています。何か不安なことがあった際にも、すぐにメッセージを送れる関係性を築いていただいたおかげで、安心して治療に臨むことができています。
もし今後、今の治験薬が効かなくなり中止となった場合でも、枠が空いていればまた別の治験を探して参加したいと主治医には伝えてあります。
治験を検討されている方へのメッセージ
今、がん治療をしており、治験への参加を検討している方にお伝えしたいことがあります。
治験を必要以上に恐れないでください
治験と聞くと不安を感じる方もいるかもしれませんが、私が参加している第3相試験のような段階であれば、必要以上に恐れることはないと考えています。たとえ対照群に割り付けられたとしても、標準治療を受けることができる治験もあります。また、治験コーディネーターによる手厚いサポート体制もあるため、自分の治療における「カードが1つ増える」という前向きな気持ちで検討してみてはいかがでしょうか。
早期からの治験参加も検討してみてください
第3相試験まで進んでいる治験や、すでに他の病気で効果が認められていて適用を拡大するための治験であれば、早い段階から挑戦することも十分に選択肢になり得ると感じています。もちろん病状や治験の段階にもよりますが、ご自身の条件に合うものがあれば、主治医と相談のうえで早期から治療の選択肢に含めることを検討してみてください。
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