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大腸がんステージ2a、度重なる転移を経てたどり着いた穏やかな日々

[公開日] 2026.06.24[最終更新日] 2026.06.22

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:ヒゲボンズさん(ニックネーム) 年代:60代 性別:男性 家族構成:妻と2人暮らし(子ども3人は独立) 仕事:作業療法士(現在休職中) がんの種類:大腸がん 診断時ステージ:ステージ2a 診断年:2017年 現在の居住地:北海道
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。 2017年、ヒゲボンズさんは大腸がんと診断され、術前抗がん剤治療、手術、術後補助療法を行いました。その後、複数回にわたる肺への転移が見つかるたびに、手術や薬物療法を重ねてきました。しかし、2025年後半には積極的な治療を終了し、現在は早期からつながっていた緩和ケアのサポートを受けながら、ご家族と共に穏やかな日常を過ごされています。病の発見から繰り返す転移との闘い、そしてがんと共に生きる中で見出した気づきについてお話しいただきました。

痔だと思いたかった下血からの直腸がん発覚

がんが見つかる前年の2016年に、一度下血がありました。しかし、ちょうど同じ大腸がんで父親が闘病中だったこともあり、がんかもしれないという考えが頭の片隅にありながらも、元々痔を持っていたため、そのままにしてしまいました。 はっきりと異変を感じたのは2017年のことです。普段便秘をしない私が、便が出づらくなり、鉛筆のように細い便が出るようになりました。これはさすがにおかしいと思い、地元の消化器内科クリニックを受診しました。触診の時点で肛門の近くに腫瘍が触れたようで、すぐに大腸内視鏡検査を行い、直腸に腫瘍があることがわかりました。 詳しい検査をするため、妻が作業療法士として勤務していた地元の総合病院へ紹介状を書いてもらい受診しました。そこでは大腸内視鏡検査、超音波(エコー)検査、CT、MRIなどの検査を一通り受けました。しかし、すべての検査を終えるのに2週間ほどかかると言われ、その間に妻と調べたり知人に聞いたりして、自宅から車で1時間ほど離れた場所にあるがん拠点病院で治療を受けることに決めました。総合病院での検査結果を持ってそのがん拠点病院を受診し、リンパ節などへの転移はないステージ2aの直腸がんであると確定診断を受けました。

術前化学療法と肛門を温存した直腸切除

がん拠点病院での治療方針は、まず術前化学療法を行い、その後に直腸の切除を行うというものでした。手術の際は、縫合不全などの感染を防ぐために一時的にストーマ(人工肛門)を造設し、術後に再び補助化学療法を行う計画でした。 2017年7月から、FOLFOX療法を4クール受けました。冷たいものに触れると喉に違和感が出たり、手にしびれが出たりする副作用はありましたが、聞いていたほどひどくはありませんでした。最初の投与時のみ、点滴用のポートを埋め込む処置もあったため1週間ほど入院し、仕事を休職しました。その後は、職場に復帰し通院しながら治療を行いました。 同年9月、再度休みをいただき入院して手術を受けました。腫瘍が肛門に近い場所でしたが、事前の説明通り肛門は温存することができました。約1か月の入院期間中に一時的なストーマをつけましたが、退院後には腸がしっかりつながったことを確認し、ストーマ閉鎖術をすることができました。その後、傷口が完全に塞がった年明けから、再発予防のためにゼローダという飲み薬による抗がん剤治療を開始しました。

繰り返す肺転移と主治医への信頼

手術から約1年が経過した2018年8月、経過観察の検査で右肺に1か所の転移が見つかりました。右肺の一部を切除する手術を受け、その後再びゼローダの服用を続けました。 ちょうどそのころ、大腸がんの手術を担当してくれた主治医が系列の別の総合病院へ異動することになりました。私はその先生をとても信頼していたため、先生を追って転院することに決めました。新しい病院は、自宅から車で夏場は片道2時間程度ですが、冬になると片道3〜4時間かかる距離にありましたが、冗談を交えながら深刻になりすぎずに話ができる先生との相性や、技術の確かさを感じていたため、通院の負担よりも信頼できる医師に診てもらうことを優先しました。 2019年には、さらに右肺に2か所、左肺に1か所の転移が見つかりました。呼吸器外科の医師からは手術での切除は難しいと言われましたが、主治医が院内カンファレンスでその医師に掛け合ってくれました。その結果、手術を引き受けてくださり、2回に分けて転移した病巣を切除することができました。

仕事を続けながらの抗がん剤治療

2度目の肺転移の手術後は、ゼローダに加えてアバスチンを追加しました。アバスチンの投与は通院で受ける必要があったため、2週間に1回のペースで化学療法センターへ通いました。 病院が遠方だったため、朝5時半に自宅を出て、8時半のセンター開設と同時に入り、午前中のうちに点滴を終えて、午後からは職場へ戻って半日働くという生活を続けました。幸い副作用もそれほど強く出なかったため、仕事をしながら治療を両立させることができました。人相手の作業療法士という仕事を通じて、気が紛れていた部分もあったと思います。 しかし、2021年の夏に再び肺への転移が見つかりました。これ以上肺を切除すると肺機能に重大な影響が出るため、手術はできないと判断されました。ここから、別の抗がん剤を用いた治療へと切り替えることになりました。

治療の限界と積極的治療の終了

イリノテカンとアバスチンの点滴を2時間半から3時間行い、TS-1を服用する治療に切り替え、しばらくは病状を抑えることができていました。しかし、2025年の春ごろから腫瘍が大きくなる速度が上がり、薬が効かなくなってきていることがわかりました。 今後の治療方針を決めるため、遺伝子パネル検査を受けました。結果が出るまで数か月待ちましたが、治療の標的となるような有効な遺伝子変異は見つかりませんでした。その後、ロンサーフを試しましたが、免疫機能が極端に下がる副作用が出たため中止となりました。 最後に、新薬であるフリュザクラという薬を試しました。しかし、投与して2週目で血圧が異常に上がり、不整脈を起こすなどの重い副作用が現れました。検査の結果、腫瘍もさらに大きくなっており、これ以上抗がん剤治療を続けるのは身体的に無理だと判断されました。2025年11月、主治医から積極的な治療の終了を告げられ、「来年の桜が見られれば良いですね」と、約半年という余命の目安を伝えられました。

早期からつながっていた緩和ケアという心の拠り所

私はがんになる前からターミナルケアやホスピスに関心があり、関連する本を読んだりしていました。そのため、がんが見つかった当初から早期の緩和ケアを受けたいと考えていました。 がん相談支援センターを通じて、以前から緩和ケアの講演会などに参加していた、緩和ケアに力を入れている札幌の病院への紹介状を書いてもらいました。当時はまだ体に痛みなどもなく、主治医からは「まだ早いのではないか」と言われましたが、結果的にこの早い段階でのつながりが大きな心の支えになりました。 緩和ケアの病院では、医師だけでなくソーシャルワーカーや看護師の方々が、副作用の悩みから他愛のない雑談まで広く話を聞いてくれました。通常の診察では病気の状況や痛みの有無を確認するだけで終わることが多いですが、ここでは内面的な不安を受け止めてもらうことができました。また、高額療養費制度や傷病手当金など、経済的負担を軽減するための社会資源についても早い段階で情報を得ることができました。こうした制度は自分から尋ねないと教えてもらえないことも多く、知っているといないとでは生活に大きな差が出ると実感しました。

がんと共に穏やかに日常を生きる

余命の目安を告げられた後も、ギリギリまで働き続けたいという思いはありましたが、動けなくなってから慌てて準備をするのは避けたいと考え、2026年2月に休職しました。 その後、緩和ケアの病院がある街にウィークリーマンションを借りて、妻と愛犬と一緒にしばらく滞在しました。そこで桜を見たり、私が高校時代まで過ごした思い出の場所を巡ったりして、穏やかな時間を過ごしました。予想していたよりも病状の進行が遅かったため、現在は一旦自宅に戻り、再びのんびりと日常生活を送っています。 がんだからといって、残された時間を特別にどう生きるべきかと焦ることはありませんでした。これまで通り、普通に穏やかな毎日を重ねていくことが私にとっての自然な姿です。 がんになったことで、確かに身体的なつらさや不安はありました。しかし、病気にならなければ出会えなかった医療従事者の方々との出会いや、妻が参加しているがんサロンを通じたつながりなど、がんがもたらしてくれたポジティブな側面、いわゆる「キャンサーギフト」もたくさんありました。私はがんになったことを後悔していませんし、今も変わらずに日々の生活を大切に生きています。

これからがんと向き合う方へのメッセージ

今、がん治療をしている方やこれから治療を始める方にお伝えしたいことがあります。 自分から情報を取りに行き社会資源を活用してください がんの治療は長くかかり、経済的な負担も決して小さくありません。高額療養費制度やさまざまな公的な手当など、利用できる社会資源はたくさんあります。しかし、こうした情報は病院で待っているだけでは教えてもらえないことがほとんどです。早い段階でがん相談支援センターやソーシャルワーカーを訪ね、「自分が使える制度はありませんか」と積極的に質問してみてください。制度を知ることで、治療中の生活の安心感が大きく変わります。 がんによるマイナス面だけでなくプラス面にも目を向けてみてください がんになると、どうしても病気の進行や治療のつらさなど、マイナスな出来事にばかり目が行きがちになります。もちろん不安になるのは当然のことです。しかし、がんになったからこそ気づける人の優しさや、新しい出会いなど、病気がもたらすプラスの側面(キャンサーギフト)も必ずあります。病気そのものにとらわれすぎず、そうした日々の小さな喜びや出会いにも目を向けて、穏やかな気持ちで過ごしていただければと思います。

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