写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:高松博之さん(本名)
年代:60代
性別:男性
家族構成:妻と2人暮らし(子ども1人は独立)
仕事:個人事務所経営
がんの種類:膀胱がん
診断時ステージ:ステージ2
診断年:2025年
現在の居住地:神奈川県
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
高松博之さんは、毎年欠かさず人間ドックを受けており、検査で異常を指摘されたことはありませんでした。しかし、2024年の11月から排尿時に灼熱感や軽い痛みを覚え、近くの泌尿器科クリニックを受診したことがすべての始まりでした。尿検査で血尿が認められ、超音波(エコー)検査で膀胱内に腫瘍が見つかります。その後、総合病院での検査を経て膀胱がんと診断され、膀胱全摘除術という大きな選択を迫られることになりました。術前化学療法と17時間に及ぶ大手術、そして術後の補助療法などを乗り越えた、これまでの経緯をお話しいただきました。
毎年受けていた人間ドックと突然の体の異変
私は会社員を退職した後も、元々勤めていた会社の健康保険組合を通じて毎年欠かさず人間ドックを受けていました。前立腺の腫瘍マーカーも含めてこれまで数値に問題が出たことは一度もなく、泌尿器系に重大な疾患が潜んでいるとは夢にも思っていませんでした。
変化が生じたのは2024年の暮れのことです。排尿時に、いつもと違う違和感や灼熱感を覚えるようになりました。当時はがんの可能性など頭の片隅にもなく、ただの膀胱炎だろうと高をくくって近くの泌尿器科クリニックを訪ねました。しかし、そこで血尿を指摘されたことで状況は一変しました。
医師から「尿をためた状態でしっかり検査をする必要がある」と言われ、後日再び超音波検査を行いました。すると画面に異物が映し出され、「膀胱に出来物がある」と告げられたのです。その数日後には膀胱鏡検査を受け、医師から「これはおそらくがんであるため、大きな病院で詳しい検査と治療を始めた方がいい」と言われました。
早期の精密検査を求めて総合病院へ
クリニックの先生から詳細な検査を勧められたのは金曜日のことでした。翌土曜日でも受診が可能な大きな病院を探したところ、以前に大腸ポリープの手術でお世話になったことのある総合病院を思い出し、紹介状を書いてもらいました。
月曜日まで待って他の病院を考えるよりも、一刻も早く診てもらいたいという思いが勝り、その土曜日にすぐに受診しました。がんかもしれないと言われた以上、気持ちがざわざわと落ち着かなかったため、少しでも早く行動を起こしたかったのです。
その総合病院で改めて組織を採取するなどの精密検査を行った結果、がんはすでに筋層まで達している可能性が高いと説明されました。担当医からは「膀胱をすべて摘出する手術(膀胱全摘除術)が必要になるだろう」と言われ、大きな衝撃を受けました。
セカンドオピニオンによる納得と治療方針の確定
膀胱をすべて失うという現実を受け入れることは容易ではありませんでした。そこで私は、治療に対する確信と納得を得るために、がん専門病院でセカンドオピニオンを受けることにしました。
がん専門病院の医師は、私の画像データや検査結果をじっくりと確認した上で、「高松さんの場合はステージ2(T2)に該当し、やはり膀胱全摘除術が最善の選択肢です」と言われました。同時に、ステージ2の5年生存率は70%程度であること、また現在通っている総合病院には泌尿器科の優れた専門医が在籍しているため治療体制に何ら問題はないこと、むしろ総合病院であれば他疾患のサポートも同時に受けられるメリットがあることを丁寧に教えてくれました。
このセカンドオピニオンによって、提示された治療法が医学的に最も信頼できる標準治療であると腑に落ち、病院を変えることなく元の総合病院で全摘手術を受ける覚悟が決まりました。
尿路変更を巡る葛藤とストーマという選択
手術を決めてから最も悩んだのは、膀胱を全摘出した後の尿路変更の選択でした。クリニックの医師からは、小腸の一部を使って新たな膀胱を作る「代用膀胱」という方法があると聞いていました。私には15年ほど前に大腸がんで亡くなった父親がおり、父が人工肛門を造設して生活していた姿を見ていたため、お腹に袋(パウチ)をつけるストーマに対して心理的な抵抗感があったのです。
また、私は趣味で週に1回プールに通って水泳を楽しんでいたため、ストーマをつけると大好きな水泳が続けられなくなるのではないかという懸念もありました。そのため、当初は自分の力で排尿できる代用膀胱にするつもりでいました。
しかし、総合病院の主治医と面談を重ねる中で、実際には多くの患者がストーマを選択している事実を知りました。自分なりに医学書や患者の方々のブログなどを読んだところ、代用膀胱での自己導尿は排尿の手技が非常に煩雑で、人によっては1回の排尿に20分もかかったり、夜間も2時間おきに起きて排尿管理をしなければならず、生活の質(QOL)が著しく低下することもあるとわかったのです。さらに、年齢を重ねるにつれて腹圧をかけて、排尿することが身体的な負担になるリスクも見えてきました。
一方で、病院の皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)の方に相談したところ、ストーマのパウチの貼り替え手順や日常生活の工夫について具体的な説明を受け、不安が解消されていきました。心配していた水泳についても、市内に障害者向けの専用スポーツセンターがあり、そこであればストーマをしていても周囲に気兼ねなく立派なプールを無料で利用できることがわかりました。これらのメリットとデメリットを総合的に勘案し、最終的には代用膀胱ではなくストーマを選択しました。
手術に備えた筋力維持と術前化学療法
手術に先立ち、2025年の2月から4月にかけて、術前化学療法を2サイクル受けました。当初予定していた薬(シスプラチン)は、私の腎機能の数値が少し低下していたため使用できず、腎臓への負担が少ないカルボプラチンとゲムシタビンの組み合わせに変更となりました。
この抗がん剤治療では、投与から1週間ほど経ったころに38度を超える高熱が出て炎症反応の数値(CRP)が10 mg/dL以上に跳ね上がり、急遽数日間入院するという副作用を経験しました。2回目の投与時にも発熱しましたが、その際は通院での点滴対応で乗り切ることができました。
また、がんに関する書籍を読んだ際、「術前の体力が高いほど手術からの回復が早い」という記述を目にしました。そのため、化学療法の合間を縫って、日々のウォーキングを習慣にしたり、自宅でダンベルを使った軽い筋トレをしたり、食事をしっかりとすることを強く意識して、自ら体力の向上に努めました。
17時間に及ぶ大手術と執刀医への感謝
2025年5月14日、いよいよ膀胱全摘除術の日を迎えました。手術日が近づくにつれて、どれほど冷静を装っても漠然とした不安やイライラが募り、好きな映画を見たり娯楽小説を読んだりして懸命に気分転換を図っていました。
全身麻酔のために眠っている間のことですから、私自身に手術中の記憶はありません。麻酔から覚め「高松さん、終わりましたよ」と声をかけられたとき、私が「今何時ですか」と尋ねると「2時です」と言われ、「意外と早く終わったんだな」と思いましたが、「夜中の2時です」と言われ言葉を失いました。朝の9時に始まった手術が、実に17時間もかかっていたのです。
後から主治医に聞いた説明によると、私の膀胱の組織が過去の尿路感染症などの影響により非常に硬く線維化しており、周囲の血管と強固に癒着していたそうです。その血管を一本一本傷つけないように慎重に剥がす作業に膨大な時間を要したということでした。事前に私から医師へ「合併症が恐ろしいので、時間がかかっても構いませんから丁寧にお願いします」と言っていたことも背景にあったのかもしれません。深夜まで全力を尽くしてくれた医療スタッフの方々には、感謝の言葉しかありませんでした。
術後の病理診断とオプジーボによる補助療法
手術で摘出した組織を詳しく調べた結果、正式な病理診断として「ステージ2、浸潤度はT2b、悪性度はグレード3」であることが確定しました。がんの顔つきが悪く、再発のリスクを抑える必要があると判断されたため、術後の補助療法としてオプジーボによる治療を勧められました。
主治医からは効果と同時に、重篤な副作用が起こるリスクについての説明もあり、最終的な判断は委ねられました。しかし、再発予防のために最善を尽くしたいと考え、迷うことなく治療への同意を選択しました。
2025年の9月から、2週間に1回のペースで通院し、オプジーボの治療が始まりました。今のところ大きな副作用はありません。手術後に、原因不明で発症していた皮膚の赤み(蕁麻疹様血管炎)が、オプジーボ投与後に一時的に悪化しましたが、皮膚科での適切な処方薬によって現在は落ち着いています。
現在も3か月に1回の定期的なCT検査で再発や転移がないことを確認しながら、予定通りのスケジュールで点滴治療を続けています。
家族の献身的な支えと現在の体調
この闘病生活を支えてくれたのは、何よりも妻の存在でした。私が膀胱がんと診断されて以来、妻はがん患者向けのレシピ本を何冊も買い込み、食事や栄養バランスに配慮したメニューを毎日工夫して作ってくれました。また、退院後の自宅のベッドメイキングやストーマ周囲のケアなど、身の回りの環境を整えるために懸命に尽くしてくれました。
離れて暮らす息子も、過度に騒ぎ立てることなく「親父なら絶対に大丈夫だ」と信頼を寄せて静かに見守ってくれており、その距離感が心の支えになりました。
2025年6月2日に退院した当初、64.5kgまで落ち込んでいた体重は、1年が経過した現在では71.5kgまで回復しました。少し太りやすい体質に変わったように感じていますが、むしろがんを患う前よりも健康体になったのではないかと思うほどです。
以前と変わらない平穏な日常の回復
手術を経て、私の生活は大きく変化しましたが、今では不自由を感じることはほとんどありません。先日には1週間近く北海道へ旅行に出かけましたが、ホテルの滞在時にもストーマの管理で困ることはありませんでした。食事はもちろん、以前と同様にお酒を楽しむこともできています。
唯一変わったことと言えば、体に少しでも悪い影響があるものはすべて排除しようと考え、がんを告げられたその瞬間に長年吸っていたタバコを完全にやめたことくらいです。パウチの貼り替えも最初は手間取りましたが、すぐにコツを掴み、現在ではレッグバッグ(脚に固定する蓄尿袋)を併用することで、トイレを気にせず外出できるようになりました。
また、夜間頻尿に悩まされることもなくなり、朝までぐっすり眠れるようになったことは、ストーマならではの意外なメリットだと感じています。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
今、がんの治療中の方や、これから手術を控えて不安な日々を過ごしている方にお伝えしたいことがあります。
標準治療を信じて決断は早めにしてください
特に膀胱全摘などの大きな手術を提示された場合、身体機能を失うことへの恐れや迷いから、決断を先延ばしにしたくなる気持ちは痛いほどよくわかります。しかし、迷っている間にもがんは確実に進行してしまいます。セカンドオピニオンを上手に活用して納得のいく情報を集めた後は、信頼できる医師が提示する標準治療を信じて、一刻も早く治療に臨む決断を下すことが、その後の人生を守るために最も大切だと思います。
苦しい時期は一過性のもので乗り越えられます
手術そのものは麻酔で眠っている間に終わってしまいます。本当に体がつらくて苦しいのは、術後のおよそ1週間です。そこを乗り越えれば、人間の体は驚くほどの回復力を見せ、日を追うごとに必ず良くなっていきます。術後の生活にも必ず慣れ、かつての平穏な日常に近い暮らしを取り戻すことができますので、希望を捨てずに一歩ずつ進んでいってください。
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