写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:かずさん(ニックネーム)
年代:60代
性別:男性
家族構成:妻と2人暮らし(子ども2人は独立)
仕事:求職中(診断時は会社員)
がんの種類:前立腺がん
診断時ステージ:ステージ1
診断年:2023年
現在の居住地:千葉県
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
2023年12月、かずさんは健康診断をきっかけに前立腺がんと診断されました。医師から複数の治療法を提示されたかずさんは、自ら専門書やインターネットで情報を集め、ご自身のライフスタイルに合った放射線治療を選択しました。職場に大きな負担をかけることなく、治療と仕事を両立させたこれまでの道のりについてお話しいただきました。
父親のがん罹患経験と健康診断で指摘されたPSA値上昇
私には、がんに対する遺伝的なリスクがあるのではないかという認識が以前からありました。父親が胃がんと大腸がん、そして前立腺がんを患っていたからです。父親は胃がんと大腸がんの手術を受けましたが、前立腺がんは手術を見送り、最終的には82歳で亡くなりました。死亡原因は、不明です。
ただ、父親は遠方の施設に入所していたため、日常的な闘病生活を間近で見ていたわけではありませんでした。晩年は認知症も進行していたため、具体的な治療の苦労などを直接聞く機会もありませんでした。それでも、家系的にがんにかかりやすいのではないかと考え、人間ドックなどの機会には検査をしっかり受けるようにしていました。
自覚症状は全くありませんでしたが、2021年ごろから健康診断のPSA検査で数値が基準値の4.0ng/mLを超え始めました。医師からは注意するように言われていましたが、2023年の2月の検査で数値が5.0ng/mLを超えたため、専門医を受診するように指示を受けました。
泌尿器科クリニックでの検査から大学病院での生検へ
近所の泌尿器科クリニックを受診し、PSA検査を再度行い、MRIやCTなどの画像検査も受けましたが、最終的には組織を採取して生検を行わなければ白黒がつかないという結論に至りました。そのため、クリニックの医師から紹介状を書いてもらい、大学病院を受診することになりました。
大学病院では、生検のために検査入院をしました。事前の想定では1泊2日と思っていましたが、実際には2泊3日になりました。検査では前立腺に針を12本刺して組織を採取しましたが、そのうちの1本から悪性の細胞が見つかりました。悪性度を示すグリソンスコアは7、がんは前立腺の内部に留まっているステージ1の前立腺がんと診断されました。転移がないことも検査で確認できました。
医師からの治療選択の提示と自発的な情報収集
確定診断を受けた際、大学病院の担当医からは、手術、放射線治療、ホルモン治療など、複数の治療の選択肢を提示されました。そして、「転移もしていないので、ご自身で治療法を選んで決めてきてください」と言われ、2週間後に妻を交えて最終的な治療方針を決定することになりました。転移していれば、治療は勧めないとのことでした。
医師にすべてを任せるのではなく、自分で決断しなければならない状況になったため、私はすぐに前立腺がんに関する専門書を3、4冊購入し情報収集を始めました。インターネットでも、大学病院やがん専門病院が公開している統計データや解説動画などを閲覧し、知識を深めました。
治療法を選ぶ上で大きな決め手になったのは、職場の先輩の体験談でした。その先輩は前立腺がんの手術を受けていたのですが、術後に尿漏れなどの後遺症に苦労しているという話を聞いていました。手術を選ぶと一定期間の入院が不可欠になり、長期間仕事を休まなければなりません。これに対して、放射線治療であれば入院の必要がなく、通院だけで治療を完結できる方法もあることがわかりました。仕事を長期間休みたくなかった私にとって、通院だけで終わる放射線治療は、自分の希望に最も合致している治療法であると納得できました。また、最近の放射線治療は精度が上がり、かつては数十回必要だった照射が、わずか5回で終わるSBRT(定位放射線治療)も可能になっていることを知りました。
SBRTを求めて別の総合病院へ転院
私は5回で終わるSBRTを希望しましたが、最初に生検を受けた大学病院では、20回程度かかる放射線治療にしか対応していませんでした。
そこで、SBRTが可能な病院を自分で探し、会社の近くにある総合病院へ転院することにしました。最初のクリニックの医師にも相談して意見を聞き、総合病院への紹介状を大学病院の医師に書いてもらいました。転院先の総合病院の放射線治療科の担当医は、過去にがん専門病院に長く勤めていた実績のあるトップクラスの専門医でした。自ら作成された最新の資料を用いて丁寧に説明してくれたため、非常に安心感を覚えました。手術を専門とする大学病院の医師に「放射線治療にします」と伝えた際は少し残念そうな反応をされましたが、私自身がしっかりと情報収集をして納得した上での決断だったため、迷いはありませんでした。
出社前にSBRTを受け通常勤務
治療は、金曜日に1回目を受け、翌週の月曜日に2回目を受けるというように、3週間に分けて合計5回の照射を行いました。会社の近くの総合病院だったため、朝8時半に予約を入れ、10分から15分程度の照射を受けた後、午前9時過ぎには会社に出社して通常通り仕事をするというスケジュールを組むことができました。
職場では上司や人事部長に事情を説明し、「治療を優先してください」との配慮をもらいましたが、実際には休職することもなく、日々の業務に支障が出ることは一切ありませんでした。同僚も私ががんの治療を受けているとは全く気づかなかったと思います。最後の5回目の照射の直前に新型コロナウイルスに感染してしまい少し予定が狂いましたが、それ以外は計画通りに進みました。心配していた尿漏れなどの副作用や後遺症も特に出ることはなく、治療前と変わらない生活を送ることができました。
家族の安心と現在の穏やかな日々
がんの告知を受けた際、妻には最終的な治療方針を決める面談に同席してもらったため、状況を正確に理解してくれていました。一方、独立している2人の娘には、がんの治療をすると伝えた当初、少し心配をかけてしまいました。娘たちは「がんの治療=抗がん剤で髪が抜けたり吐き気に苦しんだりするもの」という一般的なイメージを持っていたようです。しかし、放射線治療は入院もせず、会社を休むこともなく治療ができるということを説明し、実際に私が元気に働き続けている姿を見たことで、安心してもらえました。
現在は、定期的な経過観察を続けています。放射線治療後は一時的に数値が上昇する現象(PSAバウンス)が起きたり、手術とは再発を疑う基準が異なると事前に説明を受けていましたが、PSAの数値は0.2 ng/mL~0.3 ng/mL程度まで下がり安定しています。
総合病院での治療は一段落し、現在は元の職場近くの泌尿器科クリニックで定期的な血液検査を受けています。再発や転移に対する不安はゼロではありませんが、数値が安定している限りは過度に心配することはないと考えています。2026年の3月には会社を定年退職し、現在は次の仕事を探しながら穏やかな日々を過ごしています。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
がんと診断され、複数の治療選択を提案された方に伝えたいことがあります。
正しい情報を集め、自分の治療選択に納得することが大切です
医師から「自分で治療法を決めてください」と言われたとき、最初は戸惑うかもしれませんが、それは自分にとって最良の選択をする機会でもあります。私の場合は、専門書を複数読んだり、大学病院のウェブサイトやネットニュースで医療情報を日常的に確認したりしていました。基礎知識を持っておくことで、いざというときにパニックにならず、医師と相談しながら納得のいく決断を下すことができます。
治療と仕事の両立は、日常を取り戻すための支えになります
可能であれば、仕事を続けながら治療を行うことをお勧めします。仕事は1日の大半を占める大切な日常の一部です。私の場合、働きながら放射線治療を受けられたことで、社会とのつながりを断たれることなく、がんであるということを過度に意識せずに過ごすことができました。心身への負担が少ない治療法を選び、日常のペースを崩さなかったことが、精神的な安定に大きくつながったと感じています。
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