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卵巣がんと2度の乳がんを経験して考えた、自分らしく生きること

[公開日] 2026.06.05[最終更新日] 2026.05.29

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:まりさん(ニックネーム) 年代:60代 性別:女性 家族構成:夫との2人暮らし 仕事:臨床心理士・公認心理師(診断時は産業カウンセラー) がんの種類:卵巣がん、乳がん(2回) 診断時ステージ:ステージ3C(卵巣がん)、  ステージ0(乳がん1回目)、ステージ1(乳がん2回目) 診断年:2013年(卵巣がん)、2018年(乳がん1回目)、  2024年(乳がん2回目) 現在の居住地:兵庫県
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。 まりさんは、2013年にステージ3Cの卵巣がんと診断され、手術と抗がん剤治療を経験しました。その後も2018年と2024年にそれぞれ乳がんが見つかり、現在もホルモン療法を続けています。度重なるがんの告知を一人で受け止め、医療者とのコミュニケーションに悩みながらも、自ら納得できる治療環境を切り拓いてきました。もともと医療従事者であり、現在は臨床心理士・公認心理師として活動するまりさんが、治療と仕事の両立、医師との関係構築、そして病とともに生きる心のあり方について、これまでの経験をお話しいただきました。

資格試験の勉強中に判明した卵巣がん

私が初めてがんと診断されたのは、2013年のことでした。もともと眼科の視能訓練士として働いており、その後、家族の認知症介護や看取りの経験を経て、産業カウンセラーとして働きながら心理学を学び始めました。当時はさらなる研鑽のために40代で大学院へ進学し、臨床心理士の受験勉強に打ち込んでいました。 夏ごろから体が冷えるなど体調がおかしいと感じていましたが、試験が終わるまで受診を後回しにしていました。合格発表を待つ間、あまりの体調不良に足を運んだマッサージ店で「むくみ方がおかしいから病院へ行った方がいい」と指摘されました。そこで近くのクリニックを受診したところ、精密検査が必要ということで、紹介状を渡され地域の有名な総合病院へ向かいました。 検査の結果を見た医師から「腫瘍マーカーも非常に高く、すぐに手術が必要です」と告げられました。一人で受診していた場で突然の告知を受け、十分な説明もないまま手術日が決められていく状況でした。私は当時、決まっていた仕事の研修などがあり「仕事には行けますか」と尋ねたのですが、医師からは「行けるけど、髪の毛は抜けますよ」とだけ言われました。周囲の看護師からの心理的なフォローも一切なく、大きな不安と孤独感を抱えたまま病院を後にしました。そのときは、「自分は今まで自分の体に対して何をしてきたのだろう」と情けなくなる気持ちもありましたが、臨床心理士の資格は取得でき、その後、国家資格である公認心理師の資格ができたため、こちらの資格も取得しました。

命を預ける病院を自分で探し緊急手術へ

総合病院での医師の対応に、「この医師とこの病院に自分の命を預けるのは難しい」と強く感じました。腹水にがん細胞が散らばっている可能性が高く、状況は極めて深刻でした。医師である夫は、病状の深刻さから「とにかく早く手術を受けるべきだ」と考えており、転院には慎重な姿勢でしたが、私は自分で調べた上で、別の大学病院を受診することを決めました。 転院先の大学病院の医師は、私の話を丁寧に聞き、納得できる説明をしてくれました。最終的にその大学病院で、緊急に近い形で、7時間を超える大きな手術を受け、無事に腫瘍を摘出することができました。 術後は6か月の抗がん剤治療が始まりました。副作用は非常にきつく、苦しい時期が続きました。全身の毛も抜け落ちましたが、手頃なウィッグを購入して対応しました。副作用が落ち着く時期には、サウナに行って体を温めたり、努めて外出して気分転換を図ったりして、なんとか治療期間を乗り越えました。

治療と仕事の両立の壁、そして自らの相談室を開業

抗がん剤治療中、私は臨床心理士として行政機関で非常勤として働き始めていました。しかし、病状を上司に報告した際、「じゃあもう来られないわね」と即座に言われました。治療をしながら働くためのサポートや配慮はなく、職場で治療のために休むことの困難さを痛感しました。 もともと医療従事者向けのコミュニケーション研修やストレス対策の研修に関わってきた経験もあり、がん患者が働き続けるための心理的サポートが社会に不足していると強く感じました。この経験が後押しとなり、卵巣がんの治療後、4年を待たずに自分の心理相談室を開業しました。 大きな決断に主治医や夫は驚いていましたが、私の中に迷いはありませんでした。非常勤であっても治療のために休みにくい現実を経験したからこそ、自分で自分の働き方を決めたかったのです。仕事をしてクライエント(相談者)の成長を見守ることは、私自身の生きる力や自信に直結しています。生きている意味と自分にできる役割を強く感じたことが、私の予後にも良い影響を与えていると思っています。

2度の乳がん告知も前向きな気持ちで回復

卵巣がんの手術から5年が経過した2018年、経過観察として受けていたPET検査で、乳房に異常が見つかりました。ステージ0の非浸潤性乳がんでした。この時も、告知は一人で受けました。複数の病院を受診し、地域で一番と言われる病院の医師も信頼することが難しかったため、最終的に乳がん専門のクリニックで手術を受けることにしました。 乳房の全摘出と再建手術を受けることになりましたが、手術前に「胸にシリコンを入れたら、もうできないかもしれない」と思い、スキーに出かけました。そこで後ろから激突されて鎖骨を骨折し、主治医には呆れられてしまいましたが、このあたりの行動力が逆に私の回復力につながっているのかもしれません。卵巣がんと乳がんを経験したことから、遺伝性のがんを疑う検査も受けましたが、結果は陰性でした。 1度目の乳がんは、全摘と再建手術のみで術後治療などは行わず、経過観察を行っていました。しかし、2023年末に反対側の乳房に2か所の乳がんが新たに見つかりました。2024年1月に手術を受け、ステージ1と診断されました。2度目の乳がんは、サブタイプも異なりホルモン受容体陽性と診断されたため、術後のホルモン療法も必要となりました。これまで3回のがん告知をすべて一人で受け止めてきましたが、検査と治療が繰り返されるたびに、がん患者の心理的負担の大きさを実感しています。

再建治療での転院と、現在も続く副作用との向き合い方

2回目の乳がん手術でも乳房再建を実施しましたが、術後に問題が発生しました。術後に乳頭の温存が難しくなる合併症が生じ、さらにその後の説明や対応にも不安を感じたため、東京の有名な医師のもとへ転院して再建のやり直し治療を受けました。 現在はホルモン療法を続けていますが、副作用により自律神経が整わないことが多く、寒暖差が苦手で寝込むことも少なくありません。漢方薬を飲んだり、ジムに通って体力作りをしたりして、なんとか日々の生活を維持しているというのが本当のところです。 また、2020年ごろから膵臓にのう胞の所見があり、膵臓がんのリスクがあるため現在も経過観察を続けています。周囲からは「ご主人が医師だから安心ですね」と言われることが多くあります。しかし、患者本人としての不安や孤独がそれで消えるわけではありません。かえってその言葉だけで片付けられてしまい、友人たちの理解を得にくい面があります。主治医が私本人よりも夫に向けて説明するような場面もあり、患者として置き去りにされたように感じることも多々ありました。それでも、夫は私の治療を支えるために自身の勤務先を変えるなど、最大のサポートをしてくれています。

心理職として、がん患者としての思い

複数の医療機関を受診する中で、病院や医師によって説明のわかりやすさや検査時の負担、患者に対する姿勢が大きく異なることを実感しました。ステージ0であっても、初めてがんと向き合う患者の不安は計り知れません。医療機関には、ステージの重さだけでなく、その人の状況や家族背景、本人の性格も含めて全体を見てほしいと願っています。 私自身、前向きに見られることが多いですが、実際にはがん患者として常に崖っぷちに立っているような怖さや不安を感じています。だからこそ、怯えるよりも今ある時間を最大に生かしたいと思っています。インドまで赴いて学んだマインドフルネスの考え方を取り入れ、できないことを数えるのではなく「どうすればできるか」を考えるようにしています。 現在、がん患者さんやご家族から相談を受けることもあります。「がんを経験した心理職の支援が必要だ」と言っていただくこともあり、オンラインでの相談も受けていきたいと考えています。悲しさや不安に寄り添うだけでなく、その方がもう一度自分の力を取り戻していけるような支援を目指しています。

これからがんと向き合う方へのメッセージ

今、がん治療をしている方にお伝えしたいことがあります。 医療者との信頼関係を大切にしてください 私が一番伝えたいのは、納得できる治療環境を自分で選ぶことの重要性です。医師に遠慮しすぎず、疑問があれば納得できるまで質問し、しっかりと話し合える関係を築くことが大切です。もし、コミュニケーションに不安を感じたり、自分の命を預けられないと感じたりした場合は、セカンドオピニオンを求めたり、転院を検討したりすることも患者の権利です。自分自身が納得して治療に臨める環境を妥協せずに探してください。 一人で抱え込まず、つらいときはつらいと言ってください がんと診断されると、孤独や恐怖に押しつぶされそうになります。「しっかりしなければ」と無理に感情を抑え込む必要はありません。迷っていいし、悲しんでいいと思います。一人で抱え込まず、家族や友人、あるいは患者会や心理職などの専門家を頼ってください。悲しみ、疲れた後には、自分のペースで少しずつ前を向き、「一緒に立ち上がっていきましょう」とお伝えしたいです。 病気に人生を奪われないでください 治療や検査が続くと、生活のすべてががん中心になってしまいがちです。しかし、がんと「戦う」というよりも、がんを経験した自分とどう一緒に生きていくかを考えてみてください。「できないこと」を数えるのではなく、今の自分に「何ができるか」を考え、目の前にある時間や日常の生活を大切に味わうこと。それが、不安を抱えながらも自分らしい人生を歩んでいくための大きな支えになると私は信じています。

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