写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:山岸さん(本名)
年代:70代
性別:男性
家族構成:妻と2人暮らし(子ども2人は独立)
仕事:年金生活
がんの種類:前立腺がん
診断時ステージ:ステージ2
診断年:2023年
現在の居住地:石川県
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
山岸さんは、約20年前に狭心症の治療を行い、2022年には難病の「顕微鏡的多発血管炎」を発症しました。その入院治療中に、夜間頻尿とPSA値の異常が見つかり、2023年6月に前立腺がんのステージ2と診断されます。複数の持病を抱え、治療の選択肢が限られる中で、どのようにがんという新たな病と向き合い、納得のいく治療法を見つけたのか。その過程と患者自らが医師に情報を伝えることの大切さについて、お話しいただきました。
指定難病の治療中に見つかった前立腺がん
私は20年ほど前に狭心症を患い、心臓の血管を広げるためにステントを2本入れる治療を受けました。それ以来、3か月ごとに市立病院の循環器内科へ通い、定期的な血液検査を受けて経過を観察する生活を長年続けてきました。塩分制限などの生活指導も受けていましたが、当時はまだ現役で仕事をしており、正直なところ厳密には守れていない部分もありました。それでも定期検査だけは欠かさず受けていたのです。
事態が大きく動いたのは2022年のことです。2月の定期検査では腎臓の数値に異常はなかったのですが、5月の検査で突然、腎機能を示す値が急激に悪化していることがわかりました。クレアチニンの値が異常なほど跳ね上がっていたのです。すぐに腎臓内科へ回され、翌日に入院して詳しい検査を受けた結果「顕微鏡的多発血管炎」という指定難病であることがわかりました。足のむくみや微熱、体のひどいだるさといった症状は感じていましたが、まさか難病を発症しているとは思いもよりませんでした。
その市立病院では10日間入院し、各種検査と腎機能の急激な悪化を止めるため、ステロイドパルス点滴治療を受けました。しかし、病名診断確定のための 腎生検ができなかったため、大学病院へ転院することになりました。そこで約50日間の入院治療を受けました。
前立腺がんの兆候が見つかったのは、市立病院の入院中でした。入院前から夜間の頻尿が気になっていたため、腎臓内科の治療と並行して泌尿器科も受診したのです。その際の血液検査で、PSA値が少し高めに出ていることがわかりました。以前から、PSA値に関しては自分でも少し気にはしていましたが、これといった自覚症状はありませんでした。当時はまず顕微鏡的多発血管炎の治療を優先させる必要があり、PSA値もすぐにがんの治療を要するほどの高さではなかったため、そのまま1年ほど経過を見ることになりました。
そして、顕微鏡的多発血管炎の治療が落ち着き始めた2023年6月、改めて市立病院で検査をしたところ、PSAの数値が7.1ng/mLまで上昇していました。これを受けて本格的な精密検査を行うことになったのです。
脳動脈瘤により、希望したロボット支援下手術を断念
PSA値の上昇を受け、市立病院でMRI検査を行い、続いて前立腺の組織を採取する生検を受けました。実はこの生検の際、私は思わぬ事態に見舞われました。局所麻酔で行ったのですが、途中で血圧が急激に低下してしまったのです。医師も慌ただしく対応し、なんとか検査を終えましたが、私自身の体調の不安定さを痛感する出来事でした。
生検の結果、前立腺がんのステージ2であることが確定しました。転移は見られず、がん細胞は前立腺の中にとどまっている状態でした。市立病院の医師からは、血管炎の治療を受けている大学病院への転院を勧められました。その後、大学病院に転院し、担当の医師からいくつかの治療法の選択肢が提示されました。
私自身は当初、ロボット支援下手術を第一希望として考えていました。実は私の友人が1か月ほど前に別の病院でロボット支援下手術を受けており、傷口が小さくて入院期間も短く、体の負担が少なかったという話を聞いていたからです。がんという病気である以上、体の中にがんを残しておくよりも、手術で完全に切り取ってしまった方が安心できるという思いもありました。
しかし、ここでも私の持病が大きな壁となりました。私には脳動脈瘤があり、以前から経過観察を続けていたのです。ロボット支援下手術は頭を大きく下に向けた姿勢で長時間行われます。医師からは「脳動脈瘤がある状態でその姿勢を続けるのはリスクがあり、手術の適応にはならない」と説明されました。もしどうしてもロボット支援下手術を希望するなら、先に脳動脈瘤の治療を行わなければならず、それではがんの治療が大幅に遅れてしまいます。
さらに、先日の生検で急激な血圧低下を起こしたこともあり、全身麻酔を伴う手術はリスクが高いという判断に至りました。そのため、私に残された選択肢は、放射線治療だったのです。
ホルモン療法と20回にわたる放射線治療
手術が難しいという現実を突きつけられましたが、不思議と落ち込みはありませんでした。事前に自分でも調べていた情報と医師の説明が完全に一致しており、とても納得感があったからです。年齢や他の持病の条件を考慮すれば、放射線治療がベストだという結論に迷いはありませんでした。
私が受けたのはIMRT(強度変調放射線治療)という方法です。ただ、すぐに放射線を当てるわけではなく、まずは、がんを小さくするためのホルモン療法を先行させることになりました。2023年8月から、ビカルタミドを毎日服用し、3か月に1回、腹部にゴセレリンの注射を打つ治療が始まりました。
ホルモン療法は半年ほど続けましたが、幸いなことに私にはこれといった副作用が現れませんでした。体調を崩すこともなく、PSAの数値は下がっていきました。治療開始前の8月の段階で7.1ng/mLだった数値が、翌年2024年の2月の時点では0.021ng/mLまで下がっていました。
そして2024年3月から、いよいよ放射線治療が始まりました。平日の午後に毎日通院し、4月中旬にかけて計20回の照射を受けました。自宅から大学病院までは車で20分程度の距離でしたので、通院の負担はそれほど大きくありませんでした。もし私がまだ現役で仕事をしていて、毎日職場を抜け出して通院しなければならない状況であれば、仕事と治療の両立はかなり大変だったと思います。定年退職して完全にリタイアしており、自分の時間を自由に使える状態だったことは、本当に不幸中の幸いでした。
治療後の経過と、複数の病を抱えながら生きるという実感
放射線治療の期間中、体調が大きく崩れることはありませんでした。しかし、治療が終了して半年経ってから、排便時に血が混じるようになりました。もともと私には痔の持病があったのですが、その症状が普段よりも強く出たような感覚でした。放射線治療による直腸への影響(放射線性直腸炎)の可能性も考えられたため、放射線科の医師に相談し、消化器内科の医師の診察も受けたところ、その可能性は低いということで、痔の薬を処方してもらいました。現在はその症状も落ち着いています。
前立腺がんの治療後によく耳にする尿漏れや排尿障害、勃起障害といった後遺症についても、私自身はそれほど深刻な影響を感じていません。年齢的な要因もあると思いますが、日常生活を送る上で困るような自覚症状はないというのが正直なところです。
現在は3か月ごとに通院し、経過観察を続けています。PSAの数値は直近の2024年4月の検査で0.498ng/mLでした。放射線治療直後の0.021ng/mLからはわずかに上がっていますが、依然として低い値で安定しています。主治医からは「もし数値が最低値から2.0ng/mL上がったらPSA再発を疑い、再びホルモン療法を開始しましょう」と事前に方針を聞いているため、過度な不安はありません。
私は今、狭心症、脳動脈瘤、顕微鏡的多発血管炎、そして前立腺がんと4つの病気と付き合っています。がんの告知を受けたとき、不思議なほどショックを受けなかったのは、すでに指定難病の治療を経験していたからかもしれません。指定難病に比べれば、ステージ2で転移もない前立腺がんは、落ち着いて対処できる病気だと私には受け止めることができました。「またひとつ付き合う病気が増えたな」という感覚に近かったと思います。
狭心症の定期検査があったからこそ顕微鏡的多発血管炎を発見でき、顕微鏡的多発血管炎の治療で入院したからこそ前立腺がんを見つけることができました。過去の病気が現在の病気の発見につながったと考えれば、私はとても恵まれていたのだと思います。
納得のいく医療を受けるために自ら情報を伝えることの大切さ
私がこれまでの闘病生活で最も強く実感しているのは、患者自らが主体的に医師へ情報を伝えることの重要性です。
私は市立病院と大学病院の両方にかかっており、複数の診療科を受診しています。現代の医療はチーム医療と言われ、電子カルテで情報が共有されていると期待しがちですが、実際には診療科が違えば、ましてや違う病院なら、患者の細かな背景や他科での会話内容までは十分に伝わっていないことが多いと感じます。
だからこそ、私は別の科を受診する際、自分から積極的に情報を開示するようにしています。「〇科ではこういう質問をして、こういう説明を受けました」「以前、胃や大腸内視鏡検査を受けて、こういう診断結果が出ました」といった情報を、腎臓内科や泌尿器科の医師にも必ず伝えます。放射線治療を決める際も、自分から「脳動脈瘤があります」と申告したからこそ、医師は迷うことなくロボット支援下手術を治療の選択肢から外すことができました。
もし私が黙っていたら、ロボット支援下手術の準備として脳のMRIを再度撮影することになったかもしれません。専門医はそれぞれの分野の専門家であり、目の前の病気を診るプロですが、患者の全身状態をすべて把握しているわけではありません。自分自身の体を守り、納得のいく治療を受けるためには、患者側が「今日はこの先生にこれを伝えよう」と事前にメモを準備し、積極的にコミュニケーションを取る必要があります。
私は顕微鏡的多発血管炎のコミュニティにも参加していますが、そこでも長く闘病されている方は皆さん、自ら医師に情報を提供し、治療に主体的に参加しています。医師任せにするのではなく、自らの足で医療というチームに加わっていく。それが、複数の病を抱えながらも前向きに生きていくための秘訣だと思っています。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
今、がん治療をしている方にお伝えしたいことがあります。
自分の病気や体調の情報を包み隠さず医師へ伝えてください
専門医は特定の分野の専門家ですが、あなたの全身状態や他の持病、生活の背景までをすべて把握しているとは限りません。特に複数の病気を抱えている場合、薬の飲み合わせや治療の優先順位が複雑になります。自分から積極的に情報を開示し、医師との間に情報の隙間を作らないことが、安全で納得のいく治療につながると思います。
病気であることを受け入れ、日々の生活を淡々と過ごしてください
がんという診断を受けると、どうしても絶望的な気持ちや不安に押しつぶされそうになるかもしれません。しかし、その不安に囚われすぎない努力も必要です。今、自分に起きている事実をありのままに受け入れ、その中でどうやって日々の生活を充実させていくかを考える。そうした心持ちが、精神的な安定と治療に立ち向かう力をもたらしてくれます。
遠慮せずに医師と納得ができるまで対話してください
診察時間は限られており、忙しそうな医師を前にすると萎縮してしまうこともあるでしょう。自分の希望や疑問をしっかりと伝えてください。納得のいく治療を受けるためには、患者側も受け身になるのではなく、医療チームの一員として主体的に医師と関わっていくことが大切です。
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