写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:もんちゃんさん(ニックネーム)
年代:60代
性別:女性
家族構成:夫と2人暮らし(子ども3人は独立)
仕事:無職(診断時は会社員)
がんの種類:肺がん
診断時ステージ:ステージ1B
診断年:2016年
現在の居住地:広島県
治験フェーズ:第1/2相
治験参加時の治療ライン:5次治療(5番目の治療)
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
2016年に肺がんと診断されて以来、10年に及ぶ療養生活を送るもんちゃんさん。その道のりは、再発や転移、さらにはがんの性質が変わる「形質転換」といった困難の連続でした。もんちゃんさんは標準治療に留まらず、自ら情報を集め、4度ものセカンドオピニオンを重ねる中で治験という選択肢を自らの意思でつかみ取ってきました。「生きていれば、必ず新しい薬が出てくる」という信念を持ち、これまでに12回の治療変更を乗り越えてきたもんちゃんさんに、治験への参加を決めた理由や、実際の現場で感じたこと、そして治験がもたらした意識の変化についてお話しいただきました。
治験を知ったきっかけは、患者会での交流
私が治験のことを詳しく知るようになったきっかけは、再発を機に参加するようになった肺がんの患者会でした。それまで治験という言葉に対して、どこか遠い世界の、あるいは少し怖いイメージを持っていましたが、患者会の仲間たちとの交流がその認識を大きく変えてくれました。
仲間たちとは日頃から、「生きていれば、必ず新しい治療法が開発されてくる。だから頑張ろう」と励まし合っていました。肺がんの治療は非常に進歩が速く、新しい薬が次々と登場しています。患者会での情報交換を通じて、「治験は決して人体実験のような恐ろしいものではなく、まだ承認されていない最新の治療をいち早く受けるための、大切な選択肢のひとつである」という知識を自然と蓄えていました。
私自身、「ひとつでも多くの薬を使えることが、寿命を長くする秘訣だ」と考えていました。治験は自分の病状やタイミングが合わなければ参加できない貴重な機会です。そうした背景があったため、治療に行き詰まりを感じたときも、私は治験を「自分を助けてくれる新しい選択肢のひとつ」と捉えました。
セカンドオピニオンで出会った治験の提案
2020年、それまで服用していた分子標的薬の効果がなくなり、その後に受けた抗がん剤治療も芳しくありませんでした。次に提案された標準治療に対しても、副作用への懸念から強い迷いを感じていた私は、納得して次のステップに進むために、隣県にある大学病院へセカンドオピニオンに行きました。
そこで担当の先生から、「実は今、条件に合う治験があるのですが、やってみませんか」という具体的な提案を受けたのです。それは、特定の遺伝子変異を持つ患者を対象とした、承認前の薬剤を併用する試験でした。
治験という言葉を聞いたとき、私は不安を感じるどころか、むしろ「うれしい」という気持ちがこみ上げてきました。それまでの治療に限界を感じていた私にとって、新しい可能性に挑戦できることは何物にも代えがたい希望でした。標準治療として提示されていた薬よりも、未知の可能性を秘めた治験薬の方が自分には合っているのではないか、という直感もありました。
「自分のために」という正直な思いと診察室での即断
治験の提案をいただいたとき、本当は「他の患者さんのために」という高い志があればよかったのかもしれませんが、正直な気持ちとしては、まずは「自分のために」という思いが一番にありました。新しい治療の選択肢が増えることが、単純にうれしかったのです。
その診察室には、主人と息子も付き添っていました。提案をいただいた瞬間、私たち家族3人はその場で大喜びしました。家族の前向きな後押しがあったことは、私の決断をより確かなものにしてくれました。私は迷う気持ちなど全くなく、その場で即座に治験への参加を決断しました。先生がすぐに治験コーディネーターを呼んでくださり、そのまま詳しい説明を受け、次回の検査日程などすべての手続きを済ませて帰宅しました。
第1/2相試験でしたので、必ず治験薬による治療が受けられるという点も、安心感がありました。
大学病院における第1号患者としての緊張感と手厚い観察
私が参加した治験は、点滴による分子標的薬と毎日服薬する分子標的薬を併用するというものでした。その大学病院においては私が第1号の患者だったため、病院側の体制も非常に厳重で、投与開始当日は多くのスタッフが見守る中での点滴となりました。
実際に投与が始まった直後、インフュージョン・リアクション(点滴反応)が起き、呼吸が苦しくなるなどの症状を経験しました。しかし、治験ということもあって、先生や看護師さんだけでなく、治験コーディネーターなど、多くのスタッフが私の体調を非常に注意深く、手厚く観察してくれていました。すぐに適切な処置が行われ、症状は落ち着きました。
こうした「しっかりと見守られている」という実感は、未知の薬を使う上での大きな安心感につながりました。自分が第1号として経験したことがデータとなり、それが後に続く患者さんの安全性に役立つのだという自覚も、治療を前向きに捉える力になりました。通常の保険診療以上に、自分の体が詳細に管理されているという感覚がありました。
治験コーディネーターという存在に支えられた安心感
治験に参加して最も心強かったのは、治験コーディネーターの存在です。通常の診察では、お忙しそうな先生に些細な副作用のことを相談するのは遠慮してしまう場面もありました。しかし治験では、治験コーディネーターがじっくりと時間を取って話を聞いてくれました。
「今日はこんなところがだるい」「昨日、少し胃のあたりに違和感があった」といった、極めて細かな変化についても、包み隠さずすべて話すことができました。治験コーディネーターとは電話で連絡を取り合うこともでき、診察の時には忘れていたような些細な出来事も、後から伝えることが可能でした。
先生には直接話しにくいような細かな変化も、治験コーディネーターがしっかりと聞き取って医療チームにつないでくれる。この手厚いサポートがあったからこそ、私は安心して治験を継続することができました。治験は、患者と医療スタッフが共に協力して進めていくものだということを、日々の対話を通じて実感しました。
薬を世に送り出すための厳格なルール
治験は科学的なデータを収集するためのものですから、投薬のスケジュールには非常に厳格なルールがありました。通常の治療であれば、体調や家庭の事情に合わせて「少し日程をずらしましょう」という調整が可能ですが、治験ではそれが許されません。データの信頼性を保つために、決められたスケジュールを守る必要があります。
治験期間中に、主人の父が亡くなり葬儀がありました。親族としては葬儀の全行程に立ち会いたいという思いもありましたが、治験の投薬スケジュールを優先せざるを得ませんでした。結局、葬儀の翌日に大学病院へ向かい、予定通り投薬を受けました。
こうした生活上の制約があり、融通が利かない厳しさを感じる場面もありました。しかし、それも正確なデータを残し、薬を世に送り出すための「治験の重み」なのだと理解して受け入れました。決められたルールを厳守することが、治験に参加する患者としての責務であると強く意識していました。
一度の飲み忘れから学んだ患者としての責任感
約1年半にわたる治験期間中、私は一度だけ薬を飲み忘れてしまったことがありました。決して忘れるつもりはなかったのですが、ふとした瞬間に抜け落ちてしまったのです。全く気が付かず、受診した際に治験コーディネーターの方に指摘されました。そのときは、正確なデータを届けなければならないという責任感から、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。すぐに治験コーディネーターの方へ連絡を入れ、正直に報告しました。
それを機に、二度と忘れないようにカレンダーへ大きく書き込んだり、日ごとに薬を小分けにするケースを工夫したりと、自己管理をさらに徹底しました。治験に参加することは、ただ薬をもらう受動的な立場ではなく、自分も治験チームの一員として正確な記録を残す重要な役割を担っているのだと、身をもって学びました。この厳格な管理こそが、未来の薬を作るための大切なプロセスなのだと改めて実感した出来事でした。
治験参加を経て変化した治験へのイメージ
治験を受ける前と後では、私の意識は180度変わりました。実際に受けてみてわかったのは、治験は決して恐ろしいものではなく、むしろ非常に手厚く守られた環境での治療だということです。
治験担当医も治験コーディネーターも、何かあれば全力でフォローしてくれる体制が整っています。頻繁に行われる検査によって、自分の体の状態がこれ以上ないほど詳しく把握されているという安心感は、通常の治療以上に大きかったかもしれません。
また、治験を経て新しい薬が承認されていく過程を目の当たりにし、「医療の進歩によって生かされている」という実感を強く持ちました。私たちが今使っている薬も、かつて誰かが治験に参加してくれたからこそ存在しています。
12回の治療変更を経て到達した現在
治験薬による治療は約1年半継続し、私の病状を安定させてくれました。その後、薬の効果が弱まり病状の増悪が認められたことで治験は終了となりましたが、その後も私はその時々の最善の選択を続け、現在は計13次治療を行っています。2024年には、肺がんの性質が非小細胞肺がんから小細胞肺がんに変化する「形質転換」という厳しい状況を迎えましたが、そのとき使用していた治療薬に耐性ができた際に、最新の薬が承認されたばかりのタイミングで使えるようになりました。
かつて私が治験で経験したように、多くの患者さんと医療者の努力によって届いた薬が、今の私の命をつないでくれています。医療の進歩は、患者が諦めずに選択肢を模索し続けることで、自分のものにできるのだと感じています。自分一人で頑張るのではなく、周囲を巻き込み、情報を共有し、最新の知見に触れ続けることの大切さを、この10年で学びました。また、こうして元気に過ごせているのは、治験を含めたあらゆる治療の選択肢があったからです。生きていれば、必ず新しい薬が出てくる。そのことを信じて、これからも前を向いて歩んでいきたいと思っています。
治験を検討されている方へのメッセージ
今、治験を検討している方にお伝えしたいことがあります。
治験は治療選択のひとつです
治験は決して「最後の手段」ではなく、自分にとっての選択肢を増やすための前向きな選択肢のひとつです。もし条件に合う治験があるのなら、過度に恐れず、まずは話を聞いてみてください。通常の治療では得られない、新しい薬に出会える可能性があります。
医療スタッフの手厚いサポートを信じてください
治験では、治験コーディネーターなど、多くのスタッフがあなたを支えてくれます。通常の治療以上に体調を詳しく見てくれる体制があり、不安なことがあればすぐに対応してもらえます。一人で抱え込まず、スタッフを信頼してください。
「生きていれば新しい治療に出会える」と信じてください
10年前にはなかった薬が、今は当たり前のように使われています。医療は驚くべきスピードで進歩しています。今の治療が難しくなったとしても、明日には新しい希望が見つかるかもしれません。その可能性を信じて、今日という日を大切に生きていきましょう。
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