写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:もんちゃんさん(ニックネーム)
年代:60代
性別:女性
家族構成:夫と2人暮らし(子ども3人は独立)
仕事:専業主婦(診断時は会社員)
がんの種類:肺がん
診断時ステージ:ステージ1B
診断年:2016年
現在の居住地:広島県
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
2016年1月、人間ドックをきっかけに肺がんが見つかったもんちゃんさん。当初はステージ1Bでしたが、その後、約10年に及ぶ治療の中で、再発や脳転移、そして肺がんの性質が変わる「形質転換」という極めて困難な局面を何度も経験しました。標準治療から治験、そして承認されたばかりの新薬へと、13回の治療変更をしながら「生き続けていれば、次の薬に出会える」という信念を胸に歩んできました。患者会活動を通じて仲間とつながり、前向きに病と向き合い続けるこれまでの歩みをお話しいただきました。
健診センターからの7回の着信から始まった肺がん治療
私の肺がんがわかったのは、2016年1月のことでした。きっかけは、毎年受けていた人間ドックのレントゲン検査でした。検査結果の通知が届くより先に、健診センターから何度も電話がかかってきたことを覚えています。1日に7回も着信があり、ただ事ではないと感じてすぐに連絡を取りました。「とにかく精密検査に行ってください」という強い言葉に押され、その週末には近所のクリニックを受診しました。
そのクリニックでCT検査を受けたところ、画像を見た医師から「肺がんの可能性が非常に高い」と告げられました。その先生が以前勤務していたという総合病院へ即座につないでくださいました。
総合病院で改めて検査を受けた結果、診断は非小細胞肺がんのステージ1Bで、遺伝子検査では、EGFR遺伝子変異の陽性が確認されました。2016年2月には左肺の下葉を切除する手術を受け、無事に成功しました。当時は正社員としてフルタイムで働いており、手術のために病気休暇を取得しました。退院後は再発予防のため抗がん剤治療を行いましたが、この時はまだ「一度の治療で完治するはずだ」と信じて疑いませんでした。
術後11か月での再発と仕事を優先した治療選択
手術から順調に回復していたように見えましたが、術後10か月が経過した2016年末、定期検査で再発が見つかりました。肺門と縦隔に転移が確認されたのです。主治医からは放射線治療と抗がん剤を併用して根治を目指す提案を受けましたが、私は強い抵抗を感じました。
当時、3人の子どものうち一番下の子がまだ大学生で、私は経済的にも家計を支えるために仕事を辞めるわけにはいかなかったのです。入院が必要な治療や、髪が抜けるような副作用が強い抗がん剤は避けたいと考え、通院で継続できる分子標的薬のイレッサを選択しました。この決断により、湿疹や下痢といった副作用は多少ありましたが、仕事を休むことなく普段通りの生活を維持することができました。
イレッサによる治療は約1年4か月間続きました。しかし、2018年4月ころには薬の効果が薄れ、再び病変が大きくなり始めました。肺の病変が増悪すると同時に、新たな問題も浮上しました。脳への転移がわかったのです。
脳転移へのガンマナイフ治療と第3世代薬への切り替え
2018年8月、脳転移に対してガンマナイフ治療を行いました。並行して、次なる治療薬として期待されていた第3世代のEGFR-TKIのタグリッソへの切り替えを検討し始めました。当時の基準では、T790M変異が陽性でなければ使用できませんでしたが、最初に行った血液検査では陰性という結果でした。
一時は希望を失いかけましたが、治験に入ることを選択したため主治医が「組織を採って調べましょう」と粘り強く対応してくださいました。生検を行い、検体を海外の検査機関へ送って詳細に調べた結果、T790M変異陽性が確認されました。こうして治験には入れなかったものの2018年12月にタグリッソを開始することができ、病状は再び安定しました。
タグリッソによる治療も約1年4か月間、私の命を支えてくれました。しかし、2020年4月になると再び耐性が現れました。次の一手として、シスプラチンとアリムタによる併用療法を4クール受けましたが、効果が見られませんでした。私は更なる選択肢を求めてセカンドオピニオンを受ける決意をしました。
セカンドオピニオン先で提案された治験に参加
2020年秋、私はさらなる治療の可能性を探る中で、大学病院で実施されていた治験に参加することに決めました。治験は、私にとって未知の領域ではありましたが、当時の自分の病状に最も適した選択肢のひとつであると考えました。
この治験では、約1年4か月間にわたり病状を安定させることができましたが、やはり効果がなくなり治験は終了となりました。治験終了後は、ドセタキセルとラムシルマブの併用療法、そして2回目のタグリッソ服用へと治療をつないでいきました。この10年余りの間に、私は13回にも及ぶ治療変更を経験しています。同じ薬剤を時期をずらして再度使用することもありましたが、主治医と相談しながら、その時々の最善を探り続けてきました。
治療の過程では、深刻な副作用にも直面しました。8次治療として行ったゲムシタビンとナベルビン併用療法の際、反回神経麻痺が起き、声がかすれて出にくくなってしまったのです。これは現在も残る後遺症ですが、がんの勢いを抑えるためには必要な過程であったと自分なりに納得しています。さらに、副腎への転移に対してはサイバーナイフ治療を行うなど、局所的な処置も組み合わせてきました。
非小細胞肺がんから小細胞肺がんへの形質転換
2024年10月、私の病状は急激に悪化しました。腫瘍マーカーが上がり、肝臓への転移も見つかりました。医師からは「非小細胞肺がんが、小細胞肺がんへと性質を変える形質転換が起きている可能性が高い」と告げられました。これは肺がん全体のわずか数%にしか起こらない、非常にまれな状態でした。
入院して肝臓の生検を行ったところ、小細胞肺がんへの形質転換が確定しました。そこからは、小細胞肺がん向けの治療へと方針を大きく切り替えました。イリノテカンによる治療、その後カルボプラチンとエトポシドとテセントリクを併用した治療を行いましたが、期待したほどの効果は得られませんでした。一時は体調もかなり悪化し、2025年に入ってからは通算3回目となる脳へのガンマナイフ治療も経験しました。
しかし、この厳しい状況の中で、再び新しい薬が私の希望となりました。2024年に承認されたイムデトラです。
承認されたばかりの新薬への挑戦と現在
2025年7月から、私は隣県の大学病院でこの新薬の投与を開始しました。がん化学療法後に増悪した小細胞肺がんに対する二重特異性抗体です。実際に投与を始めると、小細胞肺がんに対しては効果がありました。ところが、私の体の中には元のEGFR遺伝子変異を持つ非小細胞がんも残っていました。
現在は、非小細胞がんと小細胞がんの両方に効果を期待できるアブラキサンなどの治療を行っています。10年間の治療を経て、体力的には決して楽ではありませんが、それでもこうして「今」を生きていられるのは、医療の進歩があったからこそだと痛感しています。
初期にがんが見つかったときは、10年後の自分がまだこうして治療を続け、新しい薬の恩恵を受けているとは想像もしていませんでした。13回の治療変更は、それだけ多くの研究者や医師、そして同じ病と闘う先人たちが切り拓いてくれた「命のリレー」の結果なのだと感じています。
患者会活動と「今やりたいこと」を後回しにしない生き方
長い闘病生活を支えてくれたのは、医療だけでなく、患者会で出会った仲間たちの存在でした。コロナ禍を機にZoomなどのオンラインで全国の患者さんとつながることができ、情報交換だけでなく、心の支えを得ることができました。お互いの状況を理解し合える仲間の存在は、孤独になりがちな治療生活において何物にも代えがたい力になります。
がんを経験して、私の生き方は「後回しにしない」という一点に集約されました。いつかやろう、いつか行こうと思っていたことは、動けるうちにすべて実行すると決めました。息子がアメリカにいた時には、体調が万全ではない中、無理を承知で会いに行きました。旅行先でなにかあったときのために、主治医は私の現在の病状を英文で書いてくださり「これを持って行きなさい」と背中を押してくださいました。
現在は、自宅でのガーデニングや野菜作りを楽しみながら、日々の何気ない生活を慈しんでいます。「生きていれば、必ず新しい薬が出てくる」。この10年で私が学んだ最も大切な教訓です。それを証明し続けることが、自分の使命であるかのように感じています。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
今、がんの告知を受けたばかりの方や、治療の継続に不安を感じている方へお伝えしたいことがあります。
「生き続けること」そのものが希望につながります
医療の進歩は、私たちが想像する以上のスピードで進んでいます。私が10年前に告知されたときには存在しなかった薬が、今では当たり前のように使われ、私の命をつないでくれています。今の治療が難しくなったとしても、明日には新しい選択肢が生まれるかもしれません。その可能性を信じ、今日を大切に生きてください。
周囲の力を借りて、やりたいことを諦めないでください
治療は自分一人で頑張るものではありません。医師や看護師、そして家族や仲間に自分の想いを伝えてください。私は旅行や仕事など、自分らしい生活を守るために何度も周囲に助けを求め、それを叶えてきました。自分の意思を明確に伝えることで、医療チームは最強のパートナーになってくれます。
信頼できる仲間とのつながりを大切にしてください
同じ病を経験した仲間との対話は、どんな薬よりも心を癒してくれることがあります。患者会などを通じて、孤独にならない環境を作ってください。仲間の頑張る姿は力になりますし、自分の経験が誰かの支えになることもあります。支え合いの輪の中にいることが、前を向くエネルギーになります。
がん体験に関するインタビュー参加者募集中
オンコロでは、がん体験をお話しいただける方を対象としたインタビューを実施しております。応募条件など、詳細は下記の応募フォームをご確認ください。