写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:ヒロさん(ニックネーム)
年代:60代
性別:男性
家族構成:妻と2人暮らし(子ども3人は独立)
仕事:嘱託社員
がんの種類:舌がん
診断時ステージ:ステージ2
診断年:2023年
現在の居住地:神奈川県
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
2023年1月、ヒロさんは舌がんと診断されました。自らの体に起きた些細な異変を見逃さず、かかりつけの歯科医と病院の連携によって早期の治療にたどり着いたヒロさん。手術後のリハビリや抗がん剤治療、そして現在も続く経過観察に至るまで、客観的な情報を重んじる冷静な姿勢で病と向き合ってきました。これまでの歩みと、患者としての心構えについてお話しいただきました。
舌の異変と消えない不安
私が舌の側面に違和感を覚えたのは、2022年の11月下旬のことでした。鏡で見ると、白いパッチのような病変ができていました。私はもともと口内炎になりやすい体質だったため、今回もいつものことだろうと判断し、しばらく様子を見ることにしました。
しかし、12月に入ってもその病変は消えず、わずかな痛みも続いていました。通常の口内炎であれば数日で自然に消滅するものですが、今回は10日以上経過しても状況が変わりませんでした。年末の忙しい時期ではありましたが、今までとは違う感覚に不安を覚え、一度専門医に診てもらうべきだと考えました。
かかりつけの歯科医の迅速な対応
12月16日、私はかかりつけの歯科医院を受診しました。その先生は口腔外科を専門とされていたため、私の舌を診るなり、深刻な状況である可能性を指摘されました。「奥歯と擦れて炎症が起きているのかもしれませんが、少し気になります。すぐに大きな病院で精査してください」と言われ、その場で紹介状を書いてくださいました。
この段階で歯科医が迅速に判断し、適切な医療機関へつないでくれたことが、早期発見において極めて重要でした。自己判断で「口内炎だろう」と決めつけず、専門医の意見を仰いだことが、治療への第一歩となりました。舌がんも決して軽視しないでください。 あの時、歯科医の言葉に背中を押され、すぐに行動に移したことが、私のその後の人生を左右したのだと痛感しています。
ステージ2の舌がんという事実を冷静に受け止める
紹介状を持って向かったのは、自宅から通いやすい距離にある大規模な総合病院でした。年が明けた2023年の1月早々、局所麻酔をかけて組織を採取する生検が行われました。その数日後、確定した診断結果は舌がんのステージ2でした。
がんの告知は、誰にとっても穏やかなものではありません。しかし、私は、仕事柄物事を客観的なデータや確率で捉える習慣があったため、過度に動揺することはありませんでした。「がんになった」という事実を受け入れ、次にどのようなアクションを起こすべきか、冷静に考えるように努めました。
実績と信頼に基づいた病院の選択
治療にあたって、私はセカンドオピニオンを求めませんでした。受診した総合病院のホームページを確認したところ、舌がんの手術実績が年間15件ほど公表されており、専門的な治療体制が整っていることが確認できたからです。
また、がんの治療は長期にわたる可能性があります。家族のサポートや通院の負担を考えると、信頼できる病院が自宅の近くにあることは大きな利点でした。地域の医療連携がしっかりしていることもわかっていたため、この病院で主治医の提示するプログラムに沿って治療を進めることを決めました。
外科手術と術中迅速診断を実施
手術は診断から間もない2023年1月24日に行われました。ステージ2の舌がんに対する標準的な治療として、腫瘍とその周辺組織を適切に切除する方針が示されました。
全身麻酔で眠っていた私にはわかりませんでしたが、手術中には、切除した部位の周囲にがん細胞が残っていないかをその場で確認する術中迅速病理診断が行われました。切除した組織を検査に回し、断端にがん細胞がないことを確認しながら慎重に手術が進められました。手術は成功し、腫瘍はすべて切除できたとのことでした。
主治医からは術後の痛みや滑舌への影響について事前に説明を受けていましたが、私は病を克服するために必要な過程であると理解し、すべてを委ねることにしました。
術後の入院生活と嚥下への影響
手術後の入院期間は約2週間でした。退院までの間、舌を安静に保つ必要があり、会話や食事には制約がありました。特に苦労したのは、物を飲み込む際の嚥下に伴う痛みでした。退院直前までこの痛みは続きましたが、口内の回復状況は良好であるとの説明を受け、少しずつリハビリを進めていきました。
入院中は4人部屋の相部屋で過ごしました。周囲には肺がんや脳腫瘍など、異なる部位のがんと向き合う方々がいました。他の患者さんと接することで、がんは誰にでも起こり得るものであり、それぞれが自分の病と懸命に戦っているのだということを肌で感じました。
医療スタッフの前向きな姿勢
入院生活の中で、医師や看護師の方々の対応には非常に助けられました。がん患者は「なぜ自分がこのような病気になったのか」と過去を振り返り、原因を自分の中に求めてしまいがちです。私自身も、かつての飲酒や喫煙、刺激物の摂取などが影響したのではないかと考えることがありました。
しかし、この病院のスタッフは、決して過去の話をしませんでした。「昔こうだったからこうなった」といった原因探しはせず、「現在の状況はこうであり、これからどうしていくか」という未来に向けた話だけを徹底していました。この前向きな姿勢は、不安の中にいた私にとって大きな励みとなりました。
著しい日常生活への影響もなく、仕事に復帰
退院後、再発を予防するために補助化学療法としてTS-1を6か月間服用しました。薬に関する情報は自分でも収集していましたが、実際に服用してみるとある症状が現れました。
私の場合、持病のアトピー性皮膚炎が服用中に悪化したような感覚がありました。皮膚科も定期的に受診し、医師に相談しましたが、副作用であると断定することは難しいとのことでした。季節的な変動や入院環境の変化も影響していたのかもしれませんが、自分自身の体感としては、抗がん剤の影響も否定できないと感じていました。しかし、幸いにも、日常生活を著しく妨げるほどではなく、仕事への復帰も予定通り進めることができました。
病院間連携による安心感
治療を進める中で強く感じたのは、医療機関同士の連携の重要性です。かかりつけの歯科医から総合病院へ、私の情報はスムーズに共有されていました。
退院後も、かかりつけ医には主治医から経過が報告されており、地域全体で見守られているという安心感がありました。この病診連携がうまく機能している環境であったことが、精神的な負担を軽減させてくれたのだと思います。
統計的なデータと個人の向き合い方
私は物事を考えるとき、統計的なデータや確率を参考にすることがよくあります。舌がんのステージ2における生存率がどの程度であるかといった数値も、ひとつの判断材料として捉えていました。
もちろん、統計はあくまで集団の傾向であり、個人にそのまま当てはまるわけではありません。しかし、正しい情報を知ることは、根拠のない不安を打ち消す力になります。情報の洪水に惑わされず、エビデンスに基づいた標準治療を信頼することが、最も確実な道であると考えました。
現在の経過観察と日々の心構え
手術から約3年が経過した現在も、半年に1回のペースで定期的な検査を受けています。超音波(エコー)検査でリンパ節への転移がないかを確認し、造影CTで上半身の状態を詳しく調べています。
前回の検査では肺に小さな影が見つかり、一時は再発の疑いも持たれました。しかし、同じ病院内の呼吸器内科ですぐに精密な検査を受けることができ、結果的には一過性の炎症であることがわかりました。何らかの異常が見つかっても、すぐに対応してもらえる体制があることは、経過観察を続ける上での大きな心の支えになっています。
情報と正しく向き合う重要性
現代はインターネットで簡単に情報が得られる反面、何が正しい情報であるかを見極めることが非常に難しい時代です。がんという病に直面したとき、藁をも掴む思いで不確かな情報に頼ってしまう気持ちもわかります。
しかし、自分の命を守るためには、情報の質を厳しく見極める目が必要です。怪しい情報に振り回されるのではなく、信頼できる公的なデータや専門医の言葉を優先すべきだと私は考えています。自分自身の体験を通じても、標準治療のプログラムに実直に乗ることが、結果として生活の質を守ることにつながりました。
前を向いて生きるエネルギー
がんという経験は、私の人生に大きな影響を与えましたが、決してマイナスばかりではありませんでした。今の自分が置かれている状況を正確に把握し、これからどう生きていくかに集中することで、日々を大切にするエネルギーが湧いてきました。
かつてのような無理な生活は控えつつも、仕事や家庭での時間をより意識的に過ごすようになりました。いつ再発するかという不安が完全に消えることはありませんが、それを「今を懸命に生きる理由」に変えて、一歩ずつ前に進んでいきたいと思っています。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
今、がんの告知を受けて不安な日々を過ごされている方や、治療中の方へお伝えしたいことがあります。
医師や看護師には率直な状況を伝えてください
診察の際、つい「大丈夫です」と答えてしまいがちですが、気になる症状や不安なことがあれば、どんなに些細なことでも主治医や看護師の方に率直に伝えてください。自分では大したことではないと思っている症状が、重要な判断材料になることもあります。迷ったときこそ、言葉にして伝えることが大切です。
標準治療を信頼してください
さまざまな情報を目にして迷ったときは、まず目の前の医療機関が提示する標準治療を信じてください。それは多くの先人たちのデータに基づいて確立された、現時点で最も信頼性の高い治療です。
過去ではなく現在と未来に目を向けてください
病気になった原因を過去に求めて自分を責めるのは、治療にとってプラスにはなりません。大切なのは、今この瞬間から何ができるかです。前向きな姿勢で治療に取り組んでいる医療スタッフとともに、これからの未来をどう作っていくかに意識を向けていただきたいと願っています。
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