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肺がんステージ3B、自らの体験を次世代に伝える「がん教育」への使命感

[公開日] 2026.05.14[最終更新日] 2026.05.12

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:佐久間久美さん(本名) 年代:60代 性別:女性 家族構成:夫と2人暮らし 仕事:ドッグライフカウンセラー がんの種類:肺がん 診断時ステージ:ステージ3B 診断年:2018年 現在の居住地:東京都
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。 2018年、ドッグライフカウンセラーとして犬と飼い主の架け橋として多忙な日々を送っていた佐久間久美さんは、毎年の人間ドックで思いも寄らない指摘を受けました。非小細胞肺がん、ステージ3B。当時は手術適応外と診断される進行がんでしたが、免疫チェックポイント阻害薬による治療が、彼女の運命を大きく変えることになります。治療費への誤解や、治療中のさまざまな困難に直面しながらも、自身の体験を次世代に伝える「がん教育」に情熱を注ぐ佐久間さんにお話しいただきました。

人間ドックで見つかった肺の影

私ががんを告知されたのは、2018年のことでした。当時、自覚症状は全くありませんでした。ドッグライフカウンセラーとして、犬の飼い主さんの悩みに寄り添う仕事をし、夜にはペット防災やペットロスに関する市民講座の講師も務めていました。 2018年に受けた人間ドックの胸部レントゲン検査で、肺に影が見つかったのです。医師の説明によれば、正面からの画像には映っておらず、横からの画像でようやく確認できたとのことでした。夫の会社の健康保険組合が提携している病院では、正面と横の2方向から撮影する決まりになっていました。もし正面だけの撮影であれば、がんは見逃されていたかもしれません。その偶然が、私の命をつないでくれました。 精密検査を受ける病院を選ぶ際、私は迷わず自宅の窓から見える大きな総合病院を選びました。かつて夫が腰の手術でお世話になったことがあり、通い慣れた場所だったからです。

治療法を巡る若手医師とベテラン医師の意見の相違

紹介された総合病院で気管支内視鏡検査を受けた結果、非小細胞肺がんで、ステージ3Bであることがわかりました。さらに遺伝子変異はなく、PD-L1の発現率が95%と極めて高いことも判明しました。この数値は、免疫チェックポイント阻害薬が効果を発揮する可能性を示唆していました。 しかし、治療方針を決定するカンファレンスでは、医師たちの意見が真っ二つに割れたそうです。部長クラスのベテラン医師たちは、当時の標準治療である化学放射線療法を推奨しました。一方で、私の担当医となった30代半ばの若い医師は、免疫チェックポイント阻害薬による治療を主張したといいます。 私は当初、化学放射線療法を選択し、入院の予約も済ませていました。しかし、どうしても拭いきれない不安がありました。診断当日の夜、その病院の事務職をしていた近所の奥さんと偶然お会いし、肺がんと診断されたことを話したところ「うちの病院にはがん相談支援センターがあるよ。不安があるなら相談してみれば」と勧めてくれたことを思い出しました。そこで、誰かに話を聞いてほしいと思い、がん相談支援センターを訪ねることにしました。 がん相談支援センターの相談員の方は、私の悩みを丁寧に聞いてくれました。「もし迷いがあるのなら、もう一度納得がいくまで担当医と話し合ってみてはどうですか。それぞれの治療のメリットとデメリットを書き出してもらいましょう」という助言をいただき、私は再び担当医に相談しました。 若手医師は、多忙な中時間を割いて、私にこう語りかけました。 「化学放射線治療はこれまでの実績が多く、副作用も予測しやすいです。一方で、免疫チェックポイント阻害薬はまだ新しく、副作用がどう出るかは未知数です。しかし、佐久間さんはカウンセラーや講師の仕事をされていますよね。放射線治療は、照射する場所によっては声帯に影響し、声が枯れるリスクがあります。私はあなたの仕事を守りたい。だからこの薬を推しました」 私がどこかで仕事の内容を話していたのか、彼はそれを覚えていてくれたのです。その言葉に心を動かされました。また、私の父も25年前に同じ肺がんで亡くなっていましたが、当時はなかった最新の治療に懸けてみたいという気持ちも芽生えました。私は化学放射線療法をキャンセルし、免疫チェックポイント阻害薬であるキイトルーダによる治療を選択しました。

免疫チェックポイント阻害薬の効果で手術可能に

治療が始まると、幸いなことに目覚ましい効果が現れました。当初、直径4.5cmあった腫瘍は、約1年間の投薬を経て、画像上ではほとんど確認できないほどにまで縮小しました。 当時のガイドラインでは、ステージ3Bは手術適応外とされており、一時は絶望を感じたこともあります。しかし、腫瘍が劇的に小さくなったことで、医師から「チャレンジングではあるけれど、手術をしてみないか」という提案を受けました。外科の医師も同意してくださり、私は2019年の5月に右肺の下葉を切除する手術を受けました。今では、キイトルーダなどの免疫チェックポイント阻害薬と化学療法を併用する術前治療を行い、切除可能になれば手術という流れは標準治療のひとつとなっていますが、当時はまだ、標準治療として確立されていませんでした。 手術後、摘出した組織を詳しく調べたところ、がん細胞は1つも見つかりませんでした。薬が完全にがんを叩いてくれていたのです。「これなら切らなくてもよかったのでは」と一瞬思いましたが、自分の目で見える形でがんが消えたことを確認できたのは、大きな安心材料となりました。 担当医からは、「この病院で免疫チェックポイント阻害薬を使って回復した、第一陣に相当する患者さんだ」と言われました。本来なら5年経てば経過観察もひと区切りつくはずですが、私は貴重な症例として、今も定期的にCT検査を受け続けています。後続の患者さんたちのデータに役立ててもらえるのなら、喜んで協力しようと思っています。

治療費への誤解と情報の重要性

治療を続ける中で、大きな壁となったのが費用の問題でした。高額療養費制度などの知識が全くなかった私は、50代後半にもなって、当時88歳の母に電話で泣きついて、借金を申し込んだほどです。 後になって、実際には高額療養費制度を利用すれば自己負担額が抑えられること、健康保険組合からの付加給付があることなどを知りました。がんの告知を受けた直後の患者は、正常な判断が難しくなっています。病院が提示する「薬価そのものの値段」を、そのまま自分が支払う額だと思い込んでしまう恐れがあります。 この経験から、私は正しい情報の取り方を伝えることの重要性を痛感しました。病院内のがん相談支援センターの場所がわかりにくい、あるいは周知されていないことも問題だと感じています。告知と同時に、看護師さんがそっと「費用のことや生活のことは、がん相談支援センターで相談できますよ」と案内してくれるような仕組みがあれば、私のように不要な借金をして親を心配させる患者は減るはずです。

副作用と向き合いながら今を生きる

がんそのものは消えましたが、私の体には現在も治療の爪痕が残っています。免疫チェックポイント阻害薬の副作用に、今も悩まされているからです。 投薬開始から半年ほど経ったころ、全身に猛烈な筋肉痛のような痛みと、こわばりが現れました。横になっていてもじっとしていられず、常に体を伸ばしていたくなるような、言いようのない不快感です。当初、医師はこの症状が副作用であることを認識していませんでしたが、同時期に同じ薬を使っていた他の患者さんからも同様の訴えが相次ぎ、ようやく副作用として特定されました。 この症状にはステロイドの内服しか効果がなく、私は今もプレドニゾロンという薬を手放せません。薬を減らそうとすると、すぐに足腰を中心とした痛みが戻ってきます。関節のねじれなどの不具合も出ています。しかし、私はこれを「年を取れば誰にでも起こること」と捉え、過度に悲観しないように努めています。 この病気を経験して、私の死生観は大きく変わりました。「いつかそのうちに」という言葉を、私は使わなくなりました。やりたいことがあるのなら、来年ではなく、今すぐに始める。資格試験の勉強なども、「来年受けよう」ではなく「今年受けてみよう」と、すべてを前倒しで考えるようになりました。いつまで生きられるかわからないという不安を、今を懸命に生きるエネルギーに変換しているのだと感じています。

がん教育を通して伝えたいこと

現在、私は小中学校へ「がん教育」の外部講師として赴いています。そこで目にする光景には、今も驚かされることがあります。 ある学校では、担任の先生が私の授業の前に「がんは生活習慣病だ。タバコを吸うやつががんになるんだ」と生徒たちに教えていました。私はその後の30分間で、その誤解を解くところから始めなければなりませんでした。がんは決して自業自得の病気ではありません。真面目に生きていても、タバコを吸わなくても、誰でもなり得る病気なのです。 また、がんを単に「死に至る怖い病気」として教えることにも疑問を感じています。特に中学生くらいの年代では、母親が乳がんを患っているような子も少なくありません。先生方は配慮のつもりで、そうした生徒を授業から外そうとすることもあります。しかし私は、「参加させてあげてください」とお願いします。 私が伝えたいのは、がんの恐ろしさではなく、困難に直面したときにどう対処していくかという「生きる力」です。病気になれば、確かに苦しいことや大変なことはあります。しかし、その先には必ず光があり、助けてくれる人がいます。がんを学ぶのではなく、がんで学ぶ。思いも寄らない困難が降り注いできたときに、どうやって周囲の助けを借り、自分のチャンネルを切り替えていくか。それを伝えるのが、私の使命だと思っています。 私自身、外来化学療法センターを初めて訪れたとき、隣に座っていた80代くらいの患者さんに救われました。「がんが見つかってよかったね。ここにたどり着いたということは、治療ができるということ。後はがんをやっつけるだけよ」という彼女の言葉で、私の心のスイッチが前向きに切り替わりました。 現在は、自分に万が一のことがあったときのために、私の後を継いでがん教育を担ってくれる人材を育成する方法を模索しています。100人いれば100通りのがん体験がある。標準化された知識だけでなく、それぞれの経験に基づいた多様ながん患者の姿を、これからも伝えていきたいと考えています。

これからがんと向き合う方へのメッセージ

今、がんの治療をされている方、そして告知を受けたばかりの方へ、私からお伝えしたいことがあります。 孤立せず、誰かに支えてもらってください がんと告げられると、自分の力だけでなんとかしようと抱え込んでしまいがちです。しかし、一人で立ち続けることと、自立することは違います。適切に人に相談し、周りからの支えを受け入れる「心の柔らかさ」を持ってください。病院のがん相談支援センターや家族、友人など、頼れる場所は必ずあります。 正しい知識を力に治療に臨んでください インターネット上の個人的なブログや、根拠のない食事療法などに惑わされないようにしてください。今はエビデンスに基づいた信頼できる情報が、国立がん研究センターをはじめとする公的な機関から発信されています。体力を奪うような極端な食事制限などは避け、正しい知識を武器にして治療に臨んでほしいと願っています。

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