写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:石坂さん(本名)
年代:50代
性別:男性
家族構成:1人暮らし(診断時は母親と同居)
仕事:自営業(診断時は会社員)
がんの種類:大腸がん
診断時ステージ:ステージ2A
診断年:2018年
現在の居住地:長野県
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
2018年、会社員として勤務していた石坂さんは、職場の定期健康診断で数値の異常を指摘されました。血液検査の結果、ヘモグロビンの値が前年の半分にまで低下していたのです。この結果を受け、さまざまな検査を行った結果、判明したのはステージ2Aの大腸がんでした。2度の手術を乗り越え、現在は5年という大きな節目を過ぎ、再発もなく過ごしています。標準治療の重要性を説き、自身の経験を周囲に伝え続ける石坂さんにお話しいただきました。
職場での定期健康診断で発覚したヘモグロビン値の異常
私が自身の体に異変が起きていることを知ったのは、2018年のことでした。当時、私は会社員として働いており、例年通り職場で実施された定期健康診断を受けました。それまでの健康診断で大きな異常を指摘されたことはなく、自分は健康であるという認識でいました。しかし、その年の結果は、私の予想を大きく裏切るものでした。
血液検査の結果、ヘモグロビンの値が異常に低かったのです。前年の検査では16g/dLほどあった数値が、その時は8g/dLにまで落ち込んでいました。1年で数値が半分になるというのは、明らかに不自然な状態です。当時の上司から「すぐに精密検査を受けてこい」と強く促されたことが、すべての始まりでした。
今思い返せば、以前から時折お腹が痛くなったり、貧血のような症状を感じたりすることはありました。しかし、当時はそれががんの予兆であるとは全く考えていませんでした。もしあの時、職場での健康診断を受けていなければ、そして上司が厳しく検査を勧めてくれなければ、私は自分の体の異変を放置し続けていたかもしれません。
クリニックでの内視鏡検査と総合病院への紹介
上司の助言に従い、まずは近所のクリニックを受診しました。便潜血検査で陽性反応が出たため、医師から内視鏡検査を勧められました。私は痔を患っていたわけでもなかったため、一度しっかり検査をしようと考え、初めての経験でしたが大腸の内視鏡検査を受けることにしました。
クリニックでの内視鏡検査の際、モニターにはっきりと腫瘍のような影が映し出されました。その場ですぐに病名が確定したわけではありませんでしたが、検査を担当した医師の様子から、穏やかではない事態であることは察しがつきました。医師からは「ここでは対応できません。すぐに大きな病院で調べてもらう必要があります」と説明され、地域にある総合病院への紹介状を渡されました。
紹介された総合病院で、改めてCT検査や追加の内視鏡検査、そして組織を採取して調べる病理検査が行われました。当初の紹介状には、S状結腸付近に病変がある可能性が記されていましたが、詳細な検査の結果、がんが見つかったのは横行結腸でした。医師からは、がんを切除する手術が必要であると告げられました。
インターネットでの情報収集により考えてしまう最悪の事態
がんであるという事実を突きつけられた時、私は自分自身のこととして、今後どうなってしまうのかという不安に強く支配されました。手術前で正確なステージがわかっていなかったため、頭の中では「もし手遅れだったら」「すでに腹膜播種や転移していたら」といった、最悪のシナリオばかりを思い描いてしまいました。
私は必死になって、インターネットで情報を集め始めました。「大腸がん ステージ」「5年生存率」「10年生存率」といったキーワードで、ありとあらゆるサイトを検索しました。情報を得ることが安心につながるわけではなく、むしろ不確かなデータに一喜一憂する日々でしたが、自分の命の行方を少しでも予測したいという一心でした。
特に、自分が今感じている腹痛や貧血といった症状が、どの程度の進行具合を示しているのかを、インターネット上の情報と照らし合わせては落ち込むことの繰り返しでした。医師からは「手術をして切ってつなげば大丈夫」という説明を受けていましたが、手術をしてみるまでは、本当の意味で安心することはできなかったのです。
15日間の入院と横行結腸がんの切除手術
手術を受けるにあたり、私は勤務先に状況を伝えました。ただ、最初から「大腸がんです」と詳細な病名を告げることはしませんでした。職場の人たちに過度な心配をさせたくないという思いや、自分自身の中でまだ事実を受け止めきれていない部分があったからです。有給休暇がたまっていたため、それを利用して「入院して手術を受けるためにお休みをいただきます」という報告にとどめました。
手術は予定通り行われました。横行結腸の一部を切除し、腸を吻合。ストーマを造設することなく手術は無事に終了しました。入院期間は、術後の経過を含めて約15日間でした。
入院生活を振り返ると、それは自分の人生や健康について、これまでにないほど深く向き合う時間でした。病院という環境で過ごし、医療従事者の方々の働きや他の患者さんの姿を見る中で、これまで当たり前だと思っていた日常がいかに脆いものであるかを痛感しました。退院の日、ようやく外の空気を吸えた時の感覚は、今でも忘れることができません。
術後の病理検査結果とステージ2Aの確定診断
手術で切除した組織を詳しく調べた結果、最終的な病期がステージ2Aと診断されました。リンパ節への転移は認められませんでしたが、転移の可能性がある周囲のリンパ節とともに手術によって目に見えるがんはすべて取り除けたという説明を受けました。医師からは「今の段階では追加の抗がん剤治療は必要ありません。定期的な経過観察を続けていきましょう」という方針が示されました。
ステージ2Aという結果は、私にとって一つの区切りとなりました。もっと進行しているのではないかという不安を抱えていた私にとって、追加の化学療法を行わずに済んだことは、大きな安心材料となりました。一方で、がんであった事実に変わりはありません。ここから長い経過観察の日々が始まるのだと、気を引き締め直したことを覚えています。
退院後、私は職場への復帰を果たしました。手術の傷跡を保護しながらの勤務でしたが、上司や一部の同僚には、実はがんであったことを打ち明けました。職場の方々は驚きながらも温かく迎えてくれ、私の体調を気遣ってくれました。がんを経験したことで、周囲のサポートのありがたみを改めて感じるようになりました。
術後1年半で直面した再発疑いと2度目の手術
手術から約1年半が経過し、3か月ごとの定期検査を続けていた頃、再び試練が訪れました。定期的なCT検査の結果、再び画像上に「影」が見つかったのです。「再発の可能性がある」と告げられた時のショックは、1度目の告知時を上回るものでした。一度乗り越えたと思っていた壁が、再び目の前に立ちはだかったような絶望感でした。
詳しく調べるためにPET検査を行いましたが、そこでも再発の疑いを完全に否定することはできませんでした。医師と相談した結果、「念のために手術で大網、腸間膜、後腹膜に認められる病変を取り除き、詳しく調べましょう」ということになりました。私は再び入院し、2度目の手術を受ける決意をしました。もしがんが再発しているのであれば、一刻も早く取り除くべきだと考えたからです。
再手術によって摘出した組織を病理検査に回した結果、幸いなことにそれは「良性」のものでした。がんの再発ではありませんでした。その結果を聞いた瞬間、全身の力が抜けるほどの安心感に包まれました。この経験を通じて、定期的な検査と最悪の事態を想定して迅速に行動することの重要性を、改めて痛感しました。
5年間の経過観察を終えて見えてきた現在の景色
最初の手術から5年という月日が経過しました。一般的に、大腸がんにおいては5年間の再発がなければひとつの大きな節目とされます。医師からも一区切りであるという話をいただきました。現在は、がんを理由とした頻繁な通院からは解放されましたが、それでも自発的に健康診断や大腸がん以外のがん検診も受ける習慣は続けています。
私は現在、自営業を営んでおり、自分の体調管理が仕事に直結する環境にあります。そのため、定期的な大腸内視鏡検査は欠かさず受けるようにしています。検査のたびに小さなポリープが見つかり、その場で切除してもらうこともありますが、私は自分を「ポリープができやすい体質」と自覚しています。放っておけばがんになる可能性があるものを、早めに摘み取ることができていると考えれば、定期的な検査は苦になりません。下剤の服用も、何回も経験したため、すっかり慣れました。検査中にモニターを見ながら医師と会話を交わす余裕もできました。痛みもほとんど感じません。
ただ、どれほど手順に慣れたとしても、不安が完全になくなるわけではありません。最近では、市の検診で行ったレントゲン検査で肺に影が見つかり、精密検査を受けたこともありました。結果的には数年前から変化のない影で、がんではないという診断でしたが、結果が出るまでは「もしや転移では」と最悪の事態を考えてビクビクしてしまいました。診断から年月が経っても、検査の結果が出るまでの不安は変わらないのが現実です。
それでも、検査を避けるのではなく、積極的に受けることが自分にとっての安心につながっています。がんという病気を一度経験したからこそ、検査へのハードルが下がり、自分の体を客観的に見つめることができるようになったのだと感じています。
母親の闘病と死を通じて再認識した早期発見の重要性
私のがん体験とは別に、忘れることができない出来事があります。それは、同じようにがんに侵された母親の闘病生活です。母は大腸がんのステージ3と診断され、高齢でありながらも抗がん剤治療を受けていました。副作用に苦しむ母の姿を間近で見る中で、「もっと早く見つけてあげられれば、これほどつらい思いをさせずに済んだのではないか」という自責の念に駆られることもありました。
母は昨年、息を引き取りました。母の闘病を支える中で、私はインターネット上の情報の危うさについても考えるようになりました。不安な時には「これを飲めば治る」「最新の特殊な治療法」といった、根拠の乏しい情報が魅力的に見えることがあります。しかし、私は母の治療や自分自身の経験を通じて、科学的に証明された標準治療こそが、最も信頼に足るものであるという確信に至りました。
怪しげな情報に高額な費用を投じるのではなく、医師の指示に従い、適切な時期に適切な治療を受けること。それが、がんという病気と向き合う上での王道であると考えています。私が今、こうして元気に過ごせているのは、1度目の異常を健康診断で見つけ、信頼できる病院で標準的な手術を受けたからに他なりません。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
今、がん治療をしている方にお伝えしたいことがあります。
担当医の説明を素直に聞き、標準治療を受けてください
がんを宣告されると、藁にもすがる思いで特別な治療法を探したくなるかもしれません。しかし、日本の医療における標準治療は、多くのデータに基づいた現時点で最善の選択肢です。根拠のない治療に大金を投じるのではなく、医師の話をよく聞き、標準治療を受けてください。
定期的な検診を生活の習慣に組み込んでください
がんの早期発見、そして治療後の再発防止には、定期的な検査が欠かせません。大腸の内視鏡検査などは、最初は心理的なハードルが高いかもしれませんが、慣れてしまえばそれほど恐れるものではありません。検査で早期に異常を見つけることで、早期に治療をすることができます。
信頼できる公的な情報提供機関を活用してください
国立がん研究センターなどが提供している公的な情報を参照してください。インターネット上の体験談や広告には主観や誇張が含まれていることがありますが、公的な情報は客観的な事実に基づいています。正しい知識を持つことは、漠然とした不安を解消し、前向きに治療へ臨むための大きな助けとなります。