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どん底まで落ちたらあとは上がるだけ、「開き直り」で向き合った肺がんとの13年

[公開日] 2026.03.25[最終更新日] 2026.03.17

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:みこさん(ニックネーム) 年代:50歳代 性別:女性 家族構成:夫と2人暮らし(子どもは独立) 仕事:事務職 がんの種類:肺がん 診断時ステージ:ステージ1B 診断年:2013年 現在の居住地:神奈川県
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。 2013年、健康診断をきっかけに肺がんが見つかったみこさん。当時はがんという病気に対して「自分には無関係なもの」という意識が強かったと言います。突然のがん告知、そして追い打ちをかけるような予期せぬトラブルに見舞われながらも、彼女は持ち前の冷静さと論理的な思考で、一つひとつの困難を乗り越えてきました。診断から13年が経過し、今は健やかに過ごす日々についてお話しいただきました。

運命を変えた9年ぶりの健康診断

私が肺がんと診断されたのは、2013年のことでした。当時46歳。それまで、健康診断には9年ほど行っていませんでした。特に体に不調を感じていたわけでもなく、仕事や家事に追われる中で、自分の健康を二の次にしてしまっていたのです。 そんな私が検診に行く決心をしたのは、健康保険組合からの督促がきっかけでした。例年は「受診してください」という一般的な案内でしたが、その年はなぜか私の名前が入った「名指し」の通知が届いたのです。「ここまでしつこく言われるなら、一度行っておくか」と、消極的な理由で健康診断を受けることにしました。 その日の胸部レントゲン検査で、医師から「左の鎖骨のあたりに影があります」と指摘されました。画像を見せられましたが、素人の私には全く何が映っているのかわかりませんでした。「精密検査を受けてください」と言われても、自覚症状が何ひとつなかった私は、どこか他人事のように感じていたのを覚えています。 実はその後、2週間ほど放置していました。しかし、職場の同僚たちにその話をすると、「絶対にすぐ行ったほうがいい」「影があるのはただ事じゃない」と口々に急かされました。みんながそこまで言うのなら……と、ようやく重い腰を上げました。健診センターに連絡すると、精密検査の判定が出ている人は無料でCT検査が受けられるとのことだったので、「タダなら行こう」という軽い気持ちで再び足を運びました。

突きつけられた現実と予想外のトラブル

CT検査の日、待合室には私しかいませんでした。診察室のドアが開けっ放しになっていて、先生が私の画像を何度もクリックしながら確認しているのが見えました。ふと画面を覗き込んだとき、素人の私でもはっきりとわかる、大きな影が目に飛び込んできました。 その瞬間、「ああ、これはもうダメだな」と直感しました。先生に「肺がんですか?」と尋ねましたが、「今の段階では確定診断はできませんが、何らかの病変があるのは確かです」と言われ、すぐに大学病院を紹介されました。 大学病院を選んだのは、私が重度のアレルギーを抱えていたからです。これから治療を進める上で、薬による副作用やアナフィラキシーのリスクが怖かったため、通い慣れていて設備も整っている大きな病院のほうが安心だと考えました。 ところが、肺がんの確定診断のための検査を進めていた矢先、思わぬトラブルが起きました。気管支鏡検査を終えて一泊入院から帰宅したその晩、家の中で滑って転び、左足の甲の骨(中足骨)を骨折してしまったのです。2cmほど骨がズレており、手術が必要な状態でした。 翌日、呼吸器外科の診察がありましたが、足が痛くて歩けません。車椅子で大学病院へ行くと、そのまま整形外科病棟へ入院することになりました。がんの告知を受けたのは、皮肉にもその整形外科のベッドの上でした。担当の先生が病室まで来てくださり、「検査の結果、やはり肺がんでした」と告げられたのです。 足の手術を優先するか、肺の手術を優先するか。医師同士の相談の結果、まずは足の手術を行い、その2週間後に肺がんの手術を行うという強行スケジュールが決まりました。

抗がん剤治療を受けた理由は、後悔しないため

11月11日、左肺の上葉を切除する手術を受けました。傷口は10cmほどで、完全な開胸ではなく、胸腔鏡を併用したハイブリッド手術でした。ステージは術前の診断通り1B。幸いなことに、リンパ節や他の臓器への転移はありませんでした。 術後、医師から「再発防止のために、UFTという抗がん剤を2年間服用してください」と提案されました。ガイドラインに沿った標準治療であることは理解していましたが、当時の私は強く拒絶しました。 私は以前、薬剤師として働いていた経験があります。古い知識かもしれませんが、抗がん剤といえば「激しい吐き気や副作用でボロボロになるもの」という強いイメージがありました。また、先生から「抗がん剤を飲むことで、5年生存率が5%上乗せされる」と説明を受けた際、「たった5%のために、これからの2年間を苦しんで過ごしたくない」と反論してしまったのです。 食い下がる私に、先生はこう言いました。 「もし数年後に再発したとき、あの時飲んでおけばよかったと後悔しませんか? 後悔すると思うなら、今できることをやっておきましょう」 その言葉には説得力がありました。「後悔だけはしたくない」と思い直し、渋々ながらも治療を受けることを決意しました。

専門知識を武器に、副作用と向き合う

治療が始まってからは、薬剤師としての知識をフル活用しました。医師や薬剤師に相談し、副作用対策の薬をすべて処方してもらい、事前に飲み方をシミュレーションしました。 特に注意したのは、薬の吸収効率と体調管理です。専門家向けの資料を取り寄せ、薬の吸収速度や食事の影響、副作用の発現頻度などを徹底的に調べました。「どのタイミングで飲めば、副作用を最小限に抑えつつ効果を最大化できるか」を自分なりに分析したのです。 食事の時間や内容を厳密にコントロールすることで、大きな体調不良を起こさずに2年間飲み続けることができました。 もちろん、すべてが順調だったわけではありません。服用を続けるうちに肝機能の数値が悪化し、薬を一時中断するかどうかの瀬戸際に立ったこともありました。しかし、「一度始めたことは最後までやり遂げたい」という思いが強く、先生のアドバイス通り「ひたすら寝る、休む、体力を蓄える」ことに徹しました。その結果、数値が持ち直し、予定通り2年間の治療を完遂することができたのです。

「どん底」を知ったからこそ得られた視点

私はもともと、物事を悲観的に捉えやすい性格です。でも、がんになったことでひとつの悟りを開きました。それは、「最悪の事態を想定して受け入れてしまえば、あとは上がるしかない」という考え方です。 がんを告知されたとき、「死ぬかもしれない」というどん底まで一度落ちました。でも、そこからは一歩ずつ治療が進むたびに「良くなっている」と実感できました。当時の娘は高校3年生で受験を控えていましたが、「もし私が死んでも、娘はもう大人だし、主人がいれば学費の心配もない。やりたいことはやってきたし、悔いはない」と、ある種の開き直りのような境地に達していました。 この「開き直り」は、私にとって非常に前向きな力となりました。現状を嘆いても病気が治るわけではありません。今できる最善の選択をし、あとはなるようになる。そう考えることで、過度に病むことなく治療に集中できたのだと思います。 手術から10年が経過した2023年、ようやく定期検査を「卒業」することができました。CT検査による被曝のリスクも考え、先生と相談した上での決断です。今は年に1度の健康診断を受けるだけで、元通りの生活を送っています。

当たり前の中にあった「ありがたさ」

がんを経験して、私の人生観は大きく変わりました。それまでは当たり前だと思っていた日常が、実はとても脆く、そしてかけがえのないものであることに気づかされました。「明日が来るのは当然ではない」という意識が、日々の些細な出来事への感謝につながりました。 人から何かをしてもらったとき、以前よりもずっと深く「ありがたい」と感じるようになりました。空がきれいだとか、ご飯が美味しいとか、そんな小さなことに幸せを見出せるようになったのです。 今の私には、再発への不安が全くないわけではありません。10年以上経っても「どこかに目に見えないがん細胞が隠れているかもしれない」という思いは常に頭の片隅にあります。でも、それを恐れて今を楽しまないのはもったいない。もし何か起きたとしても、その時にまた考えればいい。そう思える強さを、がんは私にくれました。 早期発見と標準治療。そして、自分なりの納得感を持って治療に向き合うこと。それらが、私をここまで運んでくれたのだと思います。

これからがんと向き合う方へのメッセージ

今、がんの治療をされている方や、告知を受けたばかりの方にお伝えしたいことがあります。 感情を一度、出し切ってみてください 「なぜ自分が」と悲観したり、騒いだりしてもいいと思います。一度どん底まで気持ちを落としてしまえば、あとは上がっていくしかありません。今の状況を変えることはできなくても、それを受け入れた瞬間から、前を向くための準備が始まります。「なるようにしかならない」という開き直りは、決して諦めではなく、強く生きるための力になります。 正しい情報を自分で選んでください 今の時代、インターネットには情報が溢れていますが、すべてが正しいとは限りません。主治医の話をよく聞き、公的なガイドラインなどの信頼できる情報を基に判断してください。私は薬剤師として、薬の専門資料まで調べましたが、大切なのは「自分が納得して治療を受けること」です。 自分を喜ばせる楽しいことを探してみてください がんは生活のすべてを奪うものではありません。治療中でも、美味しいものを食べたり、好きな景色を見たりすることはできます。病気のことばかりを考える時間を少しだけ減らして、今この瞬間の自分を喜ばせることを探してみてください。その積み重ねが、長い治療期間を支える大きな力になります。
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