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【がん治験体験】肺がんステージ4からの生還、「諦めない」意志と2度の治験が切り拓いた12年の軌跡

[公開日] 2026.07.24[最終更新日] 2026.07.19

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:コジロウさん(ニックネーム) 年代:60代 性別:男性 家族構成:妻と2人暮らし(子どもは独立) 仕事:嘱託職員 がんの種類:非小細胞肺がん 診断時ステージ:ステージ4 診断年:2014年 現在の居住地:広島県 治験フェーズ:第3相(1回目の治験)、 第1/2相(2回目の治験) 治験参加時の治療ライン:1次治療(1回目の治験)、 4次治療(2回目の治験)
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用には個人差があります。オンコロマイストーリー含め、ネット上の情報には、進行や再発といった厳しい闘病を経験された方の発信が多く残る傾向がありますが、実際には再発なく平穏に過ごされている方も数多くいらっしゃいます。情報の一つとして受け止め、治療方針の決定の際には、必ず主治医や医療従事者にご相談ください。 2014年、毎年の健康診断で肺に影が見つかったコジロウさんは、精密検査の結果、肺がんのステージ4という厳しい診断を下されました。右肺に2.4cmと1.6cmの腫瘍と、さらにリンパ節転移も見られる絶望的な状況でした。当時は標準治療としての選択肢が限られていましたが、主治医から提案されたのは、まだ承認前だった免疫チェックポイント阻害薬の治験でした。それから12年、再発を乗り越え、最新の医療と主体的に向き合い続けてきたコジロウさんに、治験という選択がもたらした希望と、がんと共に生きるための信条についてお話しいただきました。

健康診断で突如告げられた「ステージ4」の現実

私の闘病は2014年の9月、毎年のルーティンとして受けていた健康診断から始まりました。それまで自覚症状は一切ありませんでしたが、レントゲン検査で肺に影が見つかり、大学病院で精密検査を受けることになったのです。CTやPET-CT、そして生検を経て下された診断は、肺がんのステージ4。右肺に2.4cmと1.6cmほどの腫瘍と、さらに肺の表面に散らばる播種や、右脇のリンパ節への転移も認められました。 そのため手術や放射線治療は適応外で、主治医からは「治ることはない。抗がん剤で延命していくしかない」とはっきりと告げられました。5年生存率がわずか数%という数字を自分で調べ、目の前が暗くなったことを覚えています。しかし、その絶望の淵で主治医が提示してくれたのが、「新しい薬の治験」への参加という選択肢でした。

抗がん剤への恐怖心と治験という新たな希望

主治医から提案されたのは、後に承認される免疫チェックポイント阻害薬の治験でした。当時はまだ一般的には知られていない薬でしたが、主治医は「今ちょうどこの治験が始まるところです。参加してみませんか」と熱心に勧めてくださいました。 実は当時の私は、がんそのものよりも、むしろ抗がん剤治療に対して非常に強い抵抗感を持っていました。インターネットなどで調べると、「抗がん剤は効かない」「副作用で苦しんで亡くなるだけだ」といったネガティブな情報が溢れていたからです。副作用でボロボロになってまで生き永らえるよりは、何もしない方がいいのではないかとさえ考えていました。 しかし、提案された治験薬は、従来の抗がん剤とはまったく異なり、自分自身の免疫の力を利用するという仕組みだと聞き、一転して強い期待を抱きました。「これから新しく始まる、最先端の治療を受けられるチャンスなのだ」と前向きに捉えることができたのです。

妻とも相談し、治験参加を決断

治験への参加を決める際、最も相談したのは妻でした。私は当時、単身赴任中で、仕事では会社の役員という責任ある立場にありましたが、妻は私の決断を尊重してくれました。主治医からは「治験は通常の治療と異なり、副作用などの安全性が完全に確立されているわけではない」という説明も受けましたが、私の中に迷いはありませんでした。 「どうせ治らないと言われたのなら、新しい可能性に賭けてみたい」という思いが勝ったのです。また、大学病院という信頼できる環境で、手厚い管理の下で治療を受けられることも安心材料となりました。私は会社にすべてを正直に報告し、「仕事も継続したいが、まずは治療を優先させてほしい」と伝えました。会社側もこれを快諾してくれ、私は2014年の12月、希望を抱いて治験へと足を踏み出しました。

劇的な効果を実感した治験と仕事の両立

治験が始まると、最初は経過観察のために2~3週間の入院が必要でした。懸念していた副作用は驚くほど少なく、これまでの抗がん剤のイメージを覆すほど体調も良好でした。退院後すぐに仕事へ復帰することができました。 さらに驚いたのは、その治療効果です。治験開始からほどなくして、2.4cmの腫瘍は1.2cmに、1.6cmの腫瘍とリンパ節の転移も画像検査では確認できませんでした。この劇的な変化は、私に「生きていける」という確信を与えてくれました。結局、この治験には約2年間参加し続け、その間、私は大きな副作用に悩まされることもなく、普通に会社に出社して責任ある仕事を全うすることができました。 治験に参加して良かったと心から思ったのは、単に薬の効果があったからだけではありません。治験コーディネーターの方々が常に細かく体調を気にかけてくれ、最新の知見に基づいたサポートを受けられたことが、大きな精神的支えとなりました。

治験終了後の再発と標準治療への移行

しかし、2年間の治験期間が終了し、経過観察に入ってから約1年が経った2018年、がんが再び活発になり始めました。再発です。一度は劇的な効果を示した免疫チェックポイント阻害薬を再開しましたが、残念ながら今度は思うような効果が得られませんでした。 そこからは、いわゆる「標準治療」との過酷な闘いが始まりました。手術によってリンパ節を切除し、放射線治療を行い、さらには従来の抗がん剤治療(シスプラチン、アリムタ)も経験しました。かつて恐れていた副作用が、今度は現実となって私を襲いました。激しい倦怠感や吐き気、下痢などの症状に、私の体は次第に消耗していきました。

遺伝子変異に基づいた「2度目の治験」への挑戦

化学療法を続ける中、遺伝子検査でKRAS G12C遺伝子変異が見つかりました。2021年8月、この結果に基づき、2度目の治験のチャンスが巡ってきました。KRAS G12C遺伝子変異を標的とする分子標的薬の治験です。1回目の治験は、多くの患者さんで効果と安全性を確かめる第3相試験でしたが、今回の治験は、適切な薬剤の投与量や安全性を慎重に確かめる初期の段階(第1/2相試験)でした。 私は再び、治験を受けることにしました。1度目の治験で得られた成功体験があったからこそ、2度目も迷うことなく「ぜひ参加させてほしい」と主治医に願い出ました。 2度目の治験は、最初とは異なる緊張感がありました。すでに何度も治療を重ね、体力が低下している中での挑戦だったからです。分子標的薬は、特定の遺伝子変異にのみ作用するため、私のようなステージ4の患者にとっては、まさにピンポイントの狙い撃ちを期待する最後の希望でした。

治験の現実と「効果なし」という結果

しかし、2度目の治験の結果は、1度目のような劇的なものとはなりませんでした。投与を続け、厳密な検査を繰り返しましたが、私の肺にある腫瘍に対して明確な縮小効果は見られず、最終的には「効果なし」と判断され、治験は中止となりました。 このときの落胆は、言葉では言い表せないほど大きなものでした。1度目の治験が完璧に近い成功だったために、「今回もきっと救ってくれるはずだ」という過度な期待を抱いてしまっていたのかもしれません。治験は決して万能ではなく、効果があることもあればないこともあるという厳格な現実を、身をもって知ることとなりました。 それでも、私はこの治験に参加したことをまったく後悔していません。なぜなら、その治験で得られた私のデータが、今後の医療の進歩に役立ち、いつか誰かの命を救う一助になるかもしれないからです。そして何より、自分自身が「最期まで最新の医療に挑み続けた」という事実が、私自身の自尊心を支えてくれました。

治験を通じて変わった医療へのイメージ

2度の治験を経験したことで、私の治験に対するイメージは大きく変化しました。参加前は「実験台」という言葉が頭をよぎることもありましたが、実際はまったく違いました。 治験は、承認前の最新の治療法をいち早く受けることができる機会でもあり、標準治療の選択肢がなくなった(少なくなった)患者さんにとって、残された選択肢のひとつでもあります。また、治験期間中は通常の診察以上にきめ細やかな検査が行われ、副作用の予兆も見逃さないような厳重な体制が敷かれます。医療従事者の方々の情熱を間近で感じることで、私は医療というものをより深く信頼できるようになりました。 2度目の治験が終了した後、2022年1月からはドセタキセルという細胞障害性抗がん剤による治療を開始しましたが、病状を抑えきることは難しく、主治医から「この病院で提案できる治療の選択肢はほぼありません」と告げられました。これを機に、私は単身赴任を終えて家族のいる広島へ戻ることを決断しました。 私は地元の広島の病院へ戻り、緩和的なアプローチを含めた治療へと舵を切りましたが、そこでも「絶対に諦めない」という姿勢を貫き、回復を遂げることができました。その根底には、治験を通じて培われた「最新の医療への信頼」があったのです。 大学病院の先生方は、他では行っていないような新しい治療についても非常に詳しく、親切に教えてくださいました。こうした新しい治療への取り組みや、専門的な知見を共有していただけたことは、患者として非常に良かったと感じています。医療が着実に進化していることを、12年間の治療を通じて強く実感しました。

治験を検討されている方へのメッセージ

今、がん治療をしており、治験への参加を検討している方にお伝えしたいことがあります。 治験は「実験台」ではなく、最新の治療にアクセスするチャンスです 治験と聞くと、参加前は「実験台にされるのではないか」という不安が頭をよぎることもあるかもしれません。しかし、実際には承認前の最新の治療法を早期に受けられる機会のひとつです。治験期間中は通常の診察以上にきめ細やかな検査が行われ、副作用の予兆を見逃さない厳重な体制のもと、治験コーディネーターをはじめとする医療従事者から手厚いサポートを受けることができます。 医師任せにせず、自ら情報を集めて主体性を持ってください 治療方針を医師や薬にすべて委ねるのではなく、自分自身でも医療情報を調べ、主体的に治療と向き合うことが大切です。医療は着実に進歩しています。自ら学んで納得した上で治療を選択していくことで、どのような結果であっても前向きに病気と向き合うことができます。 厳しい状況でも、絶対に諦めない姿勢を貫いてください 治療を続けていく中で、病状が進行し、医師から「提案できる治療がない」と厳しい言葉をかけられる場面があるかもしれません。それでも、「絶対に諦めない」という姿勢を貫いてください。常に新しい薬や治験の情報を探し、自ら可能性を探り続けることが、次の治療へとつながる一歩になります。

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