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「白黒はっきりさせる」ことで不安を解消、プログラマーの私が選んだ前立腺がん全摘術という決断

[公開日] 2026.03.12[最終更新日] 2026.03.13

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:Kさん(ニックネーム) 年代:60代 性別:男性 家族構成:妻と息子との3人暮らし 仕事:IT系(プログラマー) がんの種類:前立腺がん 診断時ステージ:ステージ3 診断年:2022年 現在の居住地:新潟県
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。 2022年、プログラマーとして働くKさんは前立腺がんと診断されました。自覚症状は全くなく、メタボ関連の定期受診をきっかけに見つかった前立腺がんは、すでにステージ3の可能性がある状態でした。論理的な思考を重んじるプログラマーという職業柄、Kさんは治療法の選択においても事実と予後を冷静に分析し、ある決断を下します。診断から手術、そして術後の経過確認のために自ら行ったカルテ開示まで、客観的な視点で歩んできたKさんの体験をお話しいただきました。

血糖値の異常から始まった想定外の検査

前立腺がんとわかる前、私には自覚症状というものが一切ありませんでした。きっかけは、メタボ関連の定期的な通院でした。健康診断で血糖値の結果が芳しくなく、かかりつけのクリニックのもとを訪れた際、その先生が「年齢的に、メタボ以外にも異常があるかもしれないので、血液検査をしてみませんか」と提案してくれたのです。 その先生は、メタボ関連だけでなく男性特有のがんについても知識が深く、念のためにと前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA値を含む4種類のがんマーカーを調べてくれました。その結果、PSA値は4.87ng/mLでした。前立腺がんの基準値は一般的に4.0ng/mL以下とされています。 医師から「数値が少し高いので、一度泌尿器科で診てもらったほうがいい」と勧められ、私は紹介された泌尿器科クリニックを受診することにしました。そこは、かつて大きな病院で前立腺がんの手術を数多く手掛けていた先生が個人で開いているクリニックでした。 そのクリニックで再びPSA値を測定したところ、数値は7.8ng/mLまで上昇していました。わずか数か月の間に数値が1.6倍に跳ね上がったことになります。先生の経験則からも、これは単なる炎症ではなく、がんの可能性が極めて高いという見立てでした。私はすぐに、地域のがん診療連携拠点病院となっている総合病院を紹介されることになりました。

拠点病院での精密検査と突きつけられた現実

紹介された総合病院は、私の住まいからも近く、通院にはベストな位置にありました。そこで改めて精密検査を受けました。MRI検査、CT検査、骨シンチグラフィ、そして確定診断のための針生検です。 後日、妻を伴って検査結果を聞きに行きました。医師からは前立腺がんであること、そして画像診断ではステージ3の可能性があると告げられました。悪性度を示すグリソンスコアは当初「7」という数字だけが示されましたが、後に詳しく調べると「3+4」で、中等度のリスクに分類されるものでした。 告知を受けた際、不思議と大きなショックはありませんでした。プログラマーという仕事柄、物事をロジカルに考える癖がついているからかもしれません。「がんだとわかった以上、次はどう対処すべきか」という思考に、自然と切り替わっていました。医師からは、具体的な治療法として3つの選択肢が提示された説明書を渡されました。手術、放射線治療、そしてホルモン治療です。ステージと悪性度を考慮し、経過観察(監視療法)という選択肢はその場にはありませんでした。

迷わず選んだ「手術」という一択

私は、最初から手術一択だと考えていました。理由はいくつかありますが、最も大きかったのは「悪い部分を切って取り除き、白黒はっきりさせたい」という思いです。 放射線治療についても調べましたが、当時の私には「放射線を当てることで、がん以外の正常な組織にも悪影響が出るのではないか」という懸念がありました。また、放射線は目に見えない治療であり、本当にがんが死滅したのか、その場ですぐに確認することができません。それに対し、手術であれば取り出した組織を詳しく調べることで、がんの広がりや性質を正確に把握することができます。 さらに、もうひとつ私を後押しした情報がありました。それは「手術を最初に行えば、もし再発した時に救済放射線治療という次の一手が使えるが、先に放射線治療をしてしまうと、後から手術をすることは困難になる」というものでした。これは当時の私の理解であり、現在の医学的見地とは異なる部分もあるかもしれませんが、プログラマーとして「バックアップの手段を残しておく」という考え方は非常にしっくりきました。 手術に伴う合併症として、尿漏れや性機能障害についても説明を受けました。尿漏れはリハビリで改善する可能性が高いが、性機能については神経を温存できなければほぼ確実に失われるという内容でした。しかし、私は「命に関わる問題に比べれば、それは仕方のないことだ」と納得していました。

ダヴィンチ手術を待つ、長く静かな時間

手術はロボット支援下手術(ダヴィンチ)で行うことになりました。私は、機械による精密な作業には厚い信頼を置いていました。人間の手よりも細かく、手ブレのないロボットアームが執刀することに、不安よりもむしろ安心感を覚えたほどです。 しかし、ここで壁にぶつかりました。当時、県内でダヴィンチが導入されている病院は限られており、手術待ちの行列ができていたのです。2023年の1月に受診した時点で「半年から、下手をすれば1年近く待たされる」と言われました。ステージ3の疑いがある中で、そんなに待っても大丈夫なのか。私は医師に問いかけました。 医師は「その程度の期間であれば大丈夫でしょう」と答えてくれました。県外の病院を探せばもっと早く手術できる場所もあったかもしれませんが、私は住み慣れた地で治療を受けることを選び、じっと順番を待つことにしました。 結局、正式な申し込みから数か月後、急にキャンセルの枠が空いたという連絡があり、2022年の10月に手術を受けることが決まりました。最初の受診から約9か月が経過していましたが、その間の生活も特に変えることなく、淡々と仕事を続けていました。

入院と職場復帰、そして変わらない日常

手術のための入院期間は12日間でした。職場には、直属の上司にだけ「前立腺がんの治療で入院する」と正直に伝えました。ちょうど忙しいプロジェクトが動いている時期でしたが、会社側は「体が第一だ」と快く休暇を認めてくれました。同僚や部下には余計な心配をかけたくなかったので、詳しい病名は伏せ、一時的な休暇として処理してもらいました。 手術自体は成功し、術後の経過も順調でした。懸念していた尿漏れは、退院後1か月ほどはおむつまで準備して対応しておりましたが、その後は徐々に改善し、今では全く気にならないレベルになっています。 職場復帰もスムーズでした。周囲にはがんだったことを知らない人も多いほど、以前と変わらない姿で仕事に戻ることができました。放射線治療のように長期間毎日通院する必要がなかったことも、仕事と治療を両立させる上では手術を選んで正解だったと感じるポイントです。 退院後は、定期的にPSA値を測定して再発の有無を確認しています。当初は検査のたびに「もし数値が上がっていたら」という不安が頭をよぎりましたが、回数を重ねるごとにその不安も薄れ、落ち着いていきました。現在は測定限界値以下という良好な結果が続いています。

カルテ開示で手に入れた確信

手術からしばらく経ち、状態が落ち着いた頃、私はある行動に出ました。病院に対してカルテの開示を求めたのです。自分がどんな手術を受け、取り出した病理組織の結果はどうだったのか。医師の説明だけでなく、自分自身の目で事実を確認したいという強い欲求がありました。 開示された資料を読み込み、病理結果の詳細を確認しました。そこで改めて、自分のグリソンスコアや、がんの進行度といった詳細なデータを知ることができました。専門用語を調べながら一つひとつ納得していく作業は、私にとって最高の安心材料となりました。「やはりあの時の選択は間違っていなかった」と、データに基づいて確信することができたのです。 がんになったことで、人生観が劇的に変わったということはありません。しかし、自分の体のデータを客観的に把握し、納得して治療を進めるというプロセスは、プログラマーとしての私の生き方そのものだったと感じています。

これからがんと向き合う方へのメッセージ

今、がん治療をしている方にお伝えしたいことがあります。 正確な情報を得て、納得できる選択をしてください がんと診断されると、誰しも不安に襲われます。その不安を解消する方法のひとつは、自分の状態を客観的に知ることだと私は考えます。主治医に疑問をぶつけ、必要であればセカンドオピニオンを使ってでも、自分が納得できるまで事実を確認してください。曖昧さをなくすことが、前を向くための第一歩になります。 信頼できる医療技術やシステムに身を委ねる勇気を持ってください 現代の医療、特に前立腺がんにおけるロボット支援下手術などは、非常に高度なテクノロジーに支えられています。私のようにITに関わる人間でなくても、その技術的な裏付けや病院のシステムを信頼し、過度に恐れず身を任せることも大切です。専門家とテクノロジーを信じることで、心に余裕を持って治療に臨むことができるはずです。 検査を怠らず、自分自身の「体」の管理者であってください 私ががんに気づけたのは、持病の医師が機転を利かせて検査をしてくれたからです。がんは自覚症状が出てからでは遅い場合もあります。まだがんと診断されていない方も、そして治療中の方も、定期的な検査を自分の体のメンテナンスだと捉えて、決して怠らないでください。
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