写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:こうちゃんさん(ニックネーム)
年代:70代
性別:男性
家族構成:妻と子ども2人との4人暮らし
仕事:自営業
がんの種類:喉頭がん
診断時ステージ:ステージ1
診断年:2012年
現在の居住地:大阪府
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
2012年、こうちゃんさんは喉の異変をきっかけに喉頭がんと診断されました。長年の喫煙習慣があり、自身の健康を過信していた部分もありましたが、この病をきっかけに生活を180度変えることを決意しました。喉頭がんは早期発見だったため放射線治療のみで済みましたが、治療後に心疾患という新たな試練が待ち受けていました。がんという大きな壁をどう乗り越え、現在のような前向きな健康観に至ったのか、お話しいただきました。
喉の違和感から始まった異変
すべての始まりは、2011年の12月のことでした。ふとした瞬間に、喉が枯れていることに気がつきました。周囲からも「風邪ですか、お大事に」と声をかけられるような、ありふれた症状でした。しかし、自分の中では、これまでの風邪による声枯れとは何かが違うという、言葉にできない違和感がありました。「おはようございます」と言おうとしても、最初の「おは」の部分がうまく出ない。そんな不思議な感覚が続きました。
インターネットで調べてみたところ、声枯れは喉頭がんの自覚症状として、非常にわかりやすいものであることを知りました。私は長年、1日に60本もタバコを吸うヘビースモーカーでしたから、心のどこかで「いつか喉にくるかもしれない」という予感がありました。
念のため、近所の内科を受診しましたが、そこでは「炎症かもしれないので薬を出します。これで治らなければ耳鼻咽喉科へ行ってください」と言われました。処方された薬を飲み切っても、一向に声の状態は改善しませんでした。近所の耳鼻咽喉科へ行くことも考えましたが、もし万が一のことがあったらと考え、最初から設備の整った大きな総合病院を受診することにしました。紹介状はありませんでしたが、追加の費用を払ってでも正確な診断が欲しいと考えた結果でした。
総合病院では、鼻から内視鏡カメラを入れて詳しく検査をしました。モニターに映し出されたのは、声帯の横にできた小さなできものでした。医師からは「ポリープや良性の腫瘍の可能性もありますが、念のために組織を採取して調べましょう」と提案されました。その場で検体を採取し、精密検査の結果を待つことになりました。
数日後、病院から告げられた診断結果は、喉頭がんでした。覚悟をしていたとはいえ、やはり自分の体にがんがあるという事実は重いものでした。
専門病院への転院と治療の選択
がんであることが確定したため、より専門的な治療が受けられる専門病院を紹介してもらうことになりました。大阪には有名な施設がいくつかありましたが、通いやすさを考慮して、自宅から比較的近いがん専門病院を選びました。
がん専門病院で改めて検査を受けたところ、がんが声帯そのものには直接及んでいないことがわかったのです。これは私にとって大きな救いでした。もし声帯に深く食い込んでいれば、手術で声を失うリスクもありましたが、私の場合は放射線治療だけで対応できるという診断でした。声を失わずに済むという事実は、治療に向き合う大きな希望になりました。
担当の医師からは、放射線治療の進め方について2つの選択肢を提示されました。1つは、強い放射線を短期間で当てる方法。もう1つは、少し弱い放射線を長期間かけて当てる方法です。どちらを選んでも、最終的に照射する総量は変わりませんが、体への負担や通院期間が異なります。
医師は私の意見を尊重してくれました。「早く終わらせたい人は強い方を、じっくり治したい人は弱い方を選びます」という説明を受け、私は妻とも相談した上で、弱い放射線を長期間当てる方法を選びました。そのほうが体への負担が少なく、確実性が高いと感じたからです。最終的に、週に5日の通院を8週間続け、合計で40回の照射を行う治療計画が決まりました。
あわせて、このタイミングで臨床試験への参加も提案されました。新しい治療法に協力することにも興味はありましたが、私は「まずはこれまでに確かな実績があり、多くの人が治ってきた標準的な治療を受けたい」と考え、お断りしました。早期がんであり、治る見込みが高いからこそ、一番確実だと思える道を選びたかったのです。
8週間にわたる根気の通院生活
放射線治療が始まると、毎日のように病院へ通う日々が続きました。照射自体は1回につき数分程度、2か所から当てるだけなので、痛みも熱さも感じませんでした。最初は「これだけで本当に治るのだろうか」と思うほど、体への変化はありませんでした。
しかし、回数を重ねて後半に入るにつれ、少しずつ副作用が現れ始めました。まず、放射線を当てている首の皮膚が皮膚炎による色素沈着で真っ黒になりました。そして何より辛かったのが、喉の痛みでした。喉の内側も放射線で焼けているため、食べ物や飲み物を飲み込むたびに、鋭い痛みが走りました。風邪のときの喉の痛みとは比べものにならないほど、ヒリヒリとした痛みが続きました。
医師からは痛み止めを勧められましたが、私はできるだけ薬に頼りたくないという思いがありました。そこで、自宅で妻に工夫をしてもらい、食事をすべてお粥や柔らかい煮物などの、喉を通りやすいものに変えてもらいました。喉の痛み以外は健康そのもので、食欲もありました。どんぶりいっぱいのお粥を食べ、体力を維持することに努めました。
この8週間の治療を支えてくれたのは、何よりも「これを機に生まれ変わろう」という強い決意でした。私は診断を受けたその日から、1日60本吸っていたタバコとお酒を一切断ちました。最初のころはイライラすることもありましたが、ニコチンパッチを利用し、家族にも「今は禁煙でイライラしているから協力してほしい」と正直に伝え、理解を求めました。妻もお酒が飲みたくなるような刺身などは出さないようにしてくれるなど協力してくれました。
治療のために、当時続けていたアルバイトも辞めました。職場からは「月1回でもいいから来てほしい」と言われましたが、今は治療に専念すべき時だと判断しました。この長い通院期間は、まさに自分との根気比べでした。「絶対に治して、健康な体を取り戻すんだ」という一念で病院へ通い続けました。
がんを乗り越えた先に待っていた試練
40回の放射線照射を終えると、検査の結果、がんは跡形もなく消えていました。医師からも「きれいに消えましたね」と言われ、そこからは5年間の経過観察に入ることになりました。
がんが消えたことで、私の健康意識はそれまで以上に高まりました。失いかけた健康を取り戻すために、スポーツジムに通い始め、積極的に体を動かすようになりました。経過観察のための通院も、自宅から自転車で1時間弱かかる道のりを自分で漕いでいくほど、体力が回復していました。タバコとお酒を辞めたおかげで、体調はがんになる前よりも良いくらいだと感じていました。
しかし、がんが消えてから数年が経ったころ、新たな試練が訪れました。検査で不整脈の一種である「心房細動」が見つかったのです。医師からは手術を勧められましたが、リスクを恐れて返事を保留にしていました。するとその後、心筋梗塞を起こして倒れてしまいました。
緊急でカテーテル治療を受け、一命を取り留めることができました。がんの主治医がかつて、「頭頸部がんでは、治療後に心血管疾患を抱える人が多い」と話していたことを思い出し、まさにその通りになったと痛感しました。
2017年には、喉頭がんの診断から無事に5年が経過し、再発がないことが確認されました。病院からは「もう大丈夫でしょう」と太鼓判を押され、大きな区切りを迎えることができました。
病は健康になるためのステップ
現在、私は心臓の定期的な通院を続けながら、穏やかに暮らしています。心筋梗塞やコロナ禍の影響もあり、以前のようにスポーツジムへ通ったり、頻繁に外出したりすることは難しくなりました。家族も私の体を心配して「あまり外に出ないで」と言うため、以前に比べると足腰の衰えを感じることもあります。
しかし、私は今の生活を不満に思っているわけではありません。かつての自分は、タバコとお酒にまみれ、自分の体を顧みない生活を送っていました。もし、あの時がんにかかっていなければ、今ごろはどうなっていたかわかりません。もっと深刻な病気で倒れていた可能性もあったかもしれません。
私にとって、喉頭がんは「これからの人生をどう生きるか」を教えてくれた大切な機会でした。病気になったことを前向きに捉え、悪い習慣を断ち切り、自分の体と真剣に向き合うことができたのです。今の医学は非常に進歩しており、医師の提案を信じて根気よく治療を続ければ、良い結果が期待できると思っています。
これからも無理のない範囲で、自宅でストレッチをするなど、自分にできる健康管理を続けていくつもりです。一度はがんで死を覚悟した身ですが、今は生かされていることへの感謝を忘れず、一日一日を大切に歩んでいきたいと思っています。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
私のささやかな経験が、前を向くための一助となることを願っています。
医師を信頼し治療に根気強く取り組んでください
がんの治療は、非常に根気がいります。副作用で体が辛い時期もあるかもしれませんが、医師が提案する治療を信じ、最後までやり遂げることが大切です。途中で投げ出さず、言われたことを守り、治療を続けることが、がん治療では大切なことだと思っています。
がんという経験をその後の健康的な生活に変えるチャンスだと考えてください
がんと診断されることは大きなショックですが、それをこれまでの生活習慣を見直す「チャンス」だと捉えてみてはどうでしょうか。私のようにタバコやお酒を断ち、食事や運動に気を遣うようになれば、がんを克服した後に、以前よりも健康な体を手に入れることができるかもしれません。病気をステップにして、新しい自分を始めるつもりで向き合ってほしいと思います。