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前立腺がんステージ3、重粒子線治療を選んだ研究者が語る治療選択と患者力

[公開日] 2026.03.02[最終更新日] 2026.03.02

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:VTさん(ニックネーム) 年代:70代 性別:男性 家族構成:妻との2人暮らし 仕事:大学研究所研究員 がんの種類:前立腺がん 診断時ステージ:ステージ3 診断年:2022年 現在の居住地:群馬県
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。 2022年、前立腺がんの告知を受けたVTさん。視覚科学の研究者として長年教壇に立ってきた経験から、自ら膨大な論文やデータを読み解き、納得のいく治療法を模索しました。手術か放射線かという大きな選択肢の中で、VTさんがたどり着いたのは、「重粒子線治療」でした。診断から治療、その後の経過まで、同じ病に悩む人々へ「後悔しない選択」の大切さを主体にお話ししていただきました。

定期検査で見つかった基準値を超えたPSA値

異変の兆しは、2022年3月のことでした。私は当時70代を迎え、長年勤めた大学の教授職をリタイアしたばかりでしたが、依然として研究所の研究員として席を置き、後進の育成や自身の研究を継続していました。健康にはそれなりに自信がありましたが、年齢相応に血圧の管理が必要で、3か月ごとに近所のクリニックへ通うのが習慣となっていました。 その日、医師から手渡されたのは、前年の12月に受けた検査の結果でした。何気なく目を通すと、腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の値が「4.18ng/mL」となっていました。 私には、忘れられない記憶がありました。私の父もかつて前立腺がんを患っていたのです。父の死因は前立腺がんではありませんでしたが、身近でその経過を見ていた私は、「いつか自分もPSA値が上がってくる日が来るだろう」と、心のどこかで覚悟を決めていました。 「ついにその時が来たか」 私は主治医に、すぐにより詳細な検査が受けられる病院への紹介状を依頼しました。研究者という職業柄、私は物事を曖昧にしておくことが一番のストレスになります。「数値が低いから様子を見ましょう」という選択肢は、私の中にはありませんでした。

確定診断までの3か月で客観的データを確認

市内の総合病院を受診し、精密検査が始まりました。まずはMRI撮影、続いてCT検査を受けました。画像を見せてもらった際、私自身の目にも、前立腺のあたりにぼんやりとした影が映っているのが見えました。 5月には、がんの存在を確定させるための「生検」を受けました。前立腺に針を刺し、組織を採取する検査です。全部で12か所の針生検を受けましたが、1か所からがん細胞が見つかりました。がんの悪性度を示すグリソンスコアは「3+3=6」という、低リスクのスコアでした。この時点では、私は「おそらくごく初期のステージ1程度だろう」と、楽観的な見通しを立てていました。 しかし、その後のより精密なPET/CT画像には、前立腺の被膜を越え、精嚢(せいのう)にまで浸潤していることがわかりました。そのため、最終的な診断は「ステージ3」。幸いなことにリンパ節や骨への転移は認められませんでしたが、当初の想定よりも事態は深刻でした。 診断が下るまでの約3か月間、私は不安に押しつぶされることはありませんでした。むしろ、次々に提示される客観的なデータを確認することで、冷静さを取り戻していく感覚がありました。研究者にとって「わからないこと」が最大の敵であり、データが揃うことは、戦略を立てるための武器が手に入ることを意味していたからです。

重粒子線治療を選択した理由は、確かな物理的な理論

主治医からは「VTさん自身で選んでください」と言われていましたが、これは突き放されたわけではなく、治療の選択肢が複数存在し、それぞれにメリットとデメリットがあるため、患者の価値観が最優先されるべきだという配慮からです。そのため、治療方針を決めるにあたって、膨大な情報を収集しました。 当初、私は手術を第一の選択肢として考えていました。50代の時に胆嚢の摘出手術を経験しており、外科的な処置に対してそれほど抵抗がなかったことも理由のひとつです。ロボット支援下手術「ダヴィンチ」の存在も知っていました。「悪いところを切ってしまえば、心もすっきりするだろう」という、ある種単純な発想でした。 しかし、調べれば調べるほど、現実はそう簡単ではないことがわかってきました。前立腺の周囲には、排尿をコントロールする筋肉や、性機能に関わる神経が複雑に張り巡らされています。それらを傷つけることで生じる術後のQOL(生活の質)の低下、特に深刻な尿漏れなどのリスクを考慮すると、手術が必ずしも「最良の選択」とは思えなくなってきたのです。 そんな折、私はインターネットで医師たちの座談会動画や、学術論文に掲載された多くの臨床データに出会いました。そこで注目したのが「重粒子線治療」でした。X線などの従来の放射線治療とは異なり、重粒子線は、体内のある一定の深さでエネルギー放出のピークを迎え、その先にはほとんど届かないという特性を持っています。 研究者として、この「ブラッグ・ピーク」と呼ばれる物理学的な理論には、非常に強い説得力を感じました。さらに、ステージごとの生存率や再発率のデータを、手法別に徹底的に比較しました。すると、重粒子線治療は手術と同等の治療成績を示すデータを見つけました。

ホルモン療法による体の変化

重粒子線の照射を開始する前に、私は半年間の「ホルモン療法(内分泌療法)」を受けることになりました。 ホルモン療法では、薬の副作用で、体内のバランスが大きく変わっていくのを肌で感じました。いわゆる「更年期障害」のような症状です。急に体が熱くなるホットフラッシュに襲われたり、胸の先端が女性のように少し膨らんで痛んだりしました。また、男性ホルモンが抑制されることで、筋肉量が明らかに落ちていくのもわかりました。階段の上り下りで息が切れるようになり、筋力の衰えは今でも残っています。 この時期、私は仕事の手を休めることはありませんでした。病気を理由に「何もしない時間」を作ってしまうことが、精神的に一番良くないと考えたからです。治療の準備期間中も、私はいつも通りの日常を維持していました。

重粒子線治療はスムーズに完了

2023年3月、いよいよ重粒子線の照射が始まりました。治療計画は、週に数回、計12回の照射を1か月かけて行うというものでした。 実際の照射は、驚くほどあっけないものでした。大きな装置に体を固定され、数分間横になっているだけです。痛みもなければ、熱さも感じません。放射線治療につきものの「火傷のような皮膚障害」も、私にはほとんど現れませんでした。12回の照射が終わった時、看護師さんに「腰のあたりが少し赤くなっているのがわかりますか?」と聞かれましたが、鏡で見ても「言われてみればそうかな」という程度でした。

再発に備え「次の手」を主治医と相談

現在、私は3か月ごとの定期検査を続けています。PSAの数値は、治療直後に検出限界以下まで下がりましたが、2024年末あたりから「0.02ng/mL」「0.06ng/mL」と増加し、現在は「0.21ng/mL」と上昇傾向にあります。 一般的に、前立腺の全摘手術をした場合は、数値が上がれば「再発」が疑われますが、放射線治療の場合は前立腺そのものが残っているため、数値がゼロにならないことも、多少の揺らぎがあることも想定内です。私は、かつて目にした膨大な論文のデータを思い出しながら、この数値を冷静に眺めています。 主治医とは、「2.0ng/mLを超えたら再発と見なして、次のホルモン療法を考えましょう」と約束しています。そこまで行くには、まだ何年もかかるでしょうし、もしそうなったとしても、私にはまだ「次の手」がある。そう思えることが、大きな心の支えになっています。 前立腺がんは、適切に治療すれば「寿命を全うできる病」だと思っています。私はこの病気で死ぬことはないだろうと、楽観的ではなく、論理的な確信を持って日々を過ごしています。 がんは私の生活を奪うどころか、私に新しい視点を与えてくれました。研究者仲間の中には手術を選んだ友人もいます。一方で、私と同じように重粒子線を選び、元気に過ごしている友人もいます。どの道が正解かは人それぞれですが、少なくとも私は、自分で調べ抜き、納得して選んだこの道に、後悔はありません。

これからがんと向き合う方へのメッセージ

がんと共に生きる、あるいは今まさに治療の選択を迫られている方へ、私からお伝えしたいことが3つあります。 納得のいくまで勉強し、「患者力」を身につけてください がんと診断されると、誰しも動揺します。しかし、そこで思考を停止して医師にすべてを丸投げしてしまうのは、自分自身の人生を放棄することに等しいと私は考えます。現代は情報が溢れています。専門用語を恐れず、ガイドラインや学術論文、信頼できる医師の解説動画などに触れてください。自分が受ける治療が、どのようなメカニズムで働き、どのようなリスクを伴うのか。それを論理的に理解することが、漠然とした不安を払拭する方法です。 専門分野の異なる医師の意見(セカンドオピニオン)を聞いてください 病院の仕組みとして、泌尿器科の先生には「手術の専門家」と「放射線の専門家」がいらっしゃいます。手術をメインとしている先生はどうしても手術を勧めがちですし、その逆もまた然りです。これは決して悪意ではなく、医師としての信念と専門性から来るものです。だからこそ、患者は自ら動かなければなりません。外科の意見だけでなく、必ず放射線治療の専門医にもセカンドオピニオンを求めてください。両方の天秤を、自分自身の価値観で測ることが不可欠です。 後悔しない選択こそが、最良の薬です 治療法を選ぶ際、最も大切なのは「もし結果がどうあれ、自分はこの選択を後悔しないか」と自問することです。誰かに勧められたから、あるいは有名だからという理由だけで選ぶと、予期せぬことが起こった際に心が折れてしまいます。自分で悩み、調べ、納得して選んだ治療であれば、前向きに向き合うことができます。
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