写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:gucciさん(ニックネーム)
年代:60代
性別:男性
家族構成:配偶者と2人暮らし
仕事:公務員(診断時は金融機関勤務)
がんの種類:前立腺がん
診断時の状態:前立腺内に限局
診断年:2021年
現在の居住地:東京都
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
gucciさんは、人間ドックをきっかけに2021年に前立腺がんと診断されました。当初、治療方針についてさまざまな選択肢に迷い、不安を抱えましたが、信頼できる医師との出会いや、職場の同僚という身近な経験者から具体的な話を聞くことで、ロボット支援下手術(ダビンチ)による前立腺全摘除術を決断されました。手術から4年近くが経過した現在、再発もなく元気に日常生活を送られています。がん診断から治療、そして現在の生活についてお話しいただきました。
始まりは人間ドックでのPSA値
私が最初にがんの疑いを指摘されたのは、人間ドックでした。2020年の検査で、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)値が4.0ng/mLを上回り、翌2021年も4.4と上昇し続けたのです。
かかりつけの医師に相談したところ、「いずれ精密検査は必要になるだろうから、一度受けてみたらどうですか」と言われました。そこで、クリニックからの紹介で総合病院を受診することになりました。
総合病院では、血液検査やCT検査などを受け、医師から針生検が必要だと告げられました。1日入院して生検を受け、12か所から組織を採取したうち、1か所でがん細胞が見つかりました。
診断の結果は「前立腺がん」で、前立腺の中に限局している早期の段階とのことでした。病理検査のグリソンスコアは7で、当時の知識では「7は中くらいなのかな」という程度の認識でした。骨シンチグラフィーでも転移がないことがわかったので、「基本的には手術で切除できれば治るのだろう」と漠然と思っていました。
治療法の選択とこだわった医師選び
総合病院の医師からは、早期がんの治療として手術や放射線治療などの選択肢を提示されました。ただ、「当院でも手術はできるが、もう少し大きな病院を紹介しましょう」との提案がありました。
私自身、以前から知っている病院があり、そこにしようかと考えました。しかし、決め手となったのは、たまたま職場の同僚に同じ病院でがん治療を受けた人がいたことでした。彼は私より4~5年前に腎臓がんの手術を受けており、その時の担当医の評判がとても良いと聞いたのです。同じ泌尿器科の先生だったので「じゃあ、その先生がいる病院に紹介状を書いてもらおう」と思いました。私は病院の規模よりも、信頼できる医師がいるかという点にこだわっていました。
紹介状を書いてもらい、その病院を受診しました。最初の診察時に、患者の話をじっくりと聞いてくれる、非常に良い先生だと感じました。その先生から、手術(前立腺全摘除術)や放射線治療について改めて説明を受けました。放射線治療には、前立腺内部に放射線を出す線源を挿入する治療法もありますが、その病院では実施していないとのことで、「ご希望なら他の病院を紹介します」と言われましたが、私は手術(前立腺全摘除術)を選択しました。
「次に使える手を残す」という理由で手術を選択
手術を選択した理由のひとつは、グリソンスコアが7と中間リスクであったことから、「転移がないうちにがんは全部切除してしまいたい」という思いがあったからです。
手術の方針が決まった後、医師から「勃起障害」になる可能性があると初めて聞かされました。正直ショックを受けました。手術前にネットで調べても、勃起障害のことはあまりわからなかったのです。その時は「ちょっと待てよ」と思いました。
しかし、がんが片側にしか見つかっていなかったため、医師から「がんのない側の勃起神経は温存できます」という提案があり、温存手術を選択しました。
治療法を選択する上では、「次に使える手」を残すという考えも大きく影響しました。放射線を最初にやると、再発・転移した時の次の手はホルモン療法しかなくなってしまうのではないかという不安がありました。前立腺全摘除術なら、尿失禁や勃起機能の問題はありますが、再発・転移した時に放射線治療というワンチャンスが残る。リスクとリターンを考え、前立腺全摘除術を選択して良かったと思っています。
また、担当の先生が、ロボット支援下手術(ダビンチ)は素晴らしい技術だと力説していたことも、大きな要因となりました。開腹手術だったら、もしかすると放射線治療と迷っていたかもしれません。
仕事への影響は最小限に
診断時は金融機関の監査役という仕事をしていました。ちょうど2021年ということもあり、コロナ禍でほとんどの会議がZoomで行われ、出勤は週に1~2回という体制でした。
たまたま、私より2年前に前立腺がんの手術を受けていた人事部長が社内にいたこともあり、私の事情に非常に理解がありました。そのため、入院や療養に伴う仕事への大きな支障はありませんでした。
入院期間は10日間で、手術後すぐに体を動かすように促されました。諸々の予備知識があったので驚きませんでしたが、手術翌日から尿管カテーテルを付けた状態で歩き始めるのは、初めての体験でした。
早期退院と桜の下で流した涙
手術はロボット支援下手術で行われました。傷が小さく、術後の回復は早かったです。術後の痛みも1か月も経たないうちにほとんど気にならなくなりました。
術後の後遺症としてよく言われる「尿漏れ」は、私の場合は以前から楽器(トランペット)を演奏していたことで骨盤底筋が比較的強かったおかげか、ひどい状態にはなりませんでした。それでも、4年近く経った今でも尿漏れパッドを使うことはあり、それが少し鬱陶しいです。
退院後、体を慣らすために近所を散歩するようになりました。ちょうど3月の終わりで桜が咲く時期でした。天気が良い日に公園の桜並木を歩いていた時、突然、涙があふれてきました。泣くつもりは全くなかったのですが、なんだかわからないけれど涙が止まらなかったのです。
どのような感情なのかはいまだにわかりませんが、安堵と、がんという大きな出来事を乗り越えて、元の生活に戻れたという喜び、その安心感から出た涙だったのだと思います。生まれて初めての経験でした。
退院後、尿漏れのことが心配で、趣味のトランペット演奏に影響が出ないか不安でした。楽器演奏は腹筋に力を入れるため、尿漏れを誘発しやすいのです。
しかし、2~3か月ほど様子を見ながら演奏してみたところ、「これなら大丈夫そうだ」とわかったのです。パッドを付けていれば問題なく吹ける。実際、今ではがんになる前と変わらず積極的に音楽活動(ライブ活動)をしています。力を込めて吹く時には、今でも尿漏れすることもありますが、パッドで対応できていますので、支障なく続けられています。
経験者の話がくれた安心感
診断がわかってからは、ネット検索や図書館で借りた本で情報収集をしました。患者会などに積極的に出向くことはありませんでしたが、たまたま私よりも2年前に前立腺がん治療を受けていた人事部長から、術前の心境や手術後の具体的な生活について、かなり細かく話を聞くことができました。
これは非常に良かったと思っています。ネットの情報は顔が見えないし、QOL(生活の質)がどのような状態での生存なのかもわかりません。しかし、身近な生身の人間の体験談は、不安を和らげる大きな安心材料になりました。
術後4年が経過し、PSA値の定期検査は続いていますが、毎回再発の不安を感じるのは正直なところです。検査の1週間くらい前から、不安で「憂鬱」な気持ちになりますが、検査後、PSA値に問題がないことがわかると乾杯しています。
先生に、「この低いスコアが3年続いたら、再発の可能性が下がったと思ってもいいですか」といった質問をしました。医師は確定的なことは言いませんが、先日、「5年経ってこのスコアだったら、99%再発はないと考えていいと思います」という言葉をいただきました。患者としては、ああいうはっきりとした心強い言葉は、喉から手が出るほど欲しいものなのです。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
私の経験から、今がんと闘っている方、これから治療を始める方へお伝えしたいことがあります。
身近な経験者に具体的な話を聞いてみましょう
ネットや本で調べる情報だけでは、術後のQOLや具体的な大変さがわからず、モヤモヤしがちです。私の場合は、職場の同僚という身近な体験者がいたおかげで、具体的な術後の状況を聞くことができ、大きな安心感を得られました。身近にがん経験者がいれば、ぜひ勇気を出して話を聞いてみてください。
治療法のメリット・デメリットを正しく理解しましょう
前立腺がんの治療には手術、放射線、ホルモン療法などさまざまありますが、治療後の影響や再発時の選択肢が異なります。特に放射線治療は、一度行うと再発時の次の治療(手術)が難しくなるなどの制約があります。医師からの説明だけでなく、自分でデメリットも調べ、「再発した時の次の手」まで考えて治療法を選択することが大切だと思います。