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肺がん転移によるリンパ浮腫との闘い、自分に合った医師と治療を求めた「プロ患者」という境地

[公開日] 2025.11.20[最終更新日] 2026.01.06

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:むくみ君さん(ニックネーム) 年代:60代 性別:男性 家族構成:妻と二人暮らし 仕事:会社員 がんの種類:肺がん 診断時ステージ:ステージ1 居住地:東京都 診断年:2021年
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。 2021年の健康診断で肺がんステージ1と診断されたむくみ君さん。すぐに手術を受け、経過は順調でした。しかし約1年半後、足の急激な腫れをきっかけに再発・転移が判明します。がんそのものの治療と並行し、診断が二転三転した「リンパ浮腫」のつらい症状に苦しめられました。自ら情報を集め、治療法を探し続けたむくみ君さんにお話していただきました。

健康診断で見つかったステージ1の肺がん

私のがんが見つかったのは、2021年1月の会社の健康診断でした。結果が翌月届いたのですが、胸部X線検査で「左肺に異常陰影」、「要精密検査」とありました。 ちょうど当時、別の疾患で整形外科に通っていた会社近くの総合病院に呼吸器内科があったため、紹介状なしで受診しました。すぐにCT検査をすると、断面にくっきりと丸い影が映っており、医師から「これは肺がんの可能性が高いです」と告げられました。 そこは手術を行っていない病院だったため、近隣の大学病院を紹介してもらうことになりました。その大学病院で検査を受けた結果、肺がんでステージは1ということでした。その時は、がんについてや治療についての知識がありませんでしたから、その大学病院で手術を受けることにしました。トントン拍子に話は進み、2021年3月に大学病院で1泊の術前検査入院、そして4月中旬に1週間の入院で、左肺上葉部の摘出手術を受けました。術後の経過は順調で、特に問題なく過ごしていました。

突然の異変、太ももがパンパンに腫れだした

しかし、手術から1年半近くが経過した2022年9月、体に異変が起きました。右足の大腿部、太ももが急にパンパンに腫れだしたのです。 g 「おかしい」と思い、以前かかった総合病院の整形外科を受診しました。血液検査では炎症反応はなく、MRI検査の予約をしましたが、混雑していて少し先の日程になりました。 ところが、足の腫れは日増しに悪化していきます。やっと整形外科の先生の診察日になり、MRI検査もたまたまキャンセルが出たため、すぐに検査することができました。画像を見ると、大腿部の筋肉の奥に腫瘍のような影がありました。医師は私の肺がんの既往歴を知っていましたから、「転移の可能性もある」とのことでした。 その日は偶然にも、手術を受けた大学病院の呼吸器外科の定期受診日でした。総合病院の先生に紹介状と画像データを用意してもらい、その足で大学病院へ向かいました。 大学病院の主治医に画像を見せ、経緯を説明しました。その際、私が当時、五十肩などで鍼灸治療に通っており、足の付け根にも鍼を打ってもらったことを雑談として話してしまいました。すると主治医は、「ああ、鍼で膿瘍(のうよう)を起こしている可能性もありますね」と判断され、「経過観察」となってしまったのです。 翌日、大学病院に再度行きましたが、主治医は週に1度しか来ません。私はインターネットなどで調べ、「これはリンパ浮腫という状態に違いない」と確信しました。病院の患者相談コーナーへ駆け込み、「リンパ浮腫だと思うが、どこで診てもらえばいいのでしょうか」と相談しました。 そこで、乳がんの手術後にリンパ浮腫を扱うことがあると聞き、乳腺外科を紹介してもらいました。女性の患者さんばかりでしたが、そこで足を診てもらい、超音波検査を受けました。 しかし、乳腺外科の医師は「筋肉や骨にできるがんは整形外科の領域です」と言い、今度は大学病院の整形外科に回されました。 整形外科の若い医師は、総合病院で撮ったMRI画像を大学病院の放射線科医に読影してもらいましたが、よくわからないとのことでした。再度、造影CTを撮りましたが、鼠径部のグリグリとしたしこりにはがん特有の新生血管が見られないことから、「がんではないだろう」という結論になりました。 そのため、原因ははっきりとはわからない状態で、リンパ浮腫の治療を始めるということになりました。私は「待ってほしい」と思いました。リンパ浮腫の治療はもちろん必要ですが、なぜリンパ浮腫になったのか、その原因を突き止めるのが先決です。

セカンドオピニオンで判明した肺がんの転移

私は再び、最初の総合病院の整形外科の先生に頼りました。事情を話すと、先生はすぐに「筋肉と骨の腫瘍」を専門とする別の大学病院の整形外科の予約を取ってくださいました。 その大学病院の専門医は、撮影したCT画像を見るなり「考えられるのは3つです。膿瘍(感染症)、悪性肉腫(筋肉のがん)、肺がんの転移でしょう」と見立てを述べました。そして「深い場所にあるため、全身麻酔で組織を取らないと確定診断できません」と言われました。 2022年10月の第1週、入院して生検を受けました。結果が出るまで3週間。その間にも私の足の腫れは悪化し続け、足先までパンパンになってしまいました。 3週間弱が経った頃、医師から電話があり、「肺がんの転移です」と告げられました。

日増しに悪化し歩行困難に、なかなか治療が開始されないジレンマ

医師からは、手術を受けた大学病院に戻って治療を受けるよう指示されました。しかし、その頃には足の腫れがひどく、歩行も困難になっていました。自宅から遠い大学病院まで通うのは到底無理だと思いました。 私は主治医に事情を話し、大学病院と同じ系列である、自宅からタクシーで15分ほどで行ける病院に転院させてもらうことにしました。転移・再発となると化学療法が中心になるため、担当も呼吸器外科から呼吸器内科へ移りました。 10月の終わり頃に受診し、PET-CTなどの検査の結果、右大腿部の奥と、骨盤の骨にも転移していることが確定しました。 その頃から、夜寝る時に骨盤のあたりに嫌な痛みが出るようになりました。骨転移による痛みだったのだと思います。昼間はそうでもないのですが、夜になると痛み出し、鎮痛剤を飲んだり、湿布や塗り薬でごまかしたりして耐える日々でした。 治療方針を決めるため、まずは遺伝子検査が行われました。結果が出るまで、また3週間待つことになりました。 その間、私の足の腫れは最悪の状態を迎えていました。腫れは右足だけでなく陰部にまで及び、陰嚢(いんのう)はソフトボール大ほどにまで膨れ上がりました。重くて仰向けにしか寝られません。さらに陰茎部までむくみ、排尿が困難になりました。尿が飛び散ってしまうため、2リットルのペットボトルを切ってガムテープで縁を養生し、自作の採尿器を作ってしのぎました。 さすがにこの時は、心が折れかかっていました。 3週間後、遺伝子検査の結果が出ましたが、分子標的薬の適用はありませんでした。主治医は、「さらに別の遺伝子検査をしたい」と言います。ただし、また3週間かかると言うのです。 私は診察室で下着を脱ぎ、医師にひどい状態の陰部を見せました。「先生、これはもう終末期の症状じゃないですか。これでまた3週間も待てと言うんですか」と詰め寄りました。 すると先生は、その状態を見て「いえいえ、終末期の患者さんと違って、むくみ君さんは元気ですから大丈夫ですよ」と笑って言うのです。あまりのことに、苦しいながらも私も思わず笑ってしまいました。

放射線治療と化学療法が始まり、足の腫れも改善傾向に

痛みも強くなっていたため、化学療法の開始に先立ち、まずは放射線治療を行うことになりました。骨転移の痛みを取るための緩和的照射です。大腿部と骨盤に合計10回ほど照射するため、ほぼ毎日通いました。 病院へはタクシーで行き、院内は車椅子で移動する状態でした。放射線を当てる際は体を固定されますが、10分足らずの時間でも痛みで脂汗が出るほどでした。医療用麻薬も飲んでいましたが、あまり効いている感じがしませんでした。 しかし、不思議なもので、照射の効果が出始めると、あれほど苦しんだ骨の痛みがピタッと消えたのです。 放射線治療が終了した2022年12月、いよいよ化学療法のため19日間入院しました。治療は、2種類の抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法です。 入院中も、リンパ浮腫に対する積極的な治療はありません。病棟の医師も私の陰部の状態を見て心を痛めてくれ、治療法を調べてくれたようです。しかし「特効薬は見つかりませんでした。がんをコントロールできれば、リンパ浮腫も改善されてくると思います」とのことでした。 抗がん剤の点滴が始まると、左足のむくみが引き、さらにあれほどひどかった陰部の腫れも、少しずつ小さくなっていくのを感じました。ただ、右足のむくみは、なかなか改善しませんでした。むくみが続くと皮膚が呼吸できなくなり、入院中に「うっ滞性皮膚炎」という炎症を起こしてしまいました。皮膚科の診察を受け、ステロイド剤を塗り、弾性包帯でグルグル巻きにする「圧迫療法」が始まりました。 12月末に退院し、正月休みから自宅の近所で歩行訓練を始めました。最初は短い距離しか歩けませんでしたが、徐々に距離を伸ばし、駅まで行けるようになりました。2022年9月中旬からずっと在宅勤務を続けていましたが、2023年の3月には、ようやく会社に出勤できるまでに回復しました。

リンパ浮腫の専門治療を求めて

がん治療は進んでいましたが、右足のリンパ浮腫の問題は残ったままでした。化学療法で入院した病院に通院を続けていましたが、そこではリンパ浮腫の本格的な治療はできないため、自分で専門の病院を探すしかありませんでした。 インターネットで調べ、ある総合病院が有名だとわかりましたが、電話すると初診は半年待ち。次に、その病院から独立した有名な先生が開業したリンパ浮腫専門クリニックに電話すると、3月の時点で6月に1枠だけ予約が取れました。 問診票に「リンパ浮腫が治ったら何がしたいですか?」という項目があり、「早く普通に歩けるようになり、再発前にやっていたゴルフを再開したい」と書きました。 診察室に入ってきた医師は、私の問診票を見るなり、「ゴルフできるようにしますから」と力強く言ってくださいました。目の前がパッと開けたような気がしました。 そのクリニックでは、治療は圧迫療法が第一で、手術はあくまで補助的であること、そして装具(ストッキング)選びが非常に重要であることを教わりました。保険診療外にはなりますが、専門のセラピストの方が、私の肌が弱いといった特性まで考慮し、膨大な知識の中から最適な装具を選んでくれました。 2023年9月に1回目のLVA手術(リンパ管静脈吻合術)を受け、その後も圧迫療法を続けた結果、足のむくみはかなり改善され、ゴルフも再開できるまでになりました。2024年3月に一度むくみがリバウンドしましたが、5月に2回目の手術を受け、お風呂以外は常にストッキングを履いて圧迫することで、通常の生活を送れています。

「患者のプロ」になることが大切だと実感

がんの治療も順調です。4か月に1度の画像検査では、あれほど大きかった大腿部の腫瘍は、免疫チェックポイント阻害薬の効果で画像上は消失しています。骨盤にあった転移の影もなくなりました。 ただ、併用していた抗がん剤の副作用で腎機能が低下してしまったため、抗がん剤はここ2か月ほど休薬していますが、免疫チェックポイント阻害薬は今も続けています。 先日受けたPET検査でも、全身どこにも集積はなく、落ち着いた状態です。今後は、免疫チェックポイント阻害薬をいつまで続けるか、主治医と相談しているところです。 仕事に関しては、診断当初も再発時も、会社は非常に協力的で、コロナ禍で整備された在宅勤務制度を活用させてもらいました。管理職的な立場で実務の最前線ではなかったことも幸いし、治療と仕事を両立できました。再発の影響で昇格が流れてしまったという現実はありますが、これは病気なので仕方がないと割り切っています。 振り返ると、大学病院での診断の混乱などはありましたが、総合病院の整形外科の先生、リンパ浮腫専門クリニックの先生、そして現在の明るい主治医など、素晴らしい出会いもありました。 ステージ4と診断されれば覚悟は必要ですが、悲観することはないと思っています。私にとって一番大事なのは、QOL(生活の質)を維持し、自分らしく生活することです。そのためには、自分の病気を正しく知り、対等にコミュニケーションが取れるようになることが大切だと思います。医師は、「医療のプロ」ですが、患者も「患者のプロ」になることが重要だと感じています。

これからがんと向き合う方へのメッセージ

自分の病気について勉強してください。 情報があふれていますが、自分の病気については客観的に勉強することが必要です。言わば「患者のプロ」になるつもりで、自分の状態を理解することが大切だと思います。 医師との相性は重要です。 がん治療は長い付き合いになります。「この先生とは相性が悪い」「言っていることが信用できない」と感じたら、勇気を持って主治医を変えてもらうか、病院を変えることをためらわないでください。それは患者の権利だと思います。 わからないことは、わかるまで聞いてください。 医師に遠慮して「はい、はい」と聞き流してしまうのは良くありません。説明がわからなければ、自分が納得できるまで何度でも説明を求めることが大切だと思います。
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