写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:ガーコさん(ニックネーム)
年代:60代
性別:女性
家族構成:娘と二人暮らし
仕事:無職(診断時は調理師)
がんの種類:乳がん
診断時ステージ:ステージ2A
居住地:大阪府(診断時は奈良県)
診断年:2018年
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
2018年に乳がんと診断されたガーコさん。人間ドックでは異常が見つからなかったものの、自身で感じた胸の異変をきっかけに受診し、乳がんと告知されました。乳房の全摘手術と同時に再建手術を受けましたが、術後の痛みや感染症に苦しみ、仕事もやめざるを得ませんでした。診断から7年が経過した今も続く、再建した胸の痛みや見た目への葛藤、そして相談相手のいない孤立感についてお話しいただきました。
始まりは胸のかゆみ、人間ドックでは「異常なし」
私が最初に体の異変に気づいたのは、2018年の3月か4月頃だったと思います。毎年1月に人間ドックを受けていて、その年もマンモグラフィ検査の結果は「異常なし」でした。それから数か月後、なぜか胸がかゆくなったのです。それほど気にしていなかったのですが、無意識に手でかいてしまうことが続きました。
ある時、いつものように胸に手がいくと、指先に「コツン」と何かが当たる感触がありました。気のせいかと思い、2週間ほどそのままにしていたのですが、かゆみは治まりません。しこりのようなものがあった辺りが特にかゆいのです。これはおかしいと思い、病院へ行くことにしました。
最初に行ったのは、人間ドックを受けた総合病院ではなく、近所の婦人科でした。そこで超音波検査をしてもらうと、医師から「おそらく悪いものだと思うので、専門の病院を紹介します」と言われました。
確定診断、そして全摘と乳房再建手術の選択
婦人科からの紹介状を持って、奈良県にある乳腺専門のブレストクリニックを受診しました。そこであらためて針生検などの精密検査を受けました。結果はやはり「乳がん」でした。ステージは2A。「顔つきの良い方です。ただ、再発しやすいタイプですね」と説明されました。当時30代だった娘も一緒に説明を聞いてくれて、とても心強かったです。
治療方針については、私の場合は抗がん剤治療は必要なく、手術とホルモン療法で行うことになりました。手術は、がんの広がりから部分切除ではなく、乳房をすべて切除する「全摘出術」が適当だと言われました。
その際、医師から乳房再建手術という選択肢もあると提案されました。手術まであまり時間がなく、深く考える余裕はありませんでした。周りに相談できる知人もいません。それでも、やはり女性として胸がなくなることへの抵抗感があり、悩んだ末に再建手術も同時に受けることを決めました。
再建方法は、まず手術でエキスパンダーというシリコン製の風船のようなものを胸に入れ、生理食塩水を少しずつ注入して皮膚を伸ばしていきます。そして、約1年後にエキスパンダーを取り出し、シリコンインプラントに入れ替えるという二段階の再建でした。
予期せぬ術後の痛みと感染症、仕事も退職へ
当時、私は給食センターで調理師として働いていました。手術と治療で長期間休むことになるため、職場には正直に事情を話し、休職させてもらうことになりました。
しかし、手術後の経過は想像以上に過酷なものでした。まず、手術の傷がとにかく痛いのです。「こんなに痛いものなのか」と思いましたが、医師からは「痛みの感じ方は人それぞれです。術後すぐに仕事復帰する人もいます」と言われました。さらに、手術で切除した組織を詳しく調べたところ、診断時よりも腫瘍が1つ多く見つかり、大きな石灰化もあったことがわかりました。
追い打ちをかけたのが、術後の感染症でした。ある日、再建した胸が真っ赤に腫れ上がり、高熱が出ました。抗生剤の注射を打ち続けました。そして、シリコンインプラントに入れ替えるための2度目の手術を受けることになりました。医師からは「胸の中を開けてみて、感染の状態が悪ければインプラントは入れられないかもしれない」と言われていましたが、幸いにもひどい状態ではなかったため、無事にインプラントを入れることができました。
ただ、体への負担は大きく、痛みは一向に引きませんでした。特に利き腕だった手術側の腕が上がらなくなり、重いものを持つこともできません。大きな鍋を振ったり、重い食材を運んだりすることが日常の調理師の仕事を続けるのは、どう考えても不可能でした。職場には復帰を待ってもらっていましたが、迷惑はかけられないと思い、最終的に退職することを決めました。
ホルモン療法の副作用と、再建手術への後悔
手術後から始まったホルモン療法は、今も飲み薬を続けています。再発しやすいタイプのがんということで、少なくとも10年間は続ける必要があるそうです。この薬にも副作用がありました。特につらかったのは、朝起きた時の手のこわばりです。指がうまく動かず、起き上がるのも一苦労でした。
医師に相談して薬を変えてもらったところ、こわばりの症状は少し和らぎました。しかし、今度はその薬に「子宮体がんのリスクを高める可能性がある」と説明を受け、半年に一度、婦人科で検診を受けることが必須になりました。ホットフラッシュのような、急に体が熱くなる症状も続いています。
そして何より私を悩ませているのが、再建した胸のことです。術後の痛みは7年経った今でも完全には消えません。湿度が高い日や天気の変わり目にはズキズキと痛み、脇の下が固まってつっぱるような感覚もあります。手術した側の胸は、触るとひんやりと冷たく、まるで自分のものではないような違和感が常にあります。
見た目の問題も深刻です。時間が経つにつれて、健康な方の胸は年齢とともに少しずつ垂れてきますが、インプラントを入れた胸は形の変化がありません。そのため、左右のバランスが崩れ、不自然さが際立つようになってしまいました。全摘した範囲が広かったためか、再建した胸の形がいびつに見えるのも大きなストレスです。
元々、温泉や銭湯に行くのが大好きでした。全摘した傷跡を人に見られるのが恥ずかしいと思い、再建を選んだはずなのに、今ではこのいびつな胸を見られることの方がつらく、すっかり足が遠のいてしまいました。
「いっそのこと、このインプラントを抜いてしまいたい」。そう思うことは一度や二度ではありません。形成外科の先生に相談したこともあります。「抜く人はいますよ」と言われましたが、そのためにはまた手術が必要で、感染症のリスクも伴います。簡単には決断できず、今もずっと悩み続けています。「あの時、再建しないという選択をしていれば、こんなに痛みや違和感に苦しむことはなかったのかもしれない」と、後悔の念はあります。
相談相手がいない孤立感
一番つらいのは、こうした悩みを気軽に相談できる相手が誰もいないことです。周りに同じような経験をした友人もいません。がん患者さんが集まる患者会のような場所があることは知っていますが、がんになってから人と関わることが少し億劫になってしまい、参加する勇気が持てずにいます。
娘には時々、「胸のことで悩んでいる」と話しますが、「お母さんが良いと思うようにすればいいんじゃないかな」と、心配させまいと気遣ってくれているのがわかります。だからこそ、これ以上は深く話せません。相談できる人や窓口などがあっても、具体的にどう利用すればいいのかがわかりませんでした。
もし、同じように再建手術後のことで悩んでいる人の話を聞くことができたら。インプラントを抜いた人はその後どうしているのか、あるいは悩んだ末に再手術した人はどうなったのか。誰かの経験談を聞くだけで、このモヤモヤした気持ちが少しは晴れるのかもしれないと、ずっと思っています。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
私の経験から、これからがんと向き合う方、特に乳がんの治療をされる方にお伝えしたいことが2つあります。
• 乳房再建手術は、慎重に考えて決断してください。
私のように、術後の痛みや見た目の変化に長年苦しむこともあります。手術を受ける前に、メリットだけでなく、デメリットやリスクについてもしっかりと説明を受け、信頼できる医師や家族、経験者など、さまざまな人の意見を聞いて、十分に納得した上で決めることが大切だと思います。後から「やらなければよかった」と後悔しないために、時間をかけて考えて欲しいです。
• 乳がん検診は、年に1度、マンモグラフィと超音波検査の両方を受けてください。
私は検診でマンモグラフィを受けて「異常なし」と言われた数か月後にがんが見つかりました。マンモグラフィでは見つかりにくいタイプのがんも、超音波検査なら見つかることがあります。その逆もまた然りです。自分の命を守るために、ぜひ両方の検査を定期的に受けることをお勧めします。