写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:みねさん(ニックネーム)
年代:50代
性別:男性
家族構成:母親と弟の三人暮らし
仕事:フリーランス(デザイン関連)
がんの種類:悪性リンパ腫(濾胞性リンパ腫)
診断時ステージ:ステージ4
居住地:埼玉県(診断時は愛知県)
診断年:2016年
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
フリーランスのデザイナーとして活動していたみねさんが悪性リンパ腫と診断されたのは、2016年11月、42歳のときでした。病状はステージ4まで進行していましたが、進行が緩やかなタイプだったため、すぐに治療は開始せず「経過観察」になりました。診断から約9年、今も経過観察を続けながら悪性リンパ腫と共に生きています。突然の告知をどう受け止め、先の見えない不安とどう向き合ってきたのか。その心の軌跡についてお話しいただきました。
歩けなくなるほどの痛み、突然の悪性リンパ腫宣告
悪性リンパ腫がわかったきっかけは、本当に突然のことでした。当時、私は仕事の都合で愛知県に一人で暮らしていましたが、ある日、急に足の付け根のリンパが腫れ、痛みで歩けなくなってしまったのです。どうしていいかわからず、救急相談窓口(#7119)に電話したところ、専門の病院を紹介してくれました。幸い、電話で話しているうちに少し痛みが落ち着き、歩けるようになったので、自力で病院へ向かいました。
紹介されたのは地域の大きな病院で、血液内科の評判がとても良いところでした。到着するとすぐに話が通っており、CT検査から始まり、翌日には血液検査、骨髄穿刺検査、PET-CTと立て続けに精密検査を受けました。そして、わずか3日後には診断が下されました。
病名は「悪性リンパ腫」。それも、骨盤内をはじめ全身の複数箇所にがんが広がっている「ステージ4」でした。
「経過観察でいきましょう」主治医の言葉と冷静な自分
ステージ4という言葉の響きは重いものでしたが、不思議なことに、私は「どうしよう」とパニックになることはありませんでした。むしろ、「ああ、そういうことなんだな」と、どこか冷静に事実を受け止めている自分がいました。
両親は、診断結果を聞くために実家から名古屋まで来てくれて、一緒に医師からの説明を受けました。そこで告げられたのは、私の悪性リンパ腫は「濾胞性(ろほうせい)リンパ腫」という進行が非常に緩やかなタイプであること、そして、このタイプのがんでは、すぐに治療を開始せず「経過観察」を選ぶケースが多いということでした。
当時、フリーランスの仕事が思うようにいかず、精神的に少し参っていた時期だったことも、かえって冷静でいられた一因かもしれません。病気について正確な知識がなかったために、過度な不安を感じなかったというのもあると思います。医師から「焦って治療を開始する人は少ないですよ」と丁寧に説明を受けたことで、まずは落ち着いて状況を見守ろうと考えることができました。
ただ、最初に歩けなくなった時の、あの鼠径部の痛みの記憶は鮮明に残っていました。また同じような症状が出たらどうしよう、という不安は常に心のどこかにありました。
9年間の「無治療」、がんと共に生きる日常
診断から半年ほど経った頃、愛知の仕事を整理し、実家のある埼玉県に戻ることにしました。それに伴い、病院も愛知の主治医から紹介していただいた都内の専門病院に転院し、そこから私の長い経過観察の日々が始まりました。
現在に至るまでの約9年間、私は一度も抗がん剤などの治療を受けていません。1か月から2か月に1回の血液検査と、年に1回のCT検査を続けながら、がんの状態を見守っています。血液検査の数値は幸いにもずっと安定していますが、CTの画像を見ると、リンパの腫れは少しずつ大きくなっているのがわかります。
経過観察が始まった最初の3、4年は、「本当に治療をしなくて大丈夫なのだろうか」という不安が常にありました。しかし、その不安は時間と共に少しずつ薄れていきました。何か特別なきっかけがあったわけではなく、がんを抱えた状態が自分の日常になっていく中で、自然と受け入れられるようになったのだと思います。
もちろん、病気のことを完全に忘れてしまうわけではありません。2年ほど前には首のリンパ節が急に腫れてきたり、明らかに体力が落ちて一日動くと翌日は休まないと体が持たなかったりと、体調の変化を感じるたびに、自分はがん患者なのだという現実を突きつけられます。それでも、4、5年が経った頃からは精神的にかなり落ち着き、「いよいよ治療が必要になったら、その時はその時だ」と腹を括れるようになりました。
不安を乗り越える力になった「人とのつながり」と「日常」
今、こうして落ち着いた気持ちでいられるのは、いくつかの支えがあったからだと思います。
一つは、同じ病気を抱える仲間との出会いです。悪性リンパ腫の患者会に参加したとき、私と同じように積極的な治療を行わず経過観察を続けている方が何人もいらっしゃいました。「自分だけじゃないんだ」と思えたことは、大きな安心感につながりました。
また、趣味の存在も大きかったです。診断前から続けている趣味があり、それに没頭している時間は、病気のことを忘れられる貴重なひとときです。診断直後は少しペースを落としましたが、完全にやめることはありませんでした。仕事や趣味といった「日常」を手放さずにいたことが、病気に心を支配されないための支えになっていたのだと思います。
そして何より、主治医との信頼関係が私の心の拠り所です。名古屋で最初に診てくださった先生も、今お世話になっている東京の先生も、この分野の専門家で、いつも私の状態を丁寧に説明してくれます。こちらの不安や質問にも真摯に耳を傾け、的確なアドバイスをくれる。この先生が「まだ大丈夫」と言うのなら、その言葉を信じよう。そう思えることが、先の見えない経過観察を続けていく上で、一番の力になっています。
がんとの付き合い方は人それぞれです。私の経験が、同じようにがんと向き合う方々の、何かのヒントになれば幸いです。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
私がこの9年間の経験を通じて感じているのは、がんと診断されても、必要以上に自分の世界を狭めることはないということです。
• 病気のことばかり考えすぎないでください。
がんと向き合うことは大切ですが、四六時中そのことばかり考えていると、心が疲弊してしまいます。仕事でも趣味でも何でもいいので、夢中になれる時間を見つけることが、心のバランスを保つ上で助けになると思います。
• やりたいことを諦めないでください。
体力的な制限は出てくるかもしれませんが、「病気だから」と最初から諦めるのではなく、できる範囲でやりたいことに挑戦してみてほしいです。私自身、これからもし治療が始まったとしても、動ける範囲で自分のやりたいことを続けていきたいと思っています。
• 信頼できる主治医を見つけてください。
不安や疑問を率直に話せ、それにきちんと答えてくれる医師との出会いは、治療や療養生活を送る上で何よりの支えになります。納得できるまで説明を求め、自分自身が安心して治療を任せられると思える関係を築くことが大切です。