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急性骨髄性白血病と診断された私へ。妻からの覚悟と主治医からの約束が心の支えに

[公開日] 2025.10.22[最終更新日] 2025.12.24

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:組長さん(ニックネーム) 年代:60代 性別:男性 家族構成:妻と長男の三人暮らし 仕事:俳優、会社経営 がんの種類:急性骨髄性白血病 居住地:埼玉県 診断年:2022年
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。 俳優と会社経営の二足のわらじを履く組長さんが急性骨髄性白血病と診断されたのは2022年4月のことでした。インプラントの定期メンテナンスという、がんとは無関係に思えるきっかけから事態は急展開します。診断から緊急入院、そして約7か月に及んだ治療の日々。仕事や家族、そして自身の死生観と向き合った体験についてお話しいただきました。

「まさか」の始まりは歯科クリニックで受けたインプラントの定期メンテナンス

私が急性骨髄性白血病とわかったのは、本当に偶然の出来事でした。インプラントを入れていたので、3か月に1度、歯科でメンテナンスを受けていました。いつものようにメンテナンスを受けた日の夜、治療した箇所がひどく腫れてしまったのです。翌日、歯科に電話すると院長先生が診てくれることになりました。 「この状況は私の手に負えません。歯科大学の恩師である教授を紹介します」。院長先生はそう言って、すぐに歯科大学病院へ連絡を取ってくれました。その場で大学病院に電話し、翌日には診てもらえることになりました。 大学病院の教授からは「潰瘍性の口内炎ですね。ただ、念のため血液検査もさせてください」と言われました。なぜだろうと思いつつも、言われるがままに採血をして、その日は帰宅しました。 異変が起きたのは、その翌日です。私は俳優の仕事もしており、その日はテレビ番組の撮影に参加していました。ロケバスにいると、携帯電話が鳴りました。歯科大学病院の教授からで「昨日の血液検査の結果が芳しくありません。大学病院の血液内科をご紹介します」と言うのです。自宅から近い病院を紹介してもらい、電話を切って15分ほどすると、今度は紹介先の大学病院の血液内科の先生から直接電話がかかってきました。「結果が良くないので、今日来られますか」と。 あまりの急な展開に驚きつつも、仕事が終わるのは夕方で、病院に着くのは夜7時ごろになると伝えました。「夜になると詳しい数値が見られないので、明日の朝一番で来てください。白血球の数値に異常が認められます」と告げられたのです。

看護師の妻の予感と、突然の告知

家に帰り、妻に「検査結果が良くなくて、明日朝一で病院に行くことになった」と伝えました。私の妻は看護師で、一緒に会社も経営しています。彼女は私の話を聞いて「もしかしたら」と思ったのでしょう。「私も一緒に行く」と言い、私の知らないところで入院の準備を始めてくれていました。 翌朝、妻が用意してくれた入院セットを持って病院へ向かいました。そして、血液内科の診察室で、医師から告げられたのです。 「急性骨髄性白血病です。ほぼ間違いありません。すぐに入院していただきたい」 テレビドラマで見るような「ご家族を呼んでください」といった前置きもなく、あまりに直接的な告知に一瞬、言葉を失いました。しかし、妻が準備してくれていたおかげで、そのまま入院手続きに進むことができました。 医師からは「すぐに抗がん剤治療を始めたいのですが、承諾されますか」と尋ねられました。白血病という病名に驚き、治療法についても全く知識がなかった私は、ただただ戸惑うばかりでした。そこで、「私はよくわからないので、先生と看護師である妻とで相談して決めてください。お任せします」と伝えました。 あまりの事態に、一度だけ妻に「本当に申し訳ない」と謝りました。すると彼女は「看護師として久しぶりに燃えてきた」と力強く返してくれたのです。その頼もしい言葉に、私は本当に救われました。 また、主治医となった先生は私の息子と同じくらいの若い方でしたが、その不安はすぐに吹き飛びました。先生は私に向かって、はっきりとこう言ってくれたのです。「あなたは寿命で死んでください。それまでは私たちが一生懸命やりますから」。この一言で、私は「ああ、この先生に全てお任せしよう」と、腹を括ることができました。 こうして、告知からわずか2日後には、私の抗がん剤治療が始まりました。

慌ただしく始まった治療と仕事の調整

緊急入院となったため、仕事の調整が急務でした。特に、1か月後には2.5次元の舞台に出演することが決まっており、すぐに稽古が始まる予定でした。まずは所属事務所の社長に連絡し、事情を説明してもらいました。制作側も迅速に対応してくださり、「体調不良により降板」と公式に発表してもらうことで、なんとか迷惑を最小限に抑えることができました。 経営している会社の方は、もともと妻が所長を務めていたので、全てを彼女に任せるしかありませんでした。動けない私に代わって、妻が一人で切り盛りしてくれたおかげで、事業が滞ることはありませんでした。 治療方針については、当初は同種造血幹細胞移植を目指していました。しかし、兄弟間では適合せず、骨髄バンクにもドナーは見つかりませんでした。そこで次の選択肢として提案されたのが「臍帯血移植」です。幸いにも、私に適合する臍帯血が見つかり、移植に向けて治療を進めていくことになりました。

「制約の多いホテル暮らし」のようだった入院生活

入院したのは2022年の4月6日。退院したのは10月31日でした。約7か月の入院生活でしたが、私にとってはその日々は意外にも楽しいものでした。 当時はコロナ禍の真っただ中で、面会は一切できませんでした。しかし、もともと私は人に病気のことをあまり知られたくなかったのです。心配しているふりをされるのも、気を遣って話をするのも、体力的にも精神的にもしんどいと感じていました。そのため、面会ができなかったのは、むしろ幸運でした。 白血病患者の入院生活は点滴の交換などで看護師さんがひっきりなしに出入りし、意外と忙しいものです。暇を持て余すことはありませんでした。そして、何より驚いたのは、抗がん剤治療が始まると、あれほどなかった食欲が急に出てきたことです。病院食は決して豪華ではありませんが、毎食とても美味しく感じられ、3度の食事が楽しみになりました。 個室だったことも幸いし、周りに気を遣う必要もありませんでした。夜も自分のペースで消灯でき、本を読んだり、音楽を聴いたり、好きなように時間を過ごせました。「制約の多いホテル暮らし」のような感覚で、今振り返っても、あの入院生活は楽しかったと思います。 治療の合間には10日間ほどの一時退院もできました。その時は家でゆっくりお酒を飲むこともでき、良い気分転換になりました。

遺書を書いたら、生きる決意表明になった

入院生活が少し落ち着いた頃、ふと「もしものことがあった時のために、遺書を書いておこう」と思いました。自分の人生を振り返りながら、家族へのメッセージを書き始めたのです。 ところが、書いているうちに心境が変化していきました。「自分は治療を受けると決めて、生きる道を選んだじゃないか。だったら、頑張って生きていこう」。そう思うと、家族への感謝や別れの言葉ではなく、これからの人生への決意表明のような内容になってしまったのです。 結局、その遺書は「決意表明」としてその日のうちに完成しました。妻には「もしもの時はこれを読んでくれ」と場所だけ伝えましたが、幸いにもその遺書が読まれることはありませんでした。遺書を書いたことで、かえって生きる覚悟が決まった、面白い経験でした。

病気が教えてくれた「先回りして心配しない」生き方

退院後は、移植によるGVHD(移植片対宿主病)という拒絶反応も心配されましたが、私の場合は皮膚が乾燥しやすくなったり、虫刺されがひどく腫れたりする程度の軽いもので、日常生活に大きな支障はありませんでした。 俳優業には、翌年の2023年12月、舞台の出演と演出の仕事で復帰しました。病気を経験したことで、私の考え方は大きく変わりました。以前は「失敗したらどうしよう」と先回りして心配することが多かったのですが、今では「失敗したって死ぬわけじゃない。その時になんとかすればいい」と、良い意味で楽に考えられるようになったのです。 病気になったことは決して良いことばかりではありませんが、私にとっては損なことばかりでもなかったのかもしれない、と今は感じています。がんだと告げられた時の衝撃は、誰にとっても計り知れないものだと思います。しかし、考え方一つで、その後の時間は大きく変わるかもしれません。どうかご自身の心を大切に、治療に臨んでください。

これからがんと向き合う方へのメッセージ

私の体験が、今まさにがんと向き合っている方や、そのご家族の何かのヒントになれば嬉しいです。 • 起こってもいないことを、先回りして心配しないでください。 「こうなったらどうしよう」と考え始めると、不安は際限なく膨らんでしまいます。心配事の中には実際に起こらないものもあります。何か問題が起こった時に、その都度、最善の対処法を考えればいいのです。心を痛める時間を減らすことが、私にとっては治療に前向きに取り組む上で大切だったと思います。 • 信頼できる医療チームを見つけてください。 私は幸運にも、主治医の先生をはじめ、素晴らしい医療チームに出会えました。「この先生に任せよう」と心から思えたことが、安心して治療に臨めた一番の要因です。もし少しでも疑問や不安を感じるなら、セカンドオピニオンなどを活用し、自分が納得できる場所を探すことも大切だと思います。 • 流れに身を任せてみるのも一つの方法です。 がんになると、自分で何かをコントロールできない状況に陥ることがあります。そんな時は、無理にあらがおうとせず、専門家である医師を信じ、大きな流れに身を任せてみるのも一つの方法です。私の場合、あれこれと自分で調べなかったことが、かえって心の平穏につながったように感じます。
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