写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:今川誠さん(本名)
年代:60代
性別:男性
家族構成:妻と2人暮らし
仕事:会社員(顧問)
がんの種類:胃がん(スキルス胃がん)
診断時ステージ:ステージ3A
悪性度:不明
診断年:2022年
現在の居住地:東京都
治験フェーズ:第3相
治験参加時の治療ライン:周術期治療(術前・術後補助療法)
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用には個人差があります。オンコロマイストーリー含め、ネット上の情報には、進行や再発といった厳しい闘病を経験された方の発信が多く残る傾向がありますが、実際には再発なく平穏に過ごされている方も数多くいらっしゃいます。情報の一つとして受け止め、治療方針の決定の際には、必ず主治医や医療従事者にご相談ください。
2022年、スキルス胃がんのステージ3Aと診断された今川誠さんは、紹介されたがんセンターで治験への参加を提案されました。がんの告知を受け、今後の治療方針について模索する中、提示された治験に参加することを決定。治療開始前は食事をすることも困難な状態でしたが、術前化学療法によって病変が縮小し、手術後の病理検査では腫瘍の縮小が確認されました。しかし、治療終了から4年が経過した現在も、抗がん剤治療による副作用や、胃を切除したことに伴う身体的症状への対処が必要な状況が続いています。治験を選択した背景や治療のプロセス、現在の生活の実態についてお話しいただきました。
スキルス胃がんステージ3Aの診断と治験提案
2022年、私は胃の不調から近所のクリニックを受診し、精密検査を経てがんセンターを紹介されました。そこで確定した診断は、スキルス胃がんのステージ3Aでした。テレビの報道などでスキルス胃がんが厳しい病気であると見聞きしていたため、告知を受けた当初の2〜3週間は頭が真っ白な状態になりました。医師から説明を受けても、内容を客観的に理解することは困難でした。
そのような状況下で、主治医から最初の治療方針として提示されたのが、手術の前後に、海外では標準的な化学療法と免疫チェックポイント阻害薬を併用する治験への参加でした。私はそれまで、治験という制度について知りませんでした。
主治医からは、この治験が開発の最終段階である第3相試験であり、第1相および第2相で安全性が確認されているという説明を受けました。専門的な用語が多く、一度にすべてを理解することはできませんでしたが、主治医が図や書面を用いて説明してくれたことで、具体的な内容を把握することができました。
治験への参加を決めた理由
主治医からの治験の提案に対し、私はその場ですぐに参加を決めました。スキルス胃がんのステージ3Aという病状を考慮すると、治療の開始を急ぐ必要があると考えたためです。
説明を受けた治験は、免疫チェックポイント阻害薬と海外では標準的な化学療法を併用するグループと、偽薬(プラセボ)と海外では標準的な化学療法のグループのいずれかに無作為に割り振られ、医師も患者もどちらのグループに割り付けられたかわからない状態で行う試験(無作為化・二重盲検・プラセボ対照・並行群間比較)でした。私がどちらのグループに割り付けられたかは、現在も開示されていません。
免疫チェックポイント阻害薬が投与されないグループになる可能性はありましたが、どちらのグループでも海外では標準的な化学療法を受けることができました。それであれば、新しい免疫チェックポイント阻害薬を併用できる可能性に期待して、治験に参加する価値があると考えました。
この決定に対し、家族からの反対意見はありませんでした。もしこの治療で生存できなかった場合は、今後の医学のために遺体を病理学的に役立ててほしいと考え、病理解剖の同意書にサインをしました。治験への参加に同意した後、必要な検査を経て術前化学療法が始まりました。
術前化学療法による効果で食欲も回復
治療前、私はがんの進行により寿司1貫を食べることも困難でした。しかし、術前化学療法が始まると、最初の1クールを終えた段階で食欲が回復し、ステーキを食べられる状態にまで改善しました。
術前化学療法を終えた後、胃の全切除手術を受けました。手術後に切除した胃の組織を見せてもらった際、主治医からは「どこにがんがあったのか肉眼ではわからない状態まで縮小していました」と説明を受けました。さらに、事前の検査で転移が確認されていた第1群のリンパ節転移も病理検査で認められなくなっていました。実際に受けたグループが、免疫チェックポイント阻害薬のグループだったのかプラセボのグループだったのかはわかりませんが、自分では免疫チェックポイント阻害薬のグループだったのではないかと思っています。
術後化学療法の開始と副作用への対処
治験の計画(プロトコール)通り、免疫チェックポイント阻害薬かプラセボの術後補助療法を行いました。胃を切除して体力が低下した状態での術後治療は、術前治療と比較して身体的な負担の大きいものでした。
特に苦労したのは吐き気です。食事が運ばれてくる際、そのにおいだけで嘔吐感が込み上げました。トイレの消毒液のにおいに対しても吐き気が誘発されるなど、日常のにおいが苦痛になりました。複数の吐き気止めを処方されましたが、体に合わず気分が悪くなることもありました。最終的には主治医から「病院の食事を無理に食べる必要はないので、コンビニエンスストアなどで食べられるものを買って食べればよい」との助言を受け、その時期をしのぎました。
治験から4年が経過した現在も続く症状
治療が終了してから4年が経過した現在も、治療や手術の影響と考えられる症状がいくつか残っています。
特に生活に影響しているのが涙目の症状です。眼科を受診したところ、涙道が炎症によって狭くなっていることが判明しました。涙道にカテーテルを通して生理食塩水が口まで通るかを確認するテストを行い、完全な閉塞は免れましたが、現在も涙が出やすい状態が続いています。
このほかにも、鼻水が出る症状や、咳、手足のしびれが残っています。胃の全摘手術で、食事量も減り脂肪や筋肉が減少したことで、体温調節機能も低下しました。入浴時には通常よりも高い温度設定にしないと寒さを感じます。治療から年月が経過し、再発のリスクは低くなったと感じる一方で、これらの症状が長く続くことに対して精神的にストレスを感じる時期もありました。
胃切除後のダンピング症候群と食事に伴う対処
胃を全切除したことに伴うダンピング症候群も、日常生活に影響を与えています。食事の最中や直後から腹部が膨張し、ガスが発生する早期ダンピングの症状が現れます。食後に安静にしていると、腹部の張りが背中まで達して苦しくなります。
これに対処するため、ウォーキングをするようにしています。歩くことで腸の動きが促され、ガスが排出されてお腹の張りが軽減されます。現在69歳の私は、この対処のために毎日1万歩を歩いていますが、今後高齢になって歩く体力が衰えた際にどう対処すべきかという不安があります。
また、旅行先での食事への不安から旅行を控えるようになり、行動範囲が制限されるストレスも感じています。
治験コーディネーターによるサポートが大きな支えに
治療中から現在にかけて、治験を担当する治験コーディネーターのサポートは大きな助けとなりました。
外来診察時、主治医は多忙なため、手足のしびれや涙目といった日常的な症状について、時間をかけて相談することは困難でした。これに対し、治験コーディネーターは私の話を聴き、症状について主治医に確認して対応を伝えてくれました。
がんセンターには心のケアの体制もありましたが、身体的な不調への対処は、治験コーディネーターを通じて主治医につないでもらう方法が、最も相談しやすいと感じました。治験薬の投与期間が終わった現在でも、月に1回は連絡をくれて体調の確認を行ってくれており、安心感につながっています。
患者会での情報の共有と地域における情報格差
同じ病気や治療を経験した患者同士のつながりも重要でした。私は複数の患者会に参加しています。
患者会では、同じように胃を切除した人たちが急な便意を催す症状に悩んでいることを知りました。「地下鉄を利用する際、各駅のトイレの位置をすべて記憶している」といった生活の工夫を共有することで、一人ではないと安心することができました。治療から長期間経過している方々が今も後遺症と付き合いながら生活している現実を知り、症状を抱えながら生活していく覚悟が定まりました。
同時に、医療現場における情報の地域格差についても考えさせられます。私は最初に受診したクリニックの医師が、治験を実施しているがんセンターでの勤務経験を持っていたため、治療開始前に治験という選択肢にアクセスできました。しかし、治験を実施していない病院を受診していた場合、治験の存在を知る機会がなかった可能性があります。患者自身が独力で治験の情報を収集することは難しいため、治験も含めた適切な治療の選択肢が提示される仕組みが必要だと感じています。
治験を振り返って今思うこと
私は、治験に参加した経験を患者会などで話しています。スキルス胃がんなど同じ状況にある患者の方々が関心を持って話を聴きに来られます。書籍やインターネットの情報とは異なり、実体験には具体性があるのだと感じます。
治験に参加してから4年が経過しました。現在まで再発や転移は見つかっておらず、かつて抱いていた死への不安はなくなりました。その一方で、治療に伴う副作用や後遺症の症状は現在も残っています。一向に改善しない状況を前に、「このしんどい症状は一生続くのだろうか」という新たな不安を抱えることもあります。
しかし、あのとき治験に参加したことへの後悔はありません。身体的な負担と付き合いながらの毎日は平坦ではありませんが、自ら治療の可能性を選択し、今こうして生活できていることに対して、「治験を受けて本当に良かった」と思っています。
治験を検討されている方へのメッセージ
今、がん治療をしており、治験を検討されている方にお伝えしたいことがあります。
治療の選択肢を広げるために、健康維持を心がけてください
治療方針の決定では、患者の全身状態が厳しく評価されます。健康状態が良好で体力があることは、医師が治療方針を提案する際の重要な判断材料となり、結果として選択できる治療の可能性を広げることにつながります。日ごろから健康を維持していれば、いざ治療が必要となった際に、より多くの選択肢を検討するための「土台」となります。
納得して治療に進むため、主治医とよく相談してください
がんの告知直後は混乱し、医師から提案された治療方針をそのまま受け入れてしまいがちです。しかし、ご自身の状況によっては治験などの選択肢が存在する可能性もあります。主治医の提案を受動的に受け入れるだけでなく、「他にも検討できる治療の選択肢はありますか」と直接医師に確認することで、よりご自身が納得した上で治療を選択してほしいと思います。
治験経験者に相談してみてください
治験への参加を検討しているのであれば、患者会などを活用して経験者の話を聞いてみるのもひとつの方法です。患者会などには、私のように実際にがんの治験を体験し、その経験を教えてくれる人が参加していることもあります。医療者からの説明に加えて、当事者ならではの話を聞くことは治療を選択する際の参考になりますので、治験を経験した人がいれば、ぜひ相談してみてください。
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