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乳がん体験を「天命」に、特定社会保険労務士として挑んだ職場改革

[公開日] 2025.08.29[最終更新日] 2025.12.24

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:篠崎由紀子(本名) 年代:60代 性別:女性 仕事:特定社会保険労務士(元公益財団法人 総務課長) がんの種類:乳がん 診断時ステージ:ステージ2 居住地:秋田県 診断年:2019年
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。 公益財団法人の総務課長として勤務していた篠崎由紀子さんは、2019年に乳がんの診断を受けました。自身が「がん罹患者第1号」となった職場で、治療と仕事の両立という現実に直面します。しかし、特定社会保険労務士としての知識と経験を武器に、篠崎さんはこれを単なる個人的な闘病で終わらせず、後に続く人のための職場改革へとつなげていきました。再発という試練をも乗り越え、自らの経験を社会に還元しようとする活動についてお話しいただきました。

突然の乳がん告知、私が「がん患者第1号」という現実

乳がんだとわかったのは、2019年7月のことでした。ある日、お風呂に入ろうと下着を脱いだ時、左胸に硬いしこりのようなものがあるのに自分で気づきました。すぐに自宅近くのがん診療連携拠点病院へ行くと、マンモグラフィーと触診の結果、その場で医師から「乳がんが強く疑われます」と言われました。 その後に受けた精密検査の結果、ステージは2。早期ではないという言葉に多少のショックは受けたものの、不思議と冷静な自分がいました。幸いにも良い先生に巡り会え、すぐに治療方針が決まりました。まずは半年間のホルモン療法でがんを小さくしてから、翌年3月に左乳房の全摘手術を受けることになりました。 問題は、仕事でした。当時、私は公益財団法人で総務課長を務めていました。職員15人のうち12人が女性という、女性が中心の職場です。しかし、これまでがんを患った職員は一人もいませんでした。私が「がん患者第1号」だったのです。 がんの治療は、一度で終わるものではありません。手術の他にもホルモン療法や放射線治療、抗がん剤治療など、長期にわたって通院や副作用との闘いが続きます。それにもかかわらず、私たちの職場には、そうした長期の治療を想定した休暇制度やサポート体制が就業規則に何も定められていませんでした。 このままでは、私自身が治療と仕事を両立できないだけでなく、これからもし自分以外の誰かががんになった時、同じように困ってしまう。そう思いました。

社労士の知識を総動員した職場改革

私ががんになったことを、この職場の仕組みを変えるきっかけにしなくてはならない。幸いにも、私には社会保険労務士としての知識がありました。私は、大きく分けて2つの改革に取り組みました。 一つは、従業員の「早期発見・早期治療」を促す仕組みづくりです。 がん治療で何より大切なのは、早期発見です。私のようにステージが進んでから見つかる人を一人でも減らしたい。そのために、会社の健康診断に、乳がん、子宮頸がん検診や腫瘍マーカー、腹部エコーといった各種オプション検査を追加し、その費用を全額事業主負担とすることを提案し実現させました。 すると、早速効果が現れました。健康診断を受けた女性職員12人のうち、3人に乳がんや卵巣がんの疑いが見つかったのです。2次検査の詳しい結果は聞いていませんが、この取り組みがなければ気づけなかったかもしれず、早期発見の重要性を改めて痛感しました。 二つ目は、がんになっても安心して治療を続けられる環境整備です。長期治療で休んだり、通院のために中抜けしたりする必要が出てきます。副作用で体調が優れない日もあるでしょう。そんな時、気兼ねなく休める制度が不可欠です。 そこで、まず就業規則を改定し、治療のための特別休暇制度を盛り込むことを考えました。しかし、中小規模の組織では、一人が長期で抜ける穴は大きいものです。残されたメンバーの負担が増え、職場の雰囲気が悪くなっては元も子もありません。また、経営者側からすれば、働いていない職員の社会保険料を負担し続けるのは大きなコストです。最悪の場合「お荷物扱い」され、退職を促されるケースも少なくありません。 そうした事態を避けるため、私は具体的な代替案と財源を用意して理事会に臨みました。

代替要員の確保:職員が抜けた期間は、派遣社員を雇用して業務をカバーする。

業務協力者への手当:どうしても本人でなければできないコアな業務を他の職員が代行した場合は、調整手当として月30時間分相当の金銭を支給する。 改革の財源:以前から私が担当し、別会計で管理していた厚生労働省の「キャリアアップ助成金」をこの改革の原資として活用する。 助成金を活用するという具体的な財源を示したことで、理事会もスムーズに承認してくれました。こうして、がんになっても安心して休み、治療に専念できる仕組みが整ったのです。早く治療して元気に復帰してくれれば、それは本人のためだけでなく、会社にとっても大きな利益になる。その好循環を作るのが私の役目だと考えていました。

再発と絶望、そして住職に教わった「本当の天命」

2020年3月、手術は無事に終わり、私は退院した翌日から職場に復帰しました。デスクワークだったこと、そして何より心配な業務があったことが私を職場へと向かわせました。入院中も、ドラマの「ドクターX」の大門未知子になったつもりで、毎日病院内を何周も歩いて体力を維持していました。先生も驚いていましたが、これも早く復帰するための自分なりのリハビリでした。 職場改革も軌道に乗り、私は自分の経験が、同じようにがんで苦しむ人の役に立つことこそが「天から与えられた使命」なのだと信じていました。この役割がある限り、がんは私を生かしてくれるだろうと、どこか思い上がっていたのかもしれません。 しかし、2022年、手術から2年後に再発が見つかりました。リンパ節への転移でした。さらにPET-CT検査では肺にも影があり、医師からは「乳がんからの肺転移か、あるいは原発性の肺がんの可能性がある」と告げられました。 頭の中が真っ白になり、目の前のシャッターがガラガラと下りていくような感覚でした。「天命」と信じていたのに、裏切られたような気持ちでした。私の人生はもう先がないのだと、余命のことばかり考えて絶望しました。 手術を3日後に控えた日、私はどうしても気持ちの整理がつかず、菩提寺である日蓮宗のお寺へ向かいました。住職に「自分ががんになってもその経験を活かして人の役に立つという天命があると思っていましたが、そうではなかったようです」と打ち明けると、住職は静かにこうおっしゃいました。 「篠崎さん、それはまだ結論が出ていないんじゃない? 人間は誰でも死に向かって生きています。長く生きることだけが人生ではありませんよ。これからは、人から感謝されるような生き方をしていきなさい」 その言葉に、はっとさせられました。いつまで生きられるかばかりを考えていた自分の視野の狭さに気づいたのです。住職はさらに、「手術の時間に合わせて、こちらでご祈祷をしていますから、安心して臨みなさい」と励ましてくださいました。そのおかげで、私の心は不思議と落ち着きを取り戻すことができました。 そして手術の結果、肺の影はがんでなく、結核菌の感染によるもので、すでに菌は死滅していたことがわかったのです。これは非常に珍しいケースだと医師に言われました。あの時、住職の言葉で心が救われなければ、どうなっていたかわかりません。これはスピリチュアルな話に聞こえるかもしれませんが、私は「運命が修正された」のだと信じています。 現在も私は、ホルモン薬と分子標的薬での治療を続けています。完治したわけではありません。しかし、絶望の淵で気づかされた「人から感謝される生き方」を胸に、自分の知識と経験を活かして、治療と仕事の両立に悩む方々の相談に乗る活動をしています。

これからがんと向き合う方へのメッセージ

最後に、これからがんと向き合う方々へ、私からお伝えしたいことがあります。 一人で抱え込まないでください。 がんと診断されると、孤独を感じやすいものです。しかし、一人で悩む必要はありません。病院の「がん相談支援センター」や、地域の「がんサロン」、患者会など、相談できる場所は必ずあります。経験者や専門家とつながることで、得られる情報は計り知れず、心の大きな支えになります。 支援制度は「申請」しなければ利用できません。 日本は「申請主義」の国です。傷病手当金や高額療養費制度といった国の制度はもちろん、お住まいの都道府県や市町村が独自にウィッグや補正下着の購入費を補助する制度など、探せばたくさんの支援があります。これらは、自分で声を上げ、申請しないと受けることができません。諦めずに、まずは自治体のホームページを調べるなど、積極的に情報を集めてみてください。 情報の「見極め」が大切です。 インターネットにはさまざまな情報が溢れていますが、中には不正確なものや、かえって不安を煽るものも少なくありません。がん相談支援センターや信頼できる患者会など、正しい情報源から知識を得るように心がけてください。 病気になったことで、人生の全てを諦める必要はありません。利用できる制度や周りの助けを借りながら、自分らしい生き方を見つけていってほしいと心から願っています。
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