写真はイメージです。(AIによる生成)プロフィール
お名前:ひよこさん(ニックネーム)
年代:50代
性別:女性
家族構成:一人暮らし
仕事:無職
がんの種類:乳がん
診断時ステージ:ステージ1
居住地:東京都
診断年:2018年
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用、生活への影響には、個人差があります。医療的な判断や治療方針の決定の際には、必ず医師・医療従事者にご相談ください。
20代の頃から胸の良性疾患を指摘され、定期的な検査を続けてきたひよこさん。陥没乳頭に対する手術を繰り返し、乳腺外科とは長い付き合いでした。42歳の時、乳がんの住民検診をきっかけに「悪性化するかもしれない」という影を指摘されてから3年。月1回のセルフチェックでしこりの増大に気づき、45歳で乳がんと告知されました。しかし、そこには意外なほどの冷静さがあったといいます。長い経過の末、どのようにがんと向き合うことになったのか、お話ししていただきました。
「これは、いずれがんになる」という覚悟
私ががんと診断されたのは、45歳の時でした。しかし、その兆候、胸の異変との付き合いは20代の頃にまでさかのぼります。
もともと陥没乳頭の症状があり、20歳の時に初めて外科を受診しました。その際にマンモグラフィーとエコー検査を受けたのが、胸の検査の始まりです。その後、35歳の頃からは陥没乳頭による炎症を繰り返すようになり、その都度、乳腺外科でマンモグラフィーと超音波検査を受けていました。39歳の時には、炎症が悪化して乳輪下膿瘍となり、切開手術と陥没乳頭の根治手術を受けましたが、その後も再発を繰り返していました。
転機が訪れたのは41歳の時です。持病のメンタル疾患で服用していた薬の副作用で乳房の張りと乳汁分泌がみられ、乳腺外科を受診しました。その時の超音波検査で「形がいびつな影がある」と指摘されたのです。すぐに細胞診を受けましたが、さらに詳しい検査が必要だといわれ、針生検(組織診)を受けました。結果は「良性の腫瘍」。ひとまず安心はしたものの、この時から私の中で何かが変わり始めました。
翌年、42歳の時、初めて受けた住民検診のマンモグラフィーで「石灰化」を指摘されました。ところが、2次検診で受けた超音波検査では「異常なし」。1年前に良性とはいえ1cmの腫瘍を指摘されていたのに、それが見過ごされていることに強い疑問を感じました。
メンタル疾患の主治医に相談し、紹介してもらった別のクリニックを受診すると、そこの先生ははっきりこう言いました。「石灰化は問題ないと思うけど、右胸のしこりは悪性化する可能性が極めて高い。過去に生検を受けた大学病院に戻って、きちんと診てもらった方がいい」と。
この言葉が、私の中で覚悟を決めるきっかけになりました。大学病院に戻り、経過観察となりましたが、私自身は「これは、いずれがんになる腫瘍なのだ」と確信していました。乳がんのリスク因子に「良性疾患の既往」があることは知っていました。私はまさにハイリスク者なのだと認識してからは、不思議と不安は薄れていきました。
それからは、セルフチェックを欠かしませんでした。生検を受けた際に、どのあたりに針を刺したかの説明を受けていたので、その場所を中心に注意深く触れて確認する毎日。案の定、大学病院での定期検査でも、マンモグラフィーで「構築の乱れ」を指摘されるなど、状況は変わらず経過観察が続きました。
セルフチェックで5mmの変化に気づく
最初の指摘から3年が経った45歳の3月、いつものようにセルフチェックをしていると、右胸のしこりが大きくなっているように感じました。気になって定規で測ってみると、以前は1cmだったはずが、1.5cmになっていました。しこりが大きくなっていると確信した私は、すぐに通院していた大学病院に連絡し、予約を取りました。
病院でのマンモグラフィーと超音波検査の結果、私の計測通り、しこりは5mm大きくなっていることが確認されました。すぐに針生検が行われ、その結果を待つことになりました。
告知の日、私は驚くほど冷静でした。医師から「悪性でした。乳がんです」と告げられた時、心の中にあったのは「やっぱりそうだったか」という安堵にも似た感情でした。ずっと覚悟していたからこそ、病名がはっきりしたことで、ようやく次のステップに進めるという気持ちでした。もし「異常ありません」といわれていたら、逆にパニックになっていたかもしれません。
がんの種類は「管状がん」という、比較的進行がゆっくりなタイプでした。ステージは1。しこりの大きさの割には転移や浸潤もみられないとのことでした。「手術で部分切除を行い、その後は放射線治療とホルモン療法で進めましょう」と治療方針が示されました。その説明を聞いて少しほっとしたのを覚えています。
複数の持病があったからこそのメリット
私には喘息や腎臓病、アトピー性皮膚炎など複数の持病があり、そのほとんどを乳がんの治療を受ける大学病院で診てもらっていました。これは、がん治療を進める上で大きなメリットになりました。
今の時代、電子カルテで情報はすべて共有されます。各診療科の先生が私の体の状態をすべて把握してくれているので、連携が非常にスムーズでした。
例えば、放射線治療による皮膚炎は、がん治療の副作用としてよく知られています。私はもともとアトピーがひどかったため、放射線治療が始まる前に皮膚科の先生に相談しました。すると、「放射線を始める前に、この保湿スプレーを使ってください」と、スプレータイプの保湿剤を処方してくれたのです。クリームのように手で塗り込む必要がなく、患部に触れずに保湿できるので、とても助かりました。放射線科の先生も「そんな良いものがあるとは知らなかった」と感心していました。
おかげで、皮膚炎はひどくならずに済みました。放射線科の先生が言うには、「アトピーなどで肌が弱い人は、患部を怖々触るから悪化しにくい。逆に健康な肌の人は、これくらい大丈夫だろうと油断して触り、かえってぐちゃぐちゃにしてしまうことが多い」そうです。
また、ホルモン療法ではホットフラッシュや関節痛などの副作用が心配されますが、私の場合、もともとの持病にも同様の症状があったため、「これは乳がんの副作用」とことさら意識することはありませんでした。「もともとの症状が悪化しただけ」と考えることで、精神的な負担を減らすことができたように思います。
また、日常生活の中でも、少しの工夫で楽に過ごせることもあります。
例えば、ペットボトルの蓋が開けにくい時、蓋ではなくボトル本体を回して開ける。暑さ寒さに対応できるよう、タイツではなくレギンスと靴下をはき、カーディガンではなくアームカバーを活用するなどです。これらはすべて、元々の生活の中で身につけていた工夫ですが、がん治療中の生活の質(QOL)を維持する上でも大いに役立ちました。
信頼できる情報と人を見極める
私は以前、病院で管理栄養士として働いていた経験があり、がんに関する知識は一般の方よりはあったと思います。それでも、いざ自分が診断されると、何を信じればいいのか迷う瞬間はありました。
私がまず行ったのは、インターネットで「乳がん 治療ガイドライン」と検索することです。最初に検索するキーワードに注意することで、その後の検索結果に影響する可能性があります。いきなり個人のブログや怪しげな民間療法のサイトに飛びつくのではなく、まずは公的で信頼できる情報源にあたることが最も重要だと考えました。患者向けサイトで概要を掴み、次に医療者向けのガイドラインを読むことで、標準治療について正しく理解することができました。
診断されたことは、最初は家族にだけ伝えました。友人に話すのは、変な健康食品などを勧められるのが嫌で、入院する直前まで待ちました。話す相手も「この人なら大丈夫だ」と信頼できる人にだけ絞りました。
告知の翌日には、病院のがん相談支援センターへ行き、必要な情報を集めました。幸運なことに、ちょうど乳がんに関する患者向けの講演会が開催されるタイミングで、そこで乳腺外科の先生から直接、治療に関する詳しい話を聞くことができ、これも大きな安心材料になりました。
がんになると、孤独や不安から、さまざまな情報や人に頼りたくなります。しかし、そんな時だからこそ、情報の出どころをしっかりと見極め、信頼できる医療者や人に相談することが大切だと実感しています。
これからがんと向き合う方へのメッセージ
私の経験から、これからがんと向き合う方、特に乳がんの疑いがある方にお伝えしたいことがあります。
情報収集は「ガイドライン」から始めましょう。
インターネットで調べる際は、まず「(がんの種類) 治療ガイドライン」と検索してみてください。公的な医療機関や学会が作成した信頼できる情報にアクセスでき、その後の検索でも、怪しい情報サイトが表示されにくくなると感じました。
「良性」という言葉に安心しすぎないでください。
検診で「良性のしこり」と診断されても、それで終わりではありません。診断されたという事実を忘れず、定期的な検診やセルフチェックを続けてください。
指摘されたこと、検査の履歴を記録しておきましょう。
検診で指摘されたこと(「石灰化がある」「右胸に影がある」など)は、きちんと覚えておきましょう。いつ、どこで、どんな検査を受けたか、簡単なメモでいいので残しておくことをお勧めします。その記録が、次の診断や治療の際に非常に役立ちます。医師に経緯を正確に伝えることで、より適切な診断につながるはずです。
自分の体の変化に最も敏感なのは自分自身です。
私の場合は、日々のセルフチェックでしこりのわずかな変化に気づくことができました。医師の診察や画像検査はもちろん重要ですが、最後に自分の体を守るのは、自分自身の感覚です。自分の体の声に耳を傾け、少しでも「おかしいな」と感じたら、迷わず医療機関を受診してください。